これから先も多くの苦難辛苦が待ち受けるだろう
非情の刃で体が傷付き、避けれぬ悲しみに心を痛める事もあろう
それは避けられぬ運命、生きていれば当然有ってしかるものだ
時に冷たい雨に身も心も激しく打たれ、想いごと流されてしまいそうになる事もある筈だ
だが、それでも世界は廻る、都合など知らずにただ無情に……
しかし、それが生きる事でもある
喜びや楽しみも同時に有るから誰しもが生を懸命に歩くのだから……
いつの間にか幻想郷を暗い雲が覆っていた
ポッ……ポツッ……ポツッ……
暗雲が降らせる冷たい雨が勢いを増していく
「カンダタァァ!!」
雨を蒸発させて吼えるのは炎翼を広げた一人の不死鳥
「私はお前が許せないんだぁぁぁ!!」
無縁塚に不死鳥の咆哮が響き渡る
「さっさと黙らせろ」
カンダタの命に囲っていた数十の団員が妹紅、そして6人に襲いかかる
「退けぇぇ!!」
一人を殴り飛ばし妹紅はカンダタ目掛け進もうとするが夥しい数の団員に道を阻まれる
「邪魔すんじゃ……」
妹紅の道を開くべく魔理沙が八卦炉を構えたがビームは撃たれる事は無かった
「チッ……マホカンタか」
数名の団員が魔理沙、そしてパチュリーに対して光の壁を向けていたのだ
「お前等、頂点だろ?お前等の事は報告で少しは知っている、大人しくしてな魔女の二天」
嫌らしい笑みでカンダタは笑う
「ならあたいが一気に……!!」
チルノが冷気で一掃しようと力を高める
「待ちなさい、皆を巻き込んでしまうわ」
だがパチュリーに止められる
妹紅が単身突撃し、回りに仲間が居る状態でチルノの冷気を解放すれば敵味方両方に被害が出る
強過ぎる故の弊害が出てしまっていたのだ
「……じゃあどうすんのよ?」
ブスッとしたチルノが問うとフランが答えた
「簡単だよチルノ!ねっ?お姉様!」
視線がレミリアに向かう
「その通り……」
そう言ったレミリアはチルノの背後に迫る団員を睨みつけると飛び出した
「各個撃破だ、範囲攻撃を避け単体攻撃で敵を殲滅する、私とフランと紫が呪文使いを優先して潰す、魔理沙、パチェ、レティは機を見計らって参戦しろ」
団員ごと地面に埋め込んだ手を引き、指示を出す
「あたいは?」
「チルノは私達が呪文使いを潰すまでの間3人の護衛だ、重要な役目だ……出来るな?」
「もちろん!任せなさい!」
胸を張ったチルノがすかさず指を突きだしレティの背後の団員を氷付けにする
「では行くぞフラン、足を引っ張るなよ紫?」
「了解お姉様!」
「精一杯頑張りましょう」
二人の前に立ったレミリアは迫る団員達を見て、油断も慢心も一切無い冷酷な笑みを向けた
「さぁ……掃除の時間だ」
「アアアアアッ!!」
遮る敵を薙ぎ倒しながら妹紅は進む
「……チッ」
面白くない様にカンダタは舌を打つ
(止まらねぇ……仲間の方も次々倒されてやがる、なんて奴等だ……化物かこいつら……)
僅か8人ごときに数十人居るこちらが押されている、それが面白くなく、脅威に感じるのだ、特に部下を薙ぎ倒しながら単身向かってくる妹紅に
「バコタ、ラゴス」
カンダタは傍の二人の副長に命令を下す
「あの粋がった女と向こうの指揮してる王女……だったか?殺してこい」
「……人質にしないのですか?」
「一人や二人くらい構わねぇ、あの二人をぶっ殺して奴等の勢いを消す、お前等がやりやすいように潜ませてるアレでも何でも使ってな……さっさと行ってこい」
「わかりました」
バコタとラゴスと呼ばれる二人の副長は小さく笑うと妹紅とレミリアへ向かっていった
「命をなんだと思ってる……!ふざけるなぁぁぁ!!」
殴り、蹴り、焼き
一人、また一人と倒していく妹紅
「お前等みたいなのが居るから平和が来ないんだよッ!」
まるで慟哭
雨と同じく炎が蒸発させているから見えないが、妹紅は確かに泣いていた
「……!!」
突然、鋭いナイフの投合に妹紅の足が止まる
「今のを避けるとは……流石頂点、お強い」
