前日、神殿・地下牢
「起きなさい神奈子」
「……何だ」
ドスッ
「うっ!?あっ……」
「元気そうで何よりです……」
ドスッ!ドスッ!
「……ッ……くぅ……」
「ハハハ……」
ガッ
「黄金の腕輪を知っていますか?」
「……」
ドスッ
「ぐぅ……」
「知っていますか?」
「……知らない」
バキィ
「本当ですか?」
「……知ら……ない……」
ベキッ
「本当に?」
「……」
「ふむ……」
神奈子を放ると男は牢から出る
(知らない様ですね、あれは神の作った物ではないのでしょうか?)
歩き続けながら考える
(洗脳出来れば聞くのも早いのですが神には効きませんしね……それに洗脳してしまうと楽しみが無くなってしまいます、やはりあの反抗的な目が良い……)
含み笑いをしながら歩く足は不意に止まる
(……あの娘は?)
可能性に気付く
(……試してみますか、もしかすれば知っているかもしれませんし一応ね)
男は早苗の居る牢へ向けて歩きだした
「……何をしているのです?」
早苗の居る牢に来た男は先に居た先客に問う
「帝王様!?」
そこには魔物が2体居た
「ッ……ぅ……」
そして呻く早苗
「……嬲っていたのですね?私に断り無く……」
「も、申し訳ありま……」
ザンッ
魔物達は一刀のもとに両断される
「……?」
剣を構えたまま男は止まった
(……何故私は殺した?万を越えるとは言え戦力である兵を?)
自分の行動に疑問を持っていたから
(まさか……いや……そんな筈は……)
暫し考える男、早苗はその様子を不思議に見ている
「……失礼、気になさらないでください」
そう言うと男は早苗へ近付く
「貴方は黄金の腕輪を知っていますか?」
「し、知らない……」
「……」
男の手が早苗の額に当てられる
「何を……」
「静かになさい……」
手が光り、怪しげな魔力が早苗に送り込まれる
「うっ!?うあぁ……」
呻く早苗、だが男は止めない
「……ふむ」
男が呟く
(効きが悪いですね……未熟ですが神の力を持っているからですか……ならば……)
異なる魔力が送られる
「うぅ……」
意識が朦朧としている早苗は抵抗出来ない
「質問に答えなさい」
「はい……」
男が送ったのは自白の魔術、洗脳は失敗だったが自白は成功したのだ
「黄金の腕輪を知っていますか?」
「知りません」
(本当に知らない様ですね、奴隷との関係を見るに知っているなら教えられている筈ですから)
「無駄足でしたか……」
少し残念そうに呟くと早苗に話し掛ける
「術はすぐに解けます、安心してください、死にはしませんよ……一応約束ですからね」
「はい……」
早苗の返事を聞くと牢の出口へ向かう
(腕輪は諦めるしかないようですね……ならば戦力を更に集めなければ……)
「また強い者を探さねばなりませんね……」
「……居ますよ」
男に声が掛けられた
「……今なんと言いました?」
男は問う、早苗に
「居ますと言いました、強い者が居る場所を知っています」
「……それは何処に?」
「……」
一瞬黙った早苗は帝王に告げた
「幻想郷……」
「幻想郷?貴方の居た世界ですか?」
「そうです……」
「強い者とは?」
「幻想郷には7人の実力者が居ます……今は1人亡くなったので6人ですが全員神奈子様達より強い力を持っています」
「ほぉ……それはそれは……」
男は興味を持った、何故なら
(あの神より強いと言わせるとは……確か八雲紫も幻想郷と言っていましたね……八雲紫より上なのでしょうか?)
