東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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ラストファンタジア ~不死鳥のララバイ~ 前編

 

 

 

 

 

 

ーーお前のそれは絵空事に過ぎん……ーー

 

 

 

 

――そうだよ!馬鹿な少女が有り得ない理想を

          夢見ているだけなんだ!ーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーでも!!だからこそ現実にしたいんだよ!

    どんな絵空事だって笑われても!

      私がそうしたいって思ったから!!――

 

 

 

 

 

 

 

――身の程を知れ……――

 

 

 

――いけないのかよ!?そう思う事が

          いけない事なのかよ!!――

 

 

 

 

 

   ――もし……もしそれが出来るなら……――

 

 

 

 

 

 

 

 

     ――私は……私の生涯は……――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「お頭……」

 

「手に入ったか?」

 

「申し訳ありません……あの女は持っていませんでした、赤ん坊が居なかったのでおそらく一緒かと……」

 

「……チッ」

 

「どうされますか?」

 

「……時間切れだ、その何処に隠したかもわからんガキを探すのにこれ以上時間かけれるか」

 

「……あの剣士ですね?」

 

「そうだ……鬱陶しい奴だまったく……ロトだか何だが知らねぇがその子孫が追ってきてるからな、さっさと逃げとかねぇとな」

 

「了解しました、ではここから出る情報を集めてきます」

 

「任せる……ああそうだ」

 

「どうしました?」

 

「情報が集まったら遊ぶか、最後に派手に……な」

 

「フフッ……わかりました」

 

妖しい笑みの先は何が待つのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・図書館

 

「あたい!参上!」

 

「一番乗りだぜ!」

 

チルノと魔理沙が現れた

 

「ただいまー!1日だけなのになんか懐かしいね!」

 

フラン

 

「あれ?咲夜さん達は?」

 

「すぐに仕事に戻ったわこあ、咲夜とウォルターは留守中に異常がなかったか点検、美鈴とミストはいつも通り門番」

 

小悪魔とパチュリー

 

二人きりになりたいとバーンから頼まれていた皆は事は済んだと念話で知らされたミストから聞いていた

 

だが既に夜も遅かったのと今日くらいは二人きりにしようと魔理沙の家で夜を明かして帰ってきたのだ

 

「おろ?大妖精も居ないな……大妖精はどうしたんだぜチルノ?」

 

「大ちゃんは行く所があるんだって、遊ぶから早く来なさいって言っといたからその内来るわ!」

 

「おいおいまさか大妖精も逢い引きかぁ~?」

 

楽しそうに図書館で居るいつもの場所へ向かう

 

 

「待ってたわ皆……」

 

バーンと並んで椅子に座っていたレミリアが立ち上がって歩み寄ってくる

 

「あの……その……」

 

もじもじと言いづらそうに体をよじり、人差し指をツンツン合わせて上目使いで皆を見る、バーンは何も言わず本を読んでいる

 

「怒鳴ったりして悪かっ……」

 

「おー!昨日はお楽しみだったかレミリア!」

 

謝罪は被せられた

 

「羨ましい限りだぜコノヤロー!なぁ皆!」

 

「あっ!指輪つけてる!」

 

「本当……熱い夜だったのねレミィ」

 

 

「えっ……あ、いや……」

 

いつも通りの友に困惑しているレミリア

 

「私、皆に謝らないと……」

 

「おうレミリアァ?バーンのアレどうだったよ?やっぱ凄かったか?」

 

「……何よアレって?」

 

「アレったらアレだよ、言わせんな恥ずかしい!」

 

「だから何よアレって?……ハッ!?」

 

意味がわかり顔が真っ赤になるレミリア

 

「そんな事してるわけないわよ魔理沙、レミィは奥手の恥ずかしがりやなのに……今まで手も握った事無いのよ?せいぜいキス止まりね」

 

「!!?どうしてわかっ……!?」

 

当てられて焦るレミリア

 

「姪?甥?……お姉様まだー?」

 

「フラン!?何を言って……!?」

 

追撃に更に焦るレミリア

 

「?……??」

 

意味がわかっていないチルノ

 

「あーもう!!」

 

