廃人ゲーマー<ゲームでも現実です   作:中二ばっか

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お気に入りが100突破した……?

嬉しいのですが、最初見た時「え」と呆然としましたよ。

では、今後もよろしくお願いします。

……実はお気に入り数が100いったら「小説家になろうに」マルチで投稿しようと思っていたんですが、ハードル上げて目指せPV1万。


2-11

 アカザが【地獄門】を破壊した頃、ナオトラたちの方でも影響が出た。

 

 モンスターたちが遠くの光景が分かるのか慌ただしくなり、統制がなくなっていく。

「ギガガ!?」

 

 そんな隙を突かれ、何体ものモンスターが倒される。

 【地獄門】を破壊されたことによる動揺と混乱。

 

 例えばゲームの最中、復活ポイントやセーブポイントがなくなったらプレイヤーはどう行動するだろうか。

 

 恐らく、混乱する。

 何かしらの強敵がこの先、待ち構えているのかもしれない。

 イベントで重要なことを見落とすかもしれない。

 なのにやり直しは出来ない。

 

 何しろセーブができないという事は、ゲームキャラをいくら強くしようが1度死ねば無効となる。

 

 そして、【地獄門】によって本来ポップ数の上限は容量を超えていたが、それがなくなったら、元の上限に戻るだろう。

 

 つまり、溢れ出したモンスターたちの殆どが今後復活することはない。

 知能が低いが本能的にそれを分かっているのか、モンスターたちが恐怖に駆られて元の道に戻ろうとする。

 

 だが、逃げたモンスターを叩き潰す者が居た。

 ナオトラたちが追撃したではない。

「目障りだぁあああ」

 腹立たしい声が渓谷に居る全員に鳥肌を立たせる。

 

 この時、ここに来るまでの道中、アカザは失念していた。

 【シュウキゴク】は元から鬼のような亜人モンスターの巣窟である。

 そこにはフィールドボスも含まれ、当然何種類もいる。

 

 つまり、【地獄開門】のイベント情報のみを重視してしまい、元から居るモンスターまで警戒していなかった。

 

 一定の時間経過によって生まれるフィールドボス。

 【シュウキゴク】で沸く(ポップ)するのは亜人のゴブリン、オーク、オーガなどの鬼のように見えるモンスターが多い。

 

 【シュウキゴク】自体が【フォークロア】の1年目でアップデートされ、作成されたため、フィールドボスも古いデータが使われている。

 と言っても、度々のアップデートによって更新され、強さもまちまちになっている。だが、そのフィールドを徘徊するモンスターより、格上なのは間違いない。

 

 血のような紅い一角を額から生やした鬼。

 筋肉隆々の上半身は裸で一角と同じ色の刺青が掘られて、蚯蚓腫れのようになっている。下半身は腰だめに黒の布を巻いた以外は何もなく裸足。

 手に持っているのは金砕棒。棘付きのそれは、3メートルもある長さ。

 

 そんな自分より長い獲物を軽々と片手で持ち上げる。

 そして、地面に叩き付ける。

 

「うぅるぅうううぁあああああ!」

 

 轟音と土柱を作り出し、地震を起こし、地面を破砕する。

 そして、その破壊された地面から出て来た岩盤に向かってフルスイング。

 

 当然、岩盤は破壊されるが数多に砕けた飛礫がナオトラたちと、モンスターたちごと巻き込んで襲い掛かる。

 

 陰陽師は障壁を、風水師は境内を貼り直し、ナオトラなどの前衛は各々が防御スキルで対抗する。それでも、数多の飛礫は障壁を、結界を喰い破り彼らに迫る。

 

 破裂した飛礫は内臓に痛みを浸蝕させ、打撲傷によって皮膚に大きな瘡蓋が作ってゆく。

 一方、混乱の只中に居たモンスターたちは、防御することが敵わず一方的に蹂躙され、掃討されてしまった。

 

 生き残った者たちの殆どは呻き声を上げ、地面にのたうち回る。

 アカザの【ドラゴンソウル】の効力がなければ確実にナオトラ1人を残し、壊滅していた程の攻撃。

 

 そして、突如合われ地表を爆撃でもしたかのような豪快な攻撃を繰り出した、真紅の一角を持つ鬼。

 その鬼の視線は未だ消耗した様子も、致命傷がある様子もないナオトラ1人に注がれる。

 先ほどの攻撃はただの間引き。強者と弱者を手っ取り早く見分けるための物に過ぎない。

 

「我はぁあ! 【力飢の地鬼】ぃいい!。そこの者、名をなのれぇええ!」

「……イイナオトラ」

 

