遭難!宇宙戦艦ヤマト!    作:エウロパ

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皆さん、ご無沙汰です。

何とか十一月にまにあいました。




第十話  カウントダウン

夜。

 

「――くっ、私としたことが不覚!食に目が眩み偵察の報告に気がつかないとは!」

 

ヤマトはキリシマが掘ったトンネルの中で悔しそうな表情を浮かべていた。

何故、こうなっているのか。

理由は簡単だった。

ヤマトとキリシマの二人がフルーツに食いついている間にきた偵察の報告に二人とも気がつかなかった為だ。

キリシマは、別に平気ですよ気にしてませんからと、ヤマトを必死にフォローした。

 

「平気じゃありませんよ……もしも、これが敵だったらどうするんですか……」

 

ヤマトは落ち込んだ表情をした。

 

「そ、それは……で、でも、あの時は私も同じでしたし今回は何も私達にとって害な事はなかったじゃないですか。次回から気をつけましょう」

 

「そうですね……分かりました。そうしましょう」

 

ヤマトはキリシマの言葉にそう返事をした。

しかし、ヤマトの顔は相変わらず曇ったままだった。

するとキリシマは手を一回叩いた。

 

「この件はこれでおしまい!今はこっちの事に集中しましょう!」

 

「……いつまでもウジウジしていられませんね」

 

ヤマトは両手で自分の両頬をパンッと叩くと意識を切り替えた。

 

キリシマは手をあげる。

 

「ヤマトさんが、もとに戻ったところで質問です。大体の事は分かっているつもりですが、一応、偵察の詳細情報を教えてください」

 

「分かりました。それでは、一度整理しましょう」

 

ヤマトは偵察報告の結果がまとめられた報告書のウィンドウを空中に表示させると画面を指でスクロールしながら目を通した。

「先程、といっても昼の事ですが……北半球の偵察を終えたコスモタイガーの一機が帰投中、偶然北西方面のグアム諸島周辺が軍事的に緊張状態にある事を確認しました。これがコスモタイガーが上空から撮影した画像です」

 

ヤマトはそう言うとさらに数枚の画像を新にウィンドウを開き表示した。

画像にはグアムの写真とその周辺の海域の写真が写っている。

そして、グアムがアップで映され島の建造物や道路が識別できるくらいになった。

 

「ここを見てください」

 

ヤマトは道路の部分を指差した。

 

「道路の部分に戦車やトラックの車列ができています。それともう一ヶ所、海岸線です」

 

グアムの数ヵ所の海岸線がアップで映し出された画像がいくつも表示される。

その画像には、海岸線にそって無数の戦車、ミサイル発射機、自走砲が映っていた。そして、その全てが砲身を海に向けている。

 

「見て分かる通り、グアム島にいる人類側の戦力……恐らくこのマークはアメリカだと思いますが、その戦力は海岸線沿いに配置されています。さらに陣形からは明らかに島の防衛を念頭においていることが分かります。それでは一体何からこの島を守ろうとしているのか……こちらです」

 

ヤマトはグアムから少し離れた海域の画像を表示した。

 

「やはり……深海凄艦ですね?」

 

ヤマトの画像を見たキリシマは眉間にしわを寄せて言った。

 

「その通りです」

 

画像には深海凄艦が海を黒く染めるように群がっている様子が写し出されている。

超弩級宇宙戦艦級、空母級、巡洋艦級等、まさに宇宙戦艦のオンパレードだ。

 

「さらに、調査の結果この深海凄艦の群れに向かって南方から大量の輸送船級の深海凄艦が続々と物資を輸送しています」

 

「なるほど……つまり」

 

キリシマは顎に手をあてた。

 

「衝突間近だということですね?」

 

「その通りです」

 

キリシマの問いにヤマトは頷いた。

 

「しかも、人類側の戦力はその形状から旧時代の遺物、二十一世紀に使われていたものです。そんな戦力ではいくら数があっても深海凄艦は倒せません。現代戦は高出力のビーム砲や宇宙魚雷のせめぎあいです」

 

「そう、ですね……」

 

ヤマトが何気ない言葉を言った瞬間キリシマは自身の心に何かがグサリと刺さった様な気がした。

 

 

 

――この船では奴らには勝てない――

 

 

キリシマは自分の耳に自分の艦長、沖田の言葉が聞こえた気がした。

 

キリシマの頭にフラッシュバックの様に地球がガミラスと戦争をしていた頃の記憶が思い出される。

 

自分は必死に戦った。

 

冥王星沖海戦、最後の地球艦隊としてユキカゼや他の皆と共にガミラスの冥王星基地を叩こうと……。

 

