究極大英雄の山田次郎かく闘えり!   作:うぃっちべーす

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第十一話『山田くん電話に応待す』

「とりあえず勝負はするから、パンツ丸出しはやめませんか石川さん。」

 

「―――いえ、山田先輩に本気を出してもらわないと、意味ないです。」

 

「あ、あのね、別に俺、パンツ見ないと本気出さないってわけじゃ……」

 

「―――早く勝負を終わらせないと、田中先輩起きてきますよ、多分。」

 

 

 

長机でB4ケント紙に向かう石川と山田。二人の勝負服は特異であった。

片や塩の結晶が浮く変態申告シャツ、片や飾り気のないブラとショーツ。

椅子に深く腰掛け石川の方をチラチラと見る山田くん。正直仕方がない。

 

そして石川は、山田の勝負を先日垣間見ている。彼は勝ち方に拘らない。

悪い言い方をすれば『勝てばよかろう』なのだ。その頭脳は柔軟なのだ。

実力勝負を正面きって求めるのは難しい。だからこそ追い込むしかない。

 

そして石川の出した結論。自分のパンツを盾に彼の逃げ場を塞いだのだ。

 

 

 

「判った、俺も手早く終わらせるから、そっちも牛歩戦術とかやめて。」

 

「―――別に、困らせたい訳じゃありません。元からそのつもりです。」

 

「それを聞いて安心した。石川さんってズルはしないから信用できる。」

 

 

 

石川真理子は思う。明らかにズルなのに何を言ってるんだろうこの人は。

勝負を申し込んだのも、条件をつけたのも、この状況を作ったのも自分。

甘くて弱腰、自信過剰。正々堂々とした勝負と思っているなら笑い草だ。

 

山田次郎は思う。やべえな、本気でちょっとムラムラしてきちゃったと。

彼女には阿形直美の様な、小柄な体に似合わないど迫力のバストは無い。

彼女には田中双葉の様な、バランスの取れた胸から腰へのラインは無い。

しかし彼女には彼女だけが持った、ボディからのヒップラインが有った。

 

 

 

「―――手が全く動いてないみたいですね。私じゃ物足りないですか。」

 

「えっ?!いやいや、巌流島の際に先に乗り込んだ佐々木小次郎は……」

 

「―――宮本武蔵並の余裕があるって事ですか。ではお好きにどうぞ。」

 

 

 

別な意味で手を動かしたい気持ちで一杯なんだよね、とは言えなかった。

流石にそこまで下ネタを言えば、無関心を装っている石川でも激怒する。

ふと気がつくと手元には、下着姿の石川嬢の絵が出来上がりかけている。

 

やべーやべー、と消しゴムに手を伸ばす山田。だが、手が不意に止まる。

 

 

 

「石川さん、この勝負の詳しい条件を聞いてない。どうすれば勝つん?」

 

「―――圧倒的な差がつけば納得できるかと。それじゃあ駄目ですか?」

 

「拮抗した時はどうする?第三者の評価が取れないと決着が付かない。」

 

「―――私は別に田中先輩や阿形さんに判定してもらっても良いです。」

 

「それは俺が困る。じゃあ、絵を交換して破った部分の面積で、とか。」

 

 

 

ずっと下を向いて作業をしていた石川の手が止まり、スッと顔が上がる。

自分は何か聞き違えたか、もしくは理解が出来ない、そんな表情だった。

それを見て山田が心の中でほくそ笑む。そして交渉を一気に畳み掛ける。

 

 

 

「要は相手の絵に対する評価をするんだ。要らないと思う部分を破る。」

 

「―――じゃあ勝負に勝つ為に、要ると思っても破く事が出来ますよ。」

 

「残った絵は相手の物にする。つまり自分のお宝を破る事になるんだ。」

 

「―――面白いアイデアを出しますね先輩。いいですよ、その条件で。」

 

 

 

山田は悪く言えば面倒くさがりであり、良く言えば計算高い男でもある。

自分の作業に集中して部活をしていた様に見せて、状況は把握していた。

石川は絵を綺麗にまとめる事に腐心する。その為に全身像に拘りがちだ。

 