茶化しを振り払いレミリアは叫んだ

 

「昨日は悪かったわね!」

 

酷い事を言ってごめんと……

 

(ようやく言えた……)

 

言葉に出来て安心したレミリアだったが気になる者が目に入った

 

「……何をしてるの魔理沙?」

 

パチュリー、フラン、チルノは微笑んでいるが魔理沙だけ手を耳に当てていた

 

「煩いから耳栓してるんだぜ!」

 

「んなっ!?せっかく私が謝ったのに!?」

 

「えー?なんてー?」

 

「悪かった!って言ったのよ!!」

 

「何ぃ~?聞こえないんだぜ~!」

 

ニヤニヤ笑っている魔理沙

 

「……これならどう!」

 

レミリアは魔力を飛ばした

 

『悪かった!ごめん!』

 

(こいつ……直接脳内に……!?)

 

魔力に言葉を乗せて直接叩き込んだのだ

 

「……アハハハハ!」

 

「……フフッ!」

 

何故か可笑しくて二人は笑う

 

「あー面白れぇ!」

 

「そうね」

 

そう、魔理沙や皆は昨日の事など何も気にしてないのだ、わざわざ謝るとかそんな気遣いがいらない仲だから、軽く笑い飛ばせるくらいの絆がそこにはあるのだから

 

「今日は修行休みにして何かしようぜ!」

 

そんないつもの、だけどいつも以上に楽しい日になりそうな1日の始まり

 

 

「なぁ皆……」

 

 

それは響いた疲れ声によりすぐに終わりを告げた

 

「おっ!妹紅来た……!!?」

 

振り向いた魔理沙が固まった

 

「どうしたの魔理……!!?」

 

同じくパチュリーも固まった

 

「妹紅?貴方の抱えてるその物体は……?」

 

レミリアは目を白黒させて問う

 

「赤ちゃんじゃん!」

 

「可愛いー!」

 

チルノとフランは跳び跳ねた

 

 

「助けてくれ……」

 

 

死にそうな声で妹紅は言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相手は誰?白状しなさい」

 

「私の子どもじゃないって言ってるだろレミリア!」

 

 

「被疑者確保……残念だぜ妹紅……」

 

「誰が誘拐犯だ!だから言ってるだろ魔理沙!昨日家に帰ったらこの赤ん坊が中に居たんだって!」

 

 

「などと犯人は供述しており……」

 

「いい加減にしろよパチュリー?ぶん殴るぞ?」

 

 

「可愛いー!」

 

「あぁうん、確かに可愛いなフラン……でも今はそこじゃないんだ」

 

 

「妹紅がママになった!」

 

「疲れるから親分は喋らないでくれ、ただでさえ昨日は子守りで寝れなかったんだから……」

 

 

 

うんざりしている妹紅、かなり疲れている様子だった

 

 

「冗談はこれくらいにして……心当たりは?」

 

「無い……私は里によく行くから大体の人は知ってる、初めて見る赤ん坊だよこいつは……」

 

「外来人か……親も来てるのかしら?」

 

「置いていったんだからまだ居るかもな、でも、だとしても……」

 

妹紅の表情が曇る

 

「捨て子の可能性が高い……って事ね」

 

そう考えてしまう

 

赤ん坊が一人妹紅の家に居たのだ、いつから居たかはわからないし夜が明けても迎えに来ないのだ、赤ん坊の背景を知らない皆がそう考えるのは自然な事だった

 

「どうするのその子?」

 

「どうするったってなぁ……」

 

困った様に妹紅は頭を掻く

 

「うちは面倒は見ないわよ?いくら私がカリスマでも見ず知らずを養う気は更々無いから」

 

「だよなぁ」

 

更に困った様に顔をしかめる

 

「里で親を募ったらどう?」

 

「うーん……」

 

悩む妹紅にチルノとフランが叫ぶ

 

「妹紅が面倒見たらいいじゃん!」

 

「そうだよ!」

 

「無茶言うなって……赤ん坊の世話なんてした事ないし無理だ」

 

抱いている赤ん坊を覗く、可愛いらしい寝顔ですやすやと眠っている

 

「……やっぱり親探してみるよ」

 

