ソードアート・オンライン ~名も無き冒険者達の追憶~ 作:天地春太郎
今年もよろしくおねがいします!
第三話です、またまたはじまりの日の話です
今回も、毎回読んでくださってる方にはおなじみの、初読み方はこれから覚えてください、あとがきにてネタバレぶっぱがございますのでどの様な話か知りたいだけの方はスクロールをぶっ飛ばしてください
それでは2013年のはじまりの日にはじまりの日の話どうぞお楽しみください
僕《
通販サイトを見ていた時、ふと、ここ数日TOP画面にでかでかと出てくるこの商品は一体何なんだろうと気になって調べてみた。
「・・・ソードアート・・・オンライン・・・」
その商品は、買ったはいいが封印してあったハード《ナーヴギア》のゲームだった。そして、このゲームに何か、今までに感じたことの無い'予感'を感じた僕は注文しようと通販サイトに戻って購入手続きを始めた。
今考えるとおそらくその瞬間、注文受付が始まったのだと思う。
驚くべきことに僕が注文手続きを終えた時にはもう注文受付ページには「SOLD OUT」の文字が出ていた。
11月6日
届いたパッケージをインストールして、特にすることの無かった僕は正式サービス開始後すぐにログインした。
「わぁ・・・・」
この世界に踏み入った僕は言葉を失った。
小説や漫画の中だけだと思っていた世界が今まさに自分の視界に広がっている。
感動のあまり僕はしばらくこの世界の在り様をただ呆然と眺めていた。
この《ソードアート・オンライン》についてほとんど何の予備知識も無く突撃した僕はまず何をしていいのかさっぱり分からなかったので、道行く人に片っ端から声をかけて、このゲームがどの様なものか理解した。
色々と説明はあったが簡単に言えばRPGだそうだ。ならば武器防具をそろえて魔王に向けて旅立つのが常だと思った僕は、武具屋を探して歩き出した。
この世界のNPCは正直僕には本物の人間かどうか区別が付かなくて驚いた。
「・・・普通の人だと思って話しかけちゃったよ・・・」
何はともあれ、僕はおよそ必要だと思われるアイテムや武具をそろえて街の外へ向けて歩き出した。街の北のほうにフィールドに出る門がありそこには色んな人が居た。
─ パーティの募集をかける人 ─ 装備に不安を覚えたのか引き返していく人 ─ エリアの端で人々を見回している人 ─ 全力疾走で街の外へ出て行く人 ─
僕はそんな人々を傍目に街の外へ旅立った。
フィールドでは大小幾つかのグループがあったが皆一様に青いイノシシに向かって剣を向けている。
僕も近場にいた一体のイノシシに目を凝らしてみる。するとそのイノシシに赤色のカーソルと《Frazy_Boa》と表示された。
「フレイジー・・・ボア」
「って・・・え・・・おぁ・・・わぁ!?」
僕が注目していたのに気づいたのか、そのイノシシは僕に向かって突っ込んで来た。
僕は右に体二つ分ステップを踏んでそれを何とか回避した。
「・・・すごいや・・・」
襲われているにも関わらず僕に飛来したのは飽くなき好奇心と高揚感だった。
襲ってくるって事は、モンスターなんだよな倒しちゃえばいいのかな・・・?
落ち着いて見れば大した突進でも無かったので二度目の突進をそんなことを考えながら回避しイノシシに向き直ると、イノシシは三度目の突進の構えに入った。
「よぉし・・・」
僕は先ほど購入した盾と剣を構えようとした、が・・・現代でこんなものに触れたことのある人間などいないだろう、僕も触った事はおろか見たことも無い代物だ、故に構え方なんてわかるはずもなかった。
それでも何とかしようと試みる。
・・・戦う・・・構え・・・
目を閉じて考えることをやめる。すると一瞬《ナーヴギア》に与えられているはずの感覚が遠ざかり、一つのイメージが脳裏に煌いた。そのイメージに身を任せ、武器に対して最適な戦闘姿勢と考えられる姿勢を取った。
相手に対して半身になり左手の盾を前に、力が一番入り安い位置に構えて、膝を軽く曲げ何時でも好きな方向に移動できるように備える。
そして半身にして隠れた右手は力を抜きつつも、相手の隙には必殺一撃を与えられるように剣を握っておく。
イメージ通りの姿勢をとり、目を開くと丁度イノシシが三度目の突進を始めた所だった。イノシシの直進軌道からわずかに体の軸を逸らし、待ち受ける。
ドドド!と地を鳴らし近づくイノシシの突進を盾で左に殴り逸らし、右に半歩移動する。
すると無防備なイノシシの横腹がさらけ出される。
そこに右手の剣で渾身の一撃を・・・
え・・・?