そうすると絵には余白が出来る。その余白さえ破ればそれで勝てるのだ。

 

山田は更に下着の石川を一旦消し、画面一杯に動きのあるポーズで描く。

足を上げ、頬に人差し指を当てるなど、コケティッシュな絵面に仕上る。

足先が切れ、背中も削れてしまうが、画面は全体が絵として構成される。

 

 

 

「石川さん、映研部長にとって実力勝負は必勝、君はそれを知らない。」

 

 

「―――なら勝ってください。私は納得のいく結果が欲しいだけです。」

 

 

 

ガリガリと音を立て線を描く山田と、サラサラと音を流し絵を描く石川。

だが両者の耳には、描画音どころか呼吸や鼓動すらやがて消えていった。

画紙への盲目的な集中。それは世界に入り込む事に他ならないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

応接間で背もたれに脚を乗せて、太股どころか下着まで露出させる双葉。

寝返りと共に足が落ち、その衝撃によってさすがに目を覚ますに至った。

周囲を見ると、向かいのソファーでうつ伏せになって寝入っている阿形。

 

 

 

「あらあら、こんなトコ山田クンに見られたらまた襲われちゃうわよ?」

 

 

 

先程までの自分は棚に上げ、阿形のめくれあがったスカートを戻す双葉。

そしてゆっくりと周囲を見渡し、部屋に二人しかいないことを確認した。

彼女は両腕を大きく伸ばしてあくびをした後、コキコキと首を鳴らした。

 

 

 

「……山田クンが困ってる気がするわ。この感じだと……女絡みかな。」

 

 

 

確かに山田は困っている。しかしこの応接間には情報が全く存在しない。

さらに下着姿で絵を描いているだけで、大きな物音や臭気すら一切ない。

双葉はESPではない。だが山田に対してのみ異様な集中を見せるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして決着の時はやってきた。両者の絵は、それぞれ好敵手の手に渡る。

手にした山田次郎は、予想通りの展開に笑みを堪えるので精一杯だった。

やはり小さく纏まった綺麗な女性の全身像、そして背負っている花背景。

 

山田は紙面全体の50%以上はある絵の余白を、音を立てず切り始めた。

 

 

 

 

そして石川真理子は絵を手に持って震えていた。その目には涙が滲む。

絵のモデルは自分であり、そして今の自分と全く同じの下着姿だった。

しかし彼女の視線を捉えていたのは恥ずかしいボディの描写ではない。

 

頬に指を当てて、困り顔を混ぜた笑顔を作っているシチュエーション。

彼女自身この顔に見覚えがあった。そして、思い出したくはなかった。

 

 

 

「んなっ?!なんで石川さん泣いてるの?いったん勝負は中断しよう!」

 

「―――泣いてません。トウモロコシが、目に、染みただけですから。」

 

「トウモロコシがシミるかー!そんなんシミてたら養鶏場はどうなる!」

 

 

 

養鶏場は元々やかましいので余り変わらない気がするが、それは兎も角。

石川の紙を持つ手が、横から上に変わる。それは絵の天頂、頭の部分だ。

そして絵は縦に裂ける。真っ二つに、その顔をちょうど分断する位置で。

 

 

 

「え?!」

 

 

 

彼の余白切り抜き作戦はもう少しで完成であった。勝利を確信していた。

だが音を聞いて顔を上げると、自分の絵が阿形によって両断されていた。

まさかの事態。まさか自分の絵が切られるとは。まさか真っ二つだとは。

 

もちろん山田はそれ以上の声も上げず、そして表情は一切崩していない。

しかし……

 

 

 

『マジか!いい出来だと自負してたが、本人相手にパンツはやりすぎか!

 いや、確かにちょっと迷ったんだ!スクール水着の方が夏らしいかと!

 だが俺も男、目前のパンツを無視するとか無理!視線は釘付けだって!

 薄い尻から生える柔らかそうな太股のラインとか描きたくなるよ普通!

 パンツほどあの尻に似合う衣装は無いという眼力に間違いなんかない!

