救急車を待つシゲルが回想しているシーンです。
その過去は、シゲルの言う『あの日』のことです。
今回初めて、伝説のトレーナーの名前が明かされます。
シゲルは、セシリアの状態を見て、嫌な予感がした。
(あの日のようなことになるな…)
―俺は、あの日のことは忘れない。
あいつと共に珠に乗っ取られたマツブサとアオギリとタッグバトルをしたときのこと…。―
―「よくきたな…」
「我々に刃向かうものよ…」
マツブサとアオギリが言った。
「さあ、珠を返してもらう!」
キリュウが言った。
「力ずくでも返さん!」
「なら、バトルをするまで!」
俺とキリュウは、手持ちをすべて出した。
それは相手も同じだった。
しかし、相手は珠の力により俺たちの手持ちを次々と倒していった。
「しっかりしろ…」
キリュウは、ペンダントの力を解放した。
「キリュウ!体力が持たないぞ!」
「諦めないのが俺だ!」
そういった瞬間、ペンダントの光が増した。
「行け!」
「こしゃくな真似を!」
バトルが長引くにつれ、キリュウの顔色が少しずつ悪くなった。
「キリュウ!もうやめてくれ!」
俺は、思わず叫んだ。
「この地方が破滅の危機に直面してるんだ!救わなきゃ!ゴホッ…」
「キリュウ!」
「あと少し…」
キリュウのトドセルガのふぶき!
マツブサとアオギリは、動けなくなった。
「珠を…返してもらうぜ…」
キリュウは、二人から珠を取った。
「シゲル…、これをテレポートでミナモシティのジュンサーさんに転送…」
キリュウの言葉は途切れた。
なんと、キリュウがマツブサとアオギリの二人に刺されたのだ!
「くっ…ヤミラミ…かなし…」
指示を言い終わる前にキリュウが倒れた。
「ヤミ!ヤミー!」
ヤミラミは、マツブサとアオギリにかなしばりをかけた。
「キリュウ!おい、しっかりしろ!」
キリュウは、身動きひとつしなかった。
口からは血が流れていた。
「エーフィー、テレポートだ!」
「フィフィ!」
―ミナモシティ―
「無事確保しました」
ジュンサー「お帰りなさい。キリュウくんは…?」
「すぐに病院に運んでください!酷い怪我をしたんです!」
ジュンサー「救急車の用意はあるわ。あなたたち!マツブサとアオギリを逃がさないように!私は、シゲルくんと病院に行きます。」
―救急車車内―
「キリュウ…頼む生きてくれ…」
キリュウは、目の前で人工呼吸を受けていた。
「シゲルくん…」
すぐに病院に到着した。
―ミナモシティ病院―
着いてすぐ、キリュウは、手術室へ運ばれた。
ランプがついた。
俺は、涙がこらえられなくなった。
「ヤミ…」
「ヤミラミ…お前は、キリュウが大好きだったもんな…」
手術は、3時間かかった。
ランプが消え、担当医が出てきた。
「はじめまして、今回キリュウさんの担当医となったリューリクです」
「キリュウは…」
「なんとか一命はとりとめました。しかし、傷が深くて、治癒するのに時間がかかります」
「意識のほうは…」
「まだ戻りません…いつ目覚めるかも…」
キリュウは、ICUに入った。
「シゲルくん…」
「俺のせいだ…俺が…」
「あなたのせいではないわ。ほら、元気を出して」
―ミナモシティ・ポケモンセンター―
ジョーイ「シゲルくん?」
「はい」
「ポケモンを回復させておくわ。あと、キリュウくんのことが心配でしょ?だから、ここの部屋を自由に使っていいわよ。」
「そんな…」
「いいのよ、気にしないで」
それから、俺は毎日病院に行った。
そして、変わりのないことを毎日担当医から聞いた。
一ヶ月後
キリュウの傷が治り、一般病棟に移った。
初めてキリュウの病室に入ることができた。
顔色は、悪いままだった。
あの日から二ヶ月経っても、キリュウの意識が戻ることはなかった。
「ヤミ…ヤミー」
ヤミラミは、キリュウの手を握っていた。
「もうあれから二ヶ月なのね。様子は変わらないの?」
ジュンサーが聞いた。
「まだ…担当医は『もう戻らないのかもしれない』って…」
「そんな…」
三ヶ月経ったある日
キリュウの顔色はだいぶよくなった。
けれど、まだ目を覚まさなかった。
「キリュウ…」
「ヤミ…」
「シゲルくん、元気を出して」
「でも…」
ジュンサーは、わずかにキリュウの手が動いたことに気づいた。
「シゲルくん!手が…」
「えっ…」
俺は、キリュウの手に触れた。
すると、ゆっくりではあったが握りしめた。
「キリュウ…?」
キリュウは、うっすらと目を開いた。
「…シ…ゲ…ル…?」
「キリュウ!よかった…生きてくれて…」
俺は、あの日のことを忘れない。