どうして……
どうしてそんな冷たい態度をするの?
私じゃダメなの?もう……好きじゃないの……?
答えてよ……
私は……
私はこんなにも貴方を……
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ハッ……ハッ……ハッ……!」
森の中を懸命に走る者が居る
(なんなのよここは……どうやったらここから出れるのよ……)
赤ん坊を抱き抱えずっと走っている
「ハァー……ハァー……!?」
走り疲れ、木に持たれた女性は荒い息を整える
(あいつらの動きが激しくなってきた……痺れを切らした?もしくは何かあった?)
考えている途中、近くから気配を感じる
「どこ行きやがったあのアマ……」
数人の男達が近付いてくる
(お願い……静かにしてて……!)
赤ん坊に被さる様に身を潜め、通り過ぎるのを待つ
「あっち探してみるか」
運よく赤ん坊は声を出さずやり過ごす事が出来た
「はぁぁ……」
安堵の溜め息を吐いて辺りを見回す
(ここ……見覚えがある、前に隠れてた竹林の近く……逃げてる内にまた戻って来たのね)
立ち上がりゆっくりと進んでいく
(少しだけまた隠れさせて貰おうかしら……)
傷だらけの体で……
(また会えるかしら……大ちゃんに……)
赤ん坊と共に森の中へ消えていった
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
紅魔館・図書館
パーティーの夜が明けた翌日、またいつもと変わらない日常に戻った幻想郷のとある一角
「……ねぇバーン?」
不意にレミリアは話しかけた
「……どうした?」
バーンは素っ気なく答える
「私……貴方に何かしたかしら?」
普段なら出ない問いをレミリアは投げ掛ける
「……どうしてそう思う?」
そう思っている理由をバーンは問い返す
「わからない?」
更に問い返す
「……」
バーンは答えない
「最近、何をしているの?」
次いで問うのは最近バーンがしている事、行き先も告げず一人で出掛けたり自室に籠ったりしている事について
「答える必要は無い」
だがバーンにバッサリと切り捨てられた
「……」
睨むレミリア、気になるのだろう
「なんだ?睨んでも答えぬぞ?」
それでもバーンは答えない
「私に言えない事をしているの?」
「くどい奴だな……」
少しばかりのイラつきをバーンは見せた
「なんだレミリア?構って欲しいのか?いくら余とお前がそういった仲であっても最低限の礼儀があろう?する事を逐一答えてやる必要は無い、お前もそうではないのか?」
「そうだけど……」
レミリアは反論出来ない、バーンの言う事が至極真っ当だったからだ
「……」
だがそれがレミリアには辛い、離れていかれてる様で……
「わかったわよ、もう聞かないわ」
気丈な振りをし、納得してこの話題の終わりを告げた
「もう11月の半ばね……少し寒くなってきたわね」
「そうだな」
「本格的に寒くなる前に二人で何かしたいわね……寒くなると外にはあまり出たくないし」
「何をするのだ?」
「そうねぇ……」
何か特別な事をバーンとしたかったレミリアはつい、本当に考えもなく何となく
「異世界に旅行とか……行ってみたいわね」
それを言ってしまった
「……旅行……か……」
それを聞いたバーンはレミリアを一瞬見た
何の打算も感じられない、出来たら良いなと思っている素直な微笑みを見た
「……」
そして静かに目を閉じた
「どうしたの……?」
その行為が不思議だったレミリアが見つめる
(旅行……あっ……)
気付いた
バーンは存在を幻想郷に同化していて幻想郷から出れば死んでしまう事に
「ち、違うの……今のはそんな意味じゃ……」
殺す為に提案したのではないと言い繕おうとする
「……部屋に戻る」
しかしバーンは立ち上がり図書館から出ていってしまった
「うー……」