自分より強い神奈子や紫よりも強いと考えたからだ
「良い情報をありがとうございます、考えてみましょう」
男は礼を言うと早苗の牢から去っていった
「御機嫌如何ですか八雲紫?」
最後に来たのは紫の牢
「……良いわけがないでしょう」
項垂れたまま紫は答えた、神奈子等の様に嬲られているわけではないので外傷こそ無いが能力の強制使用により衰弱していた
「抵抗を止めれば良いのですよ」
「黙れ日陰者……貴様に協力するくらいなら死ぬ方が余程マシ……」
衰弱しても紫の心は折れていなかった、弱りながらも強い意思で持ちこたえていた
「……幻想郷」
ポツリと男は呟いた
「……!!」
その言葉に反応してしまう、避けたかった事だから
「私は今から幻想郷に向かいます……奴隷に場所を聞いてね」
「何を……する気?」
「使えそうなら私の軍に加えるつもりです」
「!!」
紫が顔を上げる
「民に手を出さないでッ!!」
同時に叫んだ、愛する幻想郷を守りたかったから
「おや、貴方がそこまで乱すとは……幻想郷とはそんなに大事な所なのですか」
紫の様子から察した男は見下す様に微笑む
「くっ……やめて……!!」
頼む紫だが男は愉悦の笑みを崩さない
「憎むなら自分を恨みなさい……貴方が私に出会わなければこうはならなかったのですから……」
「ッ!?」
顔が歪む、原因を作ってしまった事実が心に刺さる
「フフフ……では参りましょうか」
踵を返す男、牢を出ようとした直後、紫から声が掛けられた
「精々気を付ける事ね……」
振り向く男に紫は意味深に笑った
「……ふん」
鼻を鳴らすと男は去って行った
「……」
残された紫はまた項垂れる
(気付いてしまった……だけど……!!)
紫は絶望の中に希望を見ていた
(対峙すれば!上手くあの男が対峙さえすれば!)
可能性を考えたから
(スキマを使われようと勝てる筈……!)
それは男が幻想郷に行く事による頂点との対峙、支配しようとすれば間違いなく頂点達が立ち塞がるからだ
(出来ればレミリア、パチュリー、妹紅が理想……あの3人なら奴の小細工にも惑わされない筈……勝率で言えばチルノだけど甘言に騙される可能性がある、フランも甘い所があるし大妖精は素直過ぎるから丸め込まれる可能性が否定出来ない……)
「……くっ!」
震えた
(私がやらねばならないのに……!!)
怒りが体を震わせる
紫が今考えていたのは他に頼る考えだったからだ、本来なら原因を作った自分がしなければならない事、それが出来ず頼る考えをしてしまう自分に腹が立ったのだ
(今の私を見たらまた貴方は怒るでしょうね……)
もう居ない仲間を想い唇を噛む
(もしダメなら神奈子の策に賭けるしか無い……何をしようとしているの神奈子?)
紫は神奈子から賭けを聞いていた、それが希望にもなったからまだ持ちこたえれていたのだ
(内容を話さないのが気になるけど……余程危ない賭けなのかしら……)
いくら考えても答えが出ない紫はそこで考えるのを止める
「……ごめんなさい」
小さく呟かれた謝罪
「ごめんなさいバーン……」
それはもう居ない仲間にだった
その後、約束を利用して神奈子から幻想郷の場所を聞き出した男は配下と共に幻想郷に現れたのだ
白玉楼
「……!」
庭師は気付いた
(誰か来ましたね)
門に近付く者が居ることを
(知らない気配……賊ですか)
剣を構え門の前で待ち構える
「おや……これはまた可愛らしいお嬢さんが現れましたね」
来たのは男だった、宛無くさまよった男は白玉楼への道を見つけ入ってきたのだ
「……何の用でしょう?」
庭師は警戒を解かない
「迷ってしまったので少し道を聞こうかと思いまして」
「……フードくらい取るのが礼儀でしょう」
「ああ失礼、ですが取る必要もありませんので」
「……そうですか」
庭師は一瞬体の力を抜いた
「ならお帰りください」
シュン
「!?」
男は驚く
(何!?)
そこに庭師は居なかったから
キィン
金属のぶつかる音が響いた
「少しは心得が有るようですね」
庭師が言った、剣で切りつけていたのだ
「ッ!?……ぬぅ……えぇ……まぁ多少は……」
自らの剣で受けた男は答える、だがフード越しからもわかる焦りと戸惑いがあった
「……ハァッ!」
押し合っていた二人は男の払いで距離を置く
(強い!)
