廃人ゲーマー<ゲームでも現実です   作:中二ばっか

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遅れてすいません。いつの間にか一週間どころか三週間近くたってしまいました。


5-2

現在の【エチゴ】は朝、7時。

 

 アカザとシャムが【スカンヴィナ】に転移してから、1時間は掃除や調理、洗濯などを分担して作業をしていた。それが一区切りしてからの朝食。

 

「いただきます!」

 手を合わせ、口の中に朝食を入れていくトゥルー。未だに端には慣れないものの、何とか摘まんで口元に運ぶ。口の中に広がる味を楽しみながら、パクパクと食べていく。途中、味噌汁のなめこは箸で摘まもうとしても、てかてかと滑って掴めないため味噌汁ごと飲んでしまおうとする。が、味噌汁の温度が熱かったため「あぢっ」と小さな悲鳴を上げた後、ふーふーと息を吐き冷やし始めた。

 

 その光景を見ていた周りの従業員や遊女たちは微笑ましく思う。

 そんな時、窓から一羽のフクロウが飛んでくる。そのままトゥルーの肩に留まり、足に備えられていた1枚のメモをトゥルーが取ると、すぐさま来た窓から飛び去って行ってしまった。

 

「なんだろ?」

 アカザからの連絡がいきなり来たのだろうかと、不可解に思いながらもメモの内容に目を通すトゥルー。

 そこには差出人の名前がシルフィールと描かれている。トゥルーに狩りの仕方や戦い方、生き方の基本を教えてくれたハイエルフ。

 

【久しぶりになる、私の弟子トゥルー。緊急にエルフの里へと来てほしい。理由は森に危機が迫っている。そのために少しでも力が欲しい。あのアカザという者は部外者なので、連れて来ないでほしい。では待って居る】

 

 メモの内容は到底納得できるよなものではない。

 

 部外邪と言うのなら、里から追い出されたトゥルーも部外者のはずである。シルフィールが出すメモとは思えず、疑うトゥルー。だが、混血の自分に助けを求めるほど、エルフの里が切迫した状態だと言うのは伝わった。

 

「なんと書いてあるのでしょう?」

 トゥルーの顔色から明るさがなくなっていくのを察して、ヤマブキが声を掛ける。

 

「あ、えっと、お師匠さまからの手紙なんだ。里の方で何かあったみたいで……」

「……心配なのですか?」

「……うん」

 

 そう、心配なのだ。トゥルーを毛嫌いしていたエルフたちの中で、シルフィールだけは普通に接してくれた。少なくともトゥルーを見下すような目で見なかった。

 そのシルフィールを語り、自分を連れ戻そうとしている。彼女がどのような状況で居るのか分からず不安で仕方がない。

 

「だから、行くね」

「アカザ様を待って居なくていいのですか?」

「うん。……でも早い方がいいと思う」

「だけど――」

「1人で生かせるのは危険だね。それにうちらも心配してしまうんだよ」

 

 話を聞いていたのか、クゥカが黄色い毛並みの獣耳をピンと立てていた。

 

「そんなこと言って、アカザ様から言われた温泉の囲いを作るのが嫌なだけじゃないのですか?」

 

 どうやら図星だったようで、ヤマブキに指摘されると動きが固まるクゥカ。トゥルーも疑いの目でクゥカを見る。

 

「ただサボりたいだけ?」

「い、いや、そんなことない! ほ、本当に心配なだけだからな!」

「では、帰ってきてから囲いを作るということでいいね? 善意でやる事なんだから、当然給料も出ないよ」

 

 クゥカが発した言葉に反応して、サツキが止めの一撃を放つ。今更断れる雰囲気ではない。

 

「や、やってやろうじゃねぇか!」

 そう断言した後、自身の言葉を多少後悔したクゥカ。

 

 

 

「だけど、徒歩で行くつもりなのかい?」

 サツキの言葉にトゥルーは首を振る。

 

「ううん。アカザさんに貰った【ペロカン運送便】が居るの」

「……なんだい、その名前」

 