やってしまったと項垂れるレミリア
「レミィ……大丈夫?」
聞いていた友人達が慰めに来た
「やっちまったな……アレは禁句だぜレミリア……」
「言わなくてもレミリアもそんな事わかってる、言うな!」
魔理沙と妹紅
「バーンさんどうしたんでしょう?」
「様子変だよね……あたしが聞いた噂だけど変な噂じゃなくてロン・ベルクに会いに何回か白玉楼に行ってるみたいだよ」
「事件の臭いがするわね……!」
大妖精、フラン、チルノ
「ほらレミィ、元気出して?大丈夫よ、バーンがレミィから離れる事なんてないわ」
そしてパチュリー
親しい友人が慰めてくれる
「……わかってるわよ」
しかし、レミリアは甘えなかった
「さっきのは言葉の綾、バーンもそれはわかってる筈よ、だから次に活かせば良いだけの事、簡単な話よ」
気にしてないと言うが強がっているのは誰の目にも明らか
「……とりあえず謝っとけよ」
「何故?お互いに理解しているのだからそんな必要は無いわ、無駄な労力でしょう、違う?」
魔理沙の助言は一蹴される
「強がるなよレミリア……」
「煩いわね、大きなお世話よ」
同じく妹紅にも同じ態度を取る
甘えるどころか自棄になっている
「そんな言い方よくないですよ……」
「そうよ!みんな心配だから言ってあげてんでしょ!」
大妖精とチルノが言う
「煩いと言ってるのよ!!」
バンッと机を叩きレミリアは立ち上がった
「どいつもこいつも!誰にモノを言ってるつもり!?私が良いと言ったら良いのよ!」
そのまま図書館の出口へ歩きだした
「あ!待ってよお姉様ー!?」
フランが追いかけていく
「付いてくるな!!」
だがレミリアの一喝にフランは止められた
そしてそのままレミリアは図書館から出ていってしまった
「……どうするよ?」
「どうするって……どうも出来ないわよ……」
「参ったな……」
残された友人達は困った顔で見合うしか出来なかった……
紅魔館・バーンの私室
「……」
椅子に座り物思いに耽ているバーン
(やはり上手くは出来んものだな……)
フゥー……と深く溜め息を吐き頬杖をつく
(気苦労を負わせてしまったか……やはり慣れん事はすべきではなかったか)
(難しいものだ……)
思いもそこそこにバーンはおもむろに机の引き出しを空け中に有る物を見つめる
(なんとか間に合った……こちらは上手く出来たとは思うが……気に入れば良いが……)
その時の顔を思い浮かべ思わず微笑む
「さて……行くか」
バーンはまた部屋から出ていった
コーセルテル
コンコンッ
ノックの音がする
「むっ?」
家の中に居た主、ハドラーが気付きドアへ向かう
「誰だ?」
問うが反応が無い
(悪戯か……?)
そう思った直後、またノックの音が響く
「……」
ハドラーは少し警戒しながらもドアを開けた
「お前は……」
立っていた人物を見て少しばかり驚いた
「レミリアではないか……なんだ?一人か?」
そう、立っていたのはレミリア、回りには誰も居ない
「……どうした?」
そしてハドラーはすぐに気付く、レミリアの様子がおかしい事に
「……」
レミリアは無言のまま悲しそうに立ち尽くしていたから
「……入れ」
何かあったのだと察したハドラーはレミリアを家の中へ招き入れた
紅魔館・図書館
「あ……バーン」
また現れたバーンに気付いた6人が揃って見る
「……レミリアはどうした?」
「怒ってどっか行っちまった……咲夜に聞いたら何も言わず外に出てったってよ」
「そうか」
それを聞いたバーンは特に何も感じさせず椅子に座る
「ちょうどよい、少しお前達に頼みがあるのだ……頼まれてくれるか?」
「珍しいわね貴方が頼みって……もしかしてレミィに関係する事?」
「そうだ、嫌なら構わぬが……」
「誰も嫌なんて言ってないだろ、いいから話せって」
「……あの様子ではいつまでになるかはわからぬが……」
バーンは頼みを話した