 だが問題は勝負に負けそうという事だ!どうする山田!どうする部長!

 見敵必勝とか自分でどんどんハードル上げた挙句に負けとかありえん!

 でも勝利条件決めたの俺だし!うまい言い逃れが全く思い浮かばんぞ!

 ここまで完璧についた勝負をひっくり返せるか?誰か、誰か助けて!』

 

 

 

山田の表情は穏やかで、かつ不敵であり、そして余裕すら浮かんでいる。

対して石川真理子は滲ませた涙を数滴こぼしながら、机上を睨んでいる。

その机には少女の絵を切り抜いた物と、真っ二つにされたセクハラな絵。

 

 

 

「…………り、理由を聞こう!石川さん!理由なき行為は認められん!」

 

「―――。」

 

 

 

石川は例の委員長と会う前には、トイレで喘息の薬をいつも飲んでいた。

しかし彼女の通う中学校には水飲み場も有り、冷水機だって各階に有る。

では何故、彼女は委員長に会う前にわざわざトイレまで行っていたのか。

 

 

 

「答えられないなら、それはプライドを捨てるも同意だぞ?いいのか?」

 

「―――き、きもちわるい。」

 

 

 

山田の表情は笑顔のまま。余裕のまま。だが内心は翻弄されるがままだ。

気持ち悪いとは肉体的拒絶で最悪の状態。評価以前のレベルという事だ。

非常に危険である。石川から人間として否定されているのに同意なのだ。

首の後ろから背中にかけ、冷たい汗が滲み始める。彼も泣きたくなった。

 

 

 

『なんでなのよ!おかしいわよ!なんで、先輩がコレを知ってるのよ!』

 

 

 

トイレに行っていた理由、それは鏡。彼女は鏡の前で練習していたのだ。

楽しく振舞う、笑顔を作る、少しでも自分の喜びを伝えようとする練習。

周囲に人が居ない事を確かめて行われていた、滑稽な少女の儀式だった。

 

その時に見た自分の姿に、山田の描いた表情が完全に一致してしまった。

 

 

 

『思い出したくないのに、消したいのに、やっと忘れそうだったのに!』

 

 

 

その後に起きた結果から見れば、何とも愚かしくも滑稽な行為であった。

幾重にも裏切られた光景が蘇り、彼女は描かれた自分を見れなくなった。

そしてあの時の感情も一気に噴き出す。激情の涙滴は止められなかった。

山田の狼狽の感情も平静を装えるレベルを超えた。立ち上がり駆け寄る。

 

 

 

「悪かった!本当に悪かった!正直言うとパンツに欲情した!許して!」

 

「へー、後輩のパンツには欲情するんだ?私の裸には冷静だったのに。」

 

「いやー、あの時は俺も裸だったし気が動転……し……て………………」

 

 

 

後かけられた声に返答する山田。その声の主へ何の気なしに振り返った。

そこには満面の笑みを湛えたピンクのカチューシャと長い黒髪の美少女。

山田の小指は完全に停止した。その笑顔から発せられている殺気により。

 

 

 

「ハニーは凄くせくしーでした。その気持ち、嘘偽りはございません。」

 

「よろしい。山田クンの弾劾は後回しとして、これって絵の勝負なの?」

 

「そ、そう!行き違いこそあったが、純然たる絵の真剣勝負なんだよ!」

 

「ふーん、そこの処理が先か。オブザーバーの初仕事になりそうだわ。」

 

 

 

その言葉を聞いて、パニックにより停止していた思考が再び起動しだす。

双葉の恐怖によって強制的に正気に戻された、と言うべきかも知れない。

オブザーバーとは外部による助言者、もしくは監視人という意味の筈だ。

 

 

 

「……オブザーバー?」

 

「いや、コッチの話。」

 

 

 

山田に密約のことがバレては元も子もない。すぐ話題を避け動作に移る。

まずは石川の絵を見る。何故か周囲が破かれているが絵の部分は無事だ。

紙片をパズルのように並べなおして、全体を把握しつつ作品を吟味する。

 

