ハイスクールD×D 昼行灯のサイキッカー   作:野分大地

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11.聖女奪還作戦

「―――というわけで。堕天使にカチコミかけたいと思うのだけれど」

「朱乃」

「はい部長」

「ヒィッ、まっ、ぁ、待って! ちょっと待って!!」

 

 部長の一言でバチバチと手を放電させ始めた朱乃ちゃんに、ほんのちょっとだけ恐怖を感じたので落ち着いて諌める。

そりゃ「―――というわけで(かくかくしかじか)」で済ませようとした俺も悪いけどさ、だって話聞いてくれる余地なかったじゃない。絶対ワンクッション挟まないと怒ってたじゃない。

 

「はぁ……それじゃ、説明してもらいましょうか。これ(・・)はどういうこと?」

 

 時間が押してるのを承知で少し巫山戯てみせたかいもあって、こめかみを抑えながらも部長は話を聞く体勢に入ってくれた。

彼女が頭痛を堪えるような顔で示すもの……拘束された堕天使の男と、今にも飛び出して行きそうなほど落ち着かない様子で苛立ちながらも、律儀に俺達の会話を待っているイッセー君を見て、俺もまた苦笑する。

 

「ま、見ての通り切羽詰まってるので掻い摘んで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後イッセー君が、夕麻ちゃん改め堕天使レイナーレから聞いたという話。ドーナシークから聞き出した(・・・・・)話と擦りあわせて確信に至ったそれ……早い話がレイナーレ一派の暴走を手短に説明する。

部長としては配下である俺達が堕天使に手を出したことで、戦争になることを懸念していたのだろう。この件に堕天使上層部の意向は絡んでいないことを説明するに至り、部長の表情からは険しさがだいぶ取り除かれていた。

 

「で。その神器『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の持ち主がこのイッセー君の大事なお友達ってわけだねぇ。ホントならもうちょいゆっくり事情説明して、準備してから行くつもりだったんだけど……ホラ。彼放っといたら特攻しそうじゃない?だからこっちから説得して、部長に話を通す時間(・・・・・・)だけ貰ったわけさ」

 

 苦笑交じりにそう言うと、部長は誤解なく俺の言葉の意味を理解して深く溜息をついた。

 

「『最低限の義理()』を通した今、返事如何にかかわらず貴方達は行くと。そう言いたいわけね」

「……すみません、部長。でも俺、ここで行けなきゃ死ぬより後悔するから……!」

 

 義理堅いイッセー君の事だ、多大な恩と情のある部長を悩ませ、迷惑をかけていることにも罪悪感を感じているのだろう。にも関わらず曲げられないことだから、こうして苦々しく、しかし真っ直ぐと目を見据えて謝っている。

 

「部長の名前が傷つくって言うなら、俺のことは眷属から外してもらっても構いません。お世話になった恩は絶対別の形で返します、だから―――」

「……落ち着きなさい、イッセー」

 

 三度溜息をつく部長。しかし入室直後の険しさはもはやそこにはなく、意固地で不器用な弟を見るような確かな慈愛が感じられた。

視野狭窄じみた焦燥感に呑まれかけているイッセー君にもそれが分かったのだろう、まくし立てるのをやめて面食らうような顔になる。

 

「そこに転がってるドーナシークに、イッセーが襲撃された時から。堕天使がなにか目論んでいたのは察していたわ。堕天使全体の計画なら、一言釘だけ刺して無視するつもりだったけれど……独断専行で部員が持ち帰った情報によると、そういうわけでも無いらしいし」

 

 言外に後々のペナルティを匂わせる物言いに思わず表情が曇る。そんな俺と反比例するように、イッセー君(と朱乃ちゃん)の目が輝いた。

 

「そっ、それじゃ、部長……!!」

「ええ。朱乃、祐斗、小猫……準備して。出るわよ」

「はい、部長」

 

 代表するように返事をして立ち上がる朱乃ちゃん、続いて2人も待ってましたと言わんばかりに続く。

 

 ……やれやれ、終わった後のことはともかく……似合わない無理したかいもあったかな。

 

 本番はこれからだというのに、頼りがいのある仲間を見ていると失敗の可能性が頭をよぎることすらしない。事態の決着を確信して僅かに頬を緩ませる俺の気分に冷水をかけるように、不景気な声がかかる。

