「……南西諸島、製油所地帯沿岸、カムラン半島、沖ノ島海域、アルフォンシーノ、キス島、ジャム島、珊瑚諸島海域……他にはインドネシア、チリのイースター島、果てはインド洋のマダガスカル沖でも例の艦娘の目撃情報が挙がっている」
「そんなに広範囲で目撃されているのか……」
「グアムの決戦からもう一ヶ月だぞ!?諜報部は何をしているんだ!?」
「仕方あるまい。足取りが殆どつかめないんだ」
「そうは言うがな、このままでは他の国に先をこされるぞ?」
言い争いの様な議論が飛び交う暗い会議室。
室内の明かりは会議に出席している者たちが手に持っているタブレット端末と映写機で映し出された資料の光だけだ。
ここは日本国神奈川県横須賀市にある日本海軍の一大拠点、横須賀鎮守府の会議場。
この日この会議室には各鎮守府から集まった少数の海軍上層部による秘密会議が行われていた。
この会議室は普段はめったに使用はされることがない本来であればただの税金の無駄遣いで作られた部屋だ。
だが、この日ばかりは様相が違っていた。
会議に列席している日本海軍の幹部達は皆一様に深刻な表情をしている。
彼らは一体何の会議をしているのか。
その議題は一つしかなかった。
それは……。
「宇宙戦艦ヤマト……か」
一人の初老の幹部が腕を組んで呟く。
それに対して幹部達は初老の幹部の方を向いた。
「確か、グアムのアメリカ軍や我が海軍の暗号通信を意図も簡単に突破し通信をしてき名乗ったんだったな」
「今分かってるのは、あの大和と霧島に似にている空飛ぶ艦娘が想像絶する力を有しているという事だけか……」
「あと地球連邦とも言った。地球防衛軍宇宙艦娘艦隊ともな」
「正気か?第一、地球連邦なんて国聞いた事はないし地球防衛軍なんて一昔前のSFアニメや特撮に出てきそうな名前じゃないか」
ある幹部はそう言うと薄笑いを浮かべる。
「私は事実を言っただけだ」
「地球なんちゃらや、なんとか防衛軍というのは彼女達が本来所属する組織を隠す為のブラフでは無いのか?」
「その可能性はあるな」
「今回の事件によってわが国へのアメリカ軍のシーレーンを寸断する事に失敗したがとんでもない物が出てきてしまったな。すでにロシアやアメリカや北朝鮮の諜報部が動いている」
「だが、あれから一ヶ月、我々もただ指を咥えていたわけではない」
幹部の一人はタブレットを操作する。
すると、映写機の映像に世界地図が映し出された。
その世界地図にはヤマトの目撃地点に赤い印が表示されている。
「これを見てくれ。例の二体の艦娘の目撃情報だ。知ってのとおり例の艦娘は太平洋、インド洋を問わず目撃されている」
「まるでUFOだな。月間ムーとかに紹介されそうな内容だ」
「……目撃例の一番多いのは太平洋だ。特に南方の海域で頻繁に目撃されている。これは二体の艦娘の拠点か何かが太平洋の何処かにあるという事を示しているのではないかと、我々は考えている」
「根拠は?」
「アメリカやロシアやそれに防衛省の対外諜報部も太平洋を中心に捜索している。特にインドネシアやフィリピン、オーストラリア、パプアニューギニアの地域はアメリカの活動領域だ。そのアメリカが自分達の領域を中心に捜索しているところを見ると、アメリカは南太平洋が怪しいと見ているのだろう」
「なるほどな……だが、つまり、これではっきりしたな。二体の艦娘は既存の大国に属していない。まぁ、未確認の組織という可能性はあるがな」
「そうだ。つまり、先にこの二体の艦娘を見つけ出した国が場合によれば核よりも強力な力を得る事ができる」
「他国はもちろん防衛省の連中にこれ以上でかい顔をさせるわけにはいかない。探し出せ、絶対に我々の手で必ず探し出すんだ」
一人の幹部が威勢の良い事を言うとそれを聞いていた他の幹部達も頷いた。
各自の表情は真剣そのものだ。
すると、この会議の議長役を勤めていた幹部が静かに口を開いた。
「……では、南太平洋地域一帯を中心に諜報活動及び捜索活動を始めるという事でよろしいかな?」
「「「「「異議なし」」」」」
会議室に幹部達の声がこだまする。
「うむ。ではこの案件は賛成多数により南太平洋地域一帯の諜報活動及び捜索活動の強化する事を正式決定する。それでは次の案件に移る。手元の資料、385ページ、鎮守府の保安及び健全性の項を開いてもらいたい。諸君も知ってのとおり、近年、各鎮守府では艦娘の増加と共に艦娘に対する一部提督や鎮守府職員による犯罪行為が増加している。そこで――――」
数日後。
パラオ共和国。
太平洋上に浮かぶ平均気温27度、人口二万人の小さな国家である。
西暦2036年現在、この国は日本と防衛条約を結び日本海軍の泊地が置かれている。