ここまでは意識した行動だった、しかしその一撃を与えようとしたところで剣に光が帯びて体が勝手に動き出す。剣が緑色に輝く光の軌跡となって目の前のイノシシを貫いた。
何が起きたかさっぱりわからなかった。でもたぶん、このときの僕は目の前に新しいおもちゃを山ほど与えられた子供のような顔をしていたと思う。
「あはは・・・本当にすごいや!・・・この世界は!」
この世界に来てから驚かされてばかりだ。
昨日までの僕の現実が嘘だったみたいに、この世界で僕は'はじめて生きてるって感じた'んだ。
あれからどれくらい時間が過ぎたのか辺りは夕日でオレンジ色に染まっていた。
僕は先ほど体が勝手に動いた現象について色々試してみたり、イノシシを倒しまくったりしていた。
しかしそれも少し前までで、今は視界の端に移る時刻を確認して少し憂鬱な気分になった。
「そろそろ・・・戻らないと・・・」
と呟いてウィンドウを開いた。
「・・・アレ?」
ログアウトボタンが・・・ない・・・?
そもそも、僕はまともにマニュアルを読まずにゲームを始めた為、ゲームの終了方法と言うものが分からなかった。
でも《ナーヴギア》のゲームはいくつかやったことがあったし、そのゲームでは基本的に終了ボタン的なものがウィンドウを開けば存在するはずだった。
周りの人に聞いてみようと辺りを見回して、一番近くにいたバンダナを巻いた赤髪の長身の男性と勇者然とした青年の二人組みにゲーム終了方法を聞こうとした。
次の瞬間、リンゴーン、リンゴーンと大ボリュームのサウンドが響きわたった。
「え・・・?」
僕は無意識に街がある方に振り返ってしまった。そこから何か・・・とても形容し難い何かが迫ってくるような感覚に囚われたからだ。
何かイヤな'予感'がするなぁ・・・。
と思った直後、僕の体を鮮やかな青い光の柱が包み込んで僕の視界を白く染めた。
次に視界に写ったのはこのゲームが始まったとき、最初にいた街の広場だった。
さらに、その広場を埋め尽くすように沢山の人がいた。
・・・どうなったんだろう・・・ワープ?
僕はそんな疑問を思い浮かべて、同時に一つの不安要素が解消されない事が気がかりで辺りを見回した。
自慢じゃ無いけど僕は幼い頃から何かの'予感'をはずしたことが無い。
そして、案の定、先ほどのイヤな予感が的中する悪寒が走った。
誰かが叫んだ「あッ・・・上を見ろ!!」と僕は反射的に上を見上げる。そこには赤い市松模様が広がり、さらに赤いフォントで《Warning》、《System Announcement》と交互に表示されている。
「なんだ、一体」と思ったところで、イヤな予感の正体が現れた。イヤな感じがローブを纏って現れたような、中身の無いローブが。
直後そのローブ語られたこの世界の説明。
曰く─この世界で死んだものは現実世界でも死亡する─
─このゲームをクリアするまで現実世界には戻れない─
─これはゲームではない僕らにとってもう一つの現実だ─
説明が終わった時辺りはまさに阿鼻叫喚だった。
にもかかわらず僕とってそのローブから語られたこの世界の説明は、イヤな予感とは違うものだったようだ。─ ローブ自体からイヤな予感はしているが。 ─
だから僕は、辺りの阿鼻叫喚に対して不謹慎だとは感じていたが、その顔に欲しかったものが手に入った子供のような無邪気な笑顔を浮かべていた。
この世界が今まさに現実に変わったんだ。僕の現実は今、この世界になったんだ!