妹紅は決めた

 

「本当に捨て子だったらどうするの?」

 

「その時は里親探すよ」

 

「わかったわ、頑張ってね」

 

レミリアが視線を逸らした、好きにすればいいが協力はしないとの事らしい、パチュリーも同様

 

「あたいも手伝ってあげる!感謝しなさいよ!大ちゃんが来たら一緒に手伝わせるからね!」

 

「あたしも手伝うからね妹紅!」

 

「私も暇だから良いぜ!」

 

チルノ、フラン、魔理沙は協力すると言ってくれた

 

「……」

 

チラリと妹紅はバーンを見た

 

バーンは全く興味が無いようで見向きすらせず本を読んでいる、つまりはそういう事だろう

 

「よし……!」

 

意気良く4人による親探しの旅

 

「行くか!」

 

今、始ま……

 

 

「……グスッ」

 

 

らなかった

 

 

赤ん坊がグズリだしたのだ

 

「まただ……」

 

疲れた顔が更に疲れる

 

「何とかしろよ妹紅」

 

「私じゃ出来ないんだよ……泣きつかれて寝るまで待つしかない、またすぐ起きてグズリだすけど……」

 

「ちゃんとあやしたか?」

 

「出来る限りは……でもダメだった」

 

「おしめは?」

 

「大丈夫……」

 

「お前が嫌なんじゃね?だってお前、男みたいだし」

 

「焼くぞ?……原因不明過ぎて私にはお手上げだよ……」

 

困った顔で見合う妹紅と魔理沙

 

「お腹空いてんじゃない?」

 

チルノが言った

 

 

「それだ!!」

 

 

思い出したように妹紅は叫んだ

 

「それしか考えられない!そうかお腹空いてたのかお前!」

 

スッキリした顔の妹紅

 

「で……赤ん坊って何食べるんだ?ケーキとか食べるかな?」

 

「んなわけねぇだろ殺す気かアンポンタン、赤ん坊が食べるっつーか飲むもんは1つだぜ」

 

魔理沙は言った

 

「母乳だぜ」

 

ドヤ顔で

 

「……そーか、母乳か……よし!」

 

納得した妹紅は赤ん坊を魔理沙に差し出した

 

「飲ませてやってくれ」

 

「このボケー!」

 

妹紅は殴られた

 

「私が出るか!」

 

「そ、そうなのか……悪い、小さいもんな……そりゃ出るわけないか」

 

「こいつぶっ飛ばしていいか?」

 

チルノとフランに問う魔理沙を尻目に妹紅は殴られた頭を擦りながらパチュリーの方へ向かう

 

「パチュリー!」

 

「何?」

 

妹紅は服の上からでもわかる大きな双丘を見ながら言った

 

「お前なら出るだろ?飲ませてやってくれ」

 

 

ガンッ!

 

 

妹紅は本の角で殴られた

 

「今のが本気で良かったわね、冗談だったら貴方死んでるわよ?」

 

「!?……!!?」

 

訳がわからない天然妹紅は混乱していた

 

「……人里で探してこい」

 

ずっと黙っていたバーンが口を挟んだ

 

「人里ならば乳母も居よう……早く行って飲ませてやれ、煩くてかなわん」

 

「そうか!ありがとうバーン!行ってくる!」

 

答えを得た妹紅が笑顔を見せる

 

「女の子の仕組みもまた今度教えてやらないとな……」

 

「行こっ!チルノ!」

 

「うんっ!行ってくるわ!」

 

4人は人間の里へと紅魔館を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷いの竹林

 

「やっぱり居ない……かぁ……」

 

その場所に訪れた大妖精がガックリと肩を落とした

 

(そんなすぐには来ないよね……)

 

大妖精は親子に会いに来ていた

 

また会って、一緒に謝って、いっぱいお話をする約束を果たす為に……

 

「元気にしてるかな……」

 

女性が居た場所に座り足をパタパタさせながら何となく時間を過ごす

 

今すぐ来る確証なんて無い

 

だけどもしかしたら来るかも……

 

そう思ったから一人で待つのだ、親子の置かれている状況を深く考えず、ただ純粋に……

 

 