男がまず感じたのはそれだった
(反応するので精一杯でした……それにまだ本気では無い……)
それは庭師の力量を知る事と同義
「まだ帰りませんか?」
庭師は構えを鋭く取る
(ならばスキマで……!?)
剣技では分が悪いと察した男はスキマを使おうとするが
(隙が無い!?)
庭師は周囲全てに気を張り巡らせていた
(これでは使っても切られるだけ……魔法を使って四方から攻めても効果は薄いでしょう……)
庭師の戦人としてのレベルの高さを思い知る
「!!」
男は身構えた
「ハッ!」
庭師が攻撃を仕掛けて来たから
「くっ!?」
剣撃を防ぐ男の様子は優れない
(押される!?)
庭師の剣撃を捌くのがやっとだったから
(不味い……)
流れるような鋭い剣閃は男に焦燥を与えるには十分だった
「嗜む程度ですね」
攻防の最中、庭師は言った
「それでは剣士とは呼べません」
ヒュ
更に速さを増した一閃が男に繰り出された
「ツアッ!?」
捌き切れなかった一閃を男は紙一重で避ける
パラッ
フードの切れ端が宙を舞う
「!?」
切れ端が目の前を過ぎても男は庭師から目を離せない
(剣士としてのレベルが違い過ぎる!?)
汗が出る、フードに隠されて見えないが明らかに男は危機感を持っていた
「次は切ります」
庭師の集中力が増す
(まだ上が!?)
まだ本気ですらなかった事実に汗は冷や汗に変わり、男の気を変えさせた
「……成敗」
帰らないと知った庭師は周囲に風圧を残す程の神速の一刀を放つ
ピタッ
剣は止まった
「……」
庭師は沈黙する
「逃げましたか……」
剣は振り切られていた、男には防ぐ術が無い一刀を、だがその一刀は男を切る事無く空を切っていた
(方法は不明……能力か術なのか……)
納刀する庭師は謎多き賊について思考を巡らす
(境界を操った様にも見えた、だとすればスキマ妖怪?紫様の他にスキマ妖怪が居るのでしょうか?)
これまで紫の他にスキマを操る妖怪は見た事が無い
類似した能力なのかもしれないがスキマを知る彼女はまずそれが浮かんだのだ
(……追い払ったのは失敗だったかもしれません)
彼女は少し後悔していた
いくら推測しても男が居ないと話にならないからだ
(探し……)
行方を追う事を考えていた思考は呼ぶ声に遮られた
「妖夢どこ~!お腹減った~!ご飯~!」
声は白玉楼から聞こえた
「はーい!今行きます幽々子様ー!」
足早に中へ駆ける少女
少女の名は魂魄妖夢
幻想郷唯一にして最高の剣士にして庭師
幻想郷には剣を扱う者は他にも居るが剣士を名乗るのは妖夢唯一人
誰も名乗らないのは皆が妖夢に剣士を職業ではなく存在で見ているから、妖夢は剣士であり剣士は妖夢である
そう認識される程強いから誰も剣士を名乗らないのだ、剣を扱える程度では妖夢にではなく幻想郷から笑われるからだ
紅魔館メンバーの中ではフランと一番仲が良い
美鈴は最大の好敵手、共に教わった間柄も加え物理に重きを置く二人は親しいながらも競いあう仲になっている
半分死んでいる様な半霊故か100年経っても見た目は変わらないし死なない、魂がそうさせているのかもしれない、破る日まで死ねないと……
(また来る様ならその時ですね)
主に呼ばれた妖夢は深入りはしなかった
白玉楼から離れた森の中
ブゥン
空間の裂ける音が響く
「……」
男が出てくる、重い足取りで
(スキマがなければやられていましたね)
木に寄り掛かり自分が敗北していた事実を噛み締める
(あれが実力者の一人……なるほど八雲紫並みの強さ……)
同時に喜んだ、早速頂点に出会えた事に
(是非とも支配したい、あの手の手合いは人質が有効そうですが勝利して支配するのも面白そうです)
浮かぶ男
(私の剣士とどちらが上でしょうね……)
