幻想郷には仙人が存在する
たゆまぬ修練を経た先に超人的な力を得た人間を仙人と呼ぶ
基本的に人間の味方であるが中には邪仙と呼ばれる者も居る
霍青娥
彼女もまた仙人でありながら邪仙へと堕ちた者……
幻想郷の高台
「ん~……」
髪を弄りながら木に座って持たれ掛かる青娥
「何かないかしらねぇ……」
青娥は暇でしょうがなかった
特にする事が無いからだ
悪戯は大概はやったし飽きた、今はやりたい事も願いも無い
強くなる事に興味も無い彼女は最低限だけの修行しかしないから時間が余るのだ
「せーが!アレ!アレなんだー?」
傍らで立っていたゾンビ、芳香が指を差す
「うん?」
芳香に促された青娥は差す先を見る
「皇帝不死鳥じゃない……それと最強と大いなる妖精に妹……」
見えたのは遠くで飛んでいる4人だった
「楽しそうねぇ……それでアレがどうしたの?」
「違うって!アレ!アレだよー!」
芳香が差していたのは4人ではなく一緒に飛ぶ物だった
「何アレ?金色の……何アレ?」
4人の存在が強過ぎてダイが見えてなかった青娥は改めてダイを見るがわからない
「せーがにもわかんないのかー」
「うるさいわねぇ……」
芳香の指摘にムッとした青娥はダイを探ってみる
(……?何も感じない?遠いから?)
ダイから何も感じれない
(本当に何アレ?気になるわね……)
わからないから気になる
(あの方向は紅魔館に帰ってるのね……)
気になりだしたらもう止められない
(あの4人……いえ、帰れば6人からは難しいかしら?)
障害は脅威だが止めるには至らない
(……やってみましょうか!難易度が高い程燃えるしね!それにやっぱり気になるし!)
好奇心には敵わないのだ、彼女なら尚更
「芳香!準備なさい!行くわよ!」
「?……おおー!!」
突然の出発宣言に芳香はわからないが取り敢えず意気を高めて賛同した
幻想郷・僻地
誰も居ないその場所
何も無いその場所
「何か面白い事ないかね~」
誰も居ないのに何故か声が聞こえる
「最近宴会も無いからねぇ……」
謎の声は一人愚痴る
「おんや?」
何かを見つけた
(何かを引き摺った跡?這った跡かい?)
地面に痕跡を見つけたのだ
「……」
跡を追っていく
目に入ってしまったから気になって止められない
「……!」
岩陰の前で止まる
(……誰か居るね)
気配を感じ、見られる事は無いがゆっくりと進む
「……あいつかい」
誰かは居た、少し離れた場所で倒れていた
(怪我してるね……妖怪の喧嘩かね?)
近付きながらそう感じた、倒れる者は傷付き、衣服も焦げて色が変わり、火傷が全身にあった
「……ん?」
近付くにつれて少しずつ姿は鮮明になっていく
何故か見覚えがあった
(あいつまさか……)
そうかもしれないと感じつつ倒れる者の前で止まる
「……椛」
それは知り合いだった
倒れていたのは椛
辛うじて一命を取り留めていた彼女、羽は千切れて飛べず、全身傷だらけのまま這って動いていたのだ
(この怪我……誰かに攻撃されたみたいだね……この方向は妖怪の山……ここまでなっても知らせようと動いていたのかい……)
怪我の様子を見ながら椛の意識を確認する
(生きちゃいるね)
生きてはいるが気を失っていた、だが誰が見てもこのままでは命が危ないのは明白だった
「……ぅ……」
椛が意識を取り戻した
「大丈夫かい?」
大丈夫ではないのはわかっている、意識を保たせる為に聞いた
「ど……」
「ん?」
掠れる声で話す椛に耳を傾ける
「どなたかわかりませんが……伝えて貰えないでしょうか……」
「あんた目と耳が……」
椛は自分がわからない様だった、知っている筈なのに