でも負けてしまった。

こちらの主砲は敵の装甲に弾かれ武器はミサイル以外なにも効かない。

対して敵はこちらの主砲の何倍もの出力のビーム砲を撃ってくる

まさに一方的だ、戦いにすらなっていない。

艦隊は結局、私以外全滅。

ユキカゼは私の身代わりとなって沈んだ。

 

そんな最中キリシマの中で沖田は言った。

 

この船では奴らは勝てないと……。

 

艦としてここまでの屈辱はあるだろうか。

 

自分の能力が低いあまりに艦長にこんな事を言わせてしまうなんて……。

 

そう考えるとキリシマには、この画像に写っている戦車や砲は可哀想に思えた。

 

 

「……キリシマさん?聞いてます?」

 

「あ、すいませんヤマトさん」

 

キリシマがぼぉーと考え事している間にヤマトは首を傾げて心配そうにキリシマの顔を覗きこんだ。

 

「大丈夫なら良いですが……まぁ様は先に仕掛けてくるのは深海凄艦側だと推測されるということです……そして、これはある意味チャンスでもあります」

 

ヤマトは腕を組んで静に目を閉じた。

そして数秒間静にすると再び目を開けた。そして島の写った画面を見つめる。

 

「この島は人類側にとって、とても重要な島だと思われます。陸上戦力が一つの島にしては多いですからね。つまり、これだけ陸上戦力が存在するということは恐らく……」

 

「艦娘がいる……ということですね?」

 

ヤマトの説明を聞いたキリシマはヤマトの目を見つめて言った。

そんなキリシマに対してヤマトは頷いた。

 

「その通りです。つまり深海凄艦が攻めてくればこの世界の人類側戦力、艦娘が出てくるはずです。そうなればこの世界の艦娘の実態が分かります」

 

「なるほど……つまり、ヤマトさんが言いたいのは……」

 

「分かりましたか。私が言いたいのは今回の戦闘を情報収集の為の場にしようという提案です。戦闘が起きる海域の近くに潜入し情報を収集します」

 

ヤマトの考えを聞いたキリシマはなにも答えず顎に手を当てた。なにかを考えているようだ。

 

「キリシマさん、どうかしましたか?何か不満でも?」

 

ヤマトの問いにキリシマは首を横に振った。

 

「いえ、別に不満は無いのですが……ひとつ気になった事がありまして……」

 

ヤマトは首を傾げてキリシマに聞くとキリシマはあ神妙な面持ちでとある疑問をヤマトに投げ掛けた。

それはキリシマがこの世界に来てからずっと疑問に思っていたこと……。

 

「この世界の艦娘って、本当に私達と同じ存在なのでしょうか?」

 

「……それは……どういう意味ですか?」

 

ヤマトは困惑した。

キリシマの問いが理解できなかったのだ。

艦娘は沈んだ宇宙戦艦の生まれ変わり、その魂の欠片だ。

それはどんな世界でも変わらないはずヤマトはそう思った。

だからヤマトはその事をキリシマに言った。

するとキリシマは首を横に振った。

 

「いえ、そういう事ではありません。うまく言葉にできませんが……何かが違うと思うんです……」

 

キリシマはそう言ったが結局、ヤマトにはキリシマが言おうとしている意味が分からなかった。

 

「……と、とにかく、今は今後の予定を確認しましょう。私の計算によれば近いうち、恐らく七日以内に動きがあると思いますから、そうですね……五日間程はキリシマさんには、このまま地下要塞の構築をお願いします」

 

「……はい」

 

キリシマが頷くのを見てヤマトはさらに話を進めた。

 

「私はその間、コスモタイガー隊を使ってさらなる情報収集をおこないます。そして六日目にはグアムへむけ出発しましょう」

 

「了解です」

 

ヤマトはキリシマの返事を無言で一度頷きどこか遠い目をして呟いた。

 

「さぁ、これから忙しくなりますよ――」

 

 

 

 

 

――ヤマト達が作戦会議をした翌日、グアム海軍基地でも頭を悩ませている者達がいた。

 

日本海軍も駐留するこのグアム海軍基地はアメリカにとって最も重要な基地の1つである。

十年前、ハワイを失ったアメリカ軍がフィリピンに拠点を築いてからグアムはフィリピンから在日米軍基地への重要なシーレーンの中間基地となっていた。

 

そんな基地内にあるアメリカ・アジア太平洋艦隊グアム司令部のブラインドで閉めきられた薄暗い会議室では今年、六十歳になるアメリカ海軍グアム基地司令官、ハワード・ジョンソンがグアム周辺の海図を見ながら一人で頭を抱えていた。

海図には深海凄艦が攻めてくるであろう予想侵攻経路がびっしりと書かれている。

すると、会議室の扉がノックされギィーと音をたてて開いた。

 

「司令官、失礼します」

 

