魔法少女リリカルなのはViVid~死神との協奏曲~   作:凸凹凹凸

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はい、カメ亀タートル更新です。

あれ?……アニメ……終わっ………………。





ごめ、ごめんなさ…………(T-T)





『見えない動き』

 

 

 

 その昔、古代ベルカ時代と呼ばれる戦乱の時。

 幾百、幾千、幾万と、大小問わず生命が消えていく【死】が広がる。

 そこにはまだ『少年』と称されるくらい幼い子供たちが、まだ大人にもなっていない子供たちが、火花散り、爆炎が蔓延る広野を駆け巡る姿があった。炎の海を自ら飛び込んでいく。

 故郷を守る為。大事な家族を守る為。そして、愛して止まない国の為に、少年たちは命を張った。それは一体どれだけの効果をもたらしたか、それはどれだけの『憎しみ』を生んだか、少年たちは知らない。

 恐怖で足が竦んでも、敵は止まらず喉元を食い破る。

 殺されなければ殺される。

 狂気が正気を蝕んでいく。

 それでも力無き子供(モノ)たちは、真っ赤な血を流し、母の名を呟きながら絶命する。

 

 少年は母と妹を護る為に剣を取った。迫ってきた敵に首を跳ねられ死んだ。

 少年は母と姉を護る為に槍を取った。設置された地雷にて爆散して死んだ。

 少年は母と祖母を護る為に弓を取った。数十の矢が五体を貫き、原型留めず死んだ。

 

 少年たちは恐怖に駆られ、逃避する。それでも死から逃れられない。

 母に会いたいと叫び、死んでいく。

 泥塗れになり、片腕にもなり、片足にも片目になっても生き延びたい。炎で焼かれ皮膚が溶け落ちようと生き延びたい。爆撃を受け、体が散っても生き延びたい。

 生き延びたい生き延びたい生き延びたい。

 生きて、優しい母に、会いたい。

 それだけを願って、死んでいった。救いも無い、戦争の中で、焦げた黒顔に涙を浮かして死んでいった。

 

 

 

 女たちは泣き叫んだ。

 

 

 

 己が武器を持てず、我が子を戦場にただ送り出すことしか出来ないことを血の涙を流し、嘆いた。

 城に籠り、我が子の無事を願うものの、光輝く衝撃と共に城が崩れ、女たちは死んでいく。

 籠る怨念の声、子を想う母の声。

 幼き子供を抱きたいと、泣いて強く抱きたいと、生きて子供を抱きたいと、女たちは泣き叫ぶ。

 憎む憎む、戦争を、王を憎む。

 

 だが、覇王は歩む。

 

 粉して砕く。

 

 血の道を、

 

 自国の民を護る為。母国を尊ぶ民の為。祖国を亡国にしないが為。覇王は覇王であり続けた。

 死にゆく女子供の亡骸を抱き、血塗られた大地を清浄にする為に、粉して砕く。

 愛する女を見送ることしか出来なかった脆弱な王など要らぬ。強き者こそ力を誇る。強き者が(いくさ)を支配する。

 

 我最強者(ワレハモットモツヨキモノ)

 是武以覇成(コレブヲモッテハヲナセバ)

 天下泰平求(テンガタイヘイヲモトム)

 彼王成遂(カノオウガナシトゲリハ)

 真平和(マコトナルヘイワ)

 

 

 

 二度と地に膝をつかせるな。

 二度と涙を流すな。

 二度と、大事なものを手放すな。

 

 覇王は二度と、笑わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッッハッ…………!!」

 

 起き抜けすぐに洗面台にへと走り、這い上がる吐き気を豪快にぶちまける。

 収まらない嫌悪。収まらない虚脱感。

 収まらない苛立。収まらない疲労感。

 

(…………アインハルトは、起きてない?)

