魔法少女リリカルなのはViVid~死神との協奏曲~   作:凸凹凹凸

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続けて投稿えいやそら!


『似た者兄妹』

 

 轟、と周囲を響かせたその衝撃は、余波となりカリンの肌まで感じ取れた。

 一体どれほどの思いを乗せた一撃だったのだろう。

 一体どんな思いで打ち込んだ一撃だったのだろう。

 

 対決を申し込まれた赤髪の女性は、ゆっくりと意識を朧気に地に伏していく。

 それを最後まで見下ろしているのは、ミッドチルダの現代に甦った《覇王》の姿。

 そしてポツリポツリと呟いたあの言葉に、カリンはまるで、心の根底にまで沈み込んだ言葉。

 

「弱さは罪です」

 

 倒れたことを確認し、振り返る。

 

 「弱い拳では……誰のことも守れないから」

 

 月が見下ろす夜天の下で、大きくも小さく見えた《覇王》はゆっくりとその場から消えていった。

 固唾を飲むカリン。

 何をしよう、とかそんなことを考えることも無しに、肌で感じたあの少女にカリンは放っておくことがもう出来ないでいた。

 走り出す衝動を押さえ込みながらも、側にいる兄にへと言葉をかける。

 

「……一兄、あたし」

 

「……俺が行く……って、普通はなるんだが、今のアイツにお前が負けるハズがねぇか」

 

 兄・一護(いちご)は、その眉間に皺寄せると人相が怖くなることに定評がある兄だが、カリンはそんな兄に真摯に見つめる。

 一護も溜め息を一つ吐いたことで、笑みを作って『任せろ』と伝える。

 

「いってこい、……俺も放っておくことは出来ねぇよ」

 

「……やっぱ兄妹だね」

 

「違いない」

 

 そう言葉を交わすと同時に、カリンは既にその場を駆けていた。

 

「……本当に俺の妹だよ、お前は」

 

 一護は心配しながらも、何処か『アイツなら大丈夫だろう』と理解してしまっていた。決して泣き言を言わないで、引くことを余り知らない妹を思いながら、一護はあの《覇王》からコンクリートを凹ますほどの重い一撃を食らって寝ている女性に近寄る。

 気絶してたと思っていたが、まだ完全にオチてはいなかった。

 

「凄いな、まだ気絶してなかったか。すげぇ丈夫なんだな」

 

「お、まえは? ここ、で何して、んだ」

 

 息を吐くのも辛そうな彼女に、一護はガシガシと頭を掻きながら、取り合えず移動することにした。

 ゆっくりと近付き、肩に触れようとしたが、ブン! と何かが吹いた音がする。赤髪の女性が気力を振り絞り、精一杯の力で抵抗したのだろう。

 その胆力に一護は目を見開いて驚くが、今の動作をしただけでも、かなり痛そうな表情となる彼女。

 

「さわるな、コノヤ、 ロ……ォ」

 

「……ハァ、面倒くせぇ」

 

 一護は弁解とかそんな感じのことを考えると一気に面倒になってきたのか、こちらも一気に彼女を抱え起こす。

 痛みで朧気だった彼女は、身動き出来ないことをいいことに〝お姫様抱っこ 〟されたことで意識が一気にカッ! 覚醒する。

 

「う、うやああぁぁぁぃぃぃぃっっ!?」

 

「うぉぉぉぉ!? 嫌がるとは思ったが予想を越えた!」

 

 流石はストライクアーツ有段者、普通のジタバタを越えるジタバタで、至るところを殴打されるが、一護は頑張って海を見渡せる歩道に設置された椅子に座らせる。

 

「おい! そのデバイスが警察に緊急通報する前に止めてくれ! うん、警察じゃねぇ……時空管理局の局番じゃねぇか! 混乱し過ぎだお前!」

 

「ウルセー! はなれろー!」

 

 痛みを忘れ、今も尚暴れている彼女・ノーヴェを落ち着かせながら、一護は距離を取って冷静にさせようと試みる。

 だが、瞬時に一護の意識は背後に向けられる。

 

「いきなりだな!」

 

「…………ッ!?」

 

 弾く打撃音、迫り来る貫く拳撃が一護を絶え間なく襲いかかる。

 連撃が止まる気配が無いと感じた一護は、直ぐに体勢を整えると、攻勢にへと変えた。

 突如襲いかかった襲撃者の一撃一撃は確かに、急所に嵌まれば意識を奪いかねないものだったが、一護にとってはまだまだ(・ ・ ・ ・)といったところ。

 勢い余ったその拳撃に、一護は冷静に見切り、腕を掴んで一気に力任せで引き上げた。

 

(感触からして……男!)