朦朧とした意識は自分がそこに見えない事もわからない、ダメージが耳にも来て知る筈の自分の声が誰かだとも認識出来ていない
「妖怪の山に……幻想郷に……危機が迫っているかもしれないと……」
それは助けを求める言葉ではなかった
(こんなになってまで……己より皆の事を案じるのかい)
忠誠心……とは少し違うかもしれない
確かに椛は天魔の命で守矢を捜索していた
男は関係あるかはわからない、だが危険
その危険な者が幻想郷に現れた今、彼女が優先したのは幻想郷の安全だった
自分が死んでも幻想郷に影響は少ない、しかし天魔や幻想郷に住む重要な者が死んでしまえば多大な影響を与える
それどころか更なる被害の可能性もある、だから伝えようとした
自分が死んでも天魔や他の者が生きるならその方が良いと思っていたから
その自己犠牲と言える考えの根底にはその昔に幻想郷を救ったある者の影響によるものだった
自分の命を賭してまで友を守ったその生き様に感銘を受けていたのだ、自分もそんな風に生きたいと思ったから他を案じたのだ
「……心配しなさんな」
そう答えると椛の額が妖しく光る
「疲れたろ?今は寝ときなさいな」
術を掛けられた椛はすぐに眠りにつく
スゥゥゥ
辺りが白みがかってくる
「どれ……」
辺りは霧に覆われていた
椛の体が浮かび上がる、同時に霧が1ヶ所に集まっていく
「先に永遠亭だねぇ」
霧が晴れた時、彼女はそこに見えた、大きな角を生やした幼女、色違いの瓢を2つ持つ妖怪、自分より大きい椛を事も無げに抱き抱えていた
「チッ……胸糞悪い……」
永遠亭へ運ぶ最中に幼女は舌打ちとイラつきを見せて飛んでいった
紅魔館
「お土産買ってきたぞ~おーい咲夜~」
「あら美味しそうなケーキね、さっそく頂きましょうか」
パチュリーと共に居た咲夜はケーキを受け取ると切り分ける為にナイフを取り出す
「出来ました」
次の瞬間にはケーキは人数分に分けられていた
「……咲夜」
ケーキを見た妹紅は不満気に名を呼ぶ
「何か?」
咲夜は悪びれる様子無く答える
「苺の数が減ってるんだが何でかわかるか?」
「いえ私にはとんと……」
「その頬の膨らみは何だろうなぁ?えぇ?咲夜さぁん?」
「オイシイ……ゴクン……何の事でしょう?」
ガタッ
すっとぼける咲夜に彼女等は動いた
「レミィには伝えとくわ、咲夜は旅に出たって……無の世界に……」
メドローアを構えるパチュリー
「お姉様には伝えとくね、咲夜なんてメイドは居なかったって」
目を作り出すフラン
「咲夜さん……残念です……」
惜しい人を亡くしたとでも言いたげな大妖精、風の刃を作り出している
「苺……イチゴ……!ウオオオオッ!!」
血の涙を流すチルノ、エターナルフォースブリザードを使う構えに入る
「咲夜ぁぁぁぁぁぁ!!」
炎を燃え上がらせる妹紅、昂る炎は紅魔館を焼き尽くす勢い
「……ケーキをよく見てください」
5人の威圧にも咲夜は動じずケーキを指した
「あれ?苺がある……」
ケーキには苺が戻っていた
「冗談ですよ冗談」
咲夜は悪戯をしただけだったのだ、時を止めて苺を戻したのだ
「その気になっていた皆さんの姿はお笑いでしたよ」
ニコリと笑う咲夜、本人に悪気は無いが今確実に一言余計だった
「次やったら燃やすぞ?」
「次したら壊すよ?」
「次は消すわよ?」
「次は凍らす!」
「次は酸素濃度上げますよ?」
「申し訳ありませんでしたぁ!!」
一言ずつ語られる脅しに蒼白になった咲夜はすごい勢いで謝った
「アハハ!じゃレミリアも呼んで食べようか」
咲夜がレミリアを呼ぼうと歩き出した時だった
ドン!
