「ねぇねぇ」
「なんだよ?」
「帝都でね、おいしいケーキのある喫茶店見つけたんだ。今度一緒に行こ?」
「デートかっての…てか、お前ホント温度差、っつーのか、激しいよなぁ…」
「へ? どうゆうこと?」
コテンと首をかしげながら心底不思議そうに、俺の言葉の意味を問いかけてくる。そういうとこだよ、と思いながら溜め息をつきながら口を開く。
「普段から俺のこと八房で殺そうとして来るくせして、そーやって恋人とかがやるみたく至って普通にお茶に誘うとことかだよ」
「なんだ、そーゆうことかぁ。なら、むしろおかしくないよ?」
「は?」
今度は俺の方が聞き返してしまう。一体何がおかしくないというのだろうか?俺的には違和感しかないのだが。
「カミナのことを殺そうとするのは、ずっと一緒にいてほしいから。他にも大切な人はいるけど、カミナは一番大切で、一番特別だから」
「…あのなぁ、そういうセリフは、
「そうかな?」
こんな甘酸っぱい空気になるような、告白とも取れる発言だが如何せん、死体の山の上で殺した相手の死体を弄りながら言うようなセリフではないゆえ、そんな甘酸っぱい空気にはならない。まぁ、その死体の山の上に座ってクロメを
「おーい、クロメ! そろそろその死体こっちに回してくんねぇか?」
「ん、いいよ。飽きたし」
「さすがクロメだぜ、話が分かるなぁ」
同じ部隊のメンバーたちが死体、特に女の死体を引きずっていき、陰で楽しんでいるようだ。そんな中、メンバーの一人が声をかけてくる。
「カミナは遊ばなくていいのか? 勿体ねぇぞ?」
「そうだぜ、こんだけ上物がいるんだからよぉ」
「あのなぁ、俺が好きなのはあくまで生き物を殺すことであって、死体弄りの趣味はねぇ、って何度も言ってるだろ」
「ちぇっ、つまんねーヤツ」
「そう言うなって。それに、カミナはこういう時にわざわざ死体で遊ばなくてもクロメと年がら年中イチャついてんだから問題ねぇんだよ、なぁカミナ!」
「なっ!? テメェ何言ってやがんだ!」
「アッハハハ! ちげぇねぇ!」
「毎日毎日砂糖吐きそうなぐらいあっまい雰囲気だもんなぁ!」
「お前らぁ!」
「えへへ~」
「クロメもニヤつくな! だからお前らもニヤニヤしてんじゃねぇ!」
いつものような軽口のたたき合い。別に俺とクロメは本当に付き合ってるわけじゃないから、みんな面白半分なんだろう。時々クロメから冷たい目で見られているが、関係ないはずだ、うん。
一人で自己完結していると、帝都と連絡を取っていたメンバーが近づいてくる。といっても、さすがに死体の山を登ってこようとはしていないが。
「クロメ、カミナ。お前らに帝都から招集がかかってるぞ」
「ん? 私達だけ?」
「ああ、なんでも『7人』のうちの一人にそれぞれ選ばれたとか」
「選ばれた7人、ねぇ…」
「帝都かぁ…そこなら、会えるかもね。お姉ちゃん」
「クロメ…やっぱお前、まだアカメのこと…」
「うん、たった一人の肉親だから」
「そうか…」
俺の膝の上から立ち上がり、振り向いたクロメの見せた表情にそれ以上何も言えなくなる。狂気と妄執、そして少しの哀愁。唯一の肉親であるはずの姉に対する感情が此処まで歪んでしまったことを、あくまで他人でしかない俺はどう感じればいいのだろう。
可笑しい?狂ってる?やり直せないのか?そんな考えは常人が思いつく考えだ。
「手伝ってやるよ。お前の為だからな」
それが、赤の他人に出来るただ一つの仕事だ。クロメのサラサラとした髪を撫でながら口にする。聞いたクロメはポカンとした後、クスリと笑う。
「ありがとう、やっぱり、カミナは優しいなぁ…」
「
「じゃあカミナは死神の中でも変わり者なんだ」
「屁理屈を…」
「「「やっぱ恋仲じゃねぇか…」」」
「そこ! ウッセェしちげぇからな!」
俺達二人を見ながらニヤニヤしている他のメンバーたちに一喝し、少しばかり真剣味を帯びた声を出す。
「それよりお前ら、俺達が抜けて大丈夫か? 一気に帝具使いが二人も抜けるなんて…」
