日本海軍が各艦隊計画を立案した時期は何かしら理由がある。
第一次六六艦隊計画はロシア戦に備えた国運を懸けた一大計画。第二次六六艦隊計画は対米戦に向けて、八八艦隊計画で建造された長門型戦艦や戦艦改造の赤城、加賀などの航空母艦などの旧式艦から大和型戦艦や大鳳級装甲空母など新鋭艦に代わる予定だったが太平洋戦争が開戦した影響で大型主力艦艇の建造は半分以上が凍結された。
そのため第三次六六艦隊計画はもはや日本海軍の意地を掛けて遂行する筈であった。
「そもそも第四次六六艦隊計画は、我々日本海軍が白騎士事件以前に成立させていた、第三次六六艦隊計画を焼き直し、それに改良を加えた物だ」
珠洲ノ宮成彦は静かに計画の全貌を語り始めた。
「第三次六六艦隊計画に於いて建造される予定だったのは10万トン級・56㎝砲戦艦が六隻。同じく10万トン級・原子力空母が六隻。2万トン級・ガスタービン装甲巡洋艦が八隻と同排水量のガスタービン防護巡洋艦が十隻。これに補助戦力として5万トン級・ディーゼル大型揚陸母艦二隻。この揚陸艦と大部分の設計を共用する、4万トン級・通常型空母が四隻」
途中、息継ぎをしながらもすらすらと語られる内容に、5人はこう考えた。
狂っている。
国家経済への負担を無視し、世界各国が保っている微妙な軍事バランスを揺るがしかねない。
だが。
彼ら彼女は同時に納得した。
この計画が成立した時期は、日米の友好関係が著しく悪化したからだ。これは、浴に言う貿易摩擦が関係してくる。
白騎士事件が起きる3年前に、日本は大規模な技術推進政策を取った。
これは、当のアメリカもそうだが、ドイツやイギリスなどの先進諸国。
膨大な人口を後押しに急激な経済成長を遂げる、中国やインドなどの新興国。
少しずつではあるが、自国がもつ戦略資源などを武器に、確実に国力を向上させる発展途上国。
日本はこの時、並々ならぬ危機感を持った。
このままでは、日本が世界を相手に交易するのに不可欠な、高い技術力から生産され、世界中からmadeinJAPANと呼ばれる工業製品を初めとするありとあらゆる貿易品が、もしかしたら見ず知らずの国の生産品に取って代わられるかも知れない、と。
それは、恐怖だった。如何に国内人口が1億人を越え、アジア最強の軍事力を持っていても、日本には資源が無かった。
資源が無いからこそ自分達が持つ腕により次々と生み出して行く技術品は国家生存の要であった。
しかしこれが面白くないと思う国が居た。
世界最大かつ最強の軍事力を背景に、世界の警察として半世紀以上君臨する大国。
民主主義連邦制国家、アメリカ合衆国。
かの国は、1960年から1990年まで巨額の貿易赤字を出し続けた対日貿易が再来すると予感した。
最初は表面下での圧力であったが白騎手事件直前には外交問題にまで発展した。
だが白騎手事件により、技術革新政策を推し進めた政権が責任を負わされ崩壊。
女尊男卑を主張する政党が取って代わった。
この新政権はアメリカに尻尾を振った。
自分達の政権の人気が一時的な風潮である事を知っているからだ。何せ日本には莫大な資金を提供して経済的影響力を保持するロシア帝国や、経済植民地とは言え日本の安全保障でロシア南下政策阻止する重要な役目を担っている満州王国。
この2国は軍事的宗主国である日本の政治体制が急激に変化するのを認めず潰そうとした。
日本は万が一、旧ソ連……ロシア連邦軍が侵攻した場合、亡命先なのは日本に他ならないからだ。
たがらこそ女尊男卑を掲げる新しく出来た政権を認めること不可能だった。
もし女尊男卑主義を認めれば、間違いないなくISが兵器化されると、かの2国は見ていた。
考えて欲しい。
白騎手事件の際に、東京湾に集結していた100隻を超える日本艦隊を撃破。
その上、2000発以上のミサイルを全て破壊したと公表されたのは、宇宙空間での活動を前提とした『宇宙開発のためのマルチフォーム・スーツ』だ。
そして白騎手……ISを開発した張本人。
篠ノ之束は、何と言った?