外から轟音が聞こえた
「ピィ!?」
「なんだ?美鈴が誰かと戦ってる?」
音は門から聞こえた様だった
「行ってみよう!」
何事か気になった7人は外へ向かった
スルリ
7人が行った後、壁から青娥が抜けてくる
「王女は居ないみたいね……なら後は頃合いを見て……ね」
気付かれない様に7人を追っていった
紅魔館・門前
「効かーん!!」
倒れていた芳香は勢い良く起き上がる
「流石にゾンビには効きませんか」
芳香を見据えながら美鈴
さっきの音は襲撃してきた芳香を地面に殴りつけた音だったのだ
「ふっふっふ……お前はこの体に流れない帝王の血に負けたのだー!」
「負けてませんし意味がわかりませんよ……」
うんざりしながら構える美鈴に芳香はまた攻撃を仕掛ける
「少し手荒になりますが……」
気を集中させる
「せやああああッ!!」
攻撃を受け流し連打を浴びせる
バキッベキッ
骨の折れる音、関節が折れる音が聞こえる
「ふうぅぅ……」
精神を統一させる
「ハイィィ!!」
強烈な裏拳が芳香を捉えた
「ぐわぁぁぁぁ!?」
殴り飛ばされた芳香は地面を擦り、倒れた
「……」
倒れる芳香を美鈴は見据えるが構えは解かない
「き……」
芳香が声を発する
「っかーん!!」
勢い良く起き上がった
「!?」
と思った
「あれー?動けないぞー?」
芳香は動けていなかった、体に力が入らない様だ
「……ふぅ」
その様子を見た美鈴は構えを解く
「動くのに使う骨と関節を砕きました、いくら痛みを感じないと言えど動きに使う力は関係ありません、動く力の伝わる箇所を破壊しました、もう動けませんよ」
死体である芳香に攻撃は効かない、肉体が既に死んでいるからだ、厳密に言うなら芳香の体が耐えられる範囲の攻撃は効かないだけなのだが
「殴る蹴るだけが武術ではないんですよ」
芳香へ歩いていく
美鈴が本気なら芳香を跡形も無く消し去る事は可能なのだがさすがにそれは忍びないから動けなくするに留めた
己の肉体を武器とする美鈴だからこそそれが出来た、多分他の者なら著しい損傷を与えて止めるか消している
「それで何用でしょう?」
芳香を見下ろしながら目的を聞く
「それはだなー……」
困った芳香が言葉を濁そうとした時
「あー……なんだ終わってるよ」
妹紅等が出てきた
「芳香じゃない、何?どうしたの?」
「それが来るなりいきなり襲い掛かって来たんですよ」
パチュリーの問いに美鈴が答えると妹紅は門の壁に寄り掛かる
「訳がわからないな、勝てるわけないのに……なぁダイ!」
「ピィ!」
ダイが鳴いた瞬間だった
「訳はこれ」
壁から出た手がダイを捕まえる
「ピィ!?」
「ちょっと借りるわねこの子」
そのまま出てきた彼女はダイを抱き抱え飛ぶ
「青娥!」
「ダイちゃん!」
誘拐犯を確認した妹紅と大妖精が叫んだ
「それ!」
青娥が小さな玉を投げ、地面に炸裂すると辺りは煙に包まれた
「妹様!」
危険を感じた美鈴が動いた、主君の妹を守る為の行動
だがそれが不味かった
「あらあら酷くやられちゃったわねぇ芳香」
「しまった!」
離れた隙に倒れる芳香に青娥の接近を許してしまう
「えい!」
大妖精が風を使い煙を吹き飛ばす
「……逃げられた!」
チルノが唇を噛む、二人は逃げていたからだ
「ダイちゃん!」
ダイを連れて……
「不味いわね……」
パチュリーは気付く、ダイが青娥に連れ去られたその危険な可能性を
(もしダイが神の涙だとしたら……)
それはダイが神の涙だと言う可能性をまだ捨てきれていなかったから
もしダイが神の涙だとすれば願いを叶えてしまう可能性があるからだ