「……なんだ、そういう事だったのかよ、あーなるほどなぁ!」
「全てに合点がいったわね」
「わぁ!良いなぁレミリアさん!」
何やら皆嬉しそうに笑っている
「どうだ?頼まれてくれるか?」
再度問うバーンに魔理沙が笑顔で答えた
「もちろんだぜ!なぁ皆?」
「あたいも!」
「あたしも!」
「私もです!」
4人の承諾を受けてバーンは妹紅とパチュリーを見る
「ん?私ももちろんいいよ!」
「確認するまでもないでしょ?」
2人も引き受けてくれた
「感謝する」
内容は決して難しい事ではなかったが喜んで引き受け笑顔を見せる友にバーンは礼を言わずにはいられなかった
「よーし!んじゃ行くか!」
「そうね、行きましょうか」
「魔理沙の家にしようよ!」
「おーいいぜ!特製のキノコ料理食わせてやるぜ!」
「変なキノコ入ってませんよね?」
「とにかく行くわよ!」
楽しそうに6人は紅魔館から出ていった
「さて……次は小悪魔、咲夜とウォルター、美鈴にミストか……」
姿が見えなくなったのを確認した後、バーンは次へ向かって行った
コーセルテル・ハドラーの家
トントントン……
野菜を切る音が聞こえる
「次はこれを切ってくれ」
「わかったわ」
二人は台所に立っていた
「……」
「……」
指示と返事だけの最低限の会話、時折ハドラーが料理の指導を行い、軽い一人言を言うだけで二人に会話は無い
「……何があった?」
不意にハドラーは聞く
「……」
レミリアは答えない
「お前は何かを求めてオレに会いに来たのではないのか?」
紫のスキマを使えば簡単に来れるコーセルテルではある、しかし、だとしても易々と来て良い場所でもない
なのに来たのだ
それも料理を教わるのが目的ではなく、自分に会いに……
「まぁ言いたくなければ構わんがな」
それを察したハドラーだからこうして時間を取っているのだ
もう他人ではないレミリアの為に
「……バーンがね、わからないの……」
ポツリとレミリアは呟く
「わからないとはどういう事だ?」
問い返すとレミリアの手が止まり、下ろされた
「全て……」
俯いて答えられたハドラーはレミリアを見るが俯いている故に表情は見えなかったが見れた顔ではないのはわかった
「嫌われちゃったのかもしれないの……」
辛そうに震えていた、それがとても苦しいのだろう
「どうすればいいの……?教えてよハドラー……」
そしてハドラーは見た
「私はこんなに愛してるのに……」
頬から落ちる水滴を……
「レミリア……」
そう、レミリアがハドラーに求めていたのは答え
離れて行くバーンに何をすれば良いのか
それを知りたくて紫に頼み込んでコーセルテルへハドラーに会いに来たのだ
プライドが邪魔して素直に話せない友ではなく、バーンを同じくらい知っていて尚且つ信頼出来るハドラーを頼って
暫しの沈黙が二人に流れる
「それはオレにもわからん事だ」
静かにそれは告げられた
「オレ程度ではあの御方の考えなど想像もつかん……」
ハドラーにもそれは答えられなかった
「そう……よね……」
レミリアは肩を落とす
そんな事はわかっていたのだ
でも何か言って欲しかった、気休めでも何でもいいからせめて何か縋れる慰めが欲しかった……
例え虚ろな幻想だとしても……
「……ッ!?」
また悲しさが目から流れ頬から落ちる
「だが……1つだけ、オレにも確かに言える事がある」
聞こえたその言葉にレミリアは思わず顔を上げた、その言葉に有った力強い想いを感じて
そしてハドラーは言った
「バーン様を信じていろ」
レミリアを真っ直ぐ見つめて
「信じる……?」
「そうだ、何がお前とバーン様の間にあったかはあえて聞かん、誇り高いお前が涙を見せる……お前にとってさぞ辛い事があったのだろう……」
唖然としているレミリアにハドラーは続ける