 

 鏡に写るは虹彩異色の両目。碧銀の髪の凛々しく揃えた少年。

 アインハルト・ストラトスの双子の弟、クラウド・ストラトス。彼もまた、〝記憶継承〟を受け継ぐ子孫直系の子。

 だが、その記憶は酷いものばかり。残酷なものばかり。

 

「……ハァ……ハァハァ……くそォ……オッ、グェ…ぉェェェ……」

 

 全ての胃液が吐き出される。空腹なんてものはない。食べ物なんか受け付けない。

 

(……なんで、戦争ばっかりなんだ)

 

 クラウドは生気の無くした瞳で掌を見る。

 その両掌(りょうて)は、命を刈り取り、命を看取ってきた。

 

(あんな、子供まで……まだ、ボクらと大差ない、子供たちが、戦場に……)

 

 子供たちを救えなかった。

 子を想う女たちも救えなかった。

 だが、覇王は止まらなかった。

 

(……ふざけるなよ……やめてくれよ)

 

 止まってくれと、もう、休んでくれとどれだけ叫んだか分からない。

 だがそれでも覇王は止まらなかった。

 死肉と白骨を踏み込みながら、叫喚する骸を踏み砕きながらも、止まらなかった。

 

「……アインハルトにも、継承されているけど……この戦争の記憶は継承されてないハズ……」

 

 正直、精神がボロボロだった。

 壊れても仕方なかった。

 どうして子供の頃から血生臭い戦争を知らないといけなかったのか。

 どうして【生死】を理解さようと、悪夢のように毎日(・ ・)見せてきたのか。

 もう、ズタズタだ。死にたくなってくる。だがそれを魂が許さないように、体が【死】を拒絶してくる。何度か飛び降り自殺を計ったが、出来なかった。

 

「…………死神でも、来てくれないかな」

 

 この現実と、夢を混同させてしまう自分に救いが欲しい。毎夜毎夜に〝戦争〟を見せられ、生死を見せられ、血を見て、憎悪を見て、醜悪を見て、見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て…………もう沢山だった。

 

 だがそんなこと今は解決しない。

 

(リセットだ……リセットして、朝になったら何気ない反応を見せればいい)

 

 頭の中を虚空(カラ)にする。

 双子の姉は既に色んな苦悩の渦の中だ。

 彼女も笑わないと決めている。

 

「…………アインハルト……君は、笑っていいんだよ」

 

 そちらは楽しい思い出があるだろう?

 

「……ボクにあるのは、(みにく)いものだけ」

 

 愛しき人に、倒されて。

 愛しき民を、殺されて。

 

 

 

 

 

 

「……あぁ……これは……地獄だ……」

 

 

 

 

 

 

 クラウドは今一度、さきほど空になった筈の(ふくろ)(なか)にある液を吐き出した。

 黒い嫌悪 (ナニカ)と共に、吐き出した。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 ある昼下がり、ミッドチルダの何処かにあるとある駄菓子屋その名も『浦原商店』。使い降るされた感を感じ取れるそのお店は、老舗にしてはやけにボロい。ボロくて逆に目が引いてしまう。

 基本、街全体を美しく際立つ為に、清掃ロボなど巡回し、常に綺麗にしてくれているのだが、この《浦原商店》周辺には何故か近寄って来ないのだ。

 まるで磁石によって、グルグルと回るように反転させられる。何か見えない術にでも嵌まっているかのようにも見える。

 そんなボロくて逆に目立つ浦原商店に、とある兄妹がやって来る。

 片方はオレンジ色の髪に、眉間にシワを寄せる不良(ヤンキー)然とした青年。

 片方は、名門魔法学院《ザンクト・ヒルデ》の制服を改造し、動きやすい格好となっている黒髪ポニーテールの女子中学生。

 こんな二人組がなぜ兄妹と分かったか、それはやはり顔ではないだろうか。

 なんやかんや言いながら、不良に見える兄だが、顔は整っており、男気ある堂々としたその顔立ちは女性から見て少し気になる。しかし、よく眉間にシワを寄せていることが多い為に苛ついていると勘違いされてしまっている事が多い。妹の方も、凛々しくも親しき友たちと一緒いる時、笑ったその顔はとても魅力的で、男にも負けぬ堂々としたその気風から同性からも人気を誇っているが、本人は知らぬ存ぜぬところ。

 

「なんで本当にこの場所だけボロいんだろうな」

 

「浦原さんの趣味」

 

「マジかよ」

 

 そんな事を言いながら、中に入る黒崎兄妹。

 店内では、一人の男性が居た。服をぴっちりと張った状態で着ており、外から見てもとても筋肉質な体つきだと分かるのだが、その人は壮年と呼ばれる年代のお方。髭も生えており、おまけに眼鏡もかけている。

 