それが小さい願いや純粋な者の願いならばまだ良い、大した事にはなりにくいからだ
だが連れ去ったのは青娥
邪な仙人
純粋とは程遠く、更に知識を持つ者
神の涙だと知ってか知らずかは不明だがもし神の涙だと思っての行動だとすれば願いを叶えようとするかもしれない
幻想郷を根底から覆す様な願いを……
「すぐに追っ……」
言葉は止まった
「……ダイ!!」
妹紅の怒りを見たから
明らかに怒っていた、それは演技ではない真の怒り
言わずともすべき事はわかっていたからパチュリーは言葉を止めたのだ
同時に心配した
「殺してはダメよ?」
それは青娥の心配、怒る妹紅が青娥を拍子で殺してしまうのを危惧したのだ
「……大丈夫だよ」
グッと怒りを抑えた妹紅が返す
「許せないけどな……!!」
怒りは抑えただけで消えはしない
友達を連れ去られたのだ、ダイが不思議な力を持つからではない、友達が危険だから怒るのだ
かつては守られる立場だった妹紅
今は守る側となった彼女の怒りは当然の事
強く、大きな背を見てきた彼女は尊敬し、憧れる友と同じ道を選んでいたのだ
「行ってくる!」
飛び立たんとした時、紅魔館へ降り立つ者が1人居た
「どうしたんですか皆さん?」
来たのはレティ、外に集まる皆に問うが様子を見て何かがあったのだと悟る
「……もしかしてさっきの仙人のせい……?」
レティは聞いた、来る途中で青娥と擦れ違ったのだ、ダイは隠されたのか見えなかったから誘拐とは思っていない
「どっちに行った!」
妹紅が詰め寄る
「あ、あっちです……」
「よし!」
方向を指差した瞬間、妹紅は飛び出した、続いて大妖精とチルノが後を追う
「フランは行かないの?私は妹紅を信じてるから任せるけど」
「うん、あたしが行ったらホントに殺っちゃいそうだから任せるの」
「私もそれが良いと思います」
3人が見送りながら話す中
「いったい何があったんですか?」
蚊帳の外のレティが訊ねた
「くそっ!どこだ!」
レティに教えられた方向を飛ぶ3人
方向がわかってもどこで降りたかなどわからないから探しながらになる、その為スピードは出ない
「あっ!妹紅!アレ!」
チルノが何かを見つけて指を差す
「洞窟……?……芳香!」
見つけたのは岩陰にある見えにくい洞窟、そして入口に立つ芳香、青娥によって直されていた
「青娥はこの中か!」
降り立った妹紅が芳香に問う
「通りたければ私を倒してからだー!」
質問には答えず芳香は立ち塞がった
「火葬されても恨むなよ!」
会話すら怪しい芳香にこれ以上は無駄だと感じた妹紅は突破するべく力を高め、駆けた
洞窟内
「ピィ!?ピィ!?」
「……わからないわね」
ダイの抗議を無視しながら調べる青娥
間近で見てもやはりわからない
(これは骨折り損みたいね……骨折りで済めば良いけど……)
好奇心故の行動だったが無駄と知ると今更ながら後悔していた
(後はなるようになるでしょ……)
「ピィ!ピィ!!」
逃げようと暴れるダイに青娥は語りだした
「私ね、会ってみたい人が居るの」
「……」
急に話された想いにダイは暴れるのを止めて聞き入る
「貴方は知らないと思うけどずっと昔にね、とっても強い人が居たの」
青娥は天井を見上げる
「会ったことはないんだけどとても気になってた……」
寂しげな顔で語りは続く
「あの頃の私は幻想郷の外へ遊びに行ってたから彼の事知らなかった、知ったのは帰って来た時……魔帝異変が解決した時だったの」
青娥はあの歴史に残る大異変には参戦していなかった
「それで彼の事を知って興味が湧いたのよ、でも会ってみたいと思って訪ねた時には彼は既に死んでいた……」
