第一話まで気長にお待ちください。
太陽から光りが降り注ぐ中、二つの正反対の表情を浮かべた集団がいた。
片方は得意満面の笑みを、
片方は屈辱に染まった表情を浮かべていた。
彼らが見つめる先にISがあった。
そして隣には皇国国防陸軍最新鋭戦車がペイントまみれでいた。
それは模擬戦の結果であった。
IS開発の為には莫大な資金が必要である事を知っていた、IS推進派が目に着けたのは、東アジア最強を豪語する皇国陸軍の機甲師団を維持する為の予算だった。
総数五百両を超える皇国陸軍大機甲軍団は冷戦時代、敵対諸国から圧倒的な練度から来る精強さを恐れられ冷戦が終結を迎えてもなお、その数を徐々に減らしつつあるが皇国を守る矛として存在し続けた。
その維持費用を横取りするため、IS推進派は模擬戦を仕掛けた。
陸軍はこれを受け入れた。
白騎士事件の時、海軍と空軍を目の前で蹂躙される姿を見ながらもミサイル迎撃の為に何も出来ず見ている事しか出来なかった負い目もあった。
彼らは仇を取ると言わんばかりに、皇国陸軍で唯一の機甲師団、第七師団から選びすがりの熟練兵が乗った戦車を投入した。
その結果が目の前に広がっていた。
圧倒的攻撃力と防御力を誇る戦車だが、それは同じ大地を踏みしめる物に対してであり、空を飛ぶISに関係のない事だった。
後はただただ、上から模擬弾を撃ち込まれ、何も出来ず終了した。
IS推進派が座っていた席から一人の女性が、IS反対派の席に歩いてきた。
「さて、見ての通りの結果だけど...約束は?」
嗜虐の笑みを浮かべた彼女が見つめている先に、一人の男がいた。
男は返事をせず目の前を見続けた。
「貴様!殿下に対しその言葉!無礼であるぞ!」
男の隣に座っていた、肩に中将の階級章をもつ老齢の軍人が声を荒上げた。
「あら、負け犬に噛みつかれてしまうわ」
女性は恐い恐いと言いながら馬鹿にするように言う。
「貴様!」
「止めろ、中将。」
中将が掴み掛かろうとするのを殿下と呼ばれた男が声で制止させる。
「しかし殿下!?」
「中将、皇国軍人は如何なる時で有ろうと常に紳士たるべし」
忘れたか、と目で問いかける男に黙り込んでしまう。
中将が黙るのを見ると男は女性の方に目をジロリと向けた。
「約束は守る。それで良いな官房長官殿」
男の嘘は許さないと語る目に少し怯えながら、
「ええ、約束さえ守るならそれで良いわ」
そう言うと、男の目から逃げる様に去っていた。
女性が立ち去るの見て、IS推進派も口々に嫌みを言いながら退席して行った。
IS推進派が完全に立ち去り、IS自身も飛び去って行ったの確認してから軍人は男に話し掛けた。
「殿下...」
「中将、戦車に乗っていた将兵とは話すことは出来るな」
「出来ますが...」
口ごもる中将をそのままに戦車に近づいて行く男。
戦車の前には、今にも切腹しそうな程思い詰めている、一人の戦車兵が立っていた。
戦車兵は男が近づいて来るのに気が付くと、その場で土下座をしてしまう。
「申し訳ありません!」
開口一番に謝罪の言葉を発する。
「貴様の名前は」
「坂上治郎大尉であります!」
頭を下げたまま泣きそう声で答える坂上大尉。
男は膝を折って、坂上大尉の肩を掴んだ。
「何を落ち込んでいる」
坂上大尉がハッと顔を上げると、男は優しい顔をしていた。
「誰にでも負ける事はある。次に負けない為に確りと対策を考えれば良い。分かったな」
男の言葉に泣きながら殿下!と言う坂上大尉。
男は立ち上がり後ろを振り返る。
「総員注目!」
男の言葉にその場に居た軍人全員が背を正し直立不動の態勢をとる。
「坂上大尉に言った通り、戦車はISに負けた。しかし敗因は貴様ら分かっていると思うが、戦車の弱点である上方を取ったからだ」
「だが戦車の弱点を補うのが、対空砲だ」
「しかし今回の模擬戦には対空砲は使われなかった」
「次に模擬戦をする場合は対空砲の使用を視野に入れた、戦術を構築せよ」
「戦場は決して一つの兵器では成り立たず。複数の兵器がお互いに補助し合う事で成立する」
「ありとあらゆる可能性を検討し、新たな戦術を考えだせ!」
ハッ!