団員達の間を抜け、バコタが姿を現し妹紅と対峙すると団員達が空間を空ける
「退け……!」
「そうはいきません、貴方は死ね」
「……やってみろ」
怯まない妹紅にバコタは予想通りと笑みを見せ、指を鳴らした
すると周囲の陰から大人数の団員達が飛び上がる様に姿を現した
「伏兵です、カンダタ盗賊団の総数は200を越える……戦いは数ですよ皇帝不死鳥?」
笑うバコタは伏兵に合図を飛ばす、合図を受けた伏兵達は妹紅には向かわず後方の7人へ向かっていった
「皆……!?」
妹紅に動揺が見えた、数に劣る戦力に加えこの乱戦ではまさかも有り得ると思ったからだ
「おっと……行かせませんよ?貴方の相手は私です」
バコタに牽制され動揺のまま対決を強制させられる妹紅だったが
ドンッ!
それは弾け飛んだ伏兵達と
「祭りの場所はここかい……間に合った様だねぇ」
現れた鬼と大妖怪によって動揺は消えた
「押しかけ助っ人、伊吹萃香参上!ってね!手伝うよ妹紅……いや、私にも手伝わせておくれ」
「私はこいつらが気に入らないから来ただけだから勘違いするんじゃないわよ」
「萃香……幽香……!」
思わぬ加勢に頬が緩む妹紅
「なんだテメェら!殺されてーのか!?」
現れた二人に団員達がいきり立つ
「待ていっ!!」
それだけではなかった
「弱肉強食の獣達でも殺す事を楽しみはしない、悪の道に堕ちた者だけがそれをするのだ……しかし、貴様らの邪悪な心を天は許しはしない!大いなる天の怒り……人、それを……「
一瞬の閃光が走ると二人の前には楼観剣を構えた一人の剣士が立っていた
「誰だテメェ!?」
「貴様等に名乗る名は無い!!」
幻想郷唯一の剣士・妖夢がそこには居た
更に……
「ロビン!」
「ギッ!」
にとりを肩に乗せたロビンが薙ぎ払う
「誰も逃がさないわよ?」
「覚悟しろよお前等ァ!!」
えらく機嫌の悪い輝夜と正邪
「いざ……南無三!」
命蓮寺の皆の無念と怒りを一身に引き受け、白蓮は修羅となる
「霊夢様!気をつけ……」
「……なによ?」
「あ、何でもないです」
当代の巫女と既に血祭りを始めていた鬼巫女
「早苗、いくら弱かろうと抜かるなよ?また人質など洒落にならん」
「わかってます神奈子様!」
守矢の神と現人神
「皆……」
来てくれた事が嬉しくて妹紅は馳せ参じた仲間を見る
この場に居ない親しい者も居るがそれにはちゃんと理由がある、連絡を受けた各場所は連携を取り無縁塚を除く幻想郷全域を広く警戒していた
各施設は諏訪子や龍神など最低一人腕利きを残し代表を妹紅の援護に向かわせていたのだ
勇儀は全域の警備隊長を引き受け、霖之助とアリス、紫の式は自警団が全滅し不安にあるだろう人間の里の守護に当たっていた
「来てくれたのか……」
そう、それだけ幻想郷に住まう者達にとっても今回の事件は許しがたい事だったのだ
それが筆頭に立つ皇帝不死鳥の篝火を目印に集ったのだ
「ありがとう……」
「礼はいいさ……あんたが一番苦しくて辛いのはわかってる、だけどね、痛みを分かち合う事は出来るんだ……仲間だからね」
「ああ……」
「あんたが悲しいなら私も悲しい、あんたが怒れば私も怒る……だから……あんたには笑っていて欲しいんだよ、いつまでも……ね」
「……わかってる」
萃香と言葉を交わした妹紅はバコタを睨む
「まだやる気か?」
「多少増えただけでえらく強気ですね?人質が増えるか死体が増えるかの違いだけですが?」
「……勘違いしてるみたいだがお前等なんてこの中の一人にも……まぁいいか、退け」
「嫌だと言ったら?」
「火葬する」
これ以上の会話は無意味と互いに知り、互いに構え、それを合図に無縁塚での弔いの戦いは始まった
「……」
盗賊団の長、カンダタの顔色は優れない
(なんなんだこいつらは……)
広がる光景を信じれないのだ
数では10倍は優に居るのにどこにも優位な所が見当たらない
次々倒されていっているのだ
(俺は……まさかとんでもない奴等を敵に……?)