そう言って入ってきたのは、アメリカ海軍の迷彩服を着た褐色肌の15才くらいの少女だった。

髪型は黒髪のツインテールの様で迷彩の帽子からはみ出ている。

その彼女は両手に書類の束を抱えてハワードのすぐ前まで来ると書類を脇で挟み、書類を落としそうで落とさない絶妙なバランスでハワードに敬礼した。

 

「ハワード司令官。報告書をお持ちしました」

 

「うむ。ご苦労だっだなリリィ君。そこに置いといてくれ」

 

ハワードは自分が使っている書類に溢れたテーブルを指差した。

 

「了解しました……よいしょっと」

 

リリィ・ブラウン。

軍に入っている事を除けば真面目な15才の普通の少女だ。

ただし、今年で入隊三年目にしてハワードの補佐官まで上り詰めた……いや、上官達が皆死んでいったと言うべきだろう。

最初の補佐官はカールというハワードと同期の男だった。

だが、彼はグアムからフィリピンに向かう途中輸送機を撃ち落とされ死んだ。

その次の者も、その次の者も、その次の者も……皆死因は違えど深海凄艦に殺された。

そして彼女、リリィ・ブラウンはハワードの補佐官としては十人目になる。

 

深海凄艦が海を支配するまでは少女少年兵などあり得なかったが今では普通の事。

特にアジア・太平洋戦線では本土からの新兵補充がほぼ無く、そして初期の戦闘で大人の兵士が多く戦死し過ぎた事もあり今では子供であろうが十才をこえていれば誰でも入隊できる様になっている。

彼女、リリィ・ブラウンもそんな中入隊してきた一人だった。

 

「あの、司令官?」

 

リリィは少し不機嫌そうな顔でハワードを見つめてきた。

 

「な、なんだね?」

 

そんなリリィにハワードは苦笑いを浮かべた。

リリィが補佐官について一年はたつが、子供の為か基本的に穏健な性格のハワードには今だリリィの事を完全には軍人として見ることができないでた。

 

しかし、このリリィという少女。

軍人としての力は並みの新兵より凄くIQも非常に高い。

グアムで入隊した新兵の中ではトップクラスの成績を持っている。その実力はハワードの過去の補佐官には今は遠く及ばないもののグアム海軍基地内では最も話が通じる人間だ。

もし、本国にいけば特殊部隊配属やペンタゴンでの任務も夢ではない程の将来有望な少女なのだ。

 

「司令官!人の話、聞いてますか!」

 

「あっ、はい」

 

リリィは突然、怒った様子で窓に早足で近寄ると閉めきっていたブラインドに手をかけた。

 

「また、こんなに部屋を暗くして!何度言わせれば気がすむんですか!目が悪くなりますよ!ただでさえ老眼ですのに」

 

「あ、ああ、すまんな……」

 

リリィはブラインドを開け外の光を部屋に入れた。そして、またテーブルに近づくと今度はテーブルの上の書類の山をジーっと見つめ始めた。

 

「なっ……何かな?」

 

首を傾げるハワードに対してリリィは明らかに、めんどくさそうな顔をした。

 

「テーブルの上もこんなに散らかして……あとで整理しに来ますからね」

 

「ああ、すまん……私は整理整頓というのが苦手でな……」

 

ハワードが釈明するとリリィは溜め息をついた。

 

「はぁ……分かってます。まだ一年しかたってないですけど司令官の性格はよく知っているつもりです」

 

リリィはニコッと笑みを浮かべると背筋を伸ばしハワードに敬礼した。

その表情はハワードのは嬉しそうに思えた。

 

「それでは私はこれで失礼します。――あっ、そうだ司令官、コーヒーと紅茶どちらにしますか?もうじき休憩をいれる頃でしょ?」

 

思い出したように言ったリリィの言葉にハワードは腕時計の時間を見た。

 

「もうこんな時間か。それじゃあコーヒーを頼もうかな」

 

「分かりました。後ほどお持ちしますね。それでは」

 

そう言うとリリィは会議室を後にした。

 

「フッ……本当なら叱らなければいけないのだろうが、叱れんな。私も甘くなったものだ、歳のせいかな?だが、あれは彼女の良いところでもあるな」

 

ハワードはそう自分を笑い、独り言を呟くとリリィの持ってきた書類の束から迷わず三段目の書類を手に取った。

リリィの持ってきた書類はいくつかの本のようにまとめられた数十ページに及ぶ報告書の束だ。

報告書のタイトルを見ると自然とハワードの笑みは消えうせる。

 

一段目の資料は陸軍の軍備報告書、二段目の資料は海軍の軍備報告書、四段目はロシアをめぐる欧州の情勢変化についての報告書、どれも重要な報告書だが三段目の資料に比べれば重要度は低い。