 

 だったら容赦無し。

 一護は相手を気絶させる勢いで、背負投(せいおいなげ)の要領で一気に地面にへと打ち付けた。

 バシンッ! と気持ちの良い見事な背負投を披露してしまった一護は、思わずここが畳でもないコンクリートの地だとすぐに気付くと、襟を掴んでいたので頭の打ち付けは無かったが、胴体や脚部にはかなりの痛手を負った襲撃者に顔を向けると、

 

「……こりゃかなりのイケメンだな」

 

「いや、そこじゃねぇだろ」

 

 ノーヴェのツッコミを貰いつつ、恐らくバイザーを着けていたのだろう、側にバイザーが落ちており、襲撃者は素顔を晒している。

 

「……?……コイツは一体何なんだ? 気絶しちまったが」

 

「……背負投で気絶させるお前も何なんだよ、本当に」

 

 ノーヴェは一日の終わりに、まさか怒濤の展開に巻き込まれるとは思いもよらなかったと空を仰ぎ見た。

 とても綺麗な夜空だったが、先程密かに連絡した義姉のスバルが来る頃だと思うと、説明するのが億劫なことに、嘆くのだった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 カリンが一護と離れてから、すぐにアインハルトの霊圧を探りながら、とあるコインロッカーまでやって来ていた。

 

「はぁはぁ……、確か、霊圧はこっちに合ってるハズ……」

 

 周囲を探すカリンだったが、一人の綺麗な女性が小さな少女をおぶっている所が見えた。

 私服を着ているが、彼女から感じる魔力から放たれる霊力を感じ取り、かなりの実力者なのだと大体分かった。

 

「あのっ!」

 

「はい?」

 

 思わず声をかけてしまったカリンだったが、意を決して彼女に聞く。

 

「その娘をどうするんですか? まさか警察に連れていくとか……」

 

 警察と言った言葉に、彼女は直ぐに何かを理解したのだろう。背丈まで伸びた長髪を揺らしながら、カリンを真っ直ぐに見つめて話しかける。

 

「大丈夫よ、私は時空管理局所属の執務官、ティアナ・ランスター。この()は一度私の親友の家に連れて行って治療をするだけだから、警察になんて突き出さないわ」

 

「でも、執務官(あたな)の親友の家に連れて行くんでしょ? その人は警察関係の職じゃないっていうの?」

 

「そうねぇ、いきなりそんな話されても困惑するだけよね」

 

 そう言って、ティアナ・ランスターと名乗った女性は背負った小さな少女、アインハルトをカリンに見えるような位置にへと移動させる。

 カリンから見た目でも、かなりの疲労と蓄積されたダメージで気絶していた。だがそれが余計に心配になる。

 

「あらら、更に眉間に皺が寄っちゃって……失敗しちゃったかな? でもこればっかりは信じてとしか言い様がないわね」

 

 きっと他にも用があるのだろう。このティアナという人は執務官。法に則った仕事を受け持っている。その役職からして、街頭試合をしていたアインハルトを見逃すことは出来ないのだろう。

 ただ、推測してみるが、一護にも言ったように目立ったニュースも聞いたりしていないし、それほど重い罪にもならないと思うが、

 

「…………………………」

 

「いや、だからね」

 

 少し頑なになっているカリンにやはりティアナはどう説明したものかと困っていると、ティアナのデバイスから通信音が鳴ると同時に画面が出現する。

 

『お~い、カリン居るか~? ……これすげぇな、俺大体通信端末だったし、こんな高価なもん持ってねぇよ』

 

「えっ! ……一兄!?」

 

 いきなりの兄の出現にカリンが戸惑っていると、画面の向こう側でも何やら騒いでいる。

 

『えっ、嘘っ! お姫様抱っこされたのノーヴェ!? ちょっとそれ凄いよ♡ やったねノーヴェ!』

 

『おい話聞いてたかバカ姉! 私は襲われたんだぞ!』

 

『それこそ待て! 俺のことじゃねぇよな!?』

 

 え~と、とティアナも困っていると、一護はカリンに向かって話をつける。

 

『取り合えず後日、話に聞けるらしいからな。ここはこの人達に任せるぞ』

 

「なっ、そんなの!」

 

『納得出来ない、だから後日聞きに行くって言ってんだよ』

 

 きっと兄も同じ反論をしたんだろう。だからきちんと後日会って話を聞けるところまで約束してくれたんだ。

 そこまでしてくれたのだから、カリンも我儘を通すほど子供でもない。

 

