ツルハシの幸運 作:びっくら国王
これは、冒険者ベル・クラネルがその名をオラリオに轟かせる5年前の話。
腕利きの鍛冶師を数多く有し、オラリオの冒険者のみならず世界中から絶大な支持を受ける鍛冶師系ファミリアであるヘファイストスファミリア。
このファミリアは元々、冒険者たちが迷宮から持ち帰ったドロップアイテムや鉱石などをギルド、または直接冒険者から買い取り、武具を作る素材としていた。そのため、レアな素材や下層のモンスターからドロップするアイテムを使用した武具は、その買い取り金額の高さゆえに高い値段をつけざるを得なかった。下級の冒険者では、よほどのことがない限り手に入れるのは不可能なのが現状だった。
ギルドとしては、冒険者の生存率を上げるために、少しでもいい武具を利用してもらいたい。だが、このままではそれは期待できそうにない、なんとかこの状況を打破できないものかと、ギルドとヘファイストスファミリアが交渉を重ね、二つの打開策を打つことが決まった。ひとつは、名の売れていない鍛冶師や未熟な鍛冶師の作品を低い価格で店に置くこと。そしてもう一つは、ヘファイストスファミリアの中で、迷宮に潜って素材を集める部隊を編成することだ。
前者は、下級の冒険者に対する救済措置だ。手頃な価格で、ヘファイストスファミリアの武具が手に入る。もちろん、その良し悪しは自ら見極める必要があるが、それにしても十分利用する価値がある。また、鍛冶師側も自らの名を上げる機会と技術を高める機会を手にすることができ、一石二鳥という案。後者は中級以上の冒険者に対する措置だ。ヘファイストスファミリアの冒険者が自ら迷宮に潜って素材集めをすることで、他の冒険者やギルドから素材を買い取るよりも費用を抑えることができ、結果、高額だった武具も値段を抑えることができるようになる。そのため、迷宮の奥深くまで進もうとする冒険者たちにしてみれば、武具を揃えるのにかかる費用が少なくなり、その他の準備に余裕を持てるようになる。
この二つの策が功を奏し、冒険者の生存率は上昇、ヘファイストスファミリアも、新たな顧客層の開拓が出来、売り上げも上昇した。
成功の理由は、後者の策が想定よりも良く機能したことだ。
ジェフ・サンチェス。若干13歳でありながら、素材収集の部隊のエースとして活躍したレベル3で大剣使いの少年だ。彼のスキルである、
しかし、悲劇は起こった。
ジェフはヘファイストスから格別の寵愛を受けた。これが悲劇の発端となる。ジェフと親しかった者を除く他のヘファイストスファミリアの団員から疎まれるようになってしまったのだ。今まで、ヘファイストスは自らの子供に対して誰一人隔たりなく公平に接していたのだが、ジェフが台頭してから、彼を他の子供よりも深く愛してしまった。彼女の愛はそれだけでは収まらなかった。ヘファイストスは彼に自らが鍛えたツルハシを与えた。これにより、ヘファイストスがジェフに夢中だ、という噂がオラリオ内を駆け巡った。ジェフを疎ましく思っていた団員はひどく怒って、彼を亡き者にする作戦を立てた。次の下層での素材収集の際、部隊に対して、
ジェフ・サンチェスは死んだ。
だが、誰もその遺体や遺品を見つけることはできなかった。彼が死んだと思われる場所には大きな穴が空いていて、それ以外に何もなかった。
この事件の後、すぐに実行犯は処罰を受け、素材収集部隊は解体、以後編成されることはなかった。ジェフの葬儀の際、ヘファイストスの涙は絶えることがなく、その嗚咽を聞いた参列者は、へファイストスにとってジェフがどれほど大きな存在であったのかを悟った。また、ヘファイストスファミリアの団員で、彼を疎んでいた者たちも彼らの女神が泣き崩れている様を見て、自らの行いを恥じた。
それからというもの、ジェフの命日には、へファイストスファミリアのホームと店、彼と親しかった者たちの店や家、ホームには彼の象徴となった、ツルハシが飾られるようになった。
……まあ、結論から言って、ジェフは生きているのだ。死を覚悟したとき、彼は最後の悪あがきにとヘファイストスに授かったツルハシを持てる力をすべて用いて、地面に振り下ろした。次の瞬間、強烈な光が発生し、その光が消えたとき、そこには穴ができていて、戦っていたモンスターも、そしてジェフ自身もいなくなっていた。
このとき、へファイストスのツルハシと、ジェフのスキル
この物語は、それから5年後、なんだかんだいろいろあってやっとこさオラリオに戻ってきた、ジェフ・サンチェスの物語。
つかれた
読んでくれてありがとう
リューさんはベル君に気があるのかな?