僕は別に現実が決して嫌いなわけじゃなかった、でも心のどこかで感じていた。願っていた。
この世界みたいな非日常の世界が僕の世界にも訪れないか、と。
そして今、いつからだろう、望み続けたその世界は僕の現実となった。
辺りの阿鼻叫喚の中、僕は喜色満面でこの広場を去っていった。
あれから数週間、僕はこの新しい現実を堪能していた。
しかし、僕の新しい現実はまだ生まれたばかりのモノクロの世界だった。
ある日、第一層の迷宮区まであと少しのエリアで、僕は今、ちょっとしたピンチに襲われていた。
いや・・・絶体絶命のピンチかもしれない。
《はじまりの街》と呼ばれた街から出た僕は、北に見える次の層につながる塔に向かって草原やら、森やら、山やら、谷やら、を越えた先、草原と砂地が混ざったサバンナのようなフィールドにたどり着いた所だった。
その砂地側のフィールドで出くわしたモンスター、
それを追ってとどめを刺すとあたりの穴から、
これは・・・僕、大ピンチかなぁ?・・・というかこれと戦うのいやだなぁ・・・
などと、のんきな事を身の危険より、そのモンスターの不気味さを感じながら考えていた。
実際女性プレイヤーがこの場に遭遇したらモンスターの見た目だけで卒倒しそうだ。
「キシャァァァ!!」
くだらないことを考えてるうちに右斜め前の《サンド・ワーム》が奇声を上げて突進してきた。
それを右に避けつつ辺りに沸いたワームの位置と数を確認する。
・・・僕を中心に八方を囲むように最低一体・・・左側の数が多くて計12体・・・か・・・
数と位置を確認した僕は、右に回避した勢いそのまま右側にいるワームに突っ込み、背中から剣を抜き右上から斜めに切り下ろす、さらにワームとすれ違うように走り抜けワーム包囲網から抜けた。
「よぉし!」
このまま走り抜けて逃げる!と思っていたのだが・・・走り抜けようとしたさきに先ほどまで包囲網の左側にいたワームが一気に僕の目の前まで移動して地面から生えてきた。
「な・・・!?」
どう考えても絶望的な状況・・・でも何故だろう僕にはこの状況が楽しくて仕方ない。
僕はこの世界が現実になってから何度かこのような状況に陥っていた。その都度次の街においてある攻略本を確認すると特に危険な状況に上げられるものに酷似していた。
だから、きっと・・・
「またなんとかなる・・・さ!!」
そういう'予感'がある、特に今回は、このゲームと出会った時のような何かが起きる予感が。
「よぉし!!」と気合一声、二・三体のワームの突撃を掻い潜り、先ほど攻撃したワームにもう一撃与えるべく駆け寄る。はじめてイノシシを倒した時の現象をこの世界では《ソードスキル》と言うらしい。剣を構え特定の軌道で振り抜くモーションを感知すると、システムがその攻撃にアシストを働かせ通常では不可能な速度の攻撃が可能になる。いわゆる必殺技だ。
僕は駆け寄って攻撃範囲に捕らえたワームに片手剣基本技《スラント》を繰り出した。
「うん、計算通り!」
単発の通常攻撃と《ソードスキル》を与えた《サンド・ワーム》はHPバーを空にしてガラス片の用に砕け散った。
「次!」
と振り向いた直後、近場にいたワームの緑色の粘液をもろに被ってしまった。
え・・・・?