そんな事を考えながら少し経った時だった

 

 

「おっと……誰か居たのか」

 

突然、竹の間から人間が現れた

 

「見た事無い人……外来人ですか?」

 

大妖精は現れた者に普通に聞いた

 

昔なら問答無用で怯えていただろうが今は強くなったのもあり落ち着いている

 

それに些かの警戒心も抱かなかったのは現れた者、青い服に剣を背負い、青いフードの上にゴーグルを付けている青年の雰囲気が余りに優しさと強さに溢れ、悲壮なのを感じ取ったからだった

 

そして、誰かに似た親近感を何故か感じたから……

 

「外来人……ああ、ここは異世界の者をそう呼ぶのか」

 

青年も怯えも見せず、友好的に話しかけてくれた大妖精に一瞬出した警戒を解き、乾いた微笑みを向けた

 

「迷ったんですか?よろしかったら帰る方法を教えますけど……?」

 

「いや、違うんだ……僕は望んでここに来たんだよ、頼み事をされてね」

 

大妖精が座ってくださいとジェスチャーをするとありがとうと言って青年は腰を下ろす

 

「最近、ここで妙な奴等を見なかったかい?」

 

「妙な……?」

 

大妖精は一瞬あの親子が思い浮かんだが大妖精の感覚では妙ではなかったし奴等と言ってるので二人より多いのだろうと思う

 

「見てないです……どんな人達なんですか?」

 

「盗賊さ、「カンダタ盗賊団」って名の無法者の集団なんだ」

 

「カンダタ盗賊団……」

 

そう聞いて今一度思い出してみるがやはり見覚えも聞き覚えも無い

 

「そいつらは……僕の世界のある村を襲って逃走中でね、それを重く見た王様が僕に退治してと依頼してきたんだ、それで僕は行方を追ってるわけなんだ、足取りを追ってると逃げた村人を追ってここに来たらしくてね、だから僕はここに居る」

 

「逃げた村人……」

 

大妖精はまたあの親子を思い浮かべる

 

「その村人も見なかったかい?赤ん坊を連れた女性らしいんだけど」

 

大妖精が言うべきか迷っていると青年は一人言った

 

「安否が気になるからね、まず盗賊団よりその親子の安全を優先したいんだ」

 

それに全くの他人ってわけでもないからね、と呟く青年を大妖精はじっと見つめる

 

(やっぱりこの人……)

 

とても優しい人だ

 

大妖精はそう感じた

 

聞いた限りだとこの人は盗賊団の退治だけを頼まれている、だけどそれは二の次で依頼もされていない親子を優先すると言った

 

損得で動かない事の証明、他を思いやれる優しさを持っているのだと

 

「実は……」

 

大妖精は話す事にした

 

信用に足る人物だと思ったから話した、危険な目に会っているあの親子を気にかけてくれている人に会った事を教えて少しでも楽にしてあげたかったから

 

 

 

 

「……そうか、君はここでまた会う約束をしたんだね」

 

「はい……」

 

「優しいだね君は……」

 

話終えると青年は手荷物から軽食を取り出し大妖精に渡す

 

「ありがとうございます……」

 

渡された軽食をかじりながら青年を見る

 

「あの……何か悩みがあるんですか?」

 

「ん?どうしてそう思うんだい?」

 

意外な表情で青年は大妖精を見た

 

「疲れてる顔をしてるので……」

 

「……参ったな、顔に出さない様にしてるつもりなのにな……」

 

青年は苦笑して上を見上げる

 

「世界の脅威を救った者の末路……ってわかるかい?」

 

「わかんないです……」

 

より一層、その顔を空虚に変えて青年は言う

 

「人間じゃなくなるのさ」

 

そう言った青年の雰囲気はこの上なく孤独で、辛そうに見えた

 

(わかった……どうして私がこの人を知ってるみたいに感じたのか)

 

それに大妖精は答えを得た

 

(この人……妹紅さんに似てるんだ)

 

人間に戻る前の妹紅

 

自分を化物扱いして心を痛めていた頃の妹紅とよく似ていたのだ

 

「あ、悪かったね、こんな話面白くないよね」

 