そして山田の絵を見る。縦に引き裂かれているが絵の全体は把握できる。

描かれた女の子と石川を見比べる田中双葉。そして手にとって歩き出す。

その目的地はやはり山田。彼の目の前に、絵をヒラヒラと靡かせ始める。

 

 

 

「山田クン、こういうの描くんだ?やっぱムラムラしちゃってたんだ?」

 

「あ、いや、その、私めの、美に対する表現手法であって、真摯な……」

 

「もう一度訊くわよ。欲情してたんでしょ?理由を言ってもいいのよ?」

 

「……はい。クロッチから太腿が自信作です。大変申し訳ありません。」

 

 

 

すぐに食卓の上に乗り、双葉嬢に向け完璧に近い土下座をする山田くん。

そして田中双葉は腕を組み、その光景を見ながらずっと思案をしていた。

数十秒間そのままの状態が続き、審査委員は大きく頷いて立ち上がった。

 

 

 

「それでも山田クンの勝ち。絵の魅力という意味では正直段違いだわ。」

 

「―――納得できません。私の絵が負ける、その理由が知りたいです。」

 

「判らないのはけっこう致命的なんだけどな。ま、しょうがないかー。」

 

 

 

双葉は山田の手元に余っていたB4ケント紙を2枚取り、それを並べる。

更に柔らかい鉛筆を右手に持ち、さらさらと軽い音を立てて絵を描いた。

そこには大きさの違う棒人間が描かれている。ちなみに棒人間とは……

 

 

こんな感じのもの。テキストだと表現しづらいので文字絵を描いてみた。

とにかくこのキャラが、片方には右に大きくもう片方には中央に小さく。

 

 

 

「山田クンはこれ知ってる?ガーさんも知ってたはずだとは思うけど。」

 

「構図とバランスの話のこと言ってるのか?悪いけど俺は独学なんだ。」

 

「独学しろとか無茶言うわねガーさん。ま、とにかく一緒に聞いてて。」

 

 

 

双葉は再び一枚紙を取って、少し大きいりんごの絵を描き、横に並べる。

りんごの大きさは小さな棒人間の3倍程、大きな棒人間と同じくらいだ。

少し落ち着いたのか、石川も双葉の始めた奇妙な行動に引き寄せられる。

 

 

 

「で、この二枚の山田クンにりんごを足すとしたら、どうやって描く?」

 

「え?ちょ、おま、コレ俺?!もう少し美男子に描いてもいいだろが!」

 

「これ以上詳しく描写するとパンツ姿になっちゃうけど、いいのかな?」

 

「あ、いえ、良く見たら悪くないねコレ。むしろ凛々しく愛嬌もある。」

 

 

 

山田は小さく棒人間が描かれた紙の方を受け取り、鉛筆を手に持ち直す。

そしてお題である林檎の絵をチラチラと見ながら、鉛筆を手で滑らせる。

 

石川は大きく棒人間が描かれた紙を双葉に渡されたが、何もしなかった。

彼女は見たかったのだ。小さな棒人間と林檎を山田がどう料理するのか。

彼女の中でのイメージは風景。棒人間は丘の上のりんごの木の脇に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

しかし山田の棒人間は、横に真っ二つに割れた林檎の中から現れていた。

 

 

 

「まぁちょっとアレだけど、これが正解よね。石川さん、理由は判る?」

 

「―――単に、田中先輩が山田先輩の肩を持ってるとしか見えません。」

 

「まぁもちろん山田クンは好きなんだけどさ、えこ贔屓はしないわよ?」

 

「―――理由が答えられないなら、プライドを捨ててるも同意ですよ。」

 

「意外と言うのね、石川さん。ちょっと私もゾクゾクしちゃったわよ。」

 

 

 

優雅さからサディスティックに切り替えた笑みを浮かべ双葉が覗き込む。

石川はそのアップになった表情にも一切怯まずに目を見開いて睨み返す。

睨みあった二人だったが、オロオロする山田が視界に入り双葉が退いた。

 

 

 

「理由は簡単。絵ってのは紙の端まで含めて絵なの。いわゆる構図ね。」

 