 自身の攻撃に耐え、これから自身と戦う者の名前を聞いた後、満足そうに頷く【力飢の地鬼】。そして、金砕棒を肩に担ぎ一喝する。

 

「では、死合じゃぁああ!」

 一方的な宣言の後、駆け出してくる【力飢の地鬼】。

 

 仲間の近くであのような怪力を発揮されれば、間違いなく巻き込まれる。

 【力飢の地鬼】を進める訳にいかず突進し、間合いを急速に詰め攻撃を繰り出すナオトラ。

 

 【疾風一閃】を薙刀で再現し、放たれた矢のように加速したナオトラを迎え撃つ【力飢の地鬼】。

 加速の乗った一撃をスキルによって防ぐのではなく、あろうことか体で受け止める。それも最も鍛えにくい首で。

 

 当然、肉を裂き骨を断ち切ると思われた薙刀は、予想に反し【力飢の地鬼】の首に数㎝食い込ませるだけに終わる。

 

 が、動揺せず、連撃で押し出すナオトラ。

 あれだけの怪力を持つ敵なのだ。他にも特異な能力があることは、過去の経験から驚愕には値しない。

 

 迷わず振るわれる薙刀は【同斬り】【一刀両断】と繋げる。

 相手の防御力を下げる【同斬り】は、文字道理薙刀を相手の胴体部分に一筋の傷を作り出す。その後、防御力を無視する【一刀両断】の力が乗った一撃を切り替えす。

 

 徐々に深くなる傷。

 だが、全てがまだ浅い。

 少なくとも【力飢の地鬼】を倒すまでには、後何回も切り刻まなければならない。

 

「ぬっぅうう!」

 と【力飢の地鬼】筋肉が弾けるように膨張。

 

 体の中で爆発でも起きた衝撃が、ナオトラの薙刀を弾く。

 その一瞬にこちらの番だと言わんばかりに、片手で握った金砕棒をナオトラに叩き付ける。

 

 【戦闘】スキルの防御技【ディフェンス】を使う。防御態勢へ即座に移行して、相手の金砕棒を薙刀の柄で受け止める。

 攻撃を受けた瞬間、力の流れに逆らわず後方に飛ばされだけに済んだ。もしなにもせず直撃なら、骨が折れる激痛に苛まれていただろう。

 

 しかし、防御していたというのに手が攻撃の衝撃で痺れる。

 ナオトラは渓谷の壁に着地し、反動を利用して壁を蹴り【ジャンプ】を発動。

 上を取られているというのに、余程自身の防御力に自信があるのか、ただ見上げている【力飢の地鬼】。

 

 【ジャンプ】で壁を砕くことなく高々と跳び、【2段ジャンプ】で空中を蹴り、【3段ジャンプ】でさらに上に跳ぶ。空中を駆け上がり相手の直上から【天覧兜割り】。

 薙刀を構えたナオトラが一瞬にして地面に落ちる。その速度は着地した瞬間に烈風を起こすほどに速い。

 

 音を置き去りにして、天上から放たれた神速の一撃。

 

 本来、【侍】スキルは他のスキルを使うと【蓮華】の効力が霧散し、ダメージ加算がなくなってしまう。だが、装備を整えることでそのデミリットを打ち消すことができる。

 例えばアカザの【八竜】シリーズ。

 

 そして、ナオトラが着ている秘宝(アーティファクト)装備は東方系装束である軽鎧【早乙女具足】。

 朱色の甲と土色の布で繋ぎあわせた戦装束も、立派な侍の秘宝(アーティファクト)級装備であり、他スキル使用、【蓮華】持続効果と【蓮華】効力上昇が宿っている。

 

 先程までのモンスターの軍勢との戦闘によって、長時間発動時続けた【蓮華】のダメージ加算が【天覧兜割り】に乗り、相手の頭蓋骨ごと叩き斬ろうとする。

 長時間のダメージ加算は一つのスキルのダメージ率を大きく上回る。

 それに【天覧兜割り】の元々のダメージ率が加算される上に、【天覧兜割り】は高度があるほど威力を増す。

 

 そのような攻撃を脳天から喰らったというのに、

 頭の中からゴギッと骨が潰れる音がしたというのに、

 その鬼は笑った。

 

 ゾッとナオトラの肌に鳥肌を立たせる笑み。 

 即座にナオトラは【力飢の地鬼】から離れる。

 強者と戦える獰猛な笑みとは違う、弱者を嬲り愉悦に浸る笑みとは違う。

 まるで快感でも生まれているような蕩けた笑み。

 

