ハイスクールD×D 昼行灯のサイキッカー   作:野分大地

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9.当事者に聞くのが一番早いという話

 いつもの様に特訓を終え、だんだん食い下がれるようになったなーだとか、傷の治りが早くなってきただとかと考えていた夜のことだった。

 部長たちが何やら焦った様子で、朱乃ちゃんの生成した魔法陣でどこかに飛んで行く。イッセー君を助けに行くと聞いて同行しようとするも、俺はグレモリー眷属じゃないからあの魔法陣を通れないんだそうだ。

 相変わらず夜な夜な駆け回っているイッセー君は、つい先日はぐれ悪魔の討伐に同行して以来元気が無いように見えることが何度かあった。そんな折にこの騒ぎだ、何かがあったのかと少々心配していれば……案の定、ボロボロになったイッセー君を連れて皆が帰ってきた。その左腕には、なにやら真っ赤な籠手。あれがイッセー君の神器なのだろうか?

 

 どうやら彼ははぐれ悪魔祓いとやらの襲撃を受けたらしかった。なんでも召喚を行った依頼主を殺して、イッセーくんを待ち構えていたらしい。

……彼の知り合いであるシスターちゃんと一緒に。

 

「部長、オレはアーシアを……!」

「無理よ、どうやって救うの? 貴方は悪魔。彼女は堕天使の下僕。相容れない存在同士よ。彼女を救おうとすれば、堕天使を敵に回すことになる……それは、単なる小競り合いでは済まないわ。私達悪魔と堕天使は、敵対しているのよ?」

 

 部長の冷静な言葉に、イッセー君は口を噤む。

彼は仲間思いな子だ。そのアーシアちゃんを助けたいが、自分の軽率な行動によってこれまた大切な仲間であるオカ研の面々を危険にさらすこともわかっているのだろう。

 うなだれて拳を握りしめる彼の背を見遣りながら、俺は今後の展望を頭の中に描いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……や。来てくれると思ったよ」

 

 俺の人生がズレ始めた始点であり、始めて“戦闘”と呼べるものを行った公園。もはや馴染み深いものとなった噴水の前で、俺は笑った。

 

「しかしあれだね、電話だのメールだのしたわけでも無ければ、約束してたわけでもないのにこうも望むように再会できるとは……あれかな。運命? あっはー、ごめんサブイボたったや。せめてイッセー君殺したあの子みたいな可愛い子だったら、まだちょっと喜べたんだけど」

「……口数が多いな、神器使い」

 

 ペラペラと舌を回す俺に不快感と殺意を露わにするのは、黒いスーツの堕天使……かつてここで、俺とイッセー君を殺し損ねた男。ドーナシークだった。

 

「怯えているのか? 何、心配するな。仮に勝算がある心積もりだとて同じことだ。小賢しい策もどき(・・・・)ごと、捻り潰されることに変わりないのだから」

「あーらら、いいのかい。俺を殺したら部長……リアスちゃん怒ると思うんだけど?」

「ハッ」

 

 男は鼻で嗤って、翼を揺らした。

 

「ならば主の助けでも呼べばよかろう……白々しいのは無しだ、神器使い。貴様は愚かにも私を誘い、私はそれに乗ってやった。貴様の思惑など知らん、狙い通りこの私と対面したのだ。あとは順当に……死ね」

 

 伸ばされた右手の中に生み出される光の槍。かつて戦った時よりもより強い……寒々しいまでの光を放つそれと、今度はしっかり腰を据えて対峙する。

 

 ……分は悪くない賭けだった。

 ソナーの様にトランスを放射して待つこと数十分。誰が釣れても良かったが、おそらく俺の力の残滓を気取ったならばこの男が来るはずだと思った。

そしてプライドを著しく傷つけられ、その鬱屈を部長の割り込みで有耶無耶にせざるを得なかった高慢な堕天使だ。それも負けず嫌いの様に部長に捨て台詞を吐いていったというコイツなら、取り巻きをぞろぞろと引き連れてくるよりも……自分の手で直々に、“図に乗っている神器使い”の勘違いを正しに来るはずだと。

 

「(ここまでは、理想的……)」

 

 神器を周囲に展開する。ここ数日で各々の特徴を掴みつつ有り、一部著しい成長を見せる俺の能力(チカラ)達だ。

 

 ……ここまでが、賭け。ここからは―――

 

「さーて、実践練習だ……《時空の漂流者(サイレン・ドリフト)》」

 

 グルグルと俺を取り巻くバッジの内、テレキネシスが黒い燐光を帯びて停止する。

 

 ―――この数日の地獄の特訓の成果を、発揮するだけだ。

 

「勝たせてもらうぜ」

「ほざけェッ!!」

 

 表情の余裕をもかなぐり捨てて、憎しみも顕わに放たれる槍。

風を切って狙い違わず俺の心臓を狙うそれを、すかさずテレキネシスで逸らす。

 

「何……私の槍を、逸らした? バカな、貴様の神器は……いや」

 