体が痺れて感覚が遠ざかる。僕はその場に膝を着いて動けなくなった。視界の隅に表示されている僕のHPバーが緑色に点滅する枠に覆われている。
・・・アレ、これ・・・本当に死んじゃいそう・・・だなぁ・・・何か起こりそうな予感がしてたんだけど・・・死ぬことだったのかな・・・ヤダナ・・・。
そこまで考えた時、草原になっていたエリアの方から物凄い気勢で翔けてくる長身の青年のシルエットが見えた。
「ぅおぉぉぉぉ!!」
こちらに走りながら僕の周りにいた二体のワームに投擲用短剣が突き刺さり僕から
一瞬で一体のワームを葬った青年はウィンドウを開いていたのかロングソードを持ったままの右手の人差し指を立てて何かを操作すると、左手の短剣が消えた。
その青年の背に先ほど投擲用短剣を刺されたワームが突進をかけようとしている。それに気づくと同時に僕の体の自由が戻った。
僕はすぐさま助けてくれた青年に向かっているワームにカウンターで《スラント》お見舞いする。この世界ではいくつかの条件で与えられるダメージにボーナスが付加されることがある、このカウンターもその一つで、ボーナスダメージはかなり大きなものになる。
投擲用短剣でわずかにしか削れていなかった《サンド・ワーム》のHPバーがカウンターのボーナスダメージが付加された《スラント》によって一気に空になる。
その間、後ろの青年も投擲用短剣を突き刺したもう一体のワームを倒した様だった。
そのまま青年と背中合わせにワームの群れに向かって構えた。
背中合わせのまま声をかける。
「ありがとう、助かったよ!」
「あぁ、こっちこそサンキューな、さっきの背後からの一撃は、やばかった。」
この時、この戦闘の最中感じていた予感はきっとこれだ。いや、絶対これだと感じていた。
今日、僕はこの人に会う。今朝からついさっきまでにつれて高まっていた予感はこれだったんだ。
一体のワームがこちらに襲い掛かってくるのに、体がほぼ自動で対応して感極まった僕は・・・
「きっと君は、僕の世界に新しい色を与えてくれる人なんだ!」
「・・・え・・・?」
僕は無意識にそう叫んでワームに切りかかっていた。その後の戦闘の間、視界に写っていない時でも─《Harut》─の動きが自分の体の一部であるように手に取るように分かった。
数分の戦闘の後、最後の一体になったワームを彼と僕の一閃が青い十字を描いてガラス片に変えた。
僕は疲労感からその場に腰を下ろして、助けてくれた少年を見上げた。こげ茶で長めの髪に長身で細身の青年だった。
「あはは、生きてたや、改めてありがとう!助かったよ」
「ん、あぁ、お互い、生きてて何よりだ。」
「あ、僕はオリエ、よろしくね」
座ったまま彼に握手を求める様に手を差し出す。
「どういたしまして、俺は───」
どうしてだろう彼がその名前を言う前から僕は彼の名前を'わかっていた'気がした。
「ハルート ─《Harut》─ だ、よろしくな」
そういってハルートは僕が差し出した手を取った。
「うん、よろしくね! ハル!」
やっぱり君は僕の世界に色をくれる人なんだ・・・
その手をとった時、僕はそう確信していた。
その後、僕はハルに連れられ一番近くの町《トールバーナ》にたどり着いた。
ここにたどり着くまでにお互いこのゲームが始まってどの様な経緯で今日まで過ごして来たのか話し合っていた。正確には僕がハルに質問攻めで、ハルの回答に対して僕はこうだったと一方的に会話していた気もするが・・・お互いに話し合ったのだ。
あと僕がガチガチの
《トールバーナ》の門を抜けたとき始めてハルから一つ質問してきた。
「大体のオリエの経緯はわかったよ、でも一つ気になることがあるんだけどさ」
「何かな何かな!? なんでも答えるからどんどん聞いてよ!」
ハルの方から、質問されたのが嬉しくて飛びつくように答えると、ハルはちょっと引きながら答えた。
「お・・・おぅ、えっと、さっきの戦闘で確かお前、俺がお前の・・・」
ハルがそこまで言ったところで僕はハルの質問を遮った。
「ぶぅ・・・また、'お前'」
ハルはここに来るまでの間に僕のことを基本'お前'と言うので、それが少し気に食わなかった僕は「僕は'お前'じゃないよ! オリエだよ!」と言ってやった。ハルは珍妙な顔をして「・・・お、おぉ」と答え、それ以来意識して僕を名前で読んでくれるようになった。しかし、時折'お前'が出てくるので、出てくるたびにこうして訂正させる様にしている。
「あ、あぁ、すまない、言い直す、さっきの戦闘で・・・そのオリエが、俺がオリエの世界に新しい色をなんとかってどう言う意味だったんだ?」
「え!? あー・・・エットそれは、その言葉のあやというか、その・・・」
ハルの質問に僕はどう答えていいものか焦っていた。というか確かに戦闘中心の中でそう思っていたけれど声に出しているつもりは無かったのだが、どうやら出ていたらしい。
う~どう答えても、変な奴だと思われるよー。
僕が「あー」とか「うー」とか言っている間、ハルは不思議そうな顔でこちらを見ていので、変な奴だと思われるの覚悟で説明してしてみようとした。しかしその意気込みは横合いからした、語尾に鼻声の被さる特徴的な女の人の声にかき消された。
「ん?ハル坊、見慣れない子とパーティ組んでいるナ」
「お、よぉアルゴ、久しぶりだな」
金褐色の巻き毛の小柄な女の子?がハルに話しかけてきた。
僕は不思議そうな顔でハルを見上げると、ハルはこちらに気づいて。
「あぁ、こいつは《鼠のアルゴ》って呼ばれている情報屋だ、今までの街や村に攻略本が置いてあっただろ?それはこいつが作っているやつなんだ。」
「あの攻略本を?へー凄い人なんだ、あ、僕オリエって言います。よろしく」
「アルゴダ、よろしくナ・・・・・オーちゃん」
ハルを介して簡単な自己紹介が行われる、何故かアルゴさんが僕を呼ぶときに不自然に間があったのはなんでだろう?