 決して戦場で見ることなどない笑みに、ナオトラは不気味さを抱く。

 そんな顔で金砕棒を振ってくるのだ。何かあると思ったナオトラが警戒するのも無理はない。

 

「嬉しいぞぉ。我にぃい、ここまでの傷を与えられるぅう、貴様を愛しているぅるぅう!」

 だが、そんな警戒心がますます敵を理解不能にさせる。全く意味不明な言葉を発している相手。

 

 そんな発言をしながら突進してくる鬼。

 

 相手に少し顔が引きつるナオトラ。

「この老体に愛を叫ぶなど、見境のない獣ですか」

 

 この敵にいくら警戒しようと意味のない事を悟るナオトラ。

 何せ、思考回路が無茶苦茶なのだ。

 

 されども振り下ろされる金砕棒はかなりの威力を持っているので、油断するわけにはいかない。攻撃を躱して薙刀の武器スキル【梅花蛇】を叩き込む。

 

 禍々しい紫と黒の縞状の帯が薙刀に巻き付き、相手を毒牙で噛みつく。

 バッドステータスの耐性がない【力飢の地鬼】は、一撃で【毒】を貰ってしまう。

 

 【毒】が与えるダメージは微々たるものであるが、相手の肌や筋肉の防御力は無視して、中を浸蝕していく。幾ら防御力が高くとも、防御力を無視してダメージを与える毒は綿で首を絞めるように蝕む。

 

 最初は、少しじれったそうに身悶えるだけに留まる【力飢の地鬼】。

「そちの愛はそのような物かぁああああ!」

 異常状態攻撃が気に入らなかったのか、手の抜いた一撃だと思ったのか叫ぶ鬼。

 

 豪快に金砕棒をナオトラに打ち付けようとする。

 だが、ナオトラが相手に合わせる義理などない。

 相手の攻撃を見切り、回避し、攻撃を叩き込むという流れができつつある。

 

 【梅花蛇】で発生したバッドステータスの毒は、相手の【生命力】をじわりじわりと追い込んでいくので、相手が【生命力】を削られる一方であった。

 剛と柔なら、【力飢の地鬼】が剛で、ナオトラが柔であり、柔よく剛を制すと言う形ができていた。

 

 こちらの攻撃は当たらず、相手の攻撃は巧みにこちらを削る。

 その状況では【力飢の地鬼】が苛立っても仕方がない。

 

「ぬむぅおおお!」

 その苛立ちが限界に達した時、【力飢の地鬼】が範囲攻撃【インパクトローリング】を発動する。

 

 【力飢の地鬼】が口から放つ咆哮は土を巻き上げ、一種の音響攻撃となる。【力飢の地鬼】の近くに居たナオトラはもろに影響を受け、音の壁に全身を叩かれ、耳に大音量による振動で痛みだし奥歯を噛み締めて堪えるしかなく、体を硬直させてしまった。

 

 その一瞬の隙を見逃さず、武器スキル【ロッククラッシャー】によって金砕棒に気絶効果が加算される。

 金砕棒が地面をくの字に曲げかねない、豪快な一撃。

 

 それが、無防備なナオトラに叩き付ける。

 ゴッ、と鈍い音を出して岩の壁に叩き付けられるナオトラ。

 

「がっ、うぁ」

 灰が潰れたみたいで一気に体内の空気が出た後、頭がフラフラして、眩暈が掛かり視界がぼやけてしまう。

 

 すぐに建て直さねばと頭の中で叫ぶが、【ロッククラッシャー】を叩き付けられた気絶の効果で、頭の考えた行動を体まで伝わらず動くことができない。

 

 ニィと【力飢の地鬼】の口の端が吊り上がる。

 迫りくる凶悪な形をした金砕棒を防ぐ手段が、ナオトラにはない。

 だが、【力飢の地鬼】は下から現れた結界に包まれ、進行を阻まれる。

 

 陰陽師が薬品(ポーション)を飲んで多少回復して、持ち直しての支援。将を取られる訳にはいかない、と苦痛の中で振り絞った一撃。

 

 動きを封じた【力飢の地鬼】に向かって、立て直した前衛も走る。彼らも分かっている。ここでナオトラが負けたら、奴を倒せないと。

 

 各々が攻撃スキルを発動し、少しでも【力飢の地鬼】に攻撃をさせないよう必死に力を振り絞る。

 

 【マナ】消費による倦怠感や【スタミナ】消費による疲労感になりふり構わず、放たれたスキルは【同斬り】による防御力低下によって、僅かではあるが【生命力】を削る。

 