そんな事を思いながらまた幻想郷の探索を再開した
太陽の畑
彼女はそこに居た
「~♪」
鼻唄混じりに花を手入れする麗しき緑髪の女性
「今日は良い天気ね、皆で踊りましょうか」
彼女が指をタクトに見立て指揮を始める
すると辺り一面に咲き乱れる花は一斉に動き出した
「フフ……」
彼女は微笑む、四季のフラワーマスターの名の如く花に巧みな指示を与える
「あらあら……」
花の一輪が動きを乱した、指示を与えると言っても強制させている訳ではない、花に動く力を与えているだけで動くのは花の意思に委ねている
乱す花も居るが皆楽しそうに踊るのは互いに好きだからだ
「楽しかった?」
踊りが終わると彼女は皆に聞いた
「そう、良かった」
その声は彼女にしか聞こえない、楽しんだ様だ
「じゃあまた明日ね」
花達に別れを告げると彼女は家路を歩く
(後はあの子の手入れだけ)
彼女の表情が和らぐ、それが一番の楽しみであり幸せなんだと言うように
「……!」
家の前で彼女は止まった
(誰か来てる……)
家の回りにある足跡、そして家の中から感じる気配、
来訪者が来ている事を察した
(リグルかしら?)
別に家に鍵を掛けている訳ではないが今まで家に誰かが居たなどは数える程しかない、そのほとんどが魔理紗だったから彼女は今は居ない魔理紗ではなく、よく自分を気に掛けてくれるリグルだと考えたのだ
だがそのリグルでさえ無断で入る事はない
「……」
おそらくリグルだとは思うがそれはないとも考える彼女は一応警戒しながら家の中へ入った
「お邪魔させてもらっています」
そこに居たのは男だった
「……強盗かしら?」
彼女は初めて見る男にも動じない、何者も恐れない豪胆な心は見るからに怪しい男に怯みもしなかった
「強盗ではありません、少し聞きたい事がありまして……無礼を承知で待たせて頂きました」
男の用件と謝罪に彼女はほくそ笑んだ
「パパとママに礼儀は教わらなかった様ね……フードも取れないのかしら坊や?」
「……申し訳ありませんが生来より醜い顔でして……逆に失礼に当たると思い取りませんでした、気に障ったなら外しますが……」
彼女の指摘に男は嘘をつく、醜い顔と偽りそれを晒すと言う、見せろと言われればそこまでだがそれは無いとわかっていた
「……まぁいいわ」
彼女に自分の素顔など興味は無いとわかったからだ、それを僅かな会話と雰囲気から推測したのだ
まだ先がどうなるかわからないから姿は隠しているが仮に間違っていて素顔を晒す事になっても始末すればいいと考えた故の言葉でもあった
「用件はわかった……」
彼女は無愛想に告げる
「消えなさい……殺されない内に……」
退去の命令だった
「……」
男は黙る
(……そこまでは読めませんでしたね)
さしもの男にも用件を済ます前のお帰りは想像していなかった
「何をしているの?早く消えなさい」
辛辣な物言いだが昔の彼女を知る者ならそれが如何に優しい言葉なのかを知っている、昔なら問答無用で捻り潰していたに違いないから
「そう邪険にしないでください……」
そう言いながら家の中をゆるりと歩き彼女の気を引けそうな物を探す
「良い住まいですね……」
これは時間稼ぎ、住まいで言えば男はこの住まいより遥かに大きく立派な神殿を持っている、とにかく何かを見つける為の時間が欲しかった
「半殺しにされてから叩き出されたいのかしら?」
言葉には明確な意思があった、脅しの類いではないとの
彼女からすれば男は盗人となんら変わり無い、用件を聞く義理も無いし勝手に家に侵入した無礼者を無傷で帰さなければならない義務も無い
どちらでも構わないのだ、大人しく帰るならそれでよし、帰らないなら宣言通り半殺しにして叩き出す
男にもう猶予は無かった
(……あれは?)