と少し疑問に思った所ハルが横からその疑問を解消してくれた。
「アルゴ、コイツ男だぞ?」
「ムム・・・まぁ微妙なところだかラ、オーちゃんだナ」
「あー、たまに間違われるんですよね、僕…」
時々初対面の人が僕の性別を確認してくるのだが僕はそんなに女に見えるのだろうか・・・。少々落ち込んでいると、ハルがアルゴさんと少し離れて何か話だした。
「アルゴ、ちょっといいか、オリエちょっと待っててくれ」
「んゥ、なんダハル坊?」
「実は…──────」
少し距離を開けて小声で話していたため僕には聞き取れなかったが無理に聴きに入るのもマナー違反だなと思って素直に待つ事にした。それから少し経って、二人は続きを話しながらこちらに戻ってきた。
「わかっタ、キバオウにはそう伝えておク」
「じゃあ、頼んだぞ、アルゴ」
「マァ、オネーサンに任せナ」
そう言ってアルゴさんはもの凄い速さで町の人ごみに消えていった。後にハルがこちらに向き直って、何か改まった顔でこう言い出した。
「オリエ、えっと・・・な・・・これから俺としばらくパーティを組んでくれないか。」
「え?」
少し詰まりながら言ったハルの発言が一瞬、僕は理解出来なかった。どうやってパーティに誘おうか考えていたら、まさかハルの方から誘われるなんて・・・
「イヤか・・・?」
「えー!?いやいやイヤとかそんな訳ないけど・・・うん・・・ありがとう、改めてよろしくね、ハル!」
はじめて助けてもらった時の様にもう一度手を差し出す。それを強く握ったハルは、はじめて僕に笑顔を向けて。
「おぅ、あらためてよろしくな、オリエ!」
この瞬間、モノクロだった僕の世界が色鮮やかに染まっていくのを感じた。
ここが、僕の世界の本当の始まりだ・・・
それから数週間で、瞬く間にこの《浮遊城アインクラッド》は三層まで進み、その間僕はハルにこの世界について色んなことを教わった。
この世界が三層まで進んだある日。
「とうとう来たぞ、オリエ!」
「え!?何?何?何が来たのハル?」
「ギルドが出来るんだ!」
ハルがいつもの三割増しのテンションで僕に話しかけてきた。三層だからだろうか? 百層だと二倍のテンションのハルかぁ、等と、意味の無い思考の後、ハルの言葉の意味がよくわからなかったので聞き返す。
「ギル・・・ド?ってなにかなハル?」
「ギルドってのは・・・活動目的が似通っていて、よくパーティを組む人たちが作る組織とでも言えばいいのかな」
「ふむ、じゃあ僕とハルでギルドを作るんだね!?」
「いや、違う」
即答されたのに泣きそうになったのは秘密だ。
「・・・じゃぁ、そのギルドがなんなの? ハル?」
「話すと長くなるんだが、一層で俺がオリエと会う前の話はしただろ? 俺はある一団と一緒に行動していたんだ、それでその人たちがギルドを作るらしいんだけど・・・」
「あー、確か僕とパーティを組んで僕を強くしてくれた理由って、ハルがもといた一団に僕を勧誘するためだったね」
「察しがよくて助かる、その通りなんだ、それでギルドもできるし、そろそろ皆と合流してお前も紹介しようと思ってさ」
僕の理解が正しければ、ギルドと言うものがハルの元居た一団によって形成されるので、僕の修行のために一時離脱していたハルもそのギルドに参加するので僕も一緒にどうだ? という話らしい。この話は僕にとってもハルにとってもいい話なのは間違いない。この話にのってギルドに入る事で僕の世界が急激に広がっていく予感がある。でもどうしてだろう、その先に何か、とてもイヤな何かが待ち構えている気がして、僕はハルの提案に快くうなずけ無かった。
「・・・うん」
「? どうした、何かあったか、オリエ」
「あっ、イヤなんでもないよ」
かすかなイヤな予感で遅れた返事に、ハルは少し疑問を持ったようだけど笑顔で訂正するとハルもそれ以上追及してこなかった。
そこに横合いから特徴のある関西弁の声がした。
「この街まで付いたんなら、はよう連絡せんかいハルート!」
「キバオウさん、お久しぶりです」