「おいおい、俺らだって暗殺部隊のメンバーだぜ?」
「お前らが抜けてもバッチリ任務をこなして見せるっての」
「そうかよ」
軽い調子で返してくる仲間に苦笑しながら、こちらも気心の知れたこの部隊でなければ相手を不快にさせるだけであろう冗談で返す。
「ま、そんなこと言ってアッサリ殺られるんだろうけどなぁ」
「そっちこそ、死んだらお前の死体弄りまわしてやるからな」
「じゃあ死にかけたら連絡しろよ、すぐさま駆けつけて俺が殺してやるからよ」
「…ま、冗談抜きで死ぬなよ?」
「そっちこそ、な」
この任務の後、俺とクロメは帝都へと向かった。その後、この部隊の奴等はほかの地域の任務が宛がわれたらしく、帝都からさらに離れることになってしまったらしい。まぁ、奴等ならそう簡単には死なないさ。なんたって俺達と同じ暗殺部隊なんだから。
* * *
「「「………」」」
集合がかけられた部屋、特別警察会議室に着くとそこでは三者三様の沈黙が広がっていた。こちらをじーっと見つめてくる頭陀袋のようなガスマスクのようなものを被った大柄な筋肉質な男性と、救いの神でも現れたかのような視線を向けてくる青年、そして先に行かせたクロメがひたすらお菓子をつまんでいる、という何とも対処しづらい雰囲気だった。とりあえずクロメの隣の席に座り頬杖をついて他のメンバーの集合を待つ事にしたのだが、すぐさま扉が開け放たれ、帝都の警備隊の服を着た少女と犬のような生物が入ってくる。そして直立するとお手本のような綺麗さで敬礼をする。
「失礼します! 帝都警備隊所属、セリュー・ユビキタス!アンドコロです!」
そう言うと、少女は敬礼をしていた手とは逆の方に持っていたバラの花束を、花弁が散るように投げる。するとセリューと名乗った少女と犬?が跪くと
「Dr.スタイリッシュ! 準備が出来ました!」
「第一印象に気を遣う…それこそがスタイリッシュな男のタシナミよ」
入ってきたのは白衣を着た、黙っていればモテそうな見た目のオカマだった。すでにこの時点でいろいろ面子がオカシイような気がして仕方ないのだが…そして先に入ってきていた青年がオカマに気に入られているうちにもう一人の青年が入ってくる。
「どうやら私が最後みたいですね」
「よぉ、俺はウェイブってんだ…よろしくな…」
「私はランといいます。こちらこそ、よろしくお願いします」
ウェイブと名乗った青年がランと名乗った優しげな雰囲気の青年の手を取り涙を流していると、筋肉質な大柄の男性がお茶を入れて戻ってくる。そのお茶を配りながらおずおずと話しかけてくる。
「あの、皆さん、お茶が入りました」
「あ、どうも。ありがとうございます」
「いえ、好きでやってますから」
「よ、よろしくお願いします…」
「ゴメンネ、最初からいたのに、声かけられなくて…」
「あぁ、いえ、そんな…」
「私人見知りで…緊張しちゃって。同じ帝具使い同士仲良くやりましょ」
「は、はい!」
「最年長者だろうし先に自己紹介しちゃうわね。私、焼却部隊から来たボルスです。よろしくね」
「うぇ、ウェイブです、帝国海軍から来ました!」
「カミナっす。暗殺部隊から来ましたぁ」
「同じクロメです…どうぞよろしく」
俺が名乗った瞬間、部屋の空気が凍る。ああ、いつものアレか…なんかもうさぁ、いや正直もう慣れてきたなぁ…
「か、カミナってあの『死神』!?」
「『皆殺しの処刑人』、『魂を奪う魔人』…いろいろ通り名はあるけど、やっぱり『死神』が有名よね。その帝具、研究してみたいわねぇ…」
「貴方が死神ですか…」
「キュルル…」
「あなたが死神さん? 本当にいたのね…」
「死神…百戦錬磨の暗殺者と聞きましたが…」
大体の面子は驚愕と好奇心を示すがセリューという少女とコロという犬型生物はこちらを警戒しているようだった。だがそれよりも俺的にはさっきから静かに殺意燃やしてるクロメをどうにかして欲しいんだが…!