『ISは女性しか乗れないよー!乗れない理由を説明するの面倒だから、自分達で頑張ってねー!』
この言葉が世界中のネットワークを介して発言した境に世界は……男女平等を訴える社会から女が男を差別する世界に変わった。
ロシア帝国と満州王国はいち早く、反女尊男卑を主張した。
ロシア帝国の領土は極寒の嵐を越えた先にある樺太。
満州王国は北をロシア、南東が朝鮮民国、南西が中華人民共和国と敵対国と潜在的敵対国に囲まれている。
いちいち男女格差を唱えている状況ではなかった為、両国は日本よりも男女対等の社会構造を構築している。
両国は女尊男卑主義者達が、自分達の権力と特権を守る道具としてISを兵器化すると完璧に予測していた。
それまで軍事分野で女性が男性に勝てる事など極端に少なかったからだ。
冷静に見れば、これまで勝てなかった事に対する意趣返しにも思えるが、やり方が余り酷かった。
両国にとってISは無駄遣いの象徴だった。
たった一機を開発する為に使われる莫大な予算。
その予算も別の予算を削り取ってやっと必要経費を補なった物だ。
それで完成した代物はハッキリ言って使い難い。
IS同士の戦闘なら使えるが、もし相手が軍団規模での物量戦術を展開したら使い物になるか?
答えはNO。
ISの戦闘能力は確かに脅威だ。
だがISが使う武装はどうだろうか?
十年前、白騎手が使っていたビーム兵器は戦艦信濃の装甲板を貫通する威力があるのは事実。
現在では、空気を圧縮して放つ大砲やパイロットの考えるままに曲がるレーサーなど、現代技術では実現不可能と言われた代物まで実用化されている。
中には灰色の鱗殻(グレー・スケール)と呼ばれるパイルバンカーなどのケダモノまで開発されている。
しかしそれ以外の凡用兵器はどうだろか?
アサルトライフル?これは流用品。
ショットガン?これも流用品。
ロケット?これも流用品。
グレネード?これも流用品。
ミサイル?これも流用品。
流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用品流用ひnn……。
ISが使用する専用武装を除いてしまえば、どれも昔から戦争で使われてきたものばかり。
アサルトライフルは?ーーー1945年、鍵十字の旗を掲げヨーロッパ全土に恐怖をもたらしたナチス第三帝国が開発したSturmgewehr 44(StG44)アサルトライフルを出発点に世界中の軍隊が競い合い様々な戦場に新型を投入して、今では
旧ソ連が開発したAK-47は世界最強の殺人マシーンと悪名高い。
ショットガンは?ーーー近世の貴族階級で流行していた鳥撃ちをする為に使われる始め、18世紀ではアメリカカウボーイが武器として使い、第一次大戦では塹壕戦を有利にする為にウィンチェスターM1897が積極的に使われた。現在は世界中の警察や軍隊が警備目的でレミントンM870を所持している。
ロケットは?ーーー10世紀には中国で戦闘に使用した記録がある程、ロケットの歴史は古い。その後、一度は余りの使いずらさに戦史から姿を消した。しかし第二次世界大戦で復活を遂げた。第二次大戦で最も有名と言って過言では無いのは
ナチスドイツのVロケットシリーズで間違いないであろう。
そのVロケットシリーズは西側アメリカ陣営、東側ソ連陣営に実物、開発者や技術者が流れた結果、大陸間弾道ミサイルや多連装ロケットシステム(MLRS)の元になった。
グレネードは?ーーー9世紀から10世紀の合間にこれまた中国で使用された記録がある。グレネードはロケットとは違い
扱いやすかったが火薬の安定した大量生産が可能になるまで使われていなかった。しかしアンモニアを用いた生産法が確立すると一気に多様性が増して一時期、戦場はグレネードが飛び交う有り様になった。
ミサイルは?ーーーこれも先に紹介したVロケットシリーズを開発したナチスドイツがフリッツX、Hs293の二つの元祖空対艦ミサイルを実戦で投入した。
これをきっかけにミサイル万能論などが出た。
現在ではアメリカのトマホークやロシアのP-270 モスキートが世界各国で量産実戦配備されている。
つまりISが使う兵器は、これまで培われて来た旧来の技術をそっくりそのまま使っているだけなのだ。
白騎手事件より十年。
現在戦場の頂点に立っているのはISだ。これは認めざるを得ない。
しかし、戦場を、戦争を、闘争を、繰り広げるのは一体何か?