「おう、ほんで、そっちのがアルゴが言っとった例の有望株かいな?」
そういってキバオウと呼ばれた男性はこちらを挑発的な表情で探るように眺めてきた。・・・何でだろう僕はこの人が好きになれない気がした。
「はい、こいつです、オリエっていいます、オリエこの人がギルドのリーダーキバオウさんだ」
「よろしゅうな、オリエ」
「はい、よろしくお願いします、キバオウさん」
ハルを介した簡単な自己紹介を終えた後、キバオウさんは早速と言わんばかりに鼻をならした。
「ほな、早速ギルドについて説明していこか」
そういってギルド《アインクラッド解放隊》についての説明を始めた。正直ハルがこの集団に属しているという事がなければあまり興味の無い事柄だったので僕は話半分で聞いていた。内容はおおよそ、助け合っていち早く攻略を進めこのアインクラッドから皆を解放する。だそうだ。
「まぁ、ほんなもんやな、なんか質問あるかい?オリエ」
「あ、いえ」
「なにもないです」と言いかけて説明の中に理解出来ない単語があった事を思い出す。
「すいません、やっぱり、一つだけ、ビーターって何ですか?」
質問した直後、やはりこの質問はするべきでは無かったと感じた。何故かは分からないがそう感じたのだ。直後、その問いに対する回答が語られる。
「なんや、確かにガチガチの
最後のは、質問と関係無いよな。とか思いつつとりあえず礼を言っておく。
「なるほどわかりました。ありがとうございます」
続けてハルに、「ビーターって知ってた」と聞こうと振り向いた所で先ほどの質問をするべきではなかったと感じた理由がわかった。
何気ない雰囲気を装ってはいるが、ハルがビーターという言葉に動揺しているのを感じたからだ。
もしかして、ハルは・・・・
そう思ったところで、キバオウさんがアインクラッド解放隊の加入について切り出した。
「ほな、アインクラッド解放隊の集合場所にしとる酒場へ行こうか、皆に紹介するわ」
そういって歩き出すキバオウさんに付いていきながら、僕はハルに話しかけていた。
「ハル・・・・ハルは本当に・・・」
「どうした?オリエ」
「本当にアインクラッド解放隊に入るの?」と聞きたかった、しかし、どうしてだろう聞けなかった。きっと聞いてもハルは入るというだろうし、なんでそんなことを聞くのか問われた時僕はそれに対する明確な回答を持ち合わせていなかったから。
「ごめん、やっぱりなんでもないや」
だから、僕はこの時こう答える事しか出来なかった。
それから僕らはキバオウさん率いる《アインクラッド解放隊》に加入し当時トッププレイヤーと呼ばれていた集団に仲間入りした。
それからさらに数週間、《アインクラッド解放隊》に入ることで予感通り、僕の世界が広がっていく事を感じた。しかし同時に、このギルドに入る時に感じた不安が一体なんだったのか、刺さって抜けない棘のようにイヤな予感を残し続けた。
第六層のボスを倒し、第七層の主街区までたどり着いたその日、この《アインクラッド解放隊》に入る時に感じたイヤな予感がとうとう当たる日が来てしまった。あの日感じたイヤな予感がまさかこれほど取り返しの付かない事態になるなんて、その時まで思いもよらなかった。
「今回の戦いも、誰も死なんかった!きっとワイらはこれから先も誰一人欠かさずこの世界から解放されるんや!ワイらは協力していつかのその日にむけて進んでいくんや! 皆!今日の戦いお疲れやった! ほな、能書きはこの辺にして、第六層までたどり着いた事、今日も生き残った事に、乾杯や!!」
つい先ほど、解放された第七層の主街区にたどり着き、適当な酒場に全員が入ったところでキバオウさんが第六層ボス攻略打ち上げの開催の音頭をとった。
乾杯の音頭の後皆一様に、仲のいい者達で集まり、雑談をはじめる ─ 今日まで生き延びたことについて ─ 先ほどのボスについて ─ 女性プレイヤーとの仲について ─ ドロップしたアイテムについて ─ 等様々な雑談が聞こえてくる。
僕も隣のハルに飛びつき話しかけることにした。
「今回の戦闘も大活躍だったね、ハル!」
