廃人ゲーマー<ゲームでも現実です   作:中二ばっか

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 なぜかトゥルーのボロ小屋に戻っていたアカザ。

 そして、夜になるまでここに居た。

 

 窓から白い月と蒼い月がアカザを見下ろす。

 

 それ程の時間を掛けて考えても分からない。

 確かに怒ったのだ。罠に嵌められ、エルフの族長たちが見下し疎んでいることに。だが、同じように疎まれたトゥルーは「自分を見てくれる人が居る」から辛くないと言った。

 

 そう思うと何やっているんだろうと白けてしまった。

 そして、なんで自分には「自分を見てくれる人」が、居ないのか考えてみた。

 

 顔が悪いから。

 性格が悪いから。

 運が悪いから。

 自分のマイナス面は幾らでも思いつくが、どうしようもないし、何かする気も起きない。

 

「……これからどうするかね」

「えっと……なんでそんなに途方に暮れるの?」

 なんとなく呟くアカザの独り言に反応したトゥルー。トゥルーの住処なのだから、ここに居るのは当然だ。しかし、あんな事があったのにアカザの隣に来れるトゥルーは度胸が据わっているというよりも、単に何も考えていないように思える。

 

「大真面目にやることがないんだ」

「だったら修行とか」

「スキルランク全て100です。全スキルマスターでも目指せと?」

「だったらと狩りと採取とか!」

「殆どのレアアイテムは回収済みです」

「友達を作るとか……」

「俺にとってそれこそ要らない物なのですが」

「……アカザさんのイジワル」

 

 ぷくっと焼けた餅のように頬を膨らませ、そっぽを向き始めたトゥルー。暫くして沈黙に耐えられなかったのか、質問してくる。

「……もし、お師匠さまが居なかったら多分アカザさんが言ったように辛くて生きていられなかった。……アカザさんはここまで1人で生きて来たの?」

「育ててくれる……いや、親のすねを齧っていたからな。ただ生きるだけなら苦労はなかった。でもさ、親にとって俺は失敗作なんだよ。姉が優秀で、そっちにしか目を向けなかっただけ……って」

 

 何を言っているのだろうかとアカザは自問する。きっと疲れているのだ。この世界にいきなり来て、何をしたらいいか分からず、取りあえずクエストを受け、流れるままにクエストを達成したはずが、厄介事に巻き込まれているから。

 これが、ただのクエストなら報酬を貰って終わりのハズなのに。

 

(年下に人生相談って情けなさすぎる。……いや、エルフは長寿だから見た目に反して年を取ってるはずだけど、ハーフエルフってどうなんだろう? 【フォークロア】じゃそんな種族選べなかったし)

 

「……トゥルーって何歳?」

 女性にこの言葉は禁句と理解しているが、トゥルーは女性と言うよりも女の子なので聞いてみるアカザ。

「14歳だよ?」

 アカザ(23歳)より10歳近く年下だったので悲しくなってきた。なぜ年下の女の子に人生相談などしなければならないのか。

 

「……もう、ほっといてくれ。情けなくなってきた」

「?」

 トゥルーは首を傾げ、アカザは体育座り。

 それからは一言も言葉を発することもなく、夜が過ぎていく。

 

 しかし、何時までもそうしている訳にはいかなかった。

 複数の足音が聞こえ窓を覗くアカザ。弓矢、剣、短剣、杖、棍棒、中には農作業で使う斧や鍬、鉈、鎌を手に持ち、軽鎧で完全武装した老若男女のエルフの集団がアカザたちの周辺を囲んでいた。

 

 どうやらまだ懲りていないらしい族長が居るらしい。そいつらが指示したのか既に弓を構え、魔法の詠唱なのか言葉を発しているエルフが居る。無論対象はアカザ。隣に居るトゥルーも巻き添えにしても構わないようである。

 

 アカザも刀を抜き。臨戦態勢に移る。

 リーダ格と思われる男のエルフがボロ小屋の中に入ってくる。

 

「殺し合うなら、今度はトゥルーが止めようが正当防衛で皆殺しにするぞ」

 過剰防衛になっている気もしなくはないが、相手が売った喧嘩である。それに戦っているときは、一方的に蹂躙なら楽しみ爽快なのでそっちの方がありがたいとアカザは思う。

 

「我々は戦うために来たわけではない」

 そう言った後、アカザたちに一方的に指図する。

「この村から出ていけ」

「……どうせ帰るんだから休憩ぐらいさせろよ。それか報酬でも出してくれ」

「悪いがこの村に金目の物はない」

「はいはい。帰りますよ」

 そんな事、アカザは知っていた。報酬と見せかけたが物が、入手困難でない【ミスリルソード】だったのであれが精一杯の贅沢品だったのだろう。

 

 アカザも今更、村から略奪行為を使用とは思わず、さっさと村から出ていこうとする。

(幾ら美人なエルフが居るからって二度と来るか)

 今度、遊女のクゥカ辺りに性格のいいエルフでも紹介してもらおうと思ったアカザであったが、背後からジタバタした物音と声が聞こえ振り返る。

 

「なんで!?」

「貴様が人間を招き入れたからだ!」

(招き入れたのはメモを送った族長だろうに)

 そんな事を言っても聞く耳持たないだろう。全員の目が獣のように鋭くギラギラしている。このまま戦闘にすらなりかねない状況で飛び交う罵声。いっその事、戦闘になってくれれば消炭にできるし、今からやってしまおうかと考え始めるアカザ。

 