 

「……ぐ、ぅ……ここ、は」

「あ、おはよう。でも今から出かけるから。そのまま簀巻で居てね?」

 

 が、言ったとおり時間がないので無視だ。猿ぐつわを噛ませて部長の拘束が更に重なると、ドーナシークは恨みがましい目を向けつつも静かになった……従順になったというよりは、単純にプライドが無様に藻掻く自分を許せなかっただけだろうが。

 自分のところの頭に話を通さずに暴走したのだ、滅ぼしても堕天使側に文句は言われないだろう。にも関わらずこうして生き永らえているのは、俺のおかげと言っても良い―――単純に、敵とは言え一度ならず戦って、知らない仲ではない相手が死ぬことになんとなく嫌な気分を覚えたというだけだ―――のだが、まぁ。そんなことを説明してみせようと、あの高圧的な憎まれ口を叩きこそすれ、感謝などすることはないだろう。そういう男だとはとっくに理解している。お礼言われたいわけでもないしね。

 

「さて、移動しながら作戦を説明しましょう。―――その前に、イッセー。一つだけ覚えておきなさい」

「はっ、はい!?」

 

 俺と同じような感慨を抱いていたのだろう、僅かに肩の力が抜けていたイッセーくんに不意打ちのように浴びせられる部長の僅かな怒気。慌てて居住まいを正すイッセー君の頬に手を添わせ、部長は言い放つ。

 

「……眷属から外せ、なんて悲しいこと。二度と言わないで頂戴」

「…………すみませんでした」

 

 僅かに怒り、そして本気で憂う部長の目を見て息を呑んだイッセー君は、そうただ一言口にし、頭を下げる。

最初は説明不足なんかになんとも言えない顔をしたものだけれど……なかなかどうして。立派に部長やってるじゃないか。

 

「……さぁて、事前のゴタゴタが全部片付いたことだし! 張り切って行こうかぁ!」

「貴方の独断専行については後でお説教よ」

「……あっはー」

 

 どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月明かりに照らされながら駆け抜ける。ここにいるのは、部長と朱乃ちゃん以外の4人だ。

人間である俺はともかく、悪魔である三人は教会が近づく毎にその表情を険しい物に変えていった。光や聖なるものと相容れないからこそだろう、その強い嫌悪感から堕天使たちの存在が確信できるらしい。

 

『この手の『はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』の組織は、その多くが聖堂を儀式の場所に選ぶものなの。自分たちを裏切った神を冒涜する行為に酔いしれてでもいるのかしらね……ともかく』

 

 道中での部長の言葉を思い返しながら、イッセー君が蹴破った入り口をくぐり、躊躇うこと無く駆け抜ける。

 

『教会は敵の本拠地よ、それなりの備えはしているはず……入り口を通った時点で侵入を捕捉されてると考えて間違いないわ。なりふり構わず聖堂を目指しなさい。私と朱乃はここで別れて、話にあった残りの堕天使二人を捜索・撃破。その後は増援に備え、殲滅するわ』

 

 両開きの扉を開け放ち、聖堂の中に足を踏み入れる。長椅子と祭壇、うら寂れてはいるもののイメージ通りの祭壇であり、燭台に灯った蝋燭の火がそれらを照らしている。見た限り、アーシアちゃんやレイナーレどころか、神父の一人も居ないようだが。

 

「あっはー、見てアレ。聖人の彫刻が壊されてるよ。幼稚だねぇ」

 

 場所自体に対しては最も余裕のある俺が辺りを見渡しながらぼやく。小猫ちゃんの窘めるような毒舌も、今回ばかりは鳴りを潜めていた。祐斗君とは反対側を警戒しながら、ただジト目で一瞥されただけだった。

 

「アーシアァ!! 何処だ、今助けに―――」

 

 パチパチパチパチ。

 

 ……しびれを切らしたイッセー君の呼びかけに被せるように、気の抜けた拍手が鳴り響く。

柱の物陰から現れたのは、カソックを着て如何にも厭らしい軽薄な笑みを浮かべる白髪の神父。はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)……それも、特徴からしてイッセー君を一度ひどく打ちのめしたというフリードという男だろう。

 

「ご対面! 再会だねぇ! 感動的だねぇ!」

 

 楽しげに此方を……イッセー君を煽ろうと、ニヤニヤと笑いながら彼はまくし立てる。

 