 何となく間抜けさと危ない名前を聞いていた者たちは感じる。トゥルーもその名前に困った顔になってしまう。

 

 実際に見せると言うことで外に出て、トゥルーが【ペロカン運送便】を呼び出す。

 

 瞬間、大量の白い灰が降り注いで中から体長が3メートルのペリカンが出て来る。大きな嘴の下は楕円に弛んでおり、翼は先端が黒く、羽毛は全体が白い鳥。その背中には鞍が設置されており、大きさからして2人乗りができる。

 

 アカザがトゥルーにトレードして渡した【ペット】であり、初期に課金サービスで販売され、複数の人数を運べ飛行能力を有する【ペリカン】。

 

 価格が安く、安易に手に入れられる。が、後々に【魔法の絨毯】や性能が高い【ペット】に後塵を拝し、現在ではほとんど使わなくなってしまった。唯一それらの【ペット】と比べ利点があるとすれば、呼び出せる時間が8時間と長いことぐらい。

 

 アカザも使わなくなったが故に戸惑うことなく、トゥルーに譲り渡すことにした。他にも地上を移動するための【ロバ】や海を渡ったり、水中移動がスムーズになる【ウミガメ】も譲り渡している。

 

 ただし、名前は変更できないので【馬肉美味しい】や【スープなんてできない】などと言った変な名前になっている。トゥルーは自分が【ペット】を持つことになれば、もっと可愛い名前を付けると決意した。

 

「これで飛んで行くの。ちょうど2人乗りだから大丈夫」

「あの坊主には連絡入れなくて大丈夫なのかい?」

「……あっちも忙しそうだし、もっと後からこれで伝えてみる」

 

 そう言って取り出したのは木版の【ランク証】。昨日作ってもらった物だが、多少LVが上がっても素材は変わらない。だが、機能的にはアカザの【ランク証】と性能は変わらないため連絡には問題ない。

 

「そうかい」

「気を付けてね」

「うん、できるだけ早く戻って来るね」

 トゥルーに向かってサツキとヤマブキは短く別れのあいさつを済ませる。

 

「なぁ、あたいには?」

「あんたは頑丈だろ。心配するだけ無駄だよ」

 何気に酷い言葉だが、そこには必ず無事に帰って来る以外には在り得ないからこそ、そんなことを言うサツキ。そのことが分かっているのか微笑を浮かべるヤマブキ。分かっていないトゥルーは不思議そうに首を傾げた。

 

 

 

【ペロカン運送便】の背中の鞍に乗って、青空を飛行する。手綱を持ってエルフの里へと進路を向けているトゥルー。その後ろにクゥカが抱きつくようにして座っている。

 

 アカザの【サンダーバード】が戦闘機の飛行速度だとすれば、【ペリカン】はグライダーくらいの移動速度の差がある。

 

 が、トゥルーもクゥカも不満はなかった。

 アカザが散々してきた雑な飛行よりも、緩やかな飛行は彼女たちに安心感を覚えさせる。急いでいるとはいえ、俯瞰景色に目を開きながらの飛行はさながら遊覧飛行であった。

 

「あの山、てっぺんが白いね!」

「ありゃ雪だよ。山頂は寒いからね、冬に積もった雪が解けなくて1年中あのまんまさ」

 

 【フォークロア】では海と陸、地表の高さと低さが逆転しているため日本海溝は巨大な山となっている。トゥルーたちが飛んでいる高度は50m程度。それでも風が時折強く吹くため、肌寒く感じる。

 

「いつかあそこからの景色も見てみたいな」

「だけど、あそこには強いモンスターがウロウロしているんだと。あそこに行きたいなんて言う奴、あたしは始めてみるよ」

「アカザさんも行ったことないのかな?」

「さぁ? 行ったとしても何にもねぇと思うぞ。こっから見る限り雪しかないし」

 

 そんな会話をしながら、トゥルーが記憶を頼りに5時間以上の飛行をし続ける。途中でヤマブキが作った弁当を食べたり、休憩を挟みながらエルフの里の一歩手前まで来た。

 