不安が頭を過るが顔に出さずあくまで冷静に言う
「お前等も行ってこい」
幹部達にも命令を下したカンダタは余裕の消えた表情で思案する
(もしもの時は……)
鋭い目付きで戦況の見極めに入った
ドッ!
「次」
ドッ!
「次ぃ」
ドン!
「次ィ!」
歩きながら襲ってくる団員を一撃の元に倒していくのは霧の鬼、萃香
「ッ……このッ!?」
余りに簡単に行われるその行為に団員達の足が止まる
「はぁ……なんだいお前等、口ばっかりかい」
溜め息と共に顔を下げた萃香が上げた瞬間、その目付きが本気に変わる
ズドオッ!
一足のもとに掴んだ団員を叩きつける
「……お前等は」
手を引き、まだ生きているのを確認しながらゆっくりと体を起こす
「幻想郷に手を出した、信念なんぞ無く、ただ欲望のままに……そして……あいつの心を抉り……愉快に笑うクズの集まり」
その鬼気たる目で射殺すがごとき睨む
「そんな奴等が得意面でのうのうと生きていくなんて許せると思うかい?私は許せない……この霧の名が許さない」
まだ息の有る、放っておけば死ぬ程度の傷を与えた団員達を背に
慈悲すら感じさせず萃香は告げた
「お前等は
「……」
切る
「……」
切る
「……」
ただ無言で妖夢は切り捨てる
(私は……)
妹紅と同じく救えなかった無念を胸に剣を振るう
「悪を断つ剣……!」
剣を額に当て、祈る様に目を閉じる
「覚悟しろ!外道がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ヒャハー!」
団員の甲高い声が響きナイフが突き刺さる
「どうしたどうしたぁ?てんで話になんねぇぜこの女ァ!」
楽しそうに滅多刺しにする
「……フンッ」
血に塗れた幽香はニヤリと笑う
「ッ……このッ!さっさとくたばりやがれぇ!」
馬鹿にされて怒りのまま更に攻撃を加える
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「くそォォなぜだァァア……なぜくたばらねェェ~~!」
団員は巨大な花に巻き付かれていた
「何をしやがった!?」
他にも何人も同じ状態になっている
「これは邪念花と言われる魔界の花、捕まえた者に幻覚を見せて養分にしてしまう恐ろしい花よ……」
ゆらりと近付いて行く無傷の幽香が言う
「邪念花は餌が死ぬまで離さない、だけど今回は私が特別にお願いをしてあるの……ゆっくり……ゆっくりと養分にする様にってね、自然回復が間に合うくらいの速度だから寿命か外から殺されない限り覚めない……永遠に私の幻覚と戦い続けるといいわ」
弱い者虐め
幽香もしてきた事だ
だがそれでも殺す事はしなかった
それを平気で行い、必要以上に痛めつけられていた母親の死体を見て盗賊団に激しい嫌悪を覚えたからあえて直接捻り潰さずに更に残酷な事を与えるのだ
「お前達は死にすら値しない」
「お前等ァァ!」
激しい怒りのままに正邪は殴る
「お前等みたいな!弱者を虐げる奴が居るから!いつまでもこんな事が繰り返されるんだ!」
弱者の理想郷を作ろうとした正邪だからこそ感情を剥き出して戦うのだ
正邪の理想にとってこの盗賊団はまさに許せない敵だから
「ラアアアアアッ!!」
「あんた達も不運ねぇ……」
団員を掴み上げながら霊夢は言う
「よりによって私の大事な大事な賽銭の元に手を出すなんて……ねぇ?」
メキメキと音を立て掴む団員の顎を粉砕する
「テメェ……この腋巫女がぁ……!?」