「しゃらくさいわぁぁあああ!」

 だが、必死の突撃も剛力によって薙ぎ払われる。

 拘束していた結界は一撃で破壊され、殆どの前衛が吹き飛ばされる。

 

 中には【生命力】がなくなり、体を維持できずくの字に折れ曲がって白い灰になる者も出た。

 一撃が豪風の嵐。中途半端な力と覚悟ではその体は瞬く間に戦闘不能となる。

 

 それでも、突き進む影があった。

「うがぁああああ!」

 叫び声で己を鼓舞するかのように、破壊の嵐を生み出し続けている【力飢の地鬼】に向かうのは、驚いたことにアカザのように圧倒的ステータスを持っている訳でもなければ、ナオトラのように【英雄】でもないただの獣人。

 

 パーティに同行していたクゥカである。

 獣人だけが発動できるスキル【獣の鼓動】を発動。

 【獣の鼓動】は普段眠っている野生の本能を、獲物を狩るときに発揮する集中力を呼び覚ます。

 効力的には【生命力】の【高速回復】を発動させ、str,dfe,agi,willの向上。

 そして、スーパーアーマー追加という効力を得る。

 

 クゥカの魂に闘争の本能に火が付き、体にオーラのような物が纏わりつく。肌がざわつき、瞳孔が細くなり肉食獣の目になる。

 

 そのクゥカを、片手で持った金砕棒で横薙ぎに払う【力飢の地鬼】。

 破砕の一撃がゴウッと音を上げながら払われる。

 

 【ジャンプ】して足元に凶器の一撃が通り過ぎる。しかし、空中で身動きできないクゥカに【力飢の地鬼】は残った片腕を突き出し拳を放つ。

 筋肉隆々で、重い金砕棒を軽々と扱うような腕でだ。

 

 クゥカの横腹に激痛が駆け抜けるが、先ほどの前衛のように吹き飛ばされはしない。

 ただ、目の前の相手を倒すという意思で痛みをねじ伏せ、相手に迫る。

 振り払われた金砕棒が戻るまでに、先ほどの痛みを憤怒に変えて拳を叩き込む。

 

 【クイックフィスト】によって加速した拳は腹部に当たる。【同斬り】によって防御力が低下している腹筋に【ドラゴンソウル】の力も加わり、腹部が爆発した。

 しかし、そこで止まらないのが【格闘】スキル。

 例え相手の皮膚の固さに弾かれようが、反撃の暇を与えず連撃を叩き込むことが十八番のスキル群。

 

 クゥカが【ボディブロー】を発動させ、渾身の力を込めた拳が【力飢の地鬼】の腹を抉るようにして放たれる。

 そして、ジャブの牽制、ストレートの先取、と繋げて締めのアッパーへと結び合わせる。

 最後のスキル、【タイガースマイト】が発動。

 獅子を模った気がクゥカの篭手に纏わり、相手に触れた瞬間、気が相手の身体を駆けまわる。その気は攻撃性を持ち、全身に爆竹が纏わりついて破裂し続けるような感覚を【力飢の地鬼】は浴びる。

 

 その連続爆発が、【力飢の地鬼】を後方へと殴り飛ばす。

 

 本来なら【ライオクロー】の武器能力によってまだ攻撃を加えることが可能だったが、【スタミナ】が足りず断念するしかなかった。

 さらに、元のステータスが低いクゥカの攻撃は、【力飢の地鬼】には子供が殴りつけて来たぐらいにしか思わないだろう。

 

 だが、それで十分時間は稼げた。

 【丁々発止】を発動させていたことによって、【侍】スキルの【クールタイム】を短縮していたナオトラが、叩き付けられた硬直から回復する。

 

 そして、殴り飛ばされた【力飢の地鬼】に【疾風一閃】を再使用し、迫る。

 疾風と化したナオトラは【力飢の地鬼】が地面に着くよりも速く、胴体に薙刀を滑り込ませる。

 

 だが、それでも【力飢の地鬼】の【生命力】はなくならない。

 ならばと、ここで速く倒すために【霞飛花】を発動。

 【蓮華】によって攻撃回数が無数に増えた斬撃の嵐が、【力飢の地鬼】の体に切り刻まれる。

 

 地面に落ちる前に【力飢の地鬼】はナオトラを見て、ぎょろりと目を動かしてクゥカや他の者たちを見る。

 そして、地面に落ちた時、意地悪く立ち上がり、ナオトラにせめて一撃を入れるために迫る。

 

 乾坤一擲で放たれる【力飢の地鬼】の【アース・クラッシャー】。

 凄まじい気の塊が金砕棒に伝わり、その気が弾けるのを留まっている。

 しかし、直線的攻撃は見切られてしまい、轟然とした一撃は躱されてしまい虚しく地面を割るだけであった。

 