 二本目を作り出しつつ警戒する男。当然だろう、最初は人間離れした身体能力かと思えば、最後に幻覚らしきものを使ってきた人間。それらに警戒して相対すれば、今度は投擲した槍を触れずに逸らして見せたのだ。いよいよ持って、奴は俺の能力を掴めずに居る。

 

「また小賢しい幻か? ……それこそバカな、今回はそのような隙も油断も見せていない……」

「なんでもいいけどさぁ……来ないなら、こっちから行くよっ!」

 

 混乱し、警戒して奴の動きが止まっている隙にPSIを切り替える。選ぶのは白地に青と黄色でポップにデフォルメされたロケットのようなデザイン、バレッドショット。

……テレキネシスは、未だに戦闘用として昇華しきれていない面があるのだ。理屈では今の槍だって空中で静止させたり、更には投げ返したりできるはずの非常に応用が効くPSIではあるのだが、現状では運動エネルギーを持つ物体をノータイムで意のままに操ると言ったレベルには達していない。非戦闘時で見えない手、戦闘中だと見えない力といったところか。

 今度は弾丸の形で放たれたバーストに再び後手に回るドーナシーク、威力はそこまででは無いものの衝撃と小規模な爆風が彼を怯ませる。

 

「ぐっ……ええい、鬱陶しい真似を―――」

「そら、まだだよ」

 

 地力にさほど差はないどころか、粗製戦闘員である俺は底が割れればそれまでだ。冷静さを取り戻す前に畳み掛ける。

 

 三度脳をスイッチ―――朱乃ちゃん(ドS教官)のしごきによって早々にその姿を変えた雷のPSI、深い青緑に細い稲妻が走るバッジ・サンダールーク。

必殺技とはいかないものの、現状の最大火力である雷を半歩後ずさる敵に放つ。

 

「っ……な、めるなぁッ!」

 

 が、あちらの勘が勝ったのだろう。無造作に振り切られた光の槍によって、ちょうど俺の雷撃がかき消される。

 

「あらら、決まったと思ったんだけど……」

「図に乗るな神器使い……このような子供だましで、この私を……!!」

 

 手数の差で押し切られる事を危惧したドーナシークが、いよいよなりふり構わず接近戦を挑んでくる。……正解だ、一朝一夕で仕上がるわけもない身体能力の関係で、ライズについては無様に全部絞り尽くしてただ一発で終わった先日からさほど成長していない。

 

「っ……とぉ!!」

 

 咄嗟に踏み込んでくる男に右手を向けるも、

 

「遅い……!」

 

 奴の開いた左手によって捕まり、捻られる……眼前には振りかぶられた逆手持ちの光槍が、番えられた矢の如く俺を捉えていた。

 

 

「「捕まえた」ぞ―――ッ!?」

 

 

 ―――槍が振り下ろされるその刹那、俺の手首を掴む左手から……電撃として練り上げられた、本命のバーストエネルギーを流し込む!

 

「ガアァッ!?」

 

 何度か痙攣し、光の槍も維持できずに膝をつくドーナシークを、テレキネシスに切り替えて拘束する。

 

「『ショットガン・ボルト』……射程ゼロ、殺傷力極小の“子供だまし”さ。もっとも、しばらく体の自由は効かないし能力を解除させられると言えばなかなかのもんだと思わないかい?」

 

 ……もっとも今は俺のライズまで一緒に消えちゃうから要調整なんだけど、そこまで教えてやる義理もない。

 

「くっ……どこまでも、この私を、コケに……!」

「あっはー、やだなぁ。んな怒んないでよ。だいじょぶだいじょぶ、しばらく(・・・・)でもう十分さ」

 

 ライズと同じく神器とでも併用可能なPSIの基礎の基礎で、俺の一番苦手なトランスの初級編、W・M・J(ワイヤード・マインド・ジャック)

 

「や、俺尋問とかシロートだからできる気がしないし? かといってトランスも苦手なんだよ。読心(マインドリーディング)なんて高等な技術どころか、有線接続だって落ち着いて、抵抗されないような状態じゃないと出来なくてさぁ」

「き、さ……ま…………!?」

 

 ここに来て始めて怯え混じりの嫌悪の色を見せたドーナシーク。しかし、もう遅い。

 

「さぁて、教えてもらおうか。堕天使(きみたち)が何処で、何をしてるのか……洗い浚い、ね」

 




 ドーナシーク戦第2ラウンド。主人公の戦法じゃない気はするけど気にしない、イッセー君がかわりにやってくれますきっと。
 そして地味に奏海の神器の名前と、初めての原作能力登場。
未来の戦闘描写はカットされてるけど強くなっては居るらしいハルヒコ君の電磁'n(ショッカー)から、ショットガン・ボルトです。
 原作だと数m放射することが出来ますし、未来の方なら結構な格上にも通用する能力解除という決まりさえすればかなり強力な能力。奏海はやはり要調整、要特訓ですが。
 ドSな雷の女王の薫陶を受けた結果とかんがえると、かなり彼にとっても印象深い力になるのでしょう……
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