「く、クロメ、落ち着けよ、な?」
「…べつに、普通だけど…?」
普段ならポリポリという音がするはずのクッキーを咀嚼する音が今はガリガリだ、どう考えても普通じゃねぇ…
「みんな俺を非難してるわけでも何でもないんだからさ。ほら、暗殺部隊なのに割と派手にやらかしてる俺の自業自得っていうか…」
「むぅ…」
俺が必死になってクロメをなだめていると突然、ドアを開け放ち仮面を被ったスラリとした冷徹な印象を与える女性が入ってくる。
「お前たち見ない顔だな! ここで何をしている!」
突然現れてそんなことを言い出す仮面の女に困惑したかのような表情をしながらウェイブが近づいていく。
「おいおい、俺たちはここに集合しろって…」
が、次の瞬間には仮面の女に蹴り飛ばされ、勢いよく壁に衝突してしまう。仮面の女はウェイブを蹴り飛ばした勢いはそのまま、ランに向かい走っていく。
「賊には殺し屋もいる! 常に警戒を怠るな!」
「おおっと!」
ランは次々と繰り出される足技の数々を回避していく。時折、回避できないと悟ったものだけをいなしながら、一撃一撃を確実に避けていく。ランへの攻撃に夢中になっていると思ったのか、セリューとコロが背後から飛び掛かるが、セリューは逆に腕を掴まれ、地面に叩き付けられてしまう。コロの方は氷漬けにされて動けなくなってしまっている。
「かはっ!?」
「背後からの奇襲にしては殺気を剥き出しにし過ぎだ」
次の瞬間、キン、という金属音が鳴り響くと同時にクロメが駆けだしていた。居合切りの要領で抜き放たれた八房を、仮面の女は背後にジャンプすることで回避する。が、しかし
「サンキュー、クロメ」
「むっ!?」
タナトスの棺が、それ以上背後に進めないように立ちふさがる壁のごとく出現する。更に、左右へも逃げられないように半円形に配置してあるので、突破するには正面しかない。だが、女は背後へとジャンプで避けたばかりで、いまだに体は空中に浮いた状態にあり体勢を整える余裕はない。まぁ、本気だったら違うんだろうけどな…! そう思いながらタナトスを振り抜き、仮面を両断する。地面に着地してタナトスを鞘へと納めると、素顔を晒すことになった女性へと話しかける。
「勘弁して下さいよ、こんなことされても加減とかできませんって」
「そうそう、ふざけられても加減できない」
「クハハッ、いや何、ただの歓迎ではつまらんと思ってな。にしても、それが八房か、噂通りの切れ味のようだな。それに、死神にタナトスか、久しぶりに見たが腕は鈍ってないようだな」
「はは、そりゃどーも」
剥がれ落ちた仮面の下から現れたのは、この帝国で、いや、大陸中で知らぬものなど居ないであろうというほどに有名な、帝国最強の女性、エスデス将軍だった。
* * *
エスデス将軍は何が起きてるのかわからないメンバーたちを無理やりスーツに着替えさせると、外の王宮へと連れだした。王宮内の長い廊下を歩いている途中、エスデス将軍が話しかけてくる。
「さっきのは驚いたか? さっきも言ったが普通の歓迎では面白くないと思ったのでな」
「荒々しいのには馴れてますから…」
「私もむしろご指導いただけてありがたいです!」
「フフ、そうか。では陛下と謁見後にパーティだ!」
「初日から随分とハイペースなスケジュールですね」
「というか陛下と謁見!?」
ウェイブやセリュー達は陛下との謁見ということに心底驚いているようだった。だが、それもそうだろう。何せ一騎当千の帝具使いのみで構成された部隊。下手な国一つなら案外簡単に滅ぼせるだろう戦力だ。今や大臣の傀儡とはいえ、一応は皇帝である陛下には知らせた方が良いんだろうからな。
「面倒なことはさっさと終わらせた方が楽だろう? ああ、ちなみに自己紹介は次回以降でいいだろう」
「じ、次回…?」
「そういや将軍、俺たちのチーム名みたいなのってあるんすか?」
俺の質問にニヤリと口角を上げるエスデス将軍。その顔は心の底から楽しいといった表情だった。
「我々は独自の機動性を持ち、凶悪な賊の群れを容赦なく狩る組織…ゆえに、特殊警察『イェーガーズ』だ」
どうも、オラクリオンです。
というわけで第二話ですが、想像以上に長くなりました。まさか三巻の最後の3ページ分であそこまで書くことになるとは思ってもいませんでした。ちなみに暗殺部隊の皆さんの出番は恐らくもうないです。
それでは、次回もよろしくお願いいたします。
感想等お待ちしております。