仲間をやられて怒り心頭の団員達が構える
「この数に勝てると思ってんのかオラァ!!」
威勢良い恫喝だったが霊夢はまるで意に介さず祓い棒を肩に構えた
「当たり前でしょ……たった数百匹のアリ程度が恐竜に勝てると思う?」
恐竜……いや、鬼が祓い棒を振るうと霊力の衝撃波が数人を戦闘不能に陥れる
「霊夢様……」
同じく祓い棒を前に構える靈夢が並ぶ
「賽銭って、建前……ですよね?」
「当たり前じゃない、冗談でも言ってなきゃやってらんないのよこんな奴等の相手なんて」
「ああ、よかったです……冗談じゃなかったら龍神様と一緒に霊夢様暗殺計画を練るところでした」
「あ"あ"ん!?」
「いやいや怒らないでくださいよ、霊夢様と同じ冗談ですって」
「……私より倒したのが少なかったら修行メニュー3倍ね」
「えぇ!?そんな理不尽なぁ……」
「何をしてやがるこいつ……!?」
団員達が囲う輝夜に対してたじろいでいる、周囲には倒された団員達
「いいからさっさと来なさいよ、死にたい奴から……」
静かに燃える怒りを輝夜は見せる
「なんなんだお前は……!?」
「……あいつが」
輝夜はゆっくりと近付いていく
「あいつがあんなに怒ってる……気に入らないのよ!お前達が!!」
団員達の目の前で輝夜は冷笑で微笑む
「戦いは数……?バカじゃないの……?」
持つ能力を高まらせながら
「冥土の土産に教えといてあげるわ」
告げた
「そういう小賢しい事と無関係の所に……強者は存在するのよ……!!」
仲間の怒りは凄まじく、誰が何人掛かろうと相手にすらなっていなかった
「諦めるのです」
白蓮は告げる
「そう、諦めろ」
神奈子も告げる
「お前達は踏み、触れてしまっているのだ、不死鳥の尾を……頂の逆鱗に……祈れ、お前達が生きている間に出来るのはそれだけだ」
「いえ、悪党共に祈る言葉などありませんよ八坂様」
「その通りですよ神奈子様!」
「行きますよ皆さん!」
二人、そして早苗とレティが命運を告げる
「カンダタ盗賊団を舐めんじゃねぇ!テメェ等ぶっ殺してあのクソ生意気な女もぶっ殺してやるよ!」
団員達が凄むが3人はまったく気にするどころかむしろ哀れむ目で団員達を見る
「まだ我等にやられている方がマシだと言っているのだがな……」
神の気を立ち上らせて神奈子は言う
「まぁよい、頂点の恐ろしさを知る前に引導を渡してやろう、せめてもの慈悲だ……ありがたく思うがよい」
遠目に見える、幻想郷の頂に居る者達を一瞥し、御柱を構えた
「コノヤローがぁ!」
幹部の一人がフランを切り裂いた
「バカめ、それは本物だ」
もう一人居るフランが告げる
「うらぁ!」
そのフランの心臓を突く
「それも本物だ」
また違うフランが告げる
「……クソガァ!」
次はそのフランを切り刻む
「残念……それも本物だ」
幹部の回りには4人のフランが囲っていた
「はぁ……はぁ……ドチクショウが……!?」
息を切らして幹部はフラン達を睨む
「どうした?もう疲れたのか?もっと頑張れよ」
本体だろうフランが嫌味たらしく言う
幹部が一人倒せばすぐにまた一人分裂体を作り殺させる、むろん幹部が倒せるレベルの脆弱な体でほぼ無抵抗に……
「大好きな殺しなんだ、もっと出来るだろう?さぁ殺せ……あとたったうん万回くらいだ、体が悲鳴をあげようが心が折れようが止めるなよ?」
口調が変わったフランは冷たく告げる、倒されたらすぐに分裂体を補充して弄びながら……
「その時は壊しちゃうからね……♪」