「異性を愛した経験はオレには無い、まぁ段階を飛ばして娘はいるがな……知った風な口をきくなと言われればそれまでだが、それでもオレは……これが正しいと胸を張って言える」
自信有り気に微笑んだ
「疑うな」
そう言うと料理を再開しだす
「昔はオレも騙され殺されかけた……だがそれは昔の話だ、今のバーン様は違う……信じるに足る御方になられた、隣に居るお前が羨ましいと思う程に」
その様はさしたる問題では無かったと言っている様にハドラーは料理をする
「心配するな、奥方であるお前が信じていなくてどうする……気にし過ぎだ、愛するが故に……なのだろうがな」
それを最後に黙々と料理をし始めた
「……えぇ」
聞いていたレミリアは呟いた
「そうよね……」
いつの間にか辛さは無くなっていた
「そうよね!」
求めていた答えを得たから
虚ろな幻想だとしても気にならないくらいの答えを貰ったから
「早く行け」
素っ気なくハドラーは言う
「今回の授業は中止だ、こんな塩っ辛い味付けではとても食えん」
濡れた材料を引き上げながらハドラーは促す
「感謝するわハドラー!」
レミリアは帰る支度を始める
「またいつでも来い、次はみっちり鍛えてやる!」
「わかったわ!」
「皆にまたサッカーをせんかと伝えておいてくれ」
「ええ!また来るわハドラー!」
急いでレミリアは家から出ていった
「フッ……」
微笑みながら料理を作るハドラーはふと思い出した
(そういえば前にバーン様が来た時に言っておられたな……確か……)
日付を確認する
(11月16日……やはり今日か……ムッ、なるほど……おそらくそれでか)
やはり答えは間違いではなかったとハドラーは笑った
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ようやく追い詰めたぜ」
幻想郷にある人気の無い場所
「……ッッ!?」
今そこでは劇が開けようとしていた
「ガキはどうした?」
「……」
囲む男達に女性は答えない
「まぁいい、あの指輪をよこせ」
男達に油断は無い、散々逃げられてきた経験から絶対に逃がさない様に岩壁を背に捉え逃げ場無く囲っている
「……断る」
女性は答えると短刀を手に持つ
「指輪はガキと一緒か?どこに隠した?言わねぇんなら見つけ出して殺すぞ?諦めろ」
男達もナイフを手に持つ
「諦めろ……?諦めろですって……?なるほど……お前等らしい言い草ね」
短刀は強く握られる
「法の下でいることに耐えられなかったお前等クズのね……何が偉大な大盗賊の後継者だ……人間を舐めるな!人で無しめ……!」
そして構えられた
「来い!戦ってやる!!村の皆の……夫の仇だ!!」
猛る戦意と共に言い放つ意思
逃げていた心は覚悟した時に前へ向いた
愛した者の死と親しかった人達の無念を糧に
「あの子は私が守る!!」
そして最愛の我が子の為に……
「勝てると思うなよ……農民風情が!」
誰にも知られず、絶望の幕は上がったのだった
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
夜・紅魔館
「帰ったわよ!」
勢いよくエントランスのドアを開けたレミリア
「……?」
いつもなら咲夜が現れ出迎えてくれる、なのに今日は無い
(そういえば美鈴もミストも居なかった……というか紅魔館に誰の気配も無い……?)
咲夜はおろか妖精メイドやゴブリンの気配すら無い、無人の館、まるで廃館の様な静けさだった
(どういう事……?)
自らの城の変わり様
(何かあった……?)
異常事態が起きたのだと思い館の探索を始める
レミリアの私室
「どういう事なのよ!?」
全て探した
図書館から始まりフランの部屋や咲夜、美鈴の部屋、果ては廊下、そしてバーンの部屋まで
だが誰一人、何一つとして見つからなかった
(どうして?)
自らの私室のベッドに横たわり考える
(……もしかして、私があんな態度をしたからみんな見限って……?)