ハッとした青年が顔を下ろし大妖精に微笑む

 

「僕もここで待つよ、いつまで居られるかわからないけどここに居る間は僕が代わりに待ってる事にしよう」

 

「えっ……いいんですか?」

 

「いいも何も……さっき言ったろ?親子の安全が優先だって、何の情報もなく闇雲に探すよりは会える可能性が有るここで待つのが正解だと思うからね」

 

「わぁ!ありがとうございます!」

 

「気にしないでいいよ、それより君は用事とかないのかい?ずっとここで待つわけにはいかないんだろ?」

 

「あ!そうでした!チルノちゃんと遊ぶ約束があるんでした!」

 

立ち上がった大妖精は汚れを落として礼をする

 

「食べ物ありがとうございました!また来ますね!えーと……」

 

「ロラン……僕の名前はロランだよ、君は?」

 

「私は大妖精です!皆からは大ちゃんって呼ばれてます!」

 

「大妖精……大ちゃんか……わかった、またね大ちゃん」

 

「はい!またですロランさん!」

 

ロランと名乗った青年の見送りを受けて大妖精は紅魔館へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里

 

「おー!よく飲んでるな!よっぽどお腹が空いてたみたいだぜ!」

 

母乳を飲む赤ん坊を見ながら魔理沙は笑った

 

「かぁいいよー!はうー!お持ち帰りー!」

 

「決めた!おっきくなったらこの子はあたいの子分にする!」

 

フランとチルノも可愛らしい赤ん坊に御満悦

 

「良かった……ひとまずは安心だな」

 

一時だがグズリが止むなと一息つく妹紅

 

「無事に飲ませれたみたいだな」

 

「助かったよ慧音、お前のお陰だ」

 

赤ん坊が無事に母乳を飲めたのは慧音にあった

 

里に来た妹紅達だったが乳母がどこに居るかわからない、かといって一軒一軒しらみ潰すわけにもいかないから里の守護神である慧音に協力を求めたのだ

 

その際に妹紅が「慧音なら出るだろ、飲ませてくれ」と言って頭突きを食らったのは内緒である

 

「それよりどうするんだあの赤ん坊は?親を探すにしても里親を探すにしても連れては行けないだろ?」

 

「そうだよなぁ……」

 

「よければ私が預かろうか?」

 

「良いのか慧音?」

 

「少なくともお前が見るよりは安心出来ると断言出来るが?」

 

「……だよな」

 

そんな話をしていると乳母の居る家の入口から少女が隠れながら妹紅を見ていた

 

「も、妹紅さん!」

 

「ん?誰だ?」

 

呼ばれて少女を見る妹紅と慧音

 

「寺子屋に来ている生徒の子だ、どうしたんだ?……ああ、妹紅か」

 

答えを聞く前に察した慧音は妹紅へ行けと促す

 

「お前の客だ、行ってやってくれ妹紅」

 

「?……わかった」

 

わからぬまま妹紅は少女の元へ向かう

 

「どうした?」

 

「あ……あのっ!」

 

少女は勇気を振り絞って叫ぶ

 

「握手してください!!」

 

下を向いて手を差し出した

 

「いいよ」

 

妹紅が手を握ると顔を上げた少女が嬉しそうに笑顔を見せる

 

「やった!ありがとうございました!」

 

礼をして走って行った

 

「変わった子だな……バーンならわかるけど私に握手なんてさ」

 

戻りながら慧音に呟く

 

「あの子はお前に憧れているんだ」

 

慧音は言う

 

「私に?」

 

「そうだ、あの子だけじゃない、里には大人も含め何人もがお前を一番だと言っている……結構な人気者なんだぞお前は?」

 

「本当かよ……なんか恥ずかしいな」

 

照れくさそうに頬を掻く

 

自分の思うようにしてきた、妹紅にとってはただそれだけなのだ

 

だがその生き様が皆を惹き付けるのだ

 

優しさを伴う翼に、勇気を貰うから

 

「これでお前に男でも出来たら言うことないんだが……」

 

「そこら辺はまぁ……うん、わかんない」

 

笑い合う二人

 

「おい妹紅!」

 