紅黒の怒りは禁忌の狂気、触れし者は狂気舞踏への招待客
踊り続ける狂宴の運命、止めれば地獄の破壊眼
「クソガキがぁ!」
幹部の一人がチルノに切りかかる
「……えい!」
指を突き出すと幹部の腕がナイフごと凍りつき、次いで足が凍りつく
「な……んだとぉ!?」
一瞬で身動きが封じられ驚愕する幹部、火の魔法で溶かそうとするが纏わりつく氷は溶けない
「ちょっと待ってなさい」
そう言ったチルノは幹部を助けようとやってくる団員達と近くに仲間が居ない事を確認し、手をかざした
「氷符「アルティメットブリザード」!!」
緩やかな冷気が団員達を抜けていくともうその場からピクリとも動く事はなかった
「待たせたわね」
部下をやられて聞くに耐えない罵声を喚き散らしている幹部へ向く
「謝るなら許してやるわよ?」
「上からもの言ってんじゃねぇぞクソガキィ!誰が謝るかクソが!ふざけた事抜かしてんじゃねぇぞコラァ!」
キンッ……
「知ってる」
幹部を氷付けにしたチルノが手を下ろす
「あたいも許す気なんてないから」
絶氷を操るは頂の最たる氷の妖精
「妹紅……」
不死鳥の友の為、幻想郷の為に最も強いと言われる己が力を振るう
「そろそろやるかパチュリー」
「そうね魔理沙」
魔理沙は八卦炉をかざし、パチュリーは魔方陣を描く
「恋符「マスタースパーク」!!」
「日符「ロイヤルフレア」!!」
呪文使いを一掃したその場所を幹部もろとも二天の魔法が突き抜ける
「チッ……巻き込まない様にってのがストレス溜まるな」
「わかるわ、本気で撃ちたいところよね……」
味方を巻き込まない様に撃つのは思った以上に煩わしい、本来ならばこの程度の質と量など……
「まぁしゃあねぇわな、私等はあくまで脇役だからよ」
「ええ、主役を立てるのが私達の役目だからね」
怒りを無理矢理二人は苦笑に変える
「さぁ来いよ……死にたい奴からかかってきな!」
「来ないならこっちから行くけどね」
力と知識、二人を象徴する魔法の本質
大魔導士と賢者、天に座す魔法使いの頂
魔女の二天は力を貸す、強くて弱い友を支える為に……
「うげあっ!?」
ラゴスが地面を転がる
「ぐっ!?うぎぃ!?」
腹を踏みつけられ苦悶の表情で呻く
「なんだ、お前の様なクズでも一丁前に痛がるんだな……耳障りな声を聞かせるんじゃない」
レミリアは足に力を込める
「うぎあああああっ!!?」
「喧しいぞ、喉を引き裂いてやろうか?」
ラゴスを蹴り飛ばしゆっくりと歩いていく
そう、ラゴスはレミリアに全く敵っていなかったのだ
「ガハッ……ハァー……ハァー……」
ボロボロのラゴスが腹を押さえながら上体を起こす
「た、頼む……これ以上されたら死んじまう、俺の敗けだ……見逃してくれ……」
ラゴスは命を乞う
どうやっても勝てない実力差、油断も隙も無いレミリアに敗北を認め命だけは助けてもらおうとしたのだ
「ハハハ……やはりお前等は阿呆だな、あまり笑わせないでくれるか?」
だが、笑ったレミリアの歩みは止まらない
「このままでは死ぬから見逃してくれ?ククッ……なるほど、お前等らしい言い分だ……人で無しのお前等らしい……な」
目の前で立ったレミリアは見下す笑みで言い放った
「足りない脳を最大限稼働してよ~く考えろ、お前等は今まで聞いた命乞いに耳を貸したことがあるのか?」
王女の怒りは因果の怒り
応報と言う名の報いを罪人に刻む永遠に幼い紅き月の裁断
その処断からは逃げる事は決して叶わない