 バサバサと【ペリカン】が羽ばたきながら緩やかに降下を始める。木々を揺らしながら着陸する。トゥルーとクゥカが背中から降り、呼び出し解除すると大量の白い灰に包まれて消える【ペロカン運送便】。

 

「ばいばーい」

 律儀に手を振るトゥルー。クゥカは周りを見渡す。

 

 木々が茂り、日が高く登った今でも薄暗く感じる森。

 ただ、何か不自然に思い注意深く見て見るがクゥカには何か分からなかった。逆にトゥルーの方が違和感に感じたことを口にする。

 

「動物さんたちが居ない?」

 小鳥の囀りはなく、虫の気配すらない。

 木がただそこにある。

 生命力、活気が感じられない森。

 魔女が住む毒々しい森でも、害虫やモンスターくらいはいる。

 

「嫌な感じだね」

 クゥカが呟いた言葉に頷くトゥルー。そのことが分かって来ると、段々寒気が出て来たように感じる。

 

「けど、行かなきゃ」

 不気味な森を歩き出した2人。

 アカザに教わった【索敵】を使い、周囲を警戒する。それに加えてトゥルーは聞き耳立て、クゥカは鼻で何かを感じないかと嗅ぎながら、枯れ落ちて湿った葉でできた腐葉土の上を歩く。

 

 辺りはしんと静まり返っており、トゥルーたち以外には何もなかった。

「……ん?」

「どうかしたの?」

「変な匂いがするんだよ。なんかこう……野菜を腐らせたような、吐き気のする匂いだ」

 

 トゥルーもクゥカに習い、鼻をスンスンと鳴らして当たりの匂いを嗅いでみる。確かに森の匂いに交じって、変な匂いが混じっているような気がした。

 

「……段々、匂いがきつくなってきている!」

 トゥルーも意識せずとも、鼻を突く嫌な匂いが辺りに充満し始める。背負っていた【ドラグーンボウ《ヴァーミリオン》】を手に携え、匂いのする方に弓を引き絞る。

 

 吐き気を覚えるほどの匂い。鼻を塞ぎたくなるほどに気分が悪くなって来る。

 そして、徐々に近づいてきた異臭の大元が、木々の陰からのそりと姿を現す。

 

 目や鼻、耳といった器官はなく、巨大な口はだらしなく開けているが覗く棘のような歯がびっしりと隙間なく存在する。

 全身は5メートルを超えていて植物なのか葉脈が張り廻っており、タコの足みたいな触手で移動している物体。それに加えて頭部からは黒紫色の花が咲いて、そこからぬるぬるとした毒々しい液体を噴出し全身に被っている。そのため、滴り落ちる毒液は地面を紫色に染めてしまう。

 

 異臭の原因は間違いなくあのモンスター【ヴェノム・マライア】。沼地や森の奥深くに生息する植物型モンスター。

 

 強いプレイヤーでも近づきたくない種類のモンスター。プレイヤーが謙遜する理由は、特徴として多数のバッドステータス付加のスキルを多く持ち、逆に相手には特定のバッドステータスを与えれない嫌らしい性質を持つ。更には触れたり、【ヴェノム・マライア】が通ったところの紫色の地面は、バッドステータスの【毒】に掛かってしまう。

 

 が、すでにトゥルーたちを補足しているのかこちらに向かってくる。全身から垂れている毒液で、滑りながら接近してくるため巨体からは似つかわしくない素早い動きになっている。

 

 すぐにトゥルーは【スタンバイタイム】が終了した【ストライクアロー】を放つ。力いっぱい引き絞った弦から放たれた矢は、見た目からは想像できない強烈な砲弾と化した。

 

 スタン(気絶)効果付きのスキル【ストライクアロー】。だが、【ヴェノム・マライア】には何種類かのバッドステータスを無効化できる性質を持つ。

 