「オリエこそ、俺の攻撃に完璧に追撃をあわせてくれたじゃないか、流石だな」
「当たり前だよ!だってハルの動きをずっと後ろから見ながら戦ってからね!」
「・・・お、おぅ、そうか」
先のボス戦について何気ない雑談を広げる。僕はハルと何気ない会話をするこんな時間がとても好きだ、しかし時折ハルは引いた反応をしめすのはなんでだろう。
「おーおー"キバオウの二本牙"は今日も仲良しだなぁ、ハッハッハ!」
そういって横合いの軍団が茶々を入れてきた。
「もちろんだよ!」
「いや、まぁ否定はしないが、オリエ、あんまりくっつくのはやめようぜ」
僕が即答すると、ハルは若干呆れ顔で僕にそんなことを言ってきた。
何はともあれ今日まで生き残った事に皆、浮かれ、陽気になり笑顔の絶えない時間が続いた。そんな時間なのに、NPCがある料理を僕らの机に置いたところで急激に僕の背筋に悪寒が走った。
・・・な、なんだ・・・この感じ?
その料理を見たハルが、少しテンションを上げて料理に手を伸ばす。
「おーきたきた、コレが食いたかったんだよなー」
少しハルの発言に違和感を覚える。まるで昔にこの料理を食べたことがあるような・・・
その時、僕はハルに注意を促しておくべきだったんだ。僕はこの時すでに確信していたのだから・・・彼がベータテスターで、それを隠していることを。
その料理を口にしたハルは、ベータテスターでしかあり得ない発言をしてしまっていた。
「うっはー、やっぱ久しぶりに食べてもうまいなぁ! この料理は!」
場の空気が僕らを中心に冷たくなってゆく、ハルは自分で何が起きたのかわからないような表情を一瞬浮かべた後、自分が発言した言葉にどの様な意味があったのか理解したのか、その顔を青ざめさせた。そして少しの間を置いてキバオウさんが声をあげた。
「・・・どういうことや・・・ハルート? "今たどり着いたこの七層の飯食うて久しぶり"言うんはどういうことなんや!?」
「・・・・っ!」
キバオウさんの強い糾弾にハルが息を呑んだのが分かった。この反応はハルがベータテスターだと表すようなものだった。
「なんか言いや、ハルート」
キバオウさんの詰問は続く、ハルは俯いて体を震わせていた。ハルのそんな姿に居ても立っても居られなくなった僕はハルを擁護しようと立ち上がった。しかし、立ち上がった僕を制する様に手を出してハルが言った。
「・・・ごめんな、オリエ」
「どういう、意味・・・?」
僕の質問が言い終わらないうちにハルはすぐにキバオウさんに向き直り、意を決した様に言い放った。
「すみません、俺はあなた達が嫌って止まないビーターです、今まで隠していてすみませんでした。」
今までの静寂が崩れ去り、ハルに対する疑問の声が上がる。ざわつくその場をキバオウさんの一声がかき消した。
「静かにせいや! ・・・それは、ほんまかいな? ハルート」
「はい、事実です」
キバオウさんは少し悩む様なそぶりを見せた後、決定的な一言を口にする。
「・・・・聞きとうなかったな・・・ハルート・・・わいら《アインクラッド解放隊》の理念の一つとして、ビーターなんぞに頼らんゆうもんがある、故にお前は追放する! 何か言い残すことはあるかい?」
「・・・何も・・・ありません・・・今まで、隠していてすみませんでした」
そういってハルは酒場から出て行こうとする。
「待って、ハル!」
僕はそれを引きとめようと立ち上がり声を上げた、途端、ハルは駆け出し酒場から出て行った。すかさず僕はそれを追う。「やめや!オリエ!」と静止の声が飛んだ気もしたが、このときの僕にその言葉を冷静に受け止める余裕は無かった。なぜならこの時、僕は今までに無いほどのイヤな予感を感じていたから・・・
ハルは《転移門》一歩手前で立ち止まっていた。僕はその背中に目一杯叫ぶ。
「待ってよ! ハル! 何で何も言い返さなかったの!? ベータテスターだってハルはハルだよ! 今まで仲間としてやって来たのにそんな理由だけで追放されるなんておかしいよ!」
何が言いたいのか纏まらないでも纏わりつくこのイヤな予感を振り払うように叫ぶ。