力の化身と言える暴王の月が放つ紅き力に運命を握られているのだから……
「や……やべぇ!?逃げろ!!?」
余りの強さ、余りの容赦の無さに恐怖と怯えに支配された一部の団員達が戦線を離れる
「逃がしませんよ~!」
逃げる団員達に立ち塞がるのは文
「誰一人逃がすなと天魔様に命を受けましたので……まぁ命が無くても逃がすつもりはありませんけどね」
風のマントをたなびかせ、文は速やかに幻想郷の敵を射つ
「とことんクズだねお前等……仲間がやられてんのに見捨てて逃げるなんてね……いや、クズだからこそか……」
違う場所ではにとりがロビンと共に構えていた
「どんな手を使っても絶対に逃がすなロビン」
「リョウカイマスター!」
絆で繋がる二人にこの場所は突破不可能の領域と化す
「……」
またある場所では紫が静かに佇んでいる
「退けッ!!」
手に装着されたクローを乱暴に振り回す
「……」
だがそれは紫の閉じた扇子にピタリと止められる
「さっさと往ね」
瞬く間も無く団員達は消えた
行き先は少なくとも生きていられる場所ではないだろう
煮えたぎる熔岩の海へ繋がる谷底に落とされたかもしれない、もしくは異形犇めくモンスターハウスに放り込まれたのか、あるいは確実に命を絶つ為に生命の生きられない宇宙に送ったか……
流刑の地、それは紫のみぞ知る境界の幻想裁判……
「お前等がぁー!!」
最後の場所ではいつの間にか来ていた青娥が吼えていた
「里を滅茶苦茶にしたから!!」
芳香と共に団員達を攻撃する
「妹紅が泣いちゃったじゃない!!」
大好きな人が苦しむ姿を人知れず見ていた青娥は激怒していた
だから来た、報われなくたっていい、そうしてやりたいと愛が体を動かしたのだから
「くたばれオラァー!!」
「おらぁー!!」
今、無縁塚で一番強いのは彼女かもしれない
誰もこの場から逃げる事は叶わない、盗賊団にとっての四凶が待ち構え、更には鴉天狗と白狼天狗が後方を囲い地空を見張っているのだから
「終わりだお前等は……」
そして最後はこの戦いの篝火である皇帝不死鳥
「ガハッ……!?」
バコタが血を吐き膝をつく
当然、バコタも妹紅に全く敵っていなかった
「お前等じゃ束になってもここに居る奴等の誰にも勝てないんだよ」
圧倒的な力の差だった
弱者しか狙わなかった盗賊団が敵う相手達ではなかったのだ
団員達は知るよしもないが誤射を避けて手加減している上でこれなのだ、本気を出せば200程度なら強い者で1分、弱い者でも10分もあればわけなく殲滅出来る力量を各々が携えているのだから
その証明の様にもう団員達はもう数える程しか残っていなかった
「お前は他の奴に任せる……通して貰うぞ」
妹紅が進もうと足を出す、だがその歩みは僅か2歩で止まってしまった
「通しません……」
バコタが立ち塞がるのだ
「……なんでそこまでするんだ?他の奴等は逃げた奴さえいるのに……」
ボロボロでもなお向かってくるバコタに妹紅は問う
「昔、私はあの人に救われているからです……捨てられた子どもだった私を、あの人はここまで育ててくれた」
「恩返し……だって言いたいのか!?」
妹紅の声が強くなる
「その優しさを!誰かの為の優しさを!なんで他の人間に与えてやれなかったんだ!」
「何を今更……確かにそうなれたかもしれませんが、そうはならなかった……もしもの話は無意味ですよ」
後悔は無いとバコタは言う
「……退け」
「……退きません」
バコタは妹紅に切りかかった
「バカヤローが!!」