 トゥルーは目の前のモンスターがスタンによって、一時的にでも行動不可能となった隙に逃げようと思ったが、スタンは無効化されてしまう。

 

 だが、木属性に属する植物型モンスターは火属性の攻撃に弱い。

 トゥルーが持っている弓【ドラグーンボウ《ヴァーミリオン》】は、攻撃に火属性の追加ダメージを付与するため、それが効いたのか亡者のような苦しい呻き声を出す。そして、毒液は可燃性を持っていたのか、燃え上がり一瞬動きが止まる。

 

 しかし、燃え上がったのはほんの数秒で、すぐに鎮火してしまう。そして、攻撃を加えたトゥルーに向かって【ヴェノム・マライア】は、唾を吐き出すようにして口から毒液の塊を吐き捨ててくる。

 

 スキルでも何でもない【ヴェノム・マライア】の通常攻撃。それに加え、攻撃を受ければバッドステータスの【毒】に陥る。だが、予備動作が大きくトゥルーも、近くに居たクゥカも簡単に回避する。

 

 回避した後、すぐにトゥルーは【アサルトショット】を使用し、5つの矢を連続して射る。

 【ドラグーンボウ《ヴァーミリオン》】の効果で、火矢となり醜悪なモンスターに連続して深々と突き刺さる。

 

 そして、火矢で怯んだ【ヴェノム・マライア】に接近するクゥカ。うねうねと不規則な動きをする触手だが、獣並みの能力を持っている彼女にとっては悪臭の方がきつい。

 

 触手には捕まらず胴体まで近づき、ナックル【ライオクロー《子獅》】を装着した腕で殴る。火達磨になって怯んでいるうちに【格闘】スキルを2、3、4、と連続発動し攻撃を加え、【生命力】を削る。

 

 通常攻撃はダウン値があれば基本的には3回でMAXとなり、攻撃された対象は突き飛ばされ後退させられてしまう。それを超える回数分攻撃できるのは、相手が特殊な鎧を装備している場合やノックバックが発生しない大型モンスター。

 

 そして、もう一つは武器の特性がある。武器によって攻撃可能回数が説明文(フレイバーテキスト)に書かれている。レア度や種類によってまばらだが、格闘武器(ナックル)は攻撃可能回数が5以上の物が多い。

 

 これは素手においてはスキルの発動順が初手、弐手、奥手に制限される【格闘】スキルが、格闘武器を装着することで初手、初手、弐手、弐手、奥手のように順序や回数の制限が緩くなる。

 

 最後の【格闘】スキル、奥手【頸鋼羅列拳】。

 握りしめた拳に【スタミナ】が物理的な力となって拳に威力が加わる。その気は鋼のように固く、5層になって拳、格闘武器に纏われている。

 

 そして、その打撃で攻撃された【ヴェノム・マライア】は、5回ほど体に透明な爆発でも受けたかのような痛みを感じる。

 

【頸鋼羅列拳】は多段ヒット攻撃スキルであり、クゥカがランク58のため5ヒットだったが、スキルが100になると10ヒットになる。威力も高いが【スタミナ】消費が激しい。また、手に感じた痛みを察して、仕切り直しのために一度距離を取るクゥカ。

 

 手に視線を向けると【ヴェノム・マライア】が纏っていた毒液が、ナックルにへばり付いており隙間からしみ込んでいた。

 

「ちっ」

 舌打ちしてから、自分の【生命力】を確かめてみる。徐々に【生命力】が減少しているものの、致命傷には程遠い。

 

「大丈夫!?」

「問題ないよ!」

 トゥルーの声に気を張って返事を返すクゥカ。実際に痛みも肌がチリチリと日光で焼かれる程度の痛みで大したことはない。

 

 先程の攻撃でクゥカも攻撃対象に入ったためか、触手を叩き付けて来ようとする【ヴェノム・マライア】。しかし、単調な攻撃に捕まるほどクゥカもトゥルーも間抜けではない。

 そのまま触手を叩き付けた攻撃の隙を狙って、トゥルーは再度【アサルトショット】による連射で、クゥカは【毒】に陥るのを覚悟で【格闘】スキルを使用し【生命力】を削る。

 

