「ふぅ~ヤマトさん。こっちは何とか修理完了です。そちらはどうですか?」
主砲の修理が完了したキリシマは主砲のふたを閉めて手に持っていたレンチを地面に置いた。
「こちらも何とか終わりそうです。ですが、波動砲はこの現象がわかるまで使用は控えなければなりませんね――」
「そ、そんなに落ち込まないでください!きっと大丈夫ですよ!地球防衛司令本部が無事なら修理もできるはずです」
「ここが私達の知る地球ならね……」
ヤマトは落ち込んだ様子で言った。
「縁起でもない事言わないでください……」
「「……」」
ヤマトとキリシマの間に重い空気が流れた。
「――ん?」
すると突然ヤマトからピピーと電子音が鳴った。
「どうしました?」
「コ、コスモタイガー隊からの報告です!」
ヤマトは待ってましたと言わんばかりに耳に手を当て報告に耳を傾けた。
「ど、どうですか?」
キリシマは心配そうな表情を浮かべた。
「ちょっと待ってください。今、向こうから映像が送られてきます……来ました。日本列島、メガロポリス上空です」
ヤマトは空中に画面を投影するとコスモタイガーのカメラが撮影した映像を映し出した。
「え……」
ヤマトが映し出した映像に違和感を覚えたキリシマは思わず声が漏れた。
「ヤマトさん……これって……」
キリシマの問いに、ヤマトはゆっくりと頷いた
「どうやら、事態は私達が考えていたよりもより複雑に、最悪の状況へと推移しているようですね――」
ヤマトが映し出した映像にメガロポリスの美しい未来都市の姿は無かった――。
あったのは、旧時代的な古いビル群の街並みの姿だった。
都市部にはヤマト達の見慣れたチューブカーやエアカーの姿はなく、代わりに博物館にあるような大昔の車が道路をわずかに走り、橋の上にも大昔の電車が走っていた。
この姿はまるで――。
「昔のメガロポリス――東京」
キリシマは静かに言った。
「キリシマさん。この街を見たことあるのですか?」
ヤマトは若干驚いた様子でキリシマに聞いた。
「いえ、この街を見たわけではないのですが……」
キリシマは艦娘になる前の記憶を辿った。
「昔、まだ地球がガミラスの侵攻を受ける前の事です。その時のメガロポリスはまだメガロポリスと呼ばれていませんでした。その時の名前は〝東京〟その頃の東京は今みたいに奇抜なデザインのビルはあまりありませんでした。あったのはエアカー位ですかね」
キリシマはなんだか懐かしくなった。
「へ~」
「とにかく、その頃の東京は今みたいではありませんでした。昔の街並みも持っていたんです。」
「それじゃあ、この画面に映っている都市はその頃のメガ――東京ということですか?」
ヤマトの質問にキリシマは首を横に振った。
「いえ、私の見る限りその時よりもいっそう古く感じます。」
「そうですか……」
「あの……」
キリシマは不安げにヤマトに話しかけた。
「もしかして私達は……その……過去にタイムスリップしたんでしょうか?」
それに対してヤマトは首を横に振った。
「いえ、恐らく違います」
そう断言するヤマトにキリシマは首を傾げた。
「どういうことですか?」
「もしこれがタイムスリップなら何故、深海凄艦がいるのですか?」
「確かに……」
ヤマトの言葉にキリシマは納得した。
ここが過去の世界だとして深海凄艦が居るのはおかしいのだ。
深海凄艦が現れたのは西暦二二〇五年、それより以前に地球上に深海凄艦が出現したことは一度も無いのだ。
「とにかく――あっ来ましたね」
ヤマトが何かを言おうとすると先程と同じ電子音が響いた。
「他の偵察部隊からの報告です。映します」
ヤマトは東京上空の映像画面の近くに五つの画面を新たに投影した。
「こ、これは……」
そこに映し出されてたのは地球連邦に加盟する主要国の都市の映像だった。
ソビエト連邦のモスクワ、アメリカ合衆国のニューヨーク、ドイツのベルリン、イギリスのロンドン。
キリシマはどうか夢であってほしいと思ったが、そこにあったのは非情な現実だった。