「あー、映研的には画面上の構成とも言うかな。確か前に言ったよね?」

 

 

 

絵も映像もそうだが、世界には限界がある。縦と横で仕切られた世界だ。

現実なら世界は視野全て触れるもの全て。しかし絵は切り取られている。

その限られた中で何を主眼とし何を伝達するのか、その方法論が構図だ。

 

もしも石川が考えたように丘を作り木を生やし、林檎を生らすとしよう。

確かに林檎だってあるし棒人間もいるが、主眼は風景へと移ってしまう。

棒人間が主眼でりんごを追加するという目標に対して、風景は指定外だ。

 

日曜夕方のパロディでも山田の方法は人と林檎の関係として正解なのだ。

 

 

 

「―――でも、構成が全てじゃないです。マンガはコマで構成します。」

 

「で、そのコマは誰が切るの?漫画家とは須らく世界の創造者なのよ?」

 

「―――でも、全て創造するのは不可能です。その為の技法ですよね。」

 

「だから、技法にも意味があるの。成り立ちを知らないで使う気なの?」

 

「―――でも、技法の条件さえ知ってれば、成り立ちなんて不要では?」

 

 

 

この手の問答は、実は古今東西の様々な場所で繰り広げられている物だ。

切り身の魚を買うから捌き方は不要、GPSを使うから地図は不要等々。

古い技術まで憶えてはいつまで経っても新技術に追いつけないという物。

 

そしてこういう確執はだいたい世代間で起きる。そして先にキレるのは。

 

 

 

「あーもう!でもでもうるさいわよ!」

 

 

 

旧世代である。上級生である田中双葉の手が水平運動をして、衝突した。

その手を中心として、風船でも破裂したような音が部屋中に響き渡った。

そこには、目を吊り上げて怒る田中双葉。音の出た先は、何と山田次郎。

 

外側に向けていた山田の手の平を双葉が叩いた。つまりはタッチである。

 

 

 

「選手交代ー。私だと美術部の癖でつい手が出ちゃうわ。お願いねー。」

 

「意外だな。そっちはもっとマッタリした優雅な部活かと思ってたが。」

 

「な訳ないでしょ。絵画系の子は我が強いしさ、ビンタ程度は日常よ。」

 

「とにかく我慢してくれて本当に良かった。あとはこの俺に任せとけ。」

 

 

 

とにかく彼は心の中で胸を撫で下ろした。小指が動くようになったのだ。

つまり田中双葉方面の戦線のピンチはほぼ解決したと考えていいだろう。

あとは前にいる、目を充血させ潤ませている少女さえ上手く懐柔すれば。

 

 

 

「石川さんに提案がある。勝負は君の勝ちだ。だが勝利を譲ってくれ。」

 

「―――それじゃ意味がありません。試合も勝負も勝ちたいんです私。」

 

「なぜそんなに拘る?!勝っても得るものは無いでしょ?良く考えて!」

 

「―――有るかを決めるのは私です。先輩も負けた方が嬉しいでしょ?」

 

「そ、そりゃ俺も負けた方が……だ、だがいかん!そーはイカンざき!」

 

「―――私はミッションの条件を満たしました。報酬は手放しません。」

 

 

 

ちらちらと双葉の方を見ながら、必死に石川嬢を説得しようとする山田。

さもありなん、条件をうっかり口走られたら双葉の危機が再発するのだ。

恐らく怒るだろう。それが嫉妬なのか倫理観なのかは別にどうでもいい。

 

とにかく双葉は本気で山田の人生を粉砕できる。だから回避したいのだ。

 

 

 

「いいんだな?!本当にいいんだな?!俺が勝つ方が財産になるぞ?!」

 

「―――大丈夫です。私が勝っても、先輩にもっと教えてもらえます。」

 

「そりゃまぁ色々教えるけどさ――じゃなくて!失うものもあるだろ!」

 

「―――大したことありません。山田先輩を貰えるなら安いもんです。」

 

 

 