そして会う事も叶っていなかった
「とても残念だった……でも会えないとわかっても会いたかった……私は強い人が好きだから……」
青娥は強い者に惹かれる性質がある、だから会いに行き、会えないと知っても会いたかったのだ
「芳香にしか話した事なかったのに……貴方を見てると叶いそうな気がしちゃうからかしら?」
話したのはダイを調べている内にそう感じたからだった、神に近い仙人だから僅かにダイを感じたのだろう
「ねぇ……叶えてくれる?」
願った、冗談と本気が混じる願いを
「……」
ダイは青娥を見つめ
「ピィ!」
そっぽを向いた、そんな願いは叶えたくないと言う様に
「あはは……そうよねぇ……」
青娥が苦笑したと同時に
「青娥ァァァ!!」
妹紅達が現れた
「せーがやられたー」
妹紅に掴まれている芳香、四肢を氷付けにされ、至る所に火傷があった
「見たらわかるから黙ってなさい芳香」
「はーい」
芳香が黙った所で話は始まった
「ダイを返せ!」
「良いわよ、芳香と交換ね」
「!?」
話は終わった
「何の冗談だ?」
怪しむ妹紅
確かに芳香は交換材料に捕まえた、意味の無い材料と知りながら
青娥からすれば交換が成立してしまえば危険になるだけだからだ
成立した瞬間に攻撃も可能だからだ
力関係に大きな差がある以上この交換は青娥が不利になる以外何もない
ダイと芳香は交換の材料にならないと考えていたのだ
だから罠の可能性があると考えたから妹紅は警戒したのだ
「もう用は済んだからよ、今は芳香の方が大事だから交換を提案したんだけど……」
「信用出来るか!」
「そうでしょうね……立場が上の貴方からすれば要求出来る立場ですもんね」
フッと笑った青娥は
「お帰りなさい」
ダイを手離した
「……ピィ?」
「良いのよ、ほら早く行きなさい」
ダイは青娥を見つめた後に妹紅へゆっくりと飛んでいく
「ダイ!大丈夫か!」
3人が心配するが
「ピィィ!! 」
大丈夫だと大きく鳴いた
「ほら」
芳香を渡す妹紅
「ありがと……酷くやられたわね芳香」
「直してー」
「生きてたらね」
また苦笑する青娥
「許してって……言える立場じゃないわよねぇ……」
「……そうだな」
真顔の妹紅が答える
「これは悪戯じゃ済まない!許せるかよ!」
右腕に炎が纏い、近付いていく
「……」「……」
チルノと大妖精は止めない
わかっているからだ、殺しはしないと
でも何も無いのも許せないから見守るのだ
「やめろー!せーがを虐めるなー!!」
「……歯ぁ食いしばれ!」
芳香の言葉に耳を傾けず、妹紅は打ち込むべく構えた
「……!!」
覚悟を決めた青娥は目を閉じ体を強張らせる
「ピィ!!」
鳴き声と共にダイが割って入った
「……なんだよダイ、許してやれって言いたいのか?」
「ピィ!」
ダイは頷いた
「ピィ!ピピピィ!」
自分は何もされていない、大丈夫だから許してあげて
そう言っている様だ
「でもな……」
誘拐された本人が許すと言った、しかし妹紅からすれば友達の事だから納得いかない
「ピィ!ピィ!!」
だがダイも折れない、許してやってと妹紅に何度も呼び掛ける
「……わかったよ」
根気に妹紅が折れた
「許してやるよ青娥……」
「……本当に?」
青娥はきょとんとした表情で見つめる、間違いなくやられると思っていたからだ
「ああ……悪戯でも二度とするなよ」
「……わかった」
青娥の了承に4人は帰っていく
(あの子が叶えてくれたの?許してって願いを……)
ダイを見ながら青娥は思う
そうなのかもしれない
会いたいと言う願いは言わば欲の願い、動機がなんであれ己の会いたいと言う欲だ