彼女が動き出そうとする刹那、ある物を見つけた男が先に動き出した
「……」
出ていくのだと思った彼女は様子を見守る
「あれは何ですか?」
見つけたそれに近付いていく
「早く消えなさい……」
付き合うつもりは無い、だがまだ男の意図するそれはわからない
「大事にされている様ですね」
「!?」
大事に、それで気付いた、男の向かう先を
「近付くな……!」
咄嗟で声が小さい、男はよく聞き取れなかったから気にせず近付いた
「綺麗な花ですね……」
それの前に立つ、男が見つけたのは鉢に植えられた一輪の花だった
非常に大事にされているのが一目でわかるほどに綺麗な花
「それに触るなァ!!」
彼女は声高く叫んだ、自分を抑えるのに必死だった
「何を怒っているのです?褒めているのに可笑しな方だ……」
男は怒りを不思議に感じる、それもその筈、男にはその花がどれだけ大事かなど知らないから
スッ……
手は動いた
「この花の名はなんと……」
ドゴォ!!
巨大な破壊音が家で起きた
「グアッ!?」
家の外で倒れているのは男、左肩を押さえて悶えている
「潰してあげるわ……」
壊れた壁から現れる彼女、強大な妖力と怒りを男にぶつけている
「くっ!?何故!?」
痛みに耐える男は問う、いきなり攻撃されたからだ
「お前が私の絆に触れたからよ……」
「絆……?」
男はますますわからなくなる、花は花、誰かの贈り物かもしれないが殺意まで見せる理由が絆と言うのがわからない
「知る知らないは関係無い……要はお前があの花に触れたのがいけないのよ……」
理由を語る彼女の怒気は男を怯ませるには十分だった
あの花は彼女にとって自分と同じ価値を持つ花、限られた者にしか触れるのを許していない花なのだ、その花に関してはリグルすら触れる事を許していない程
それに触れたのだ、それは彼女の逆鱗に触れるも同じ
予め言っておくだとかそんな事は関係無い、知ろうが知るまいが触る事自体が禁忌なのだ
(狂人か!?)
男はそれしか思わない、男からすればたかが花を触った程度で殺しに来るのだ、精神に異常を来していると考えるのが自然かもしれない
「ま、待ちなさ……」
ドズッ
制止の声は傘に止められた
「かっ……はっ!?」
傘の先端で腹を突かれ数歩下がる
「今更手遅れよ」
残酷に告げた彼女は男を滅多打ちにする
「くはっ!?ぐぅ!?」
耐える男、防御するので精一杯
(な、なんだこの強さは!?これで手加減している!?)
伝わる力が本気では無いと知らさせる
事実、彼女は本気で攻撃していない、それは虐めるのが好きなのもあるがただ一息に殺すのではなく十分に怒りを思い知らせてから殺すつもりだったからだ
ガシッ
彼女の手が男の胸ぐらを掴む、同時に持っていた傘を捨てる
「ハアアッ!!」
渾身の拳を放った
「ッ!?」
ドンッ!