「……分かりました。ティアナさん。失礼しました」

 

「ううん、別にいいのよ。疑うことは間違った事じゃないわ。私も説明下手でごめんね」

 

 決して悪くないのに、ティアナの大人な対応にカリンは思わず小さな嫉妬心さえ芽生える。とても綺麗なのに執務官という高難易度を誇る職務に就いているこのお姉さんになら嘘もないだろう。

 後日会えると言っているし、カリンもその場を後にすることとなった。

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 そして後日となった次の日、

 

「で、ちゃんと朝から来た訳ね」

 

 そう出迎えたのは、昨日カリンと出会った執務官のティアナ・ランスターという女性。普段着なのだろうが、一瞬だけモデルようにも見えた。

 やって来たのは昨日、街頭試合を目撃した二人、一護とカリンだった。

 

「来ないと思ったのかよ」

 

「いいえ、二人揃って強情そうだから、例え風邪ひいても絶対に来ると思ったわ」

 

「カリン風邪ひいたのか?」

 

「例えよ、例え」

 

 微笑んでみせるティアナに、カリンは思わず見惚(みと)れてしまったが、すぐに別の事に意識が向いた。

 件のアインハルトの話だった。

 

「ちょうどアインハルトさんも起きた所なの。ねぇ、あなた達朝食は食べた? 食べながら話をしようとしてたんだけど」

 

「ユズを、……妹を説得させる為に何杯もごはんを食べてきたからあたしはいらないかな」

 

「俺もどっちでも良い……って、これが困るのか……。だったら俺はそこらの自販機から缶コーヒーでも買ってくるから」

 

「いいわよ、コーヒーくらい出せるから。それじゃ中にどうぞ、って言っても私の家じゃないんだけどね」

 

 自販機探しに行こうとした一護だったが、すぐに引き留められて中に入るようティアナから促された。

 癖なのか、また少し頭を掻いて、一護はカリンと共にティアナの親友、スバルの家の中にへと入って行った。

 中は急いで片付けました感を少しだけあったが、かなり綺麗に片付けられている。

 

「ここよ」

 

 ティアナに案内された場所に行くと、そこに待っていたのはベッドから起きたばかりなのか、朝食を置かれたテーブル前にちょこんと座っている少女と、一護を殴打しまくった赤髪の女性がそこに居た。

 

「あぁーー! 昨日のセクハラ野郎!」

 

「口が悪ィなお前」

 

「お前じゃえねェ! ノーヴェだ」

 

「それ言わなかったろ昨日。それじゃわかんねぇよ」

 

 一護がキョロキョロと見渡すと、後ろから青いショートカットのボーイッシュな女性がマグカップにコーヒーを入れて来てくれた。

 

「スバルさん? 昨日は直接自己紹介出来なかったが、俺は黒崎イチゴ。勝手に話を進めて悪かったよ」

 

「うん黒崎くん、昨日ぶり♪ そんな事ないよ、キミが来てくれなかったらノーヴェがあの子(・ ・ ・)に何かされるところだったかとしれないからね」

 

 カリンも昨夜、一護から話を聞いていたが、カリンがあの場から居なくなった後。ノーヴェと一護に襲撃があったという。

 しかし、一護はそれを呆気なく撃退。そのまま襲撃者を〝保護〟したという。

 なぜ〝保護〟なのか、それはカリンも今日スバルの家を来るまで分からなかったのだが、すぐに合点がいった。

 

「一兄を襲ったのも、子供だったのか」

 

 一護を襲った人物。それは、アインハルトと同じ瞳をしている少年だったのだ。その少年は未だ眠いっているらしく、まだベッドの上だ。

 

「……すみません。この子は双子の弟、クラウドといいます」

 

「おっ、喋ったな」

 

 この中で一場背が高い一護は、スバルからコーヒーを受けとると、取り敢えず壁際に座る。既にテーブルにはノーヴェ、アインハルト、ティアナ、スバルの座るところがあったからだ。

 だがカリンはスバルに連れられ、隣に座らせられてる。

 

「双子か……確かに髪の色も、瞳も同じだな」

 

「双子……? でも見たことないぞ。あたしも同じSt.(ザンクト)ヒルデの中等部を通ってるけど、〝クラウド〟って奴は知らないぞ。しかもアインハルトの双子の弟だって?」

 

 一護が納得していたが、カリンは心底不思議そうに聞いてきたが、アインハルトはペコリと頭を下げて挨拶してくる。

 

「おはようございます、黒崎カリンさん。まさかあなたまで巻き込んでしまうなんて、本当に申し訳ありません」

 