椅子に腰掛けながら、やり取りを聞きつつデザートを取っていた双葉嬢。

しかし最後の石川の台詞に、含んでいたガリガリ君ドライハードを噴く。

すぐさま山田に視線を送る双葉。だが不自然な程に山田の目線は逸れた。

 

 

 

「や・ま・だ・クーン?もらえるって何の話ー?詳しく聞きたいなー?」

 

「いや、まだ勝負は決してないし、その、そんな、条件とか、別に……」

 

「―――私が勝てば山田先輩を貰います。私を好きにしていい条件で。」

 

「やっ……まっ……だっ……クゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン?!?!?」

 

「ひぃぃ!違う!誤解だ!行き違いだ!単なる相互不理解なんだって!」

 

 

 

腕を組んだままにオーラを発し、髪を震わせ山田の前に立ち塞がる双葉。

それを見た山田の奥歯は、カスタネットよりもリズミカルに鳴り続ける。

もちろん小指どころか足指すら動かない。その足も根元から震えている。

 

ほぼ山田次郎の制圧を完了したのを確認した双葉は、石川に向き直った。

しかし石川はこれほどの威圧感を持った双葉に、全く怯んでいなかった。

再度石川と双葉が激突する。この二人は似たもの同士なのかもしれない。

 

 

 

「―――勝負は相手の絵を多く破った方の勝ち。私は全部破りました。」

 

「石川さん、もう自分でも判ってるはずよ?貴女は、絵で負けてるわ。」

 

「―――結果が全てです。漫画では、部数がすべてなのと同じように。」

 

「プライドを裏切っても勝ちが欲しいの?その姿勢は悪くないけどね。」

 

「―――それに、山田先輩って若い体のほうが欲情するっぽいですし。」

 

「な、何故そこで俺が?!違う!それは偏見だぞ!そんな目で見るな!」

 

 

 

そこで再度山田に会話のスポットライトが当たる。本人が望まぬままに。

目前では、まるでシンデレラと女王が大喧嘩しているような趣であった。

そんな場所で王子様には出来ることなぞ、何があろうというのだろうか。

 

そしてそんな女王然とした双葉に相対する石川も、決して凡百ではない。

 

 

 

 

 

 

 

石川は高校進学に当初は興味が無かった。

 

彼女とて無為に時間を無駄にしていた訳ではない。出来る事はしていた。

勉強もそれなりにし、進学校は無理としても平均的な学力は身につけた。

しかし彼女にとっては暇つぶし。部屋では他にする事がなかっただけだ。

 

ここで禁断の兵器が導入されてしまう。親によりパソコンが配備された。

そこで彼女は世界を垣間見る。膨大な量の情報、そして膨大な量の人間。

特にネットワークゲームに興じた時期が、彼女の危機だったといえよう。

 

 

 

【そんなことよりも:RMTバレて垢BANされたでゴザルw5垢目w】

【豪炎寺流星龍覇撃:そんさんBAN多いなwww懲りろよwwwww】

【バルダーズゲート:売り専はなーw持たざる俺にはスキは無かったw】

【そんなことよりも:困ってる?個チャ入れるぞなバル氏w待たれよw】

 

 

 

キャラが3Dで精細に描かれており女性キャラの造詣が可愛いと評判だ。

石川もそんな売り文句に引き寄せられて入会、すでに半年が過ぎていた。

だが現実通貨がないと上に行けないように出来ているのはお約束である。

 

 

 

[そんなことよりも:B地区で50G送る。あっちなら100G出す。]

[バルダーズゲート:調子に乗るな直結。これ以上はメイン通報する。]

[そんなことよりも:おーこわこわwパンツ今もネタにしてますからw]

 

 

 

ギルドと呼ばれるプレイヤー集団に入り、お金の無い分を仲間で補った。

しかし仲間は既にキャラクターを強化しており、彼女は離されるばかり。

彼女は評判の良くない違法な販売をする仲間と取引をしてしまったのだ。

 

自分の下着姿の写真。顔こそ出さなかったが大量のゲーム貨幣が入った。

気を良くした彼女は、その後も何枚か同じように下着写真を送っていく。

その取引は、あっというまに彼女のキャラをギルド幹部に押し上げてた。

 

 

 

【<<システム>>:*バルダーズゲート*が、ログインしました】

【バルダーズゲート:あれ、今日は誰もいないのかよwつまらんな】

【<<システム>>:*豪炎寺流星龍覇撃*が、ログインしました】

【豪炎寺流星龍覇撃:バルさん、いま時間空いてる?少しでいいよ】

【バルダーズゲート:じゃあ個チャ送るわwちょいとまっててねw】

 

[バルダーズゲート:どうした?この時間出れないっていってたよな?]

