帝都中央通りにある二階建てのとある喫茶店。その二階のテラスで向かい合う様に座りながら談笑する二人組がいた。帝都特殊警察『イェーガーズ』所属のカミナとクロメだ。クロメがガトーショコラを頬張りながら、顔を嬉しそうに緩める。その様子を見たカミナは、口元に優しげな笑みを浮かべながら自分もブルーベリーのタルトを口にする。ガトーショコラを食べ終え、次のショートケーキへと手を伸ばしていたクロメが意外そうに呟く。
「それにしても、まさかこんな簡単に休みがもらえるなんて思ってなかったよ」
「ん、まぁ確かにな。意外っちゃ意外だな」
彼らは本来休みなどそうそうとることのできないほど重要な立場にいるはずなのだ。しかし、彼らのリーダーであるエスデスの『恋がしたい』という要望をかなえるために開かれた都民武芸試合が本日開催されており、カミナとクロメの二人はちょうど仕事がなかったのだ。クロメはこれ幸いとばかりにカミナを連れておいしいケーキがあると評判のこの喫茶店へと引っ張ってきたのだった。
「でも本当にうまいな、ここのケーキ」
「えへへ、でしょ?」
「ああ、また今度来るか」
「やった! 次のデートの予定決めなくちゃね!」
「おいおい、次いつ休みがあるかもわかんねぇってのに」
「カミナが誘ってくれたんだからこれは来ないとだよ!」
「わかったよ、近いうちにまた、な」
「うん!」
無邪気な笑顔を浮かべながら喜ぶクロメは食べ終えたモンブランの皿を、今まで食べてきたケーキの皿の上に積み重ねてから、あれだけ頼んでおいたケーキがもうないことに気が付く。再びケーキを注文しようとしたところで
「クロメ」
「え? なに?」
「食い過ぎ」
クロメが食べたケーキの皿の山は実に
「15個も食ったんだからもうやめとけ」
「えー、まだ食べたりないのにぃ…」
「まだ食えるのかよ…」
「ま、いっか。また次もあるしね」
「そうしとけ…」
そうして二人は会計へと進んでいくのだが、「ここは俺が払うよ」と甲斐性を見せたカミナの財布の中身が吹き飛んだのは余談である。
* * *
「…なんですか、このガキ?」
「ガキではない、タツミだ」
「いやだからそういうことじゃなくて…」
帰ってきた二人を待っていたのは、椅子に縛り付けられ首輪をさせられた少年と少年を囲む同僚たちという何とも不可思議な光景だった。首をひねる二人にランが説明する。
「実は、この少年は武芸試合の参加者なのですが、彼のことをエスデス将軍が気に入られまして」
「ああ、なるほど。そういうことね」
「納得」
「でもなんで首輪させてるんですか?」
ウェイブのもっともな意見にうなずくメンバーたち。エスデスは悪びれる様子もなく
「…愛しくなったから無意識にカチャリと」
「正式な恋人にしたいのならば外した方がよいのでは? ペットとの違いを出すという意味でも効果的だと思いますが」
「…それもそうだな」
鎖を外しながらエスデスがふと思いついたように質問する。
「そういえばこの中で恋人がいたり結婚しているものは?」
その疑問に対して手を挙げたのはただ一人、ボルスだけだった。意外な人物が挙げたことに、周囲は驚いたように目を剥く。
「ボルスさん、そうなんですか!?」
「うん、結婚6年目! もうよく出来た人で私にはもったいないくらい!」
「あ…あのー」
メンバーが騒いでる中、ようやく鎖から解放された少年、タツミは恐る恐るといった様子で発言する。
「気に入ってくださったのは嬉しいんですが、俺…宮仕えする気は全くないというか…」
「ふふっ、言いなりにならないところも染めがいがあるな」
「人の話を聞いて下さいよ!」
「まぁまぁ、いきなりすぎて混乱してるのでは」
セリューが仲裁のように割って入った瞬間、カミナはタツミの顔が言い知れぬ憤怒と憎悪に染まったのを見た。セリューが頭を撫でている間も、歯を食いしばり耐えるように俯いていた。が、タツミのことなどカミナにとってはどうでもいいことだった。
「(このガキが何を考えてようが知ったこっちゃねぇ…反抗してきたときは殺せばいい、単純な話だ…)」
カミナが冷めた目でタツミを見ていると、ドアが開かれ一般の兵士が入ってくる。
「失礼します! エスデス様、ご命令にあったギョガン湖周辺の調査が終了いたしました!」
「そうか、ご苦労。それにしてもこのタイミング…ちょうどいいな」
ニヤリと口角を釣り上げたエスデスはメンバーに向き直ると
「お前たち、初の大仕事だ」
その言葉を聞いたカミナの口もまた、楽しげに笑っていた。
いやはや、お久しぶりです。長いこと放置していて申し訳ありません。
しかし大変恐縮ですが、次の更新もいつになるかわかりません。気長にお待ちいただけるのであれば幸いです。
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