その映像には、どこにもキリシマ達が知る都市の姿は無かったのだ。
「これで決まりですね、ここは――」
ヤマトは青ざめた顔で言った。
「――ここは私達の知る地球ではありません。」
ヤマト達の知る都市の姿は無かった。これで、この地球がヤマト達の宇宙とは別の宇宙にある、つまり異世界だと、ほぼ確定されたのだ。
「ヤマトさん……私達はこれから一体どうしたら……」
キリシマの頭は混乱して、もう、どうしていいのか分からなくなった。
「それを決める前にこれも見てください」
ヤマトは五つ目の画像を指差した。
キリシマは目を見開いた。
「何てこと……」
キリシマはその画面に映し出されている映像に驚愕した。
映像は超高高度から拡大撮影されたどこかの島の様子だった。
その島の周りには無数の深海凄艦がひしめき、中には主に超弩級宇宙戦艦級や巡洋艦、空母級、駆逐艦級がいる。
そしてその島の中心には――、
「――飛行場姫」
キリシマはさらに青ざめた。
飛行場姫とは深海凄艦に制圧された惑星に現れる特殊な深海凄艦だ。
ヤマトの重武装なら一人で勝てない事もないが問題はそこではない。
「ヤマトさん……地球は……この地球は深海凄艦に支配されているのですか?」
ショックを受けすぎたキリシマは絶望からか震えながら言った。
「いいえ、それはないでしょう。あなたも、深海凄艦に制圧された惑星がどうなるか分かるでしょう?」
「はい……」
ヤマトの世界では深海凄艦に支配された惑星は生命体が生息できなくなるほど資源も生物も大気も汚染され食い尽くされる。
現に防衛軍が深海凄艦から取り戻した惑星はどれも汚染され再開拓団が現在もその浄化作業にあけくれている。
だが、この地球には、まだ、生命が満ち溢れている。
「このほかにも戦闘中と思われる報告もあります。私達と同じ艦娘です」
「それじゃあ――!」
キリシマは目を輝かせた。
「ええ、この地球はまだ死んでいません。ですがこの地球も、私達も危機的な状況に変わりありません」
「あの、それなんですが、この地球にも艦娘がいるなら接触してみてはどうでしょうか?協力関係を模索するとか」
同じ艦娘がいると聞いて元気が出てきたキリシマはヤマトに意見を出した。
「それはダメです」
しかし、ヤマトは断言した。
「何故ですか?私達は今、修理や補給を必要としています。ヤマトさんだって、波動砲の修理をしなければいけないではありませんか」
キリシマの抗議も、もっともだった。波動砲や装備の修理もそうだが、一番切羽詰っていたのは食料の補給だった。
通常の宇宙船ならば補給なしでも長期の活動は可能だが、今のヤマト達は艦娘。
いくら宇宙戦艦としての性能をもっていても体の構造が人間と同じ以上、食料を摂らなければならない。
摂らなくても死にはしないが空腹でまともに動けなくなってしまう。
こうした事態を防ぐために通常は、最前線から少し離れた場所に補給船が待機し商況の供給をおこなっていた。
だが今、その補給船は存在しない。
ヤマトには一応、食糧生産ユニットが装備されているがすでに冥王星の戦いで壊れてしまった。
つまり、いま、ヤマト達が求めているのは修理と補給なのだ。
「確かに修理も物資も必要です。ですが、私たちはまだ、この地球についてまったく知りません。そんな状況下で助けを求めるのは自殺行為です。もう少し情報を集める必要があります」
「言われてみれば確かに……なんというか、八方塞ですね……」
キリシマは落胆した。
「落ち込んでいる場合はありませんよ。とりあえず、安全で食料が豊富にありそうな島を探しましょう。そこに仮の拠点を設営して情報をさらに収集します。このまま食料のない島にいるよりマシですから――」
第六話の投稿です。
ヤマト達はまだ地球の深海凄艦を宇宙の深海凄艦と思い込んでいるようです。
どうでもいい話ですが、外に出たら製鉄所の熱風みたいな風がふいてて発狂しそうでした。
みなさんも熱中症には気をつけてくださーい。