ーーーISか?違う!ーーー銃か?違う!ーーー大砲か?違う!ーーーロケットか?違う!ーーーミサイルか?違う!ーーー戦車か?違う!ーーー飛行機か?違う!ーーー戦艦か?違う!
答えはーーーーーー人間。
人間に他ならないのだ。全ての兵器が如何に自動化が進もうと。全ての武器が如何に無人化に進もうと。全ての人間が如何に戦いから遠ざかろうと。
戦場は、戦争は、闘争は、人間が居なければーーー始まらない。
だからこそロシア帝国と満州王国は、女尊男卑主義に染まった日本政府を潰そうとした。
ISは危険……。
両国はそう考えた。
しかし両国が政治工作を始めた途端にアメリカが出てきた。
アメリカは両国にこう警告した。
『日本で実施中の全ての工作活動を中止せよ。この警告に対して従わない場合は、アメリカの正義の名に懸けて、これを阻止する構えである』
この警告文を両国に対して発した直後、在日米軍が動いた。
横須賀に停泊していたアメリカ第7艦隊が日本海に展開した。
更に南シナ海に居た攻撃型原子力潜水艦を黄海に入れた。
完全なる脅しだった。
両国は手を引くしかなかった。
「IS相手にこれは過剰戦力なのでは?例の巨大潜水艦でも十分な気がしなくもないが」
「確かに空母は分からなくも無いけれど戦艦は必要なのかしら?これだったらもっと巡洋艦や駆逐艦の建造に回した方が良いと思うわ」
溥儀とアナスタシアが常識的な意見を述べる。
二人は467機存在するISに対抗する為には質ではなく量が必要だと考えているからだ。
その心中を否定するように成彦が言う。
「現在最終段階に入ったいる新型戦艦は、我が日本海軍がこれまで培って来た艦艇建造技術を全て注ぎ込んだ、日本の魂とも言える戦艦だ。これ一隻で世界各国の艦隊を殲滅出来る」
「それは母なる祖国の艦隊もかね?」
自信満々に言う成彦にトゥハチェスキーが顔歪めて聞く。
彼は自分の母国の艦隊ですら一蹴すると言われて少し機嫌を損ねた。
しかし成彦は全く気にしなかった。
なぜなら事実だからだ。
成彦が言った言葉を、空想では無く現実にする事が出来る船は着々と準備に入っている。
「そんな戦艦が出来るのであれば、私のバルト海艦隊に是非欲しい物だ」
切実そうに語るレーダー中将。
上を見上げて自分の艦隊戦力を思い浮かべる。
ドイツ連邦共和国・バルト海艦隊の現有戦力はフリゲートクラスの〈バーデン・ヴュルテンベルク〉級一番艦〈バーデン・ヴュルテンベルク〉と〈ザクセン〉級一番艦〈ザクセン〉に二番艦〈ハンブルク〉を主力としている。
それに補助戦力として同じくフリゲートクラスの〈ブランデンブルグ〉級が二隻、〈ブレーメン〉級を三隻、補給艦二隻を保有している。