「テッサイさん。こんちは」

 

「こんにちはー」

 

「これはこれは、お二方ご一緒とは微笑ましいですな。仲が宜しく」

 

「あぁ~……そうかな」

 

 改めて言われてカリンは恥ずかしそうに明日の方向を見るが、当の兄はスルーして用がある人物の名を尋ねる。

 

「テッサイさん。浦原さん何処に居る? 奥の方でお茶とか飲んでんの?」

 

 テッサイと呼ばれた男性はムキムキなその体には似つかわしくない俊敏な動きで地球の日本でも懐かしい、一昔の駄菓子屋風景の一つ、茶の間ががすぐ見える奥の襖を開けてみせる。

 すると案の定、帽子を被った男性が卓袱台の前でお茶を啜って現れる。この男性こそ探していた人物、浦原(うらはら)喜助(きすけ)だった。

 無精髭を生やし、着流すように衣服もだらけている。このミッドでは珍しいくらいだらけてる。

 

「いやぁハッハッハッハ! 久しぶりッスね、黒崎さんたち」

 

 こんなだらけたような、駄目そうに見える男だが、侮ることなど出来ない。このミッドチルダで《発明の神》と噂されている人物でもあるのがこの男、浦原喜助だ。

 

「お茶でも飲んでいってください。お二人が来るのを今か今かと待っていたんスから」

 

「なんでだよ」

 

 一護は一見冷たそうな反応をするが、この一護の『なんでだよ』の意味に、浦原は鋭い思慮深さで一護が聞きたいところを予想する。

 

「何が知りたいので?」

 

 浦原の帽子に隠れていた目線が、しっかりと一護とカリンを捉え、そこに笑みまで張り付けて待っている。

 黒崎兄妹は、揃ってその男の笑みに笑みで返す。

 

 浦原の説明会が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………情報はここで合ってるんだろうな?」

 

「……間違いあるまい」

 

「なぜ視線をこちらに向けない!」

 

日番谷(ひつがや)隊長、余り朽木(くきち)隊長を責めないでやってください! 俺が無理言って一緒に行けるよう頼んだのは自分なんス!」

 

 別に文句なんか言ってねーだろ。

 そう面倒臭そうにしながらも、しっかりと前を歩いているのは、銀髪翠眼の少年からだった。その少年の格好は黒い着物に白い羽織を羽織った状態で、背には漢数字の【十】が刻まれていた。

 その銀髪翠眼の少年を『日番谷(ひつがや)』隊長と呼んだのは、これまた黒い着物を来た真っ赤な髪を纏め縛った刺青を彫った青年だった。

 明らかに柄が悪そうだというのに、少年に対した敬意を持って接しているその構図は誰もが疑問に思うところだったのだが、その二人の最後尾を静かに且つ優雅に歩く男性を見た者たちは誰もが見惚れてしまった。特に異性は。

 

朽木(くちき)白哉(びゃくや)、確かお前の()が行く練習場(トレーニングコート)はもうすぐだったか?」

 

「……うむ」

 

「『……うむ』じゃねぇぞ……コラ」

 

「いやマジで、本当にカラまいで下さい日番谷(ひつがや)隊長! ほんとうにすみません、こうでもしないと朽木隊長は娘さんのトレーニングすら見に行く時間を作ることさえ苦手なんす!」

 

「それがどうして、俺と朽木が同時任務の時に連れて行かれてんだこれは。こっちは早く終えて松本が残した仕事を処理しとかねーと、雛森に流れ込むことになるんだぞ」

 

「そ、その件に関しては俺も協力しますから! お願いします!」

 

「……うむ」

 

「いやだから『……うむ』じゃねぇんだよ!」

 

 堂々としたその男性は、凛とした顔から溢れ出る気品の良さ、知性と優美さ、それを感じさせる動作や声までも全てが見聞き惚れてしまう。

 街中を歩く女性たち誰もが視線を釘付けにする美形の男性、朽木白哉は申し訳なさそうに瞑目(めいもく)して堂々とした『……うむ』を繰り返していた。

 だが、それに何故この銀髪翠眼の少年・日番谷(ひつがや)がここまで怒るのかと言うと、この朽木白哉の部下、阿散井(あばらい)恋次(れんじ)が幾度も日番谷(ひつがや)に頼み込んでいたからだった。