 

三段目の報告書は他の資料に比べればページが半分近く少ない薄いものだ。

 

表紙には〝TopSecret〟と書かれ、さらにその文字の近くにはCIAのマークまで入っている。

つまり、これはCIAの極秘諜報資料だ。

ハワードはゆっくりと最初のページをめくった。

 

「どれどれ、ジャパニーズは何を考えているのかな……」

 

その報告書はこの基地に一緒に駐留している日本国海軍に関する諜報資料だった。

情報提供者の部分は黒く塗り潰されているが他の部分はしっかりと読めるようになっている。

ハワードはその資料を読み始めると表情を次第に険しくした。

そして一通り読み終えると同時に資料をテーブルに放り投げ薄ら笑いを浮かべた。

 

「やってくれたなジャパニーズ……」

 

ハワードは目の前が真っ暗になった気がした。

報告書にはそれだけ恐ろしい事が書かれていたのだ。

予想は少ししていたが実際にこの目で見ると頭がクラクラする。

報告書の内容は簡単。

 

 

〝日本海軍はなにもしない〟

 

 

やつらはこれによって、我々アメリカ海軍にチェスで言うところのチェックを仕掛けてきたのだ。

今まで助けてやった恩を忘れて。

 

現在、グアムは深海凄艦の総攻撃を受ける寸前だ。

アメリカ海軍の艦娘部隊は前回の戦闘の敗北によって戦力の八割を損失している。

残っているのは駆逐艦や軽巡洋艦は20隻ほどだけだ。

対する深海凄艦は百隻以上の大艦隊。

勝ち目など有るわけがない。

残った使えそうな戦力があるとすれば温存していたズムォルト級ミサイル駆逐艦が1隻、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦が1隻、空母として使えそうな強襲揚陸艦も1隻あるがこちらは役に立ちそうはない。

グアム自体が浮沈空母だからだ。

だが、深海凄艦相手に通常兵器が何処まで通じるか分からないが……。

 

こんな状況だが、ひとつだけ朗報もある。

日本海軍〝本隊〟はなにもしないがここに駐留している日本海軍の僅かな艦船は我々と共に〝死ぬまで〟味方してくれるらしい。

とても日本人らしい発想だがこれはどう考えても新日米安全保障条約上の建前にすぎない〝捨て駒〟だ。

一応、同盟国アメリカの為に日本は必死に戦いました……という大義名分が欲しいのだろう。

彼らもそれは分かっているはずだ。

フィリピンの司令部はグアム駐屯日本海軍を艦隊の組み込み決戦に挑めと言ってきた。

私としては気分が悪いが仕方ないことだ。

 

グアムを失えば日本本土と日本国内の我が軍の基地は補給路を完全に断たれ孤立する。

だがそうなれば日本には資源が無いためどこかの国と協力しなければならない。

それはどこか?

 

ロシアだ。

 

アメリカは戦力不足の為グアムの方まで手がまわらなくなるだろう。

そして日本は何年か前からロシアとの同盟を結びたがっていた。

だが我々アメリカがそんな事を許すはずがない。

そのために関係は急速に悪化した。

深海凄艦に海が支配されているとはいえ冷戦構造は変わっていないのだ。

それどころか冷戦は深海凄艦が海を支配したことでさらに悪化している。

アメリカが欧州やアフリカ諸国に手を出せなくなった事を良いことにロシアは各国をロシア側に取り込もうとしているのだ。

すでに旧西側諸国の半分はロシア側に吸収された。

深海凄艦が居なくなった後の新世界の秩序をロシアは作ろうとしているのだ。

そしてその矛先は今、日本に向いている。

今の日本は例えるなら魚だ。

資源という餌にまんまと食いつこうとしている魚……。

 

アジアは合衆国に残された最後の砦なのだ――。

 

 

 

 

 

――グアム決戦まであと六日――

 

 




今回はヤマト達の他にアメリカ側の目線も中心にしました。

今回の話でこの作品の世界観、現代の延長線上というものが分かっていただければ嬉しいです。
(少々現実とはかけ離れたものがありますが……)
文章に問題があればドシドシ教えてください。

次回の投稿は十二月の十五日以降か来年の一月になりそうです。
この件に関しては十二月の始め頃に活動報告でお知らせすると思いますのでそちらをご覧ください。

十一月になりましたね。
でも、今年の冬は異常気象で暖かいようですね。
自分としては嬉しいですが。
あとは、季節の変わり目なので体調には注意してください~。

こんなこと言いましたが私、実は今月の始めに用事で行ったとある水の都でピザを食べたら食中毒になってさらに帰ってきてから治っていたはずの喘息が復活してしまって、さんざんな目に遭いました……。

ピザには気をつけて!


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