そこに掛けられるのは魔理沙の焦り声と次いで響く赤ん坊の泣き声

 

「飲み終えたら泣きだした!何とかしてくれ!」

 

「って言われてもな……」

 

困った顔で赤ん坊を見る

 

「慣れない人ばかりで怖いんだと思います、多分……本当の母親に会いたいのでしょう」

 

乳母は言うがそれこそ今すぐには無理な事

 

「とにかく来いって!」

 

魔理沙に手招きされて妹紅は赤ん坊の傍に立つ

 

ガシッ……

 

「うん……?」

 

赤ん坊は妹紅を確認した瞬間に服を掴んだのだ

 

「……」

 

抱き抱えてみると赤ん坊の泣きはピタリと止んでなんと笑いだした

 

「ハッハッハ!お前が良いってよ妹紅!」

 

「イイナイイナー!」

 

「やるわね妹紅!」

 

3人は微笑ましく笑う

 

「コラッ!指をくわえるな!食べ物じゃないぞ!」

 

妹紅の指をくわえる赤ん坊は幸せそうに笑っていた

 

「皆に慣れるまではお前が適任だな」

 

慧音も言う

 

「参ったな……」

 

うんざりする事を言うが

 

「……わかったよ」

 

満更でもない顔をしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、親を探すのは赤ん坊が落ち着いてからと決めた4人、妹紅は赤ん坊の食事の兼ね合いで里に残り、3人は紅魔館へ戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・図書館

 

「やっと帰ってきた!もー!遅いよチルノちゃん!」

 

大妖精が3人を出迎える

 

「あ!ごめん大ちゃん、遊ぶ約束すっかり忘れてた!」

 

テヘッと笑うチルノに頬を膨らます大妖精

 

「今日は遅いからもう帰ろ?」

 

「そうね!じゃ、あたい達は帰るわね!」

 

二人は帰る事になった

 

「大ちゃん今日ね!妹紅がスッゴイの連れてきたのよ!」

 

「なんだろう……大魔王とか?」

 

「違うわよ!そんなのよりもっとスゴイ奴よ!」

 

「大魔王より凄いの!?なんだろ……教えてよチルノちゃん!」

 

「明日になったらわかるわ!」

 

そんな話をしながら出ていった

 

 

「ただいまお姉様ー!」

 

「おかえりフラン、どうだった?」

 

「スッゴく可愛かったよ!」

 

「そう、良かったわね」

 

姉妹は笑う

 

「ちょっと腹へったから咲夜になんか作って貰いに行ってくるぜ」

 

魔理沙も出ていった

 

「そうそう、大妖精が素敵な外来人に会ったらしいわ」

 

パチュリーがフランに言う

 

「とても優しくて妹紅みたいな人だったらしいわ、それと格好良かったって……魔理沙にも……まぁいいかしら、男はバーンしか興味無い奴だし」

 

皮肉な事に偶然は重なる

 

 

絡んでさえいれば未然に防げたかもしれない

 

 

しかし、絡まなかった

 

 

偶然か必然か……いや、偶然と言う名の必然だったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜・人間の里

 

「じゃあな慧音!また来る!」

 

「ああ、早く帰って休ませてやれ」

 

慧音と別れた妹紅は里の自警団に挨拶をして家に帰るため外へ出た

 

 

「一人出ていった、何か持ってるが……暗くてよく見えねぇな」

 

 

その妹紅を離れた場所で見ていた者達が居た

 

 

「ほっとけ、見た感じ貧乏人だ、大した物持ってねぇよ、それより……いつやるんですか?」

 

頭へ問う

 

「まだだ、やるのは完全に寝静まってからだ……丑三つ時だな」

 

団員は了解すると静かにその時を待つ

 

 

 

 

 

 

 

 

これから奏でる曲の為に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の畑・風見幽香の家

 

「……!」

 

「どうしたんだい幽香?」

 

酒盛りをしていた幽香と萃香だったが突然幽香が何かに反応を示した

 

「……花が呼んでる、太陽の畑の外の花伝いで私を呼んでるわ」

 

「何の用で?」

 

「とにかく来いって……行ってくるわ」

 

「待ちな幽香、私も行くよ」

 