「貴様も村から出ていけ!」 

「人間の血混じりが!」

 罵倒に混じり石が投げられ、それがトゥルーの額に当たり血を流す。

 

「【アイスボルト】」

 その光景に苛立ったアカザは、投げた奴に手の平を向け握り拳程の氷塊を即射する。

 高速で放たれた握り拳程の氷塊が、石を投げたエルフの顔を貫通し風穴を空ける。そして、白い灰となり消え去ると共に訪れる沈黙。

 エルフを何の躊躇いなく1人、射殺したがアカザは罪悪感や後悔などは思わなかった。

 それどころか苛立ちが募る。

 

「別に苛めるなとか、同情じゃないからな? ただ、ウザいんだよお前ら。これ以上騒ぐならストレス解消ついでに駆逐してやる。ってか、俺的にそっち方がいい」

 そう言うと先ほどまでの喧騒が嘘のようになくなり、アカザとトゥルーから全員が距離を取り始める。

 その姿はアカザが好きな誇り高く美しいエルフではなかった。ただ、耳を長くしたチンピラと変わりない。

 

 そんな姿を見たくないアカザは森を抜けるために歩き出す。

 トゥルーはそんな奴らに行儀よく、今まで住まわせてもらったお礼を言い、お辞儀をしてアカザの隣を歩き始めた。

 

「……アカザさんはこれからどうするの?」

「取りあえず集会場で報酬貰う。そこからは……まだ決めていない。そっちは?」

「……トゥルーも決めてないよ」

 あはは、と力なく困った笑みを見せるトゥルー。

 

 アカザはここで「付いてくるか」とは言えなかった。自分だって余裕はないのだ。この世界に来て、やるべきこともなく、どうしたらいいか迷子になっている。そんな状況で他人を気遣えるような事をできるほど、アカザは気立てが良くない。

 ただ、可哀想だという憐みの気持ちがあり、それを言うのは必死に作り笑いをするトゥルーに失礼になると思った。

 

 それからは黙々と夜の森を歩き続ける。幸い月明かりが出てくれているのでトゥルーが道に迷うことはない。アカザもトゥルーの後に付いて行く。

 歩いて森を抜ける途中、シルフィールが付けて来たのかアカザたちの前に姿を現す。

「あ、お師匠さま!」

「……これを持ってけ」

 

 トゥルーの手に包み紙と小石がシルフィールから手渡される。

「魔石?」

 小石程度の大きさで形を整えてもいないが、色が濃い瑠璃色のラピスラズリの原石に見える。先程のように、罠や発信機が付いてないか気になって【鑑定】を使い見てみると、【説明文(フレイバーテキスト)】に最高純度の【青の魔原石】と浮かび上がる。

 

「……報酬あったじゃないか」

「これ程の純度を持つ魔石は、ダンジョンに深く潜り発掘しなければ採れん。これは私の故郷から持ってきたものらしいが」

「そ、そんなの受け取れないよ! お師匠さま!」

「大丈夫だ。私が持っていても役に立たん」

 

 恐る恐るといった感じに魔原石を受け取るトゥルー。感動でか、別れの悲しみからか目に涙をためている。

「そんなに心配になるのなら、一緒についてけばいいのに」

「わ、私は弟子を信頼している! これも一種のお守りのような物だ! 断じて餞別などではない!」

 

 動揺しているのかお守りと餞別を間違えて言っているシルフィール。

「それに私が付いて行くと本格的に森の守りがなくなる」

「……あいつらを良く守る気になれるな」

 思い出して胸糞が悪くなるアカザ。顔も歪んでいるのが自身でも分かる。

 

「あの老害共などどうでもいい。私が守るのは()だ」

 怒りで今にも目の前に老害が居れば、噛みつきそうな声であった。両手棍棒を握る手も、何かが軋む音がする。と言うか棍棒の耐久値が装備しているだけで減っている。

 

「そして、トゥルーに何かあったら貴様もただでは済まさん」

「待て、別に一緒に居るなんて言っていない」

 そもそも、アカザだって精一杯なのだ、他人の世話を焼く気はない。そもそも1人がいいのだから関わる気はない。

 

「え。アカザさん、私と一緒に居るの嫌なの?」

 そんな事を言ったら、今にも泣きそうな表情をするトゥルー。それに憤慨するシルフィール。最早凛とした表情は浮かべていない。

「……貴様、トゥルーを泣かせたな」

 地獄の悪鬼の声が聞こえた。

 

「いや、だって、さ」

「嫌だと……?」

「ちょちょ、ちょっと待ってくれ! 聞き間違いだ。大切な妹的存在なんだろ!? それを見知らずの男に預ける方がどうかしてるって言いたいんだ!」

 目の鋭さにたじろいて声が震えてしまうアカザ。

 

「大丈夫だ」

 何かアカザを信頼する部分があったのか、自信満々に宣言する。

「貴様にそのような度胸はない」

「……さっきの何かあったらってのは?」

「トゥルーに何かあったらだ、貴様以外にも危険があるだろう」

「……もういいです。分かりました」

 これ以上言っても無駄だろう。そう判断したアカザはさっさとその場から離れる。というか【大陸移動】で飛んで帰てばよかったと後悔した。

 

「あ、お師匠さま……その、行ってきます!」

 手を振ってアカザの後を追いかけていく。

「……無事を祈ってる」

 呟きの静かな声は2人には聞こえなかった。

 

 夜道、アカザとトゥルーは森の中を2つの月明かりを頼りに歩いていく。

 蒼月と銀月が隣り合うには少し間が空いていたが、次第に狭まっていった。

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