インフィニット・ストラトス AngelWaltzー天使の奏でる輪舞ー 作:八神刹那
『今日から私たちは家族だ。みんなで生きれば何とかなるだろう』
『アレクってば張り切っちゃって』
『でもでも、楽しそうだよー』
家族の笑い声が聞こえる。その光景はきっと自分が望んでいたもの。
護ってみせる。こんなどうしようもない世界でも、希望はあるのだから。
波の音が聞こえる。懐かしい夢を見た。大切な思い出。
ソラはゆっくりと目を開けた。最初に映ったのは眩い太陽。そして、青空。
「ここは‥‥‥」
自分がどこにいるのかをわからない。確か、自分は神と戦っていたはずだ。ラグナメイル、クスィーで。だが、視界に広がるのは真っ青な海と空。
ゆっくりと体を馴染ませるように立ち上がり、周囲を確認する。
「ここ、どこ‥‥‥」
見えたのは自分の知らない建物。世界中を転戦としてきたからある程度の知識はあるが、あんな建物は見たことがない。
「‥‥‥確か女の子にあったんだっけ」
思い出したのは謎の少女との会合。時空収斂に巻き込まれ、虚無の世界で出会った少女のことだ。
「ここが新しい世界」
確かにきれいな場所だ。戦争があったのは何年前だろう。こんなに綺麗な場所は自分の世界には無いのかもしれない。そんなことを考えながら頭をガリガリと掻いていると、
「なんだこれ?」
左手に籠手のよう灰色を基調にし青のラインが入った物が装備されている。
「あれ? 俺、ガントレットなんてつけないぞ」
右手で触ってみる。その瞬間ーーーー
「うぉっ!?」
頭の中に情報が逆流のごとく流れ混んでくる。
歴史。篠ノ之束。インフィニット・ストラトス。白騎士事件。世界。
断片的だが世界を知るには十分な情報が一気に流れ込んできた。
余りの多さに少しばかりめまいを覚える。
「なるほど、ここは本当に新しい世界。それで、あの建物がIS学園とやらでこのガントレットがラグナメイルの待機状態ってか」
随分と便利になったものだ。情報の中にはマナやノーマといった情報はなかった。あの忌々しい技術はないのだろう。問題は、
「神。エンブリヲ、ロンスヴァールの名はなかった」
自分の知りたい情報がなかったこと。神がこの世界にいるのかすらわからない。が、今はそんなことを気にする暇はない。それ以上の問題に遭遇したのだ。
「IS学園の敷地にいるISを持った男。どうしよう」
問題は自分がこの世界の理から外れかけた地点にいるということ。おまけにここは世界のどの法律も干渉できないIS学園の敷地。
「どうしょう」
途方に暮れてしまうソラ。すると、海の向こう側から何かが飛んでくる。
「なんだ? パラメイル?」
いや、パラメイルはこの世界に存在しないはず。なら、あれは、
「ISだよな」
はじめて見るISは全身が装甲に覆われた異様な姿だった。
「あれ、ISって全身装甲のやつなんてあったけ? それに‥‥‥」
あのISからは人の気配を感じないが悪意に似た何かを感じる。サイコミュ兵器。いや、純粋な悪意の塊。いや、純粋すぎる何かを感じる。
「どこ行くんだろう‥‥‥あれ? こっち向いた」
全身装甲のISがソラを捉えた。無性にいやな予感がする。異様に長い両腕が向けられる。そこには見慣れている穴。砲身だ。
「マジでやばい!」
その場から走り出すソラ。その瞬間、さっきまでいた場所が高熱のビームで焼け溶けた。
「おいおい! 警告もなしに撃ってくるか!?」
焼かれた穴を見ている暇なんてない。砲身はまた、ソラを捉えている。
「これってISなんだろ!? だったら! やるしかない!」
ソラは決意し、ガントレットを握る。
「殺らなきゃ殺られるのはなれてる!」
イメージするのは自身が使っていたラグナメイル。クスィー。サイコミュ兵器を搭載した機体だ。
「何が来るかしらねぇが! やるしかない! こい! クスィー!」
ビームが放たれる。その刹那、ソラの体を光が包み込んだ。そして、現れたのは、
全身を装甲に覆った機体。サイコミュデバイスと大出力メガ粒子砲を搭載し、右手には従来の2倍近い初速を誇るビームライフル。機体各所にはミサイルランチャーを装備し、背部にはミノフスキークラフト発生させるフライトユニット。その姿はソラの駆るクスィーそのもの。
「いくぜ! クスィーとソラ! 初陣を飾らせてもらう!」
ソラはミノフスキー粒子を撒き散らしながら空へ飛んだ。