たった一人しか居ない状況がまた心を弱くさせる
(もう……遅かったのね……)
後悔で胸が潰れてしまう程に
(何が紅魔の女王よ……私は大事な者すら無下にして、捨てられた馬鹿な吸血鬼……)
愚挙にシーツを握り締めるが何も変わらない
「暮らしたい……」
慕ってくれた者と
「謝りたい……」
大事な友人に
「会いたい……」
そして……
「バーン……」
誰よりも愛した人に……
「……」
起き上がったレミリアは部屋から出るとある場所へ向かった
最後に残った場所へ
導かれる様に……
紅魔館・バルコニー
「……」
俯きながらやって来たのはこの紅魔館のバルコニーだった
バーンと一番よく語り合ったこの場所へ自然と足が向かったのだ
今宵は満月だった
「……」
足取りが重い
いつもの場所へは後少しなのに中々近付かない
重いのはそこが真に最後の場所だから
ここに来て誰も居なければ本当に見捨てられた事を実感してしまうから……
「……」
遂に着いた
だが現実を見たくなくて中々顔が上がらない
(やっぱり……)
見ずに戻ろう
そう思った直後だった
「待っていたぞ」
透き通る声がレミリアに向かって響く
「え……」
顔がゆっくりと上がる
「出来れば今日を望んでいたのだが……間に合って何よりだ」
声の元へ視線が向けられる
「バーン……」
一番望んだ人へ
「……」
「……」
暫し見つめ合う二人
「あの……わ、私……」
先に言葉を出したのはレミリア、何故紅魔館に誰も居ないのかなど聞きたい事はあった、だがそれよりもまず言いたい、言わなければならない事があった
「私、貴方に酷い事を言ってしまった……」
何よりもまず謝りたかった
大好きな人に間違っても言ってはならない事を言ってしまった事を
「……」
バーンは何も言わない
月を背にしているからその表情がよく見えない
「だから……」
レミリアがその言葉を出そうとした時
「すまぬな……」
バーンの言葉が重なった
「ここ最近の余の不可解な行動、大いに不安になった事であろう」
機先を制され言葉に詰まるレミリアに言葉は続く
「お前との長くあるが限られた時間、大事にすると心に決めていたが……出来ていなかった、詫びよう」
バーンは言葉にする
冷たく見えてしまっていたがそんな事はないと
「……お前も知っての通り、余は幻想郷に存在が同化している、幻想郷でしか生きられぬのだ……」
暗くて表情がよく見えないはずなのにレミリアにはわかる、とても悔しくて、そして申し訳なく思っているのだと
「旅行へは……行ってやれんのだ……許せ」
愛する者の願いが叶えられないのが堪らなく無念だから
「違うのッ!!」
レミリアが叫ぶ
「私は!旅行なんてどうでもよかったの!ただ貴方とずっと一緒に居たくて!どんなに不自由でも良い!ただ貴方の傍で!一緒に生きたかったから……!!」
自分が出してしまった言葉に謝られる
レミリアには耐え難く辛かった
悪いのは自分……なのに悪くないと言う、いや、言わせてしまった
それがどうしようもなく恥ずかしくて、情けないのだ
「謝るのは私……ごめんなさい……だから……!私から離れていかないで……!」
ハドラーは信じろと言ってくれ、信じた
それでも実際に面と向かうと堪らなく怖いのだ
この謝罪は最後に見せる情で、別れを告げられるんじゃないかって……
「お願いだから……」
もうそこに吸血鬼の誇りなど存在しなかった
ここに居るのは見た目通り、だけど少しだけ背伸びをして強がった小さな女の子
愛した者に恋い焦がれるただの少女……
「今日は……11月16日……」
バーンが歩み寄っていく
「大事な日だ……何の日かわかるか?」
近付くにつれ表情がよく見えるようになってくる、その顔は微笑んでいた
「……わからない」
考えるもレミリアには思い浮かばない
「今日はな……」
二人が見つめ合う
「余とお前が初めて出会った日だ」
満月の光がより強く輝く
「今日が……?」
「そうだ……記念日、と言うものになる」
太陽に照らされた月が二人をより鮮明に照らす
「手を出せ」
掴んだ左手を持つと懐から取り出した物を薬指にはめた
「……ぁ……」
はめられた物を見たレミリアは止まり、見つめる
ー紅く光る宝石が付いた指輪ー
「自作でな……あまり良い物ではない……ロン・ベルクの協力で上手く形には出来たとは思うが……」