 そして、返し技にナオトラは【水薙鳥】を発動。

 3連続して放たれる水の力を纏った突きは、腹を貫通し3つの風穴を空ける。

 そして、今度こそ【生命力】をなくして手足の先から黒いモヤへと変わっていく【力飢の地鬼】。

 

 黒いモヤに変わる前に残った顔が残念そうに、だが、満足そうに呟く。

「倒せんかったかぁぁ」

 

 

 

 力に飢えた鬼は、ただ力を振るう相手が欲しかっただけ。

 それこそ自分がこの世界に生まれた瞬間に、猛者たちが集って戦いを挑んできた。

 

 楽しかった。

 

 剣を交え、力が全てだったあの瞬間。

 生きている、そう実感する瞬間。

 倒されたも、また倒そうと意気込む冒険者。

 そんな奴らだからこそ、自身も幾ら倒されても彼らの挑戦に答えた。

 

 だが、年が重なることにその数は減った。

 

 ついには幾年も、誰一人として来なくなった。

 まるで、成人した者が昔遊んだ遊具に見向きしなくなったように。

 力を振るう相手は居ない。

 

 ただ、動けない牢獄(フィールド)の中を誰か来ないかと過ごす毎日。

 遊び相手が居なくなって、悶々する毎日を過ごしていると転機が訪れた。

 

 何か慌ただしい音がして出口(と言っても【力飢の地鬼】は出ることができないが)を見ると、沢山の鬼たちが自分が出られない領域を超えて歩いていた。

 いつの間にか牢獄は開き外に出ることができた。

 

 ならばやる事は一つ。

 

 遊び相手を探しに行くだけである。

 そして、討たれた。

 

 強者が居て、忘れかけた闘争の瞬間に酔えた。

 また、戦いに行こうと思う。

 これから我々は自由になったのだから、どこにでも行ける。

 また次があると、【力飢の地鬼】は記憶を忘れる瞬間まで浸り続けていた。

 

 

 

「っはぁ、損害は?」

 ナオトラは息を吐くのも辛い状態で、額に脂汗を浮かべる。

 

「死亡したのが前衛6人。内復活できたのが2人です。他の者もしばらくは戦えません」

 報告を聞くと、かなり不味い。

 

 復活したとしてもステータスの著しい減少と、心身喪失した虚ろな目を見る限り、戦闘の復帰は難しい。

 

 3分の1に近い損害を与えられ、歯軋りしたナオトラ。

 その数で、これから来る敵に対処しなければならなかった。

 

 【力飢の地鬼】を倒しても、【シュウキゴク】全てのモンスターが消えた訳ではない。

 先ほどの戦いで巻き込まれないよう、こちらを岩の影から見ていたモンスターたちがナオトラたちの疲労を理解したのか、ニヤリと口元を歪めた。

 

 数はぞろぞろと増え、また大群となる。

 ナオトラは舌打ちして口を歪めたモンスターの頭蓋骨を両断する。

 断末魔を上げる暇もなく、黒いモヤへと変わったモンスター。

 

 連続して、スキルを使わず通常の攻撃で周辺のモンスターに薙刀を振るい、黒いモヤへと変換するナオトラ。

 

「前衛立ちなさい! 私めらに立ち止まっている暇など在りません! 後衛、なにぐずぐずしているのです! 戦況を見据えなさい!」

 最早、持ってきた薬品(ポーション)は使い切り、敵は大群で押し寄せて来る。退路はなく、あの数のモンスターと戦っても押しつぶされるだけ。

 

 満身創痍の彼らを叱咤するナオトラは、現状を分かっていない訳ではない。むしろ、ここまで戦った彼らのことを称えたいくらいだ。

 

 だが、途中放棄は許されない。

 

 ここじゃない戦場で戦っている彼のためにも、【エチゴ】で体を震わしている民のためにも、自分たちが最初に諦めるのは容認できない。

 どちらにしろ、後は崩れた岩で塞がれ退路はない。

 

 ならば、1匹でも多く相手を倒してやろうと最後まで戦おうと意気込む。

 

 震えている膝に活を入れ、立ち上がる風水師。

 最後の【マナ】を回復させる薬品(ポーション)を一気飲みする陰陽師。

 刃が欠けた斧を握りしめる戦士。

 ボロボロになった盾を持ち構える騎士。

 ニィと不敵に笑い、拳を合わせる獣人。

 そして、彼らは【生命力】が尽きるまで戦い続ける。

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