その日の夜。
都内のとある日本料亭。
料亭の一番広い部屋に集まっている者達。
それは白騎士事件以前の日本の権力構造を作り上げていた人物達だった。
上座が空席ではあるが、右側と左側に別れて座っていた。
右側に座るのは、皇国海軍第五艦隊司令官、第六艦隊司令官、陸軍第七師団長、空軍戦略爆撃航空団司令官を筆頭にする陸海空軍の軍人達であり、更に北海道財閥や九州財閥の会長などの財界の有力者がいた。
彼らは全員、ある一族の傘下もしくは影響下にある。
左側に座るのは、皇国海軍第二艦隊司令官、第四艦隊司令官、陸軍西部方面軍司令官、空軍第三航空軍司令官を始めとする軍人達である。
その上、三菱を筆頭にする財閥群の会長、社長が集まっていた。
彼らはある一族の反抗勢力と見て良いだろう。
両者は置かれた酒に一切手を付けずに睨み合いをしていた。
「失礼する」
襖を開け、入ってきた男に全員が注目した。
男が上座に座ると話し掛けてくる者がいる。
「殿下、昼の模擬戦申し訳ありませんでした」
「気にするな。中将、素直に負けを認め次に備える事が勝利への道だ」
男がそう言うと、左側に座っていた軍人が話し始めた。
「これで完全にISの天下ですな」
「さよう。ISのお陰で我が三菱は多大な損失をした。」
「三菱だけではない!私の軍事部門も軍からの発注をキャンセルされて赤字になってる!」
「海軍も第六艦隊が大幅な軍縮。IS至上主義者はISだけあれば良いと考えているようですな」
彼らの言葉を聞いている者の中で最も悔しい顔を浮かべたのが、第六艦隊司令官だった。
第六艦隊は皇国海軍で潜水艦を集中運用する潜水艦隊である。
第六艦隊は白騎士事件が起きた時、派遣艦全艦が水中に退避していた。
対空火器を持たない潜水艦は水中に逃げるしか方法がなかった。
だが、IS至上主義者達はそれを責め立てた。
それにより第六艦隊は四十隻を数えた潜水艦隊の内、半分以上を退役、廃艦に追い込まれた。
第六艦隊だけではなく海軍全体が軍縮を強いられたが、第六艦隊はその中でも悲惨であった。
空軍では既に戦闘機パイロットを始めとする首切りが始まっている。
陸軍はまだ大丈夫ではあったが、昼の模擬戦の結果を受け大規模な首切りをせざるを得ないだろう。
全てがISを開発するために必要な予算を確保するためだけに行われている。
「静かにしろ」
男がそう言うとそれまで責任の押し付け合いの風貌を見せつつあった会談が静まりかえった。
「今回集まったのはISにどう対処するかだ、醜い争いは辞めた方がいいぞ」
「しかしながら殿下。ISが今までの兵器の性能を圧倒しているのもまた事実」
「絶対防御を始めとするISの特徴的な機能の数々、これを打ち破るのは難しいかと」
次々と意見が出てくるなか男はそれを制止し話した。
「確かにISは現在最強の兵器と言って良いだろう。しかしだ戦争はISだけで出来るか?」
男の問いかけにその場いる全員が黙り込む。
「違うだろう。戦争とは決して一つの兵器で成り立たない。大量の兵器とそれを運用する人員、撃つための弾薬、人員の為の食糧、ありとあらゆる物が必要になる。ISもそうだ。」
昔から変わらぬ戦争の真理だ、個人では決して変わらない真理。
「ISもいずれ、かつての大艦巨砲主義の様に追い抜かれる時がかならず来る。それを我々がするのだ」
「具体的にはどうするのですか」
男の言葉に疑問を持った財界の人間が聞いてくる。
「これだ」
男は彼らの前に一枚の紙を放り投げた。
それに書かれていたのは、
『第四次六六艦隊計画』
「かつて栄光の中に消えて行った連合艦隊を復活させる」
男は確たる口調で断言した。
「珠洲宮家は日ノ本を皇国から帝国に巻き戻す。貴様らはそれに付いてくる覚悟はあるか」
第一艦隊司令官にして珠洲宮家現当主の言葉が言った意味を理解した全員が静かに頭を下げた。
帝国の復活を。
部屋にその言葉が響き渡った
しばらく投稿出来なくなるんで、きりがいいので感想くださいー。
待ってますー。