[豪炎寺流星龍覇撃:他のに聞かれたくなかったの。バル氏やばいよ!]

 

 

 

彼女は画面の前で硬直した。何が?他のギルド員にも聞かせられない程?

もしかしてギルド内で自分の悪い噂が出ているとか、追い出されるとか?

そういえば別な幹部と運営で衝突した事が最近あった。それの事なのか?

 

そして、きっと何かのジョークなのかも、騙して笑う気だなと思い直す。

しかしその後に流れてきた単語を見て、顔の血の気がサッと引いていく。

 

 

 

[豪炎寺流星龍覇撃:そんの奴、あんたが女って判って懸賞金かけたよ]

[豪炎寺流星龍覇撃:画面見てる?リアル50だって、しかも東京限定]

[豪炎寺流星龍覇撃:あんたの写真の窓に横田の飛行機が写ってだって]

[豪炎寺流星龍覇撃:50だと脅迫できるくらいネタあるんだよきっと]

[豪炎寺流星龍覇撃:もうあたし抜ける。本当は漫画家になりたいんだ]

[豪炎寺流星龍覇撃:じゃあね、すぐ抜けな、あたしもうこわくてやだ]

 

 

 

だが石川は残った。残念な事に【豪炎寺流星龍覇撃】は救われなかった。

仮想界の人間達が集い、狂い、堕落していく世界が彼女を許さなかった。

彼女は石川の件が始まる前から【そんなことよりも】に狙われてたのだ。

この時に初導入されたギルド用ビデオチャットの映像が、彼女の画像だ。

 

視界一杯の雑誌と弁当の空き箱で出来た床。顔色が悪く後髪の乱れた女。

彼女は泣きそうな顔を歪めて笑顔を作り、太った中年に寄り添っている。

石川には判る。この脂ぎった笑顔の男が【そんなことよりも】なのだと。

石川には判る。前歯の欠けた自分と同じ位の女は【豪炎寺流星龍覇撃】。

 

 

 

「こいつ俺を通報しようとしたんで話し合って、彼女になりましたー!」

 

「……。」

 

「なんだよゲーム内じゃないと喋れねえのか!だからヲタクは困るな!」

 

「ご、ごめんなさい……。」

 

「幾ら俺の女だからって【ギルダン】出すからパンツ買うとか言うな?」

 

「……。」

 

「ギルダンは売るほど持ってるからギルダン要らないんだよ!判るか?」

 

 

 

露骨であった。中年は【豪炎寺流星龍覇撃】の売春を示唆しているのだ。

そんな彼女の目の淵には、ファンデーションからも浮き出た痣が見える。

そして衝撃的な画像が流れる。【豪炎寺流星龍覇撃】が自分を凝視した。

 

無論、ビデオチャットはカメラとモニターでしか画像をやり取りしない。

テレビ会議方式では、カメラを見ててもそれは複数相手になってしまう。

しかし石川にはそう見えた。自分を非難する、彼女の視線を感じたのだ。

そして口元がアップになり開けた唇の中から口腔とは違う何かが見える。

 

避妊具。コンドームである。

 

石川は次の瞬間、叫びながらPCを机から引き落とし窓から投げ捨てた。

それは恐怖。画面の向こうのゴミ部屋に居たのは石川かもしれなかった。

泣きながら謝る石川。その行為自体に全く意味は無いし、役に立たない。

 

 

 

「―――私、国立国分寺立川高校に行く。それで、漫画家になりたい。」

 

 

 