潜水艦は元々、ドイツ・海軍指揮幕僚監部の指揮下にあるため省いている。
十年前は、この2倍以上の戦力をドイツ海軍全体で保有していた。しかしISの開発予算の捻出する為に艦艇整備予算が半分以上を流用されてしまい、ドイツ海軍では閑古鳥が鳴く有り様だ。
「……グス」
「レーダーさん。涙が流れてますよ。はいティッシュ」
「ありがぁどうござぁいまぁず……」
ムッソリーニからティッシュを貰う男、レーダー。
自分の艦隊が見るも無惨になってしまい悲しさがこみ上げて来たのだ。
チー、と鼻をかんでいるレーダーを無視して会議は進む。
「では計画発動時の各担当を決めよう。なおこれには如何なる犠牲も考慮しない事とする。……それが自国民であろう」
成彦達が話して部屋から、一階層下のフロアで食事をしながら、それを自前の盗聴用カメラで見学している連中。
「フハハハハハハハハハハハ!フッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!見てみろドク!これが歴史の裏側なのだ!今我々の目の前で歴史が創れているのだよ!!」
「うるさいぞ!?このデブ!黙って喰え!」
不気味な笑い声を上げるのは、ナチス武装親衛隊の生き残りである吸血鬼大隊〈ミレニアム〉の指揮官である金髪碧眼の少佐。
高笑いする少佐に罵声を浴びせたのは、太陽計画特別技術顧問を務めるマフラーをしたピエロであり名前をドクター・インディゴと呼ぶ。
「そう言われ様が止められる物か!戦争への準備がもうすぐ始まる!それも我々、ミレニアムが実行しようしていた物より、ずっと大きい計画が私の目の前で!!」
「だから黙れと言っているんだ!!!」
酷く興奮しながら話す少佐にキレながら怒鳴り付けるドクター・インディゴ。
ゼェゼェ、と息を付くドクター・インディゴに少佐の横に立っているドクが話し掛ける。
「ドクター・インディゴ。率直にお聞きしますが、先程の話に出て来た新造戦艦は本当に役に立つ物なのですか?いくら戦艦と言えど時代の流れに置いて行かれた骨董品。時代の先を行くISに敵うとは到底思えないのですが」
「んぁ?そんな事を聞くのか?アホンダラだなぁ……少し待ってろ」
アホ呼ばわりされてドクの眉間に血管が赤黒く浮き出て来るが、そんな事気にせずバックの中を漁る。
「えっと……これ違う……これでも無い……あった!これだ!!」
食器を押し退けてテーブルの上に置いたのは一発の銃弾。
少佐はそれを手に取って照明の光にかざす。
銃弾にはUnitedAmericanと書かれていた。
少佐はその戦略戦術に置いては天災とも言える頭脳をフルで回転させる。何故銃弾なのか?他の物で良かったのでは無いか?