それは叶えてくれなかった
許して欲しい
それは心から思った純粋な願い
だから叶ったのかもしれない
純粋な者の願いだけを叶える神具
神の涙とはそんな道具
ダイの意思かもしれないが叶ったのだ
願いが……
「待って!」
視界から消える間際に呼び止めた
「……まだ何か用か?」
振り向く妹紅、機嫌は悪い
「これ……あげるわ」
懐から取り出した笛を見せる
「邪仙の笛って言うの、これを外で吹けば幻想郷に居る私に聞こえるの……」
「……それがどうした?」
「困ったら呼んで……力になるから」
「……そんな事は有り得ないと思うけどな」
「良いの……御詫びだから……ごめんなさいね」
謝る青娥に妹紅は少し戸惑う
「……わかったよ、これは貰っとく、困った時は呼ぶよ」
笛を受け取った
「じゃあまたね」
ヒラヒラと手を振る青娥と芳香に見送られ4人は紅魔館へ帰っていった
神殿
「おい!」
男へ詰め寄る者が居た
「何ですか?」
治癒中の男が返す
「俺を幻想郷とやらに送れ」
詰め寄ったのは青いウェーブの長髪の男と異形の剣士
「……」
男は暫し考える
退屈なのはわかっている
考えるのは止める理由を考えているのではなかった
「良いでしょう、お二人を幻想郷に送ります……好きに暴れてください」
スキマを開く
「少し遊ばせて貰うぞ」
「楽しみです」
スキマを消えた二人を確認しスキマを閉じる
(あの二人が暴れた際の幻想郷の反応を見させて貰いましょうか)
男が考えた理由はこれだった
幻想郷の対応を見たかった、他の戦力はこういった時にはどう出るのかを
「……頼みましたよ」
またスキマを開く
「仰せのままに……」
幻想郷に刺客が差し向けられる
永遠亭
「いやぁあんたが居て助かったよ鈴仙」
「師匠程上手くはないですけどね」
ベッドで眠る椛の横で幼女とウサ耳少女が話している
「永琳は何してんだい?」
「それが教えてくれないんですよ……診療所は私に任してばっかりだし……修行したいのになぁ……」
「あの変な掛け声しながら踊るヤツかい?」
「失敬な!アレは挨拶です!」
「ハハ……まぁなんでもいいさ……」
幼女は立ち上がる
「そいつを頼んだよ」
そう言うと永遠亭を出ていった
「確か椛さんって萃香さんの元部下だったんでしたっけ……」
椛を見ながら少女は呟く
(だから怒ってたんですか……)
その時だった
ドゴォ!!
外から破壊音が聞こえた
「うわぁ……鬼が怒った……」
少女は不味そうに避難する
(誰かは知りませんけど御愁傷様です……)
相手の事を不憫に感じながら少女は部屋を出ていった
「さぁて……」
竹林に出来た巨大なクレーターから出た幼女は能力を使う
「この霧の萃香の知人に手を出したんだ……」
体は霧になる
「落とし前はつけさせて貰うよ……」
霧は霧散して行く
幼女の名は伊吹萃香
幻想郷に生きる妖怪の中でも最上位と呼ばれる鬼と言う種族
幻想郷に鬼は他にも居るが彼女だけは別格
貰った名に恥じない様に生きた彼女の力は今や鬼神
鬼の神と呼ばれてもおかしくない程他の鬼との差が出来ていた
彼女は好きな様に生きる
笑いたい時に笑い
泣きたい時に泣き
腹が立てば怒る
今は怒っていた
夢は霧の参戦を認める……
萃香登場!
青娥は前作で絡まそうと考えていたんですが見送った為に今作登場です。
最近ダイの大冒険を全巻集めました!
やはりバーン様格好良い!最高!!
どうでも良い小話ですが今日誕生日でした、今まで仕事でしたけどね……
もし私の年齢を当てれたら夢現幻想、豪華ネタバレプレゼント!奮ってご参加くださいww
次回も頑張ります!