 

「い、いや、そんな事別にいいんだよ。あたしが勝手に巻き込まれに行ったんだから……(ユズに頼まれただけだし)」

 

「それでも、すみません」

 

 カリンもばつの悪そうにして、アインハルトの頭を上げさせる。そんな様子を見て笑っているノーヴェやスバル、ティアナ。一護はクラウドに目を向けている。

 

「本名、アインハルト・ストラトス。St.(ザンクト)ヒルデ魔法学院中等科1年生に、喧嘩屋だったのか」

 

「アインハルトにはカリンが関わって、クラウドにはイチゴが関わってる。だから情報を伝えているけど、本当に本来はここまで教えたりしなんだからね? 絶対に口外しないことを約束よ?」

 

「しねぇよ、する必要ないだろ 」

 

「あたしも、わざわざそんなことしない」

 

 ティアナは口を酸っぱくして説明しようとしていたが、この黒崎兄妹が真っ直ぐブレない瞳を向けられ、自然と閉口してしまった。

 

「ふふふ、ティアナ。大丈夫だよ、この二人なら」

 

「はぁ……スバルは、またそんな」

 

 しかし、ティアナも深く疑ったりしなかった。執務官といってもまだまだ経験不足がち、それでも培った経験は少なからずある。その中から導き出した僅かな勘を頼ってみる。この兄妹(きょうだい)はそんなことを簡単にしないだろうと、

 

「ま、アインハルトの素性はそれだけしか分からなかったからな。こちらとしては話を聞きたい」

 

「……はい」

 

 満を持して理由を聞く。

 このアインハルト・ストラトスという少女は古代ベルカ時代に存在した《聖王》や《冥王》と並ぶ《覇王》の直系子孫だというのだ。《覇王》と呼ばれるようになる初代覇王の記憶が甦るらしい。

 記憶伝承。または記憶継承と呼ばれるもの。

 先祖の記憶が甦る。

 

「……それで強い奴と戦って格闘家相手の連続襲撃犯となる」

 

「〝自分の強さを知りたくて〟か」

 

 一護とノーヴェは静かにだが、しっかりと伝えてくるアインハルトに、合間みる苦悩が見えた。

 

「……大昔のベルカの戦争が、その娘の中ではまだ終わっていない」

 

 スバルには『友達』となった《王》連なる人物たちがいる。だが、いずれも過去に関わる大きな出来事によって苦悩に苛まれていた。

 それだけでも、スバルは自分のことのように心が締め付けられた。戦争を経験をした訳じゃないが、死線は幾つも潜り抜けてきたつもりだ。しかし戦争はその死線が常に付いて回る。そんなのどうやったって耐えきれない。況してや『王』の立場となれば見方も辛さも変わる。

 

(スケールが大きな話に関わったまったか)

 

 一護はそんな話を聞いて、少なからずあの小さな彼女には同情した。常に辛い過去を見せられる。それは大人でも耐え難いものだろう。

 それでも彼女は、先祖の思いを真摯に受け止めた。先祖の子孫として、先代の遂げられなかった思いを胸に抱いて生きてきた。

 

(……カリンもそう感じてるだろうな)

 

 コーヒーを飲みながら、一護は妹を見ながら思う。まさか同級生がそんな事情を抱えていたなんてと、

 

「そっか……」

 

「聖王と冥王を倒したいって、言ってたけど」

 

「……そこは少し違います。古きベルカのどの王よりも覇王のこの身が強くあること、それを証明出来なければいいだけで、聖王家にも、もちろん冥王家にも恨みがあるわけではありません」

 

 その言葉に、スバルは小さな笑みを浮かべて安堵する。『友達』を心配していたから、少しだけ気を張っていた。スバルは『そう、なら良かった』と告げる。その言葉を受けたアインハルトは、ポツンとしてしまうが、スバルはその聖王と冥王の仲良しなのだとティアナから説明される。一護とカリンはスバルが一体どんな繋がりなのだと驚いていると、

 

「あとで、近くの署に一緒に行きましょう。被害届は出てないって話だしもう路上で喧嘩しないって約束してくれたらすぐに帰れるはずだから」

 

「身体の方も心配だから診てもらおうね」

 

 ティアナとスバルの言葉に、アインハルトは何処か茫然としていると、ノーヴェも話乗っかる。

 

「あー……私も行くよ。当事者だしな」

 