そして行き着いた。
ドクター・インディゴが……否。
彼の雇い主が考え付いた事が。
「そうか…………なるほど。そう言う事か……」
頬を吊り上げ嫌らしく満足げに微笑む少佐。
ドクが心底解らないと言って質問する。
「少佐殿。何が、そう言う事なのですか?」
「なーに。簡単な事だよドク。ドクター・インディゴは銃弾の重さについて話してくれるぞ?」
「ハァ?重さですか……」
ドクが視線をドクター・インディゴに向けると、律儀にハンカチで口元の汚れ拭いてからドクター・インディゴの独壇場が始まった。
「まあ、アホンダラは生物学が専門らしいからな?そこら辺の所は無知でも仕方ない」
「ハハハハハハハハハハ……。流石、アメリカ合衆国でその名を馳せた天才科学者にして、生物化学機械関係なく作られた無人殺戮兵器を設計した問題児。実験失敗による犠牲者の数とその危険性故に、幾度と無く追放処分になりながら抜群のセンスを持っている為に連れ戻されたその頭脳。ぜひ我々ミレニアムに欲しい物だ」
「ピーロピロピロ。だがISのお掛けでめでたく永久追放されてしまったがな!全くアメリカの正義とは都合が良い!自分達が、それを気に入るか入らないかで、好き嫌いが選べるのだからな!!」
アメリカの正義。
アメリカの不利益になる出来事が在れば、その度に出て来る言葉。
ドクター・インディゴはアメリカ合衆国の命令で兵器開発をしていたが、それにより開発された兵器群はどれも非人道であった。中には実験途中で突然暴走状態に陥り多くの死亡者が出る程、危険であったがアメリカ合衆国はそれに対して目を瞑った。
何故か?
自分達が研究中の兵器を、自分達以外の誰かが、いつ、どこで、生産、使用するか分からないからだ。
抑止力。
敵対する自分達以外の誰かが開発した物よりも、より高性能で大量生産かつ安価に作れるかが、現代の戦争で優位に立つ方法。
だから複数の犠牲者が出ようと目を瞑り続けた。
何故なら当時の無人兵器開発でドクター・インディゴ以上の能力を持っている者などいないからだ。
血に塗られた技術。
当時のアメリカ合衆国高官はドクター・インディゴの研究をそう呼んだ。
しかし転機が訪れた。
白騎士事件によるISの登場。
十年前。
突如として巻き起こった白騎士事件は、2000発以上のミサイルと東京湾に集結していた日本皇国海軍100隻以上の大艦隊を無力化した事より始まった。
当初アメリカは世界各国に呼び掛けて白騎士の鹵獲を企てた。
鹵獲が無理だったとしても破壊した欠片から取得出来るで有ろう未知の技術を一人占めする気満々だった。
しかし集まったのはイギリスやフランス、ドイツとベルギー、オランダと言った国々で、イタリアとロシア等の親日国は静観の構えだった。
それはそれでアメリカにとって都合が良かった。
わざわざパイを分けなくて済んだからだ。
余りの日本の大混乱から身動きが取れない第七艦隊を除き、第三艦隊や第五艦隊まで召集して集まった原子力空母三隻を基幹とする機動艦隊と、イギリス等の各国からの増援合わせた連合艦隊は悠々自適に白騎士に闘いを挑んだ。
結果は?
文字通り無力化された。
空母はカタパルトや艦舷エレベーター等を破壊され艦載機運用能力を喪失。
全てのイージス艦や巡洋艦、駆逐艦は武装や電子機器を破壊されて戦闘不能になった。
その後、白騎士は何もせず何処かへ消えて行ったが、海上には漂うだけの鉄の棺桶が残される結果になった。
これにアメリカ合衆国は焦りを隠せなかった。
自分達のお得意技である物量を持ってすれば白騎士など簡単に捕縛出来る。それに日本艦隊は東京湾に展開していた性で身動きが取れない状態であり、尚且つミサイル迎撃に専念していた。
だが自分達は違う。
大海原を自由に動き回り、相手にするのは白騎士のみ。
たった一機で敵う筈がない。
そう思い送り込んだ連合艦隊が事実上無力化されてしまった。
だからアメリカ合衆国は焦った。
『いったい誰が白騎士を作った』
『自分達ですら開発すら構想した事が無い物を?』
『何が目的で?』
『『『もしあれが自分達に矛先を向けたら?』』』
恐慌状態に陥っていたアメリカ政府……ホワイトハウスにある一報が届いた。
白騎士事件を起こした張本人と見られ、世界中のありとあらゆる組織が行方を追っている稀代の天災科学者。
篠ノ之 束
彼女は気が狂ったのかISコアを世界中にばらまいた。
当時のホワイトハウスはこの行為に十ダースにも及ぶ抗議文を送り付ける破目になった。
アメリカにも支給されていたが迷惑以外の何でもなかった。
アメリカの基本戦略・戦術の根幹に成っているのは、物量による物量の為の物量によって行われる戦争である。
過去の世界大戦がそれを証明している。
結局は持った者が最終的に勝利を得るのだ。
核弾頭を同じである。
核弾頭そのもの威力よりどちらが多く持っているかで勝敗が決する。
だがISはどうだ?
