眠いから寝る。
雨が降り注ぐ中、一人の子がお墓の前に座り込んでいた。
お墓は新しく出来たばかりであった。
二人の名前が刻まれていた。
子はお墓の前から動こうとしなかった。
そこに一人の軍服を着た男が近づいてきた。
男は身体中に包帯を巻き付けたまま、足を引きずり、手に花束を持って近づいてきた。
「...花をお供えしていいかね」
「.....いいよ」
男の問いに、子が答えると男は花束から花を二本取り出して供えた。
「少しここで待っててくれないか。他の所にも供えてくるから」
「.....」
子が黙ってしまうと、男は足を引き摺りながら一つ一つ真新しいお墓の群れに、刻まれた名前の数の花を供えていった。
全ての花を供え終わると男は再び、子の場所にやって来た。
そして静かに手を合わせお墓に頭を下げた。
雨の音がただただ聞こえる。
沈黙が暫く続いた。
「すまない」
「...なにが?」
男が謝罪の言葉を口にしても、子は前を見続けた。
「君の父上と母上を...守れなかった」
男は懺悔の言葉を喋り始めた。
「私は三ヶ月前の、あの事件...白騎士事件の時、艦隊の司令官だった」
「私は自分が正しい判断をしたと思っている。しかしその結果、守るべき多くの貴い命を犠牲にしてしまった」
「その中に君のご両親が含まれていた」
「それらの犠牲者は、本来公表し白騎士が如何に危険な存在であるか、世間に日本に世界に、知らせるべきことなのだ」
「だが、私が三ヶ月も眠りについている間に、日本は変わってしまった」
「白騎士事件が起きる前の政権は崩壊し、新しい政権の元、政府は白騎士事件では犠牲者はいない。0だと発表してしまった」
「君のご両親だけではなく、亡くなってしまった君が住んでいた村の住民達、127人の犠牲がなかった事にされてしまった」
「私は軍人として、義務を責務を果たせなかった」
「すまない」
男がそう語ると、子はゆっくり男の方に顔を向けた。
「...白騎士はどうなるの?」
「どうとは」
「だって白騎士は悪い事をしたんでしょ?」
子の質問に男は苦渋の表情を浮かべた。
「パパとママ、言ってたの」
子の言葉は当たり前の事だった。
「人を殺したら、怖い所に入れられるて」
男は悔しそうにこう言った。
「白騎士は英雄として祭りたてられる。2000発のミサイルを全て破壊し、一人も犠牲を出さなかった英雄として」
だから怖い所には入らないんだ。
男の言葉に子は、
「...そっか」
ただ無感動に言った。
「...私は本来このような言葉を言ってはいけないのだ...」
「なに?」
男は躊躇いがちに口にした。
「仇を、復讐する気はあるかね」
「復讐?」
「私は幸か不幸か、権威と地位と力がある。私は君に仇を取れる力を与える事が出来る」
男は手を差し伸べた。
「君がこの手を取るかは自由だ、しかし君はまだ小さい。未来もあるからいますぐに決まることは...」
ない。男をそう言おうとしたが言えなかった。
子は手を握りしめていた。
「...復讐したい」
「パパとママを奪っていた奴に復讐したい」
「隣のおばあちゃんやおじいさん」
「友達のゆりちゃんやゆうきくん達を奪った奴を」
「村の皆を奪っていった」
「楽しかった生活を壊した奴を」
白騎士に復讐したい。
「...後悔はないね」
男の問いに子は頷く。
「ご両親に挨拶をしておきなさい」
子は男の手を離さず握りしめたまま、黙って頭を下げた。
それを見届けると、男は子の手を握りしめ、お墓から離れていく。
墓地から一歩出た瞬間、闇に幾つもの光りが差した。
待っていたのは200人以上の軍服を纏う男達だ。
「ツァーリ、お待ちしていました。どうぞ」
男と子の前に明らかな軍用車が滑りこんで扉を開けた。
男は慣れた動作で乗り込み、子もそれに乗り込んだ。
扉を閉じ、その車は走り始めた。
その回りを何台もの車が取り囲む。
その集団は闇の中をひた向きに走った。
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自然溢れる質素だが格式を感じる大きな館。
ちちうえー!お帰りなさい!...その子だあーれ?
お帰りなさい。あら。貴方、その子はどうしたのですか。
ただいま。この子は家で預かることになったんだ。
そうなの?じゃあ、まずはお名前ね。なんて言うの?
おなまえ!おなまえ!
....さおとめ。早乙女真希
真希ちゃんね、よろしくね。
まきちゃん!よろしくー!
早乙女真希よ、偽りの家族かも知れないが、私には今はこれくらいしか出来ない。娘と楽しくやってくれ。
...がんばります。
もう、貴方そんな事は言わないの。真希ちゃん何か食べたいのある?直ぐに作るわよ。
ずるいー!わたしもわたしも!
はいはい。
そこは家族の幸せな光景があった。
きちんと後書き書くんで、今はこれでご勘弁。