防御ごと斜めに殴り飛ばされた男は地面にクレーターを作っていた
「カハッ!?」
血が口から飛び出る
(こ、このままでは……)
ヨロヨロと立ち上がり彼女を確認する
「!?」
男が見たのは再び傘を構え妖力を集中させる彼女の姿
「じゃあね」
別れの言葉と同時にそれは直ぐ様撃たれた
男を軽く飲み込む極大のレーザー、威力も消し去るのに申し分無い力を込めている
「……!!」
身構える男はレーザーに飲み込まれ、幻想郷に黄泉への架け橋を作り出した
「……」
照射を終えた彼女は傘を下ろす
「跡形も無くなったわね」
誰も居なくなった場所を見つめ始末出来た事を認識した
「ふー……」
終わった後、溜め息が出た
「あの子の手入れの後は壁の修理ね……」
仕方ないとは言え無駄な労力を使わねばならない事に若干気を落とした
「幽香さーん!!」
家に入ろうとした彼女は名を呼ばれて振り向いた
「さっきのどうしたん……壁が!?大丈夫ですか幽香さん!?」
「リグルじゃない、丁度良い所に来たわね、後で壁を直すから手伝ってね」
「それは全然構いませんけど大丈夫なんですか幽香さん?」
「大丈夫じゃないんじゃないかしら?だって死んじゃったもの」
「えっ!?えぇ!?」
状況の掴めないリグルは彼女と共に家の中へ入っていった
彼女は名を風見幽香と言う
太陽の畑で暮らす妖怪
かつてあったサディストは大分鳴りを潜め人間友好度も普通に変わる程丸くなっていた
しかし絆の花に関しては別、それに触れた者は知らない者は最悪さっきの様に殺され、知る者も虐められる事になる
絆の花は幻想郷禁忌の1つに数えられる程認知され恐れられていた
いつか地獄で再会する仲間を殺す為、腕を磨き続けている
神殿
ブゥン
「っく!?……はっ!?」
スキマから出た男は床に崩れる
「どうされました帝王様……まだ情報収集のと……帝王様!!」
後から出てきた二人が男の様子に気付き駆け寄る
「大丈夫です……この程度なら時間を置けば治癒します」
「一体どうされたのですか!?」
「……幻想郷の頂点に会ってきました」
「何ですと!!」
「とても強かったですよ……白髪の剣士に緑髪の妖怪……あの娘の言った通りでした」
「剣士……?緑髪……ですか?」
男の言葉に執事は首を捻る
「どうしました?」
「……少しお待ちください」
執事は懐から本を取り出すと読み始める
「……残念ですが帝王様、その二人は頂点ではないようです」
「……何?」
男は信じない、そうであると確信していたから
「私が聞いた話とこの本によれば剣士は魂魄妖夢、緑髪は風見幽香と思われます」
「その二人が頂点の内の二人なのでしょう?」
「いえ……強者の部類ではありますが頂点ではありません、あの八雲紫と同格程度の者達です」
「!!」
知らされた真実に男は黙った、あれだけ強かった二人が頂点では無くその下だと言われたからだ
(言われてみれば八雲紫の本当の力を私は知らない……わかるのはまともに戦えば勝ち目が全く無かったと言う事だけ……その八雲紫と同格?冗談ですかまったく……)
想定外の幻想郷の戦力に男はフッと笑う
「そして同格なのがあと数名程います」
「……それより頂点達は上なのですか……」
「……そうなります」
「どんな世界ですか幻想郷とは……馬鹿げ過ぎです」
男は呆れた
自分を殺せる者が数名、更にその上に6人
戦力が揃い過ぎている、それも明らかに強過ぎる力があの小さい世界にだ
(あれだけの戦力を持つのはおかしい……頂点が複数人居るのもおかしい、普通頂点は1人……過去に何かあったのでしょうか……)
それが意図的な事だと考えるが思考はすぐに切り替わった
「どうされますか帝王様?幻想郷は諦めますか?」
「……」
「帝王様?」
返事が無い、と言うより聞いてはいるが考えに集中している様だ
「……面白い」
少し間を置いて男は呟きと同時に笑みを浮かべた
「あの戦力は是非とも欲しい……やりますよ」
決めた、分が悪い戦いだがするだけの価値を幻想郷に見いだしたからだ
(あの力を手中に出来れば私は何者にも負ける事はありません……全てを支配出来る……この世界だけではなく!全ての世界を!)
手に入れた先を思い微笑んだ男は傷を癒す為に自らの部屋へ戻っていった
幻想郷は帝王に認知され、標的となった
暗い意思を秘めて……
帝王、幻想郷の洗礼を受ける!
今回の話は妖夢登場と言う訳で前作6話のタイトルと掛けました、みょんとゆうかりんに圧倒される帝王、幻想郷のレベルは高い!
それで報告なのですが20日以降更新がかなり遅れるかもしれません、仕事が過去最高に忙しいのです……9月いっぱいぐらいまで……
ですので楽しみにしてくれている方には申し訳ありませんが気長にお待ちください、出来るだけ早く書きます!
次回も頑張ります!