深海凄艦が世界の海を支配して以降、国際情勢は急激に様変わりした。
日本は全方位を海に囲まれた島国だ。
深海凄艦が登場した当初、隣国もこれまで長い間敵対していた国家しか存在しなかった日本は経済的、エネルギー的、食料的にも深刻な危機を迎えた。
ロシアとの協力はアメリカの意向があり中々進まない。
今は無き旧韓国は日本よりも危機的な状況となった陸の孤島だ。
そこで当時の日本政府は南方へと目を向けた。
防衛能力がなくアメリカ等からも見捨てられた南方の島国に艦娘を治安維持を名目に派遣し駐留させ南方地域から日本への新たなシーレーンを構築した。
しかし、朝鮮半島の北朝鮮の韓国の吸収合併による統一とロシアとの友好関係を構築する事を考える新政権が日本に誕生した事により現在、南方のシーレーンは部隊こそ駐留を続けているものの南方のシーレーンの重要度は下がり食料や僅かな石油の輸入などに限られたものに変わっている。
そんなシーレーン上にある国の一つがパラオ共和国である。
そのパラオのコトール島の日本海軍基地にある若い女性提督が居た。
「……これは本当なのか?」
提督の執務室でその女性提督は険しい表情で秘書艦の加賀に聞く。
女性提督の手には本部からの通達書が握られていた。
「はい、間違いないようです。詳しい状況は現地が混乱している為、まだ分かりませんが……」
「そっちは仕方ないだろう。引き続き状況の把握を急がせろ」
「了解です」
「だが、解せん……本国は何を考えているのだ?この様な時に戦力を分散させるような指示を出すとは……」
女性提督の名前は岸田夢、西暦2031年に日本海軍の提督に転属となり3年ほど前にパラオへと転属してきた指揮官だ。
指揮下の艦娘は130を超えている。
「くそっ!」
岸田はそう言うとテーブルを殴りつけた。
「こんな島国に配属とならなければ詳しい状況がもっと分かったのだが……」
「提督……」
加賀が心配そうに岸田を見つめる。
「はぁ……すまない」
岸田はため息をつくと椅子に深く座り込んだ。
「加賀、すまないがお茶を入れてくれ……」
「分かったわ」
加賀はそう言うと執務室の隣にある部屋に行き電機ポットを使ってインスタントのお茶を入れる。
「どうぞ。提督」
「ありがとう」
お茶を受け取った岸田はお茶に口をつけると再びため息をつく。
「加賀、これによるとだが……」
岸田は通達書に目を向けた。
「今日、ここに来るのは駆逐艦1隻と潜水艦2隻の艦娘だな?」
「はい。そうだと連絡を受けています。任務の詳しい概要も彼女達が伝えるとの事です」
「よし……それなら、到着しだい今回の任務に適任の艦娘を選出してくれ。グアムへの戦力補填の部隊もだ。下手をすればこの任務、長期になるかもしれん」
「……私で、よろしいのですか?」
首を傾げる加賀に岸田は手を組み軽く得意げな笑みを浮かべる。
「フッ……一体、何年の付合いだと思ってるんだ加賀?お前なら私を失望はさせないだろ?」
「分かりました」
岸田の言葉を聴いて加賀は嬉しそうに小さく笑った。
「あ、それとですが、頼まれていた情報が本土のご友人から届きました」
「おお、もう届いたか……」
岸田は眉間にしわを寄せる。
加賀は茶封筒を取り出すと岸田に渡した。
封筒を受け取った岸田は封筒を開き中に折られて入っていた紙を広げ見つめる。
「……日本、アメリカ、ロシア、北朝鮮か」
「そんなに大きい話なのですか?今回のは……」
加賀は不安な表情を浮かべた。
「……どうやら、その様だな。様々な国が動いているようだ」
そう言いながら岸田は読み終わった紙を四つ折りにするとライターで紙に火をつけた。
火が手に届く前に燃え上がる紙を灰皿におく。
「最初の動きは一ヶ月前。アメリカが最初に動き出し、その後、日本とロシアが動き出した。北朝鮮は前者よりも本格的ではないが、どうやら保衛部が動いている……やはり、これでは情報が少なすぎるな……頼れる情報は今のところ昔の同僚だけだ」
「確か、グアムの指揮官も提督の知り合いなのでしたよね?」
「ああ、昔の私の部下だ。私がこうなってからはCIA関係の諜報活動ではヤツが海軍内で一番だろう。それも過去のものかもしれんがな……」
岸田はポケットからタバコを取り出すと灰皿で燃える手紙に近づけ火をつけた。
そのタバコを口に銜える。
「ふぅ……」
口から吐かれた煙が部屋を漂った。
加賀が怪訝な顔をする。
「……提督、お体に悪いですよ」
「もう、とっくにボロボロだから問題はないさ」
岸田は遠くを見るような目になる。
「ヤツの部下がここに来るまでは私達も動くに動けんな……」
※
同時刻、日本国横須賀鎮守府。
「……よかったのですか?あの女に任せて。あの女は」