「俺としては二度会う悪魔はいないってことはなってんだけどさ! ほら、俺メチャクチャ強いじゃん? 知ってるよね? 一回ボコしたもんねぇ? 俺の顔見た悪魔はみんな尽く死体に早変わり! あらやだ神業! それが俺って男の渋カッチョイイところだったわけなんでさぁ! でもお前らに邪魔されて俺のナイスな描写にケチがついちった! だぁめ、だめだってばぁ。こんなんじゃ商売あがったり! この業界信用命なんでっ! 今からまとめて首チョンパして広告に偽りなし! それでオッケー? オッケー! んじゃ死ねやクソ悪魔のクズどもがよぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」

 

 ……これはこれは。

 

「あっはー……聞きしに勝るぶっ壊れ具合だねぇ、っとぉ!」

 

 一息の内に百面相した後激高したエセ神父は、変わった形の拳銃とライ○セーバーの柄らしきものを懐から取り出した。

脊髄反射でツッコむよりも先に、そこから光の刃が伸びる。

 

「やっぱりライト○ーバーじゃないか、SE(効果音)まで」

「言ってる場合ですか先輩……その」

「いーよいーよ、気にしないで」

 

 ツッコみながらも少し言いよどむ祐斗君に、手をひらひらと振りながら笑ってみせる。

 

『おそらく儀式が行われる場所までには、邪魔をさせないために多くのはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)が待ち構えているわ。無視して切り抜けるのは至難の業でしょうし、最後にはレイナーレとの戦闘になるだろうから、邪魔されないわけにもそういう訳にはいかない。いちいち全員で対処していてはそもそもの儀式に間に合わない……だからその場合は、イッセーを進ませるために他三人が道を開けること。……特に警戒するべきは、以前見た白髪の神父』

 

その他大勢(モブ敵)引き連れて来なかったのはラッキーというべきか、面倒だと言うべきか……ま、それじゃ手筈通り。気張れよイッセー君」

「……っス。先輩も、気をつけて」

「あっはー、言われなくても。それに足止めは良いけれど……別に、アレを倒しちゃっても構わないんだろ?」

「……こんな時にまで」

 

 お巫山戯が過ぎると、刺さるような小猫ちゃんのジト目をいなしながら軽くイッセー君の肩を叩く。二人にも目配せすると、一歩前に出た。……単純に、得手不得手の話だ。

 

「あれ? あれれれれ~? おかしいよぉ、なにその『俺に任せて先にいけ』みたいな。そこの雑魚悪魔どころか、僕ちゃん人間じゃないのん? 奇抜な自殺? やだなぁ、俺ってば正義の悪魔祓いじゃん? 人間殺すのは、ホラ」

 

 鼻白んだ様子で俺を見下す神父に、負けじとヘラリと笑ってみせる。神器を呼び出す事はせず、小さく息を吸って集中した。

 

『相手は仮にも悪魔殺しのノウハウを叩き込んだ殺し屋よ。あの白髪の神父が他より秀でているとはいえ、悪魔としての能力差(アドバンテージ)が無い長谷君にとってはきっと統率された数のほうが手に余るでしょう。だからもしも、あの男が単独で現れた時は―――』

 

「……いやはや全くその通り、二人相手で既に危ういもんねぇ。モブなんて言ったけど、俺もそれに毛が生えたようなものだから……それに、ちょっと話して分かったよ。これがきっと最適解だ」

「あァ? 何ブツブツ言っちゃって……ッどぁ!?」

 

 あえて無視するような態度を取れば、思った通り。一瞬で機嫌を損ね、ドスの効いた声をあげようとし……その瞬間。俺はテレキネシスで、油断しきった奴の足元を文字通り掬ってやる。

 

「……ん、だ、今の……予備動作も、気配も……」

 

 見事なまでに尻もちを着いて、脚の間から呆然と顔を出すフリード君を一瞥し、へらりと笑って一言。

 

「……あらやだセクシー」

「―――ぶっ殺す」

 

 怒りを通り越して、昆虫を連想させるほど冷たく目を据わらせた彼に、背中を汗で湿らせながら……俺の戦い(煽り倒し)が始まった。

 




コピペというわけには行かないからそうせざるを得ないのだけれど……フリードさんの口調考えるのは重労働です。
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