裏拳で殴られたバコタは地を跳ねながら飛んでいく
「ぐっ……ぁ……」
触れた拍子に服に火が移り倒れて動けないバコタに少しずつ火が広がっていく
「ッ……!カンダタァァァァ!!」
妹紅はカンダタへ目を向ける
「なっ……!?」
しかし、そこにカンダタはもう居なかった
「まさか……逃げたのか!?」
周囲を見回しても居ない、里から奪った戦利品もそのままだった
カンダタは逃げたのだ、状況が悪いと見るや戦う部下達を囮に一人だけ逃げたのだ
「お前は!!」
妹紅は燃えていくバコタに叫ぶ
「あいつが逃げる為に利用されたんだぞ!あんな奴の為に!!」
仲間にする仕打ちではない、それに妹紅は腹が煮えくり返る程に激怒した
「……私はただの右腕に過ぎません、私が死んでも頭さえ生きていればまたカンダタ盗賊団は復活します」
炎が全身を包みながらもバコタは満足そうに笑った
「カンダタ盗賊団……は……不……滅…………」
全身を焼かれたバコタは灰となった
「……違う」
灰を見つめる妹紅は呟く
「絶対に違う!!」
認める訳にはいかなかった
こんなのは仲間でもなんでも無い、カンダタがしているのはただの生贄
自分の為ならどんなに慕ってくれようが平気で捨てる最もドス黒い邪悪
「カンダタァァァァァ!!!」
不死鳥は後を追う
許せない悪に向かって……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
包囲網の外の森の中
「なんとか上手く抜け出せたか……」
カンダタはそこに居た
「ケッ、あんな化物共相手に出来るかよ」
カンダタは割りと早い段階で逃げる用意をしていた
明らかに勝ち目の無い相手だと知るや包囲網に穴を空ける為に同じく逃げようとする団員達を上手く突っ込ませ喧騒の隙に包囲網を突破していたのだ
「さぁ……これからどうするにしても取り合えず離れないとな」
小走りで森の中を進んでいく
「!?」
その足はすぐに止まった
「誰だ!!」
得物である斧を構えて気配のする方向へ叫ぶ
「そう警戒せずともよい、余はお前と少し話がしたいだけなのだからな……」
木陰から出てきたのは立派な角を生やした魔族の男だった
「誰だって聞いてんだ!答えろ!」
「これはすまぬ、いくら小者と言えど名乗らぬのはさすがに失礼であったな」
微塵の恐れも無く男は言った
「余はバーン、かつて大魔王だった者だ」
不死鳥の上げる篝火を更に天高く燃え上がらせるのは同じく不尽の火から生まれる王の鳥
友と同じく誇りと称した
幻想郷の奏でた鎮魂歌、そして不死鳥の奏でる子守唄
最後にそっと鳴り添えるのは尽き果てぬ友愛の
次が最後だと言ったな……アレは嘘だ……
すいません、長くなったのと展開的に分けました、詐欺ばかりでごめんなさい。
そして明けましておめでとうございます。
今年の抱負はそれなりに頑張る、です。
前回あとがきにて重大発表なんて言いましたが大した事じゃないんです、ただネタが思い浮かんだ……ってだけです、要は続編の構成が出来てしまった訳です。
でも、夢現幻想で終わりなんて言っといてそれもなんだかなーと思ったので聞いてみようかぁと……
もし続編を見たい、なんて思ってくれたら感想でもなんでも良いので伝えてくだされば嬉しいです。
もちろんこれ以上はいいと思えば当然それも有りですのでお気になさらずに。
では次のあとがきにて結果を発表したいと思います。
次回で本当に終わりですが最後まで頑張ります!