世界中に均等に成る様に配われたのは467。
世界各国の軍人はフザケル!と憤る。
たった467個を平等に分配して使えだと?
第二次大戦。
アメリカのM4中戦車 シャーマン・シリーズは計五万台が製造され、ソ連のT-34・シリーズは八万台を越える。
合わせて十三万台の戦車の物量を持ってナチス・ドイツを降伏に追い込んだのだ。
物量こそが戦争の正義なのだ。
それを最早化石と化した大艦巨砲主義の様な、IS至上主義は厄介極まりない物だった。
まして戦艦一隻建造するのに掛かるコストを上回るISのなどゴメン被りたかった。
だからISを開発した篠ノ之 束の生まれた国、日本に全ての責任を負わせる形でIS学園を作らせた。
わざわざ他国が乱発的に作るであろうIS操縦士育成機関にスパイを送り込むのは、手間が掛かる上に多大な予算を持って行かれてしまうからだ。
「それでもアメリカ合衆国はISを選らばざるを得なかった。それは時代遅れになる事を恐れたからだ!連中は女狐の脚を舐めやがった!お掛けでこの俺様も不要として首切りされてしまった。丁度その時、殿下に拾われて今の研究を任せられたから結果オーライだ!ピロピロピロ!」
口汚くかつての雇い主を罵りながら愉快そうな表情するドクター・インディゴ。
「第四次六六艦隊計画の戦艦は!この腐れ切った時代に破壊と再生をもたらす大陽計画の代名詞!!そもそもISのシールドエネルギーは一定以上の攻撃は防げず!操縦士に直接ダメージを与える事は通常兵器でも可能!そしてISは元々は兵器ではなく『宇宙開発のためのマルチフォーム・スーツ』なのだろう!?つまり宇宙空間を漂う隕石は防ぐ為にシールドエネルギーや絶対防御がある!しかーし!隕石は言ってみれば石の塊。到底武器とは呼べない。だが!大陽計画の戦艦に装備されるのは!砲弾重量!二トンを誇る弾丸を音速のマッハ10以上で撃ち出す世界最大の艦砲!あぁ、待ち遠しい!ISが粉々になる瞬間が!?世界が再び俺様を必要とする時代が!」
嬉々として語られるのはドクター・インディゴ。
完全に自分の世界に入っており、少佐が嬉しそうに頷くと更に悦に入ってべらべらと話し続ける。
しかし扉から親衛隊新兵が努めて無表情に入って来た。
「少佐殿、お耳に入れて置きたい事が……」
「どうしたのかね少尉?つまらない事だったら老人達と一緒にヴェルハラに送り付けるぞ?」
「それが……」
少尉の報告を聞いた、ナチス・ドイツ軍の最後の残党、ミレニアム大隊指揮官の少佐の頬が醜く歪む。
悪魔が人を希望から絶望へと落とした様な満開の笑みを……。
報告
ワルシャワ防衛隊に所属する防空戦闘機二機が突如ロスト。
防空隊所管の対空レーダーが敵味方不明のフランス製ラファール・リヴァイヴと思われるISを捕捉。
これを迎撃する為に近郊の空軍飛行場からスクランブルした戦闘機、およそ一個小隊が全力でワルシャワ上空へ急行中。
更にワルシャワ総司令部との通信途絶。
いやー……。
遅くなりスミマセンでした。
最新話投稿です!
感想お待ちしております。