「言うな。俺だって嫌だったんだ」
横須賀鎮守府のとある執務室に二人の男の不機嫌そうな顔で話していた。
二人は日本海軍の将校だ。
「旧警視庁公安部……今の国家保安庁出身その後、防衛省対外諜報部を転々として日本海軍に転属されてきた厄介物……」
「……だが、あの女は今回の任務に適任だ」
「しかし!」
「お前の言いたい事は分かってる……俺もあの女を使うのは危険だと思っているさ。でもな、俺たち日本海軍は諜報活動を本格的にやる部署がなければ経験もないんだ。グアムの例の提督が使えなくなった今、海軍に残された諜報活動のプロはあの女しか居ない」
「……ですが、私は納得できません」
将校の説得を受けてももう一人の将校は納得しそうはなかった。
「納得はしなくても良い……俺も納得してはいないがこれは上層部の決定だ」
「上層部ですか……」
二人は険しい顔をする。
「このままでは海軍は防衛省の連中に出し抜かれる。最近、防衛省の連中が影響力を伸ばしているだろ?だから、上層部はグアムの戦いに現れた謎の艦娘の情報を少しでも欲しいんだ。既に世界各国がやつの正体を知ろうと動いている……海は俺達海軍の管轄だ防衛省のやつらに任せてはおけん」
「それなんですが……本当の話なんですか?グアムに現れた謎の艦娘というのは?」
「……正直俺も信じられん。だが、事実だ。現にアメリカもロシアも動いている」
「SFみたいな話ですよね……突然グアムの上空に現れ未知の光線兵器で数分もかからずに深海凄艦の大艦隊を一瞬で殲滅した空とぶ艦娘……」
将校は苦笑いを浮かべた。
「だな……だが、あの艦娘を可能なら上層部は海軍へ引き込もうと考えている」
「本当ですか?あのような強力な艦娘ならアメリカの秘密兵器とかでは……いえ、アメリカの秘密兵器だったらアメリカが動くわけありませんね……」
「そういうことだ。今のところ上層部はあの艦娘は地球上どこの機関にも所属していないと考えている」
「ということは……他の国も同じ事を考えているという事ですね?」
「そうだ……艦娘は元々、国際情勢を変えるほどの力を持っていたが、あのイレギュラーの出現は……世界を変えるかもしれない。この破滅した世界をな……」
みなさまどうも、エウロパです。
最近、気温がようやく高くなってきましたね。
今年も夏が始まるのかと思うとアレルギー的な意味で憂鬱ですがサーキュレーターで今年も頑張って乗り切ろうと思います。
皆様も熱中症や体調には十分注意してください!
ちょっとヤマト関連で雑談なのですが……。
最近、ヤマト完結篇を見返してたんですが、そこで少し疑問に思った事を一つ。
私見てて思ったんですけどガルマンガミラス本星って実は無事なのではないかと思ってしまいました。
というのも、完結篇の冒頭で古代がガルマンガミラス本星の上空で白いバラを落としますよね?その直後、近くの星が爆発するようなシーンに変わりヤマトは無差別ワープで脱出します。これだけ見るといかにもガルマンガミラス本星が消滅したように見えますが後半、実は生きてたデスラーがヤマトを助けます。その時、デスラーは古代がガルマンガミラス本星に落とした白いバラを持っています。
私はここであれ?と思ってしまいました。
考察サイトを見るとガルマンガミラス本星は消滅したという意見が多いのですが、消滅した、または生存が不可能なほど壊滅的な打撃を受けたとなるとデスラーが白いバラを持っている理由の説明はつきません。
その様な被害を受けた場合、白いバラなんて木っ端微塵でしょう。
という事はガルマンガミラス本星はやはり健在なのではないかと思ったのです。
それに、ヤマトⅢでボラー連邦のワープミサイルが本星を襲った際、タランが地下宮殿の存在を口にしています。
もしかしたら、ヤマトが白いバラを空からまいている時に一般市民達はこの地下宮殿に避難していたのかもしれません。現にデスラーパレスの都市中心部はさほど被害を受けていないようにも見えます。
ガミラス人は真空でも生きていけますので多少のことではそう簡単に死なないでしょう。
まぁ、そうだとすると、またいつもの古代の早とちりという事になってしまいますが……。
でもこの考察はあくまで完結篇内での時系列の話です。デスラーが星間国境の巡視から本星へ戻って生存者を助けてから消滅した可能性もありますし、本星を放棄した可能性もあります。本星と機能している可能性も棄てきれません。
長々と失礼しました。
ガルマンガミラスやボラー連邦が復活編の時系列で存在しているかしていないかは物語を左右しますのでつい考えちゃいました。
それでは皆さん、また次回お会いしましょう!
読んでいただきありがとうございました!