 動きは単調。しかし、近接攻撃をすると【毒】に陥る厄介なモンスターだが、トゥルーのように火属性の遠距離攻撃手段を持っていれば容易い相手と思っていた。

 が、【生命力】を半分ほど削った時、【ヴェノム・マライア】に変化が訪れる。

 

 頭部の花から紫色の花粉が周囲にばら撒かれる。

 嫌な予感がして2人は離れようとするが、クゥカは【ヴェノム・マライア】に近かったため、花粉を浴びてしまう。

 

 降り掛かった花粉には【麻痺】、【沈黙】、【ステータスダウン】、【スロウ】、【鈍足】、【眩暈】、【脱力】各ゲージのスリップダメージなど、多くのバッドステータスをランダムで掛かってしまう。

 

 クゥカは【沈黙】と【スロウ】、【鈍足】、【スタミナ】が徐々に低下するバッドステータスが掛かった。【沈黙】はゲームでは【魔法】、【回復術】などの詠唱ができなくなるだが、喉の奥に何かが詰まったように喋れなくなってしまうクゥカ。

 

 もっと深刻なのは全ての動作が遅くなる【スロウ】と移動速度が落ちる【鈍足】。見えない重い服を纏ったように動きが鈍くなって、足は鉄球を嵌めたみたいに重く動かしにくい。

 

 そんな状態で敵の攻撃を避けることはできず、触手を叩き付けられた。

 

「――っ!?」

 

 悲鳴も【沈黙】の効果によって声を出せず、クゥカの体が宙を舞う。

 ゴロゴロと転がり、木にぶつかってやっと止まる。

 

「クゥカさん!」

 トゥルーはクゥカの方に照準を向けてスキル群【魔法弓】、【ヒーリングアロー】を使用して射抜く。本来相手を傷つける矢が、青緑に淡く灯り【生命力】を回復させる癒しの矢へと変わる。だがトゥルーは習得して間もないので、回復量は低い。

 

 さらに【毒】の継続ダメージが続いていたため、【生命力】が著しく減少したクゥカには一刻も早く【解毒剤】を与えなければならない。

 

 先程の【ヒーリングアロー】で敵愾心(ヘイト)が高まり、攻撃対象が自分へと変更された【ヴェノム・マライア】。体中の毒液で滑るようにして突進してくるのに対して、トゥルーはすぐに横に飛び退いて突進を躱す。

 

 急いでトゥルーは、アカザから貰ったアイテム【ガーくん01号】を使う。

 【ガーくん01号】がその場に出た瞬間、モンスターの敵愾心《ヘイト》が【ガーくん01号】に移る。そして、そのまま走り去っていくので【ヴェノム・マライア】は【ガーくん01号】を追いかけ始めた。

 

 でこぼこ道も【ガーくん01号】には関係ないらしく、一定の速度を保ったまま囮の役割を果たす。

 

 トゥルーはクゥカから離れるように使用したため、【ヴェノム・マライア】はどんどん遠ざかって行く。

 すぐにクゥカに【解毒薬】を飲ませ、【ヒーリング】で失った【生命力】を回復させる。

 

 その最中、クゥカが何やら焦った様子でトゥルーに何か伝えようと、重い腕を動かす。

「――っ!」

「え?」

 おぼつかない手でトゥルーの後ろ側を指さ差し、振り向くといきなり頭を殴打された。

 

「い゛っ!?」

 頭部に鋭い痛みと急に視界がぼやけて意識が薄くなっていってしまうトゥルー。

 その視界の中で自身を殴ったと思われる人物の断片から理解した。

 

(なんで……里のエルフが――)

 いつの間にトゥルーたちを取り囲んで居たのか。木の上、茂みの裏から姿を現し始めるエルフたち。そして、すぐに意識を失ったトゥルーと、動くこともままならないクゥカを縄で拘束して連れ去っていった。

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