 それはもうしつこいくらいに。

 

「確かに、朽木の奥方・緋真(ひさな)殿が一時期危険な状態があった。だが現在、この『ミッドチルダ』に来て以来は進化した医療技術で万全な体調にまで回復し、そして元気な子供たちまで産んだことは大変喜ばしいことだろう。だが……」

 

「……うむ」

 

「それだというのに何故この男は仕事に集中しまくってんだ!?」

 

 丁度、木々が並ぶ緑の公園を見つけ、そこで日番谷(ひつがや)、恋次、白哉の三人は少し小休憩に洒落混む。

 

「決まってるでしょ、不器用(・ ・ ・)なんスよ!」

 

「……恋次」

 

「普段は愛妻と愛娘の写真を片時も離さず持って、時間があればそれを眺めては仕事に励む人ですよ? 『……写真(コレ)さえあれば、霊力も回復するものよ』と独り言呟いてたほどですよ!? 会いたくても、何故か少しだけ緊張している朽木隊長の辛さ分かりますか!?」

 

「……よい、もうよい恋次、やめてくれ」

 

 流石の白哉も口早に説明し初めてきた恋次を止めに入る。

 日番谷(ひつがや)も恋次が言うようにそこまで責める気がないので口を閉じ、さっさと練習場にへと足を歩ませていると、

 

「あれ? 冬獅郎(とうしろう)

 

「……お前は……」

 

 なんとも気軽に声を掛けてきたのは、黒髪をポニーテールにして、動きやすい格好をした黒崎カリンだった。

 カリンは恋次、白哉に挨拶し終えると、同じ身長でもある日番谷(ひつがや)と並んだ。

 横に。

 

「なんの真似だ……」

 

「いや、同じかなって……」

 

「ふっ!」

 

 勢い良く跳んだ日番谷(ひつがや)は軽快に空中で回し蹴りを放つ。

 そしてそれを読んでいたかのように、カリンもヒョイッと華麗に避けてみせた。

 そんなカリンに日番谷(ひつがや)は舌打ちをしながら、見向きもしないで区民センター内のスポーツコートにへと向かっていった。

 そんな日番谷(ひつがや)の態度に、カリンは疑問に思いながら、一緒に来たであろう二人、恋次と白哉を見るが、二人とも微妙な顔を返してくるだけだった。

 

 日番谷(ひつがや)の後を追いながら、カリンは昨日のこと、『古代ベルカ』やさまざな《王》たちの話を浦原から聞いたことを話していた。

 

「……古代ベルカか。こっちの世界(・ ・)の昔の時代か。やっぱり歴史も違うんだな、『地球』とは」

 

「……古代ベルカとは〝時代〟の事。そこはかつて《聖王》と名乗る王が統治していと聞く」

 

「あれ、恋次さんも白哉さんも知ってる?」

 

「……(くろつち)から五月蝿いくらい話していたからな」

 

「嬉々として喋ってたっすね」

 

 着物を着ている二人は大分周囲から注目を浴びているが、それも一瞬、このミッドチルダでは様々な〝文化〟が存在している場所で、『着物』も大して見慣れないものでもなかったのだろう。

 何より、このミッドチルダに存在している組織『時空管理局』で《エース》と名高い〝高町なのは〟も『地球』出身者であり和服などの出生地でもある『日本』の生まれであるから、ファンション誌や、テレビなどでもよく取り上げられる。

 

「浦原喜助か……この地においても駄菓子屋を開いていると聞いたが……」

 

「あぁ、やってますねぇ……と言うより、白哉さん、今日はどうしたんですか? 何か用事とか事件とか?」

 

 カリンは何とも軽い感じで聞いてくるが、もし朽木白哉が率いる隊《六番隊》の隊士(たいし)たちがいれば冷や汗ものだろう。

 だが、恋次も特に注意などしない。

 《六番隊》の副隊長だが、注意しない。

 これも白哉の性格で微妙に人間関係を構築できない隊長の為に、心を鬼にして見守っているのだ。

 その練習の為にも、恋次は後ろから二人のことを眺めてはいたのだが、これも今までの練習の成果もあったお陰か、白哉は特に気にした風もなく普通に答えている。

 

「……私は、娘の修練を見に来ただけのこと」

 

「白哉さんに娘さん居たの!?」

 

(そこに驚くのか黒崎妹!)