バーンが最近様子がおかしかったのはこの為だった
記念日となる今日に指輪を贈ると決めたバーン、指輪自体は昔にアリスに贈った指輪があるため作る事は出来た、だがより良い物を贈りたいが為に専門外ではあるが職人であるロンに協力を求め度々出掛けていたのだ
全てはこの時の為
愛した女の為に……
「黙っていたのは悪かった、余にとっても初めての日なのでな……辛い目に合わせてしまったな」
冷たくあしらった理由を言うとレミリアの様子が突然変わった
左手を包む様に右手を被せ、胸元で抱き締めたのだ
「うー……うぅぅ……!」
震える声が溢れ、頬から水滴が落ちる
「どうした……何故泣くのだ……」
涙とは悲しい時に出る
そう認識しているバーン、生涯で一度しか泣いた事のないから何故泣くのかわからなかった
「違うの……これは悲しいからじゃなくて……嬉しいから……!」
顔を上げたレミリアが言う
これは嬉し涙だと
嬉しさが感極まって溢れ出た最良の涙なのだと
「大好きよ……バーン!」
全てが杞憂であり、最幸の時を作り出した
その顔は涙で濡れてはいたが
今までで一番綺麗な笑顔だった
「私……何も用意してない……」
「お前の笑顔を見れただけで充分だ、気にするな」
「それじゃあ私の気が済まないの!」
「……では?」
「だから……これをあげる!」
浮かんだレミリアはバーンの顔へ近付き
そっと唇を重ねた
「私のファーストキス……どう?」
頬を赤らめたレミリアが上目使いで首を傾げる
「……随分と安い贈り物だな」
「もぅ!何よ!」
互いに嬉しそうに笑う二人
「……」
レミリアはバーンの胸に倒れ込み、思う
--貴方の傍では永遠を確かに感じたから……--
「ずっと一緒よ……バーン」
「当然だ……レミリア」
--私は生きるわ、貴方と共に……--
王と王女、友と仲間、幻想郷と月、そして愛
7つの楽器が奏でる真紅の調べが月を紅く魔性の紅魔に染め上げる
誰の為?それは当然……
二人の為の
「なんでこんなに居んだよ……」
魔理沙は呆れ返っていた
「妹紅とかは許可したから良いとしてなんでお前等まで来んだよ咲夜、ウォルター、美鈴、ミスト、小悪魔よぉ……」
魔理沙の家には11人がすし詰めだったからだ
「だってバーンさんに出てけーって追い出されたんですもん!魔理沙さんの家にでも行っとけって!」
「だからってちったぁ考えろバカ!お前もだぜミスト!」
「大魔王様の御言葉は全てに優先される!」
「こんな時だけバーンのせいにしてんじゃねぇよ!どこ触ってんだコラ!ぶっ飛ばすぞ!」
とても煩い、そして狭い
「じゃあ私は久し振りに家に帰るとするかな……またな皆!」
妹紅が外へ出ていった
「おう!また明日な妹紅!」
「わかった!また明日な!」
別れの挨拶を交わし妹紅は飛んでいった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
迷いの竹林へと向かう妹紅
「あいつら上手くやってるかなぁ」
二人の友を想いながら飛ぶ
(私もいつか、誰かを好きになって……子どもが出来たりすんのかなぁ……)
前なら考えなかった
化物の自分にそんな事は望むべきではないと思っていたから
人間に戻れた今だからそんな不確かな、だけど幸せな先を夢見て願うのだ
「……ん?」
家の近くに来たその時だった
「声がする……私の家から?」
声が聞こえたのだ
まだ遠いからか内容はわからないが小さな声が自分の家から聞こえる
「……あ……」
妹紅は中へ入って、固まった
「赤ん坊……」
最後の音はもう鳴っているのだ……
避けられない運命の音は止めようもなく
ただ響いていた……
バーン、そしてレミリアの短編!ついに書けた……
11月16日の意味は前作のプロローグ投稿日、そしてその日にレミリアに会っているので記念日としました。
ウジョー様のハドラーも特別出演となっています!ありがとうございます!
バーンとレミリアの台詞成分にはKOFがそれなりに入っています、バーンはイグニスとハイデルン、レミリアは八神、「月を見るたび思い出せ」をレミリアに言わせるのを思い付いたのはファインプレーだと密かに自画自賛してますww
次は最後の一人……妹紅の短編です。
残り2話で番外編は終了の予定です、良ければ最後までお付きあいください。
次回も頑張ります!