 そう言いながら、優しく笑みを浮かべてアインハルトを見る。

 流れがどんどん決まっていく中、一護だけは眉間に皺を寄せている。妹であるカリンは今の一護の状態どういったものなのか理解しているからか、余り関わっていないが、ティアナとスバル、ついでにノーヴェが少し気にしていたりしていた。

 

「(ちょっとスバル! なんかコーヒーに入れたんじゃないでしょうね!? 凄い眉間に皺を寄せてるわよ)」

 

「(ぇぇ~!? いや普通のだよ!? 普通のコーヒーだよ! もしかしたら苦かったかなぁ? でもでもそれだけでもあんな顔……)」

 

(……まったく)

 

 小声で話すティアナとスバルを横に、ノーヴェだけは少しだけ分かったことがあった。それはこの黒崎一護と対峙した、寝ている少年・クラウドのことを考えているのだろうと。

 一護から見れば、クラウドもかなりの格闘技を誇る技を沢山持っていた。傍から見ていたノーヴェだから分かるその理由が、やはりこの二人の『実力』。

 

(誰も見てねぇのか? 誰も気付いてねぇのか? このイチゴとクラウドって奴がどれだけ強いかを……?)

 

 正直ノーヴェは、一護と戦えば勝てる自信が一つも出てこないと思った。地盤が違う。基礎が違う。実力が違う。全部が違って見えてくる。

 実際に戦っていないし、本当にそれだけの実力を持っているかどうかわからない。だが、肌で感じる。

 

「それじゃ、行くんだろ? ホラ、イチゴちゃんも行こうぜ」

 

「あぁ? テメー」

 

「名前聞いたらこっちもヤル気無くしちまったよ。可愛い名前だな」

 

「ごのッ、ぐぅっ!」

 

 プルプルと震え、怒号を飛ばそうにも小さな少女や女性が殆んどを占めているこの場では強く言うつもりがない。それ故にノーヴェ優勢に立つと、ワハッハッハと機嫌良くし、寝ている少年にノーヴェはちょい蹴りを放つ。

 

「……イテ」

 

「やっぱ起きてたか」

 

 小さな蹴りを食らったであろう、碧銀のショートカットに虹彩異色の両目、そして無表情なその顔はアインハルトを男にしたような輪郭となり、思わずノーヴェたちは見惚れてしまう。

 

「…………………………(スゥゥゥ)」

 

「ちょぉっ!!」

 

 全員がクラウドに視線が向いていたというのに、ある意味男らしく堂々とそのベッドの持ち主であろうスバルの毛布の臭いを嗅ぎまくる。スバルは顔を真っ赤にさせて止めに入ると、素直にスバルから毛布を引き剥がされる。

 

「コラコラコラ! ななな、なにしてるかな君は!?」

 

「瑞々しく夭々(ようよう)たるピッチピチなお姉さんのベッドの臭いを嗅いでました」

 

「ど、堂々としてカッコいいけどなんかヤダ!」

 

「いや、カッコいいんかい」

 

 義姉の間違った注意(ツッコミ)に更にツッコミを入れてあげるノーヴェだったが、クラウドはアインハルトを救助するようにアイコンタクトをして求めているのを目撃する。

 アインハルトはコクリと頷くと、自分用に貰ったオレンジジュースをスバルに持ち上げられたクラウドまで持ってくと、

 

「たーんとお飲み」

 

「…………ゴクゴクゴク」

 

「いや違うだろ!」

 

 またしてもノーヴェがツッコむ。

 埒が明かないことを知ったティアナが、再度堅く口外しないよう一護やカリンに注意をすると、また何か知ったら連絡を寄越すことにするらしい。

 一護が『結構重要そうな話だと思うんだが、俺たちも知ってもいいのか?』と質問してみたところ、変にアインハルトやクラウドを調べて、また新たなトラブルを起こすよりはマシだという判断らしい。

 言われた本人たちだが、少し理解してしまう。たまにだが、自分を押さえられず、暴走して周りに迷惑をかけてしまう可能性があるかもしれないからだった。

 

 そして、一護とカリンはアインハルトやノーヴェ達とまた連絡するからと別れ、帰宅中。特に話をする訳でもなく街中を歩いていくと、ふと一護は通信端末を取り出す。

 

「……誰に連絡するの?」

 

「歴史とかそんなん詳しい人」

 

「ベルカのこと聞くの?」

 

 カリンは動きやすいよう改造されたSt.ヒルデ学院の制服を揺らしながら、兄を見る。放っておくことができない兄を、カリンは溜め息を吐きながらもニコッと笑う。

 

「誰に聞くの」

 

「まぁ、決まってるわな」

 

 そして、一護も笑う。

 

 

 







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