 

 恐らく聞かなかったから答えなかったのだろう黒崎ファミリーの流れを予測した恋次だったが、こうして話していると、若い女性や子供たちの声が聞こえてきた。

 元気に走り回る子供たちがカリンたちを追い越していいき、その子供たちの入っていった部屋にカリンたちも入室してみれば、

 

「……広い」

 

 思わずカリンは呟いてしまうが、それほど広かった。

 そんな広いスポーツコートには、軽く人たちが集まってる場所があった。

 

「誰か組手(トレーニング)してる?」

 

「……そうだな、打撃する音が小気味良く館内に響いてる」

 

 カリンは人集りに行くことも無く準備運動に入る。どうやらカリンも身体を動かすらしい。

 恋次は白哉に断りを入れてから、一人だけその集まっている人集りのところにへと向かい、白哉は瞑目したまま付近にあるベンチにへと座る。

 先に来ていた日番谷(ひつがや)もそこに座っていたが、そこにはもう一人誰かが座っていた。

 

白雪(しらゆき)、そこに居たか」

 

「……あっ、(とと)様!」

 

 パァッ、と明るい笑顔を咲かせてきたのは、白哉と緋真の愛娘でもある白雪(しらゆき)だった。

 父からは立派な黒髪と凛々しく整った顔立ちを受け継ぎ、母からは優しげな包容力のある眼差しと声音を見事に似て、誰から見ても『姫』と形容する美少女がそこに居た。

 まだ幼げで、目が離せないところまで小さな女の子特有のいじらしさを感じるが、とても可愛いかった。

 とても長い黒髪を伸ばし、まるで地球の日本に伝わる童話の御姫さまを思い起こす。

 

「ゆきは父様が来るのを楽しみにしておりました!」

 

「そうか」

 

 白哉はその小さな頭を優しく撫でてあげれば、まるで仔猫のように気持ち良さそうに撫でられている。

 

「……日番谷(ひつがや)隊長、娘の相手をしていただき感謝を……」

 

「待てよ、ちょっとの間話し相手をしてただけだ。そんな感謝しなくてもいい」

 

 日番谷(ひつがや)がそう言っていると、先程集まっていた人集りから歓声が聞こえてくる。

 

「……あれは……」

 

「ゆきが知っております、父様!」

 

 父の知らないことを早く伝えたい幼い白雪は、白哉の手を握って人集りまで引っ張って行く。

 因みに白雪の格好も、動きやすいような軽装だった。

 白雪に引っ張られていった白哉を見ながら、日番谷(ひつがや)も暇だからと欠伸をしながら着いて行く。

 先に来ていたのか、カリンと恋次は興味を惹かれるように他の見ている人たちと一緒にそのスパリーングしている少女たちを見ていた。

 

「見てくださいな父様。ゆきと同じSt(ザンクト).ヒルデ魔法学院の同級生です」

 

「なに?」

 

「金髪の娘が高町ヴィヴィオさん、碧銀の髪をした娘がアインハルト・ストラトスさんです」

 

 白哉たちが見に来たスパリーングしていた少女たちは、正に『任務(しごと)』の一部でもある少女たちだった。

 

(……《聖王》に《覇王》)

 

 白哉が少し見ていると、隣で見ていたカリンもしっかりと目を離さず見ていた。

 

「……これ目的だったか、黒崎」

 

「えっ?」

 

 日番谷(ひつがや)は見向きもしないで、言葉だけを送ると、カリンは驚いてしまったが、すぐに頷いて答えてみせた。

 日番谷(ひつがや)はそれを感じとりながら、鋭い視線を二人を捉えたまま口を開く。

 

(……だとすると、近場で見ている女性陣たちは元機動六課(・ ・ ・ ・)と、ナンバーズ(・ ・ ・ ・ ・)か)

 

 既に情報(・ ・)は手に入っている。

 本当に驚くべき情報収得速度である《十二番隊》である。把握した人相も合っている。

 そして、何故(どうして)日番谷(ひつがや)たちが派手な着物姿で来ていたのかと問われれば、向こう側にも感付いてもらいたかったという理由。それだけだった。

 

 既に日番谷(ひつがや)を初めとする《護廷十三隊》は、動き初めていた。

 

 

 

 

 

 

 





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