二人は花に導かれるまま太陽の畑からかなり離れた岩場にやって来た

 

「これは……」

 

それを目にした幽香に嫌悪しかなかった

 

「酷いね……」

 

萃香も見慣れているそれから感じる悪意にイラつきを見せる

 

「見ちまったもんはしょうがない、陽が昇ったら里に聞きに行ってやるかね……いいだろ?」

 

「好きにしなさい」

 

萃香はそれを抱き抱えると二人は家に戻って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

妹紅はふと目を覚ました

 

何かがあった訳ではないが目が覚めた

 

「……ぁ」

 

いや、何かはあった

 

だから起こさない様に声は小さかった

 

「……」

 

妹紅はそっと撫でて微笑む

 

「心配するなって……」

 

横になって寝ていたのにいつの間にか母を求める様に妹紅に抱き付いていた赤ん坊に向かって

 

「絶対見つけてやるからさ……」

 

静かにまた眠りにつく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

時刻は午前2時、入口を見張る自警団の男達の一人がが気付いた

 

「見慣れない顔だな……外来人か?どうした?迷ったのか?」

 

現れた一人の男に近付いていく

 

「そうなんです……気付いたらここに居て……良かった人が居て……」

 

疲れた雰囲気を出しながら男は苦笑する

 

「災難だったな、今日は泊まっていけ、陽が昇ったら帰れるようにしてくれる場所へ案内してやる」

 

「ああ……ありがとうございます」

 

自警団の男に転んだ風に見せて自らを掴ませる

 

 

「その必要はないぜ!」

 

 

ドスッ!

 

自警団の男の体が背後から貫かれた

 

「う……が……ぁ……」

 

心臓を貫かれた自警団の男は呻きながらその場に倒れる

 

「おい!何して……ぐうっ!?」

 

異常を察した同僚の男だったが音もなく忍び寄っていた者に切られ……

 

「チョロいもんだぜ!」

 

二人の自警団は絶命した

 

「さぁ行けてめぇら!カンダタ盗賊団の恐ろしさを思い知らせてやれ!!」

 

合図に隠れていた数十人の団員が里へ入っていく

 

 

 

もう止まらない

 

 

 

「お邪魔しまーす!」

 

「なんだお前等……ぎゃああっ!?」

 

 

 

「美人じゃねぇか!オラこっち来い!可愛がってやるからよ!」

 

「イヤァァァ!離して!誰か!誰かぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「ヒャハハ!オラ!ちったぁ抵抗してみろや!」

 

「んー!んんーーーーっ!!?」

 

 

 

「おっ!意外に金持ってやがる!貰ったぜ!」

 

「やめて!それは娘の為の……!」

 

「るせぇババァ!くたばってな!」

 

「お母さんから離れて!」

 

「んだぁガキィ?ナイフなんざ持って一丁前に勇者気取りか?あぁ!?」

 

「何やってるの!?逃げなさい!!」

 

「いーや逃がさねぇ、俺に上等くれたんだ、相手してやるよ」

 

「うぅ……」

 

「ハハハッ!震えてやがる!来いよお嬢ちゃん!」

 

「わ、私だって妹紅さんみたいに……」

 

 

 

 

「なんだお前達は!?やめろ!!」

 

「ッ……!?痛ぇな……なんだぁこの女?」

 

「何をしているのかわかってるのか!?」

 

「見てわかんねぇか?略奪に決まってんだろ」

 

「貴様等……!」

 

「睨むのはかまわねぇけど後ろに気が付いてるか?」

 

「なにッ!?……誰も居な……がっ!?」

 

「嘘だよマヌケ!お前ちょっと面倒そうだから退場してな!」

 

「くっ……!?」

 

 

 

悲劇の幕は上がってしまったのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰か……助けて……

 

 

 

             痛い……痛いよ……

 

 

 

  死にたくないよぉ……

 

 

 

 

 

  「妹紅…さん……妹……紅…………さ……ん…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

哀歌(エレジー)は鳴り響く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう短編じゃねぇなこれ……

多くなったのと今後の展開的に分ける事にしました。

8割は出来てるのですぐに更新出来ると思います。

次回も頑張ります!
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