「イヤ・・・僕はそんなことが言いたいんじゃない・・・ハルが解放隊から出て行くっていうならそれでもいい、でも、だったら僕も連れて行って! 僕は解放隊に入りたくて入ったんじゃない、君がいたから入ったんだ! その君が出て行くなら僕が解放隊にいる理由なんて無い!・・・だから!」
そこまで叫んだときハルはこちらに振り向いて、何も悟らせまいとする表情でこう言った。
「オリエ・・・お前は、俺みたいにならないでくれ」
言い終えるとハルは一歩下がって《転移門》に入り、どこかに《転移》して行ってしまった。
その場に膝を着いてうな垂れる、結局この纏わりつくイヤな予感に押しつぶされて僕は呟いた。
「・・・・どうして・・・ハル・・・僕が嫌いになったの・・・?」
その問いに答えるものは誰もいない。そして僕は、おそらく生涯はじめての涙を流していた。
その涙は僕の世界の色を洗い流し、ハルと出会う前のモノクロの世界に変えていった。
それから三ヶ月、僕ら《トッププレイヤー》は破竹の勢いでこの世界を進行し、第二十五層までたどり着いた。
けれど、僕の世界は、未だモノクロのままだ。
新年そうそう長文に付き合ってくださった皆様、あとがきだけ読もうとここまでスクロール飛ばしてくださった皆様、ありがとうございます。
2013年はじまりの日に前回に引き続きまたはじまりの日いかがでしたでしょうか?
時系列何も進んでねぇ!だとか、え?この話前回からどうやって続いてるの?様々な感想があるかと思いますが。
恒例のネタバレぶっぱに加えて現状までまとめも行きましょうではまず本編を百字でまとめます。
二人目の主人公がSAOをはじめて一人目の主人公に出会ってアインクラッド解放隊に入ってこじれて一人目の主人公と別れる
はい、以上です、以上ったら以上です。
加えて三話までの話の流れは以下の通りです。
はじまりの日一と二から二の後半からプロローグ
実にわかりづらい作品ですいません、ですがこんな感じで続けていきたいと思います。
そして三話終了にしてやっとプロローグにたどり着くのかよ!?と思った方そうなのですやっとプロローグなのです!
二節から読んじゃってる方はぜひプロローグを読んでやってください次回はあの続きからはじまる予定です。
長くなりましたが恒例のネタバレコーナーはここまでであとがき本編いきましょう!
はいこの三節の主人公、オリエ君ですが。「こいつ、ニュータイプか!?」って具合にニュータイプしてます。意味が分からない人は[ガンダム ニュータイプ]で検索してみてください。
感じただの、予感だの、でこれから先に起こることを片っ端から予測しちゃうキャラを表現してみたのですが・・・実に分かりにく文章になってしまった様に思います─タダでさえわかりにくい文章なのに─すみませんでした。
それでもこのオリキャラ ハルート&オリエいかがでしょうか?中々仕上がっていると思うのですが!?
あと今回も出てきちゃいましたアルゴさん、今後もゴリゴリ推していくのよろしくおねがいします。
本編にはあまり関係ない話ですがSAOのアニメが終わりましたね・・・その最終回のオフ会・・・アルゴさんがいねーじゃねーか!!!と叫んだのは私だけでしょうか?─まぁ原作でもいなかったですけど─
さらに今回も文中にアレこれキリトじゃね、クラインじゃねと言う描写があったのですがお気づきでしょうか?実はアレこれハルートじゃねというのもあったり実は実はハルート視点の二節でアレこれオリエじゃねと言うのもあります
筆者はこういう文章に何か潜ませるのが大好きなので今後もこういう隠れ誰々じゃねを織り込んでいこうと思うので、見つけた方はニヤニヤしていてください
最後になりますが今回はSAO本編からの抜粋はおなじみ序盤展開以外は皆無で完全にオリジナルストーリー展開です、これからオリジナル展開がガンガン進行していくのでお楽しみに!
それでは今回はこの辺でキーボードを置かせていただきます。
それでは今年もよろしくおねがいします!