両親は元々彼女に甘いので二つ返事で承諾した。学力的にも問題はない。

彼女が進学先を決めた理由は、まず自分の学力に見合う範囲であること。

そしてこの高校のOBOGにマンガ関係者が多かったということだった。

 

 

 

 

 

 

「石川さんも本気じゃないって判るだろ普通?何故怒るんだ田中双葉!」

 

「ハニーはどうしたのよ?!やっぱり本気でロリだったのね山田クン!」

 

「ロリとか石川さんに失礼だろ田……ハニー!彼女はもう高校生だぞ!」

 

 

 

確かに山田は欲情を込めた目で見ていた。だがあの中年とは異質だった。

あの男は女を道具としてしか見ていなかったのだが、山田は違っていた。

自分を大切なものを扱うように接してくれる。この期に及んでまでもだ。

 

地獄に落ちたあの子。しかし自分は幸運にも、地獄の手前で引き返せた。

 

 

 

「―――私、本気ですよ。山田先輩になら、初めてをあげたっていい。」

 

「だー?!何故みなさん俺をいじめて遊ぶ?!俺だって野獣になるぜ?」

 

「もう面倒だわ、やっちゃいなさい山田クン。私が見ててあげるから。」

 

 

 

呆れた様に肩を竦め、手近な椅子に逆座りし背もたれに顔を乗せる双葉。

そんな双葉を見つめる山田。その視線に気付いた彼女は、笑顔で指差す。

石川は逆に椅子から立ち上がり、山田に向かって歩き腕を背中に回した。

 

 

 

「あ、煽る奴があるか!お前も女だろが!駄目だってちゃんと言えよ!」

 

「大丈夫、賭けてもいいけど自分から逃げるもん。心配なんか無用よ。」

 

「―――田中先輩と違います。私の処女は、大層なもんじゃないです。」

 

「口じゃ何とでも言えるわ。何度も言うけど貴女は逃げるわ。確実に。」

 

 

 

胸部の布は自らの手で取り払われ、床に落ちた。だが表情に変化は無い。

そして、下腹部の最終防衛線は非常にあっけなく山田の目の前で落ちた。

一切隠されていない。隠そうとする意図さえ見つからない露出であった。

 

そう、これはただ単に全裸。今の石川はメガネ以外を身につけていない。

 

 

 

「よかったわね山田クン。……かなり息荒いけどさ、もう我慢の限界?」

 

「ば、馬鹿を申せ!この映研部長山田次郎、後輩を傷つけたりせんわ!」

 

「ここまで来ちゃったら、我慢する方が彼女を傷つけると思うけどね。」

 

「男一匹山田次郎、やらぬといったら、やらぬ!意志の力は無限大だ!」

 

 

 

石川は意を決して山田次郎の下腹部を見つめる。彼女とて無知ではない。

有るべき物を探し、異変を見つけた。巨大な何物かが盛り上がっている。

それは見た事も無い異変。有るべき物として有り得えない大きさだった。

 

それなりに彼女にだって知識はある。漫画の研鑽で男の生理も勉強した。

だが自分の知識上のデータと、この目の前の異物は何かが決定的に違う。

 

しかし石川はそれでも覚悟を決め、そのまま山田にギュッと抱きついた。

 

 

 

「手を出しちゃう?いいわよ?私は目の前でなら浮気はOK派だから。」

 

「浮気も何も……俺は……手は……出さんっちゅーの!ぬおおおおお!」

 

 

 

ちなみに今日の山田の服装は、上は前述の通りグレーのマッチョタンク。

そして下は、ゆったりとしたカーキ色の裾広ズボン、バミューダである。

英軍が実際に使用したバミューダショーツであり、山田のお気に入りだ。

 

そこに思いきって体を押し付ける石川。しかし。そこで何かに阻まれた。

へその下に何かが当たっている。かなりの幅で山田と密着できない程だ。

ぐいぐいと押し込もうとするのだが硬くて動かない。山田が肩を押える。

 

 

 

「それ以上、いけない……わりと本気で。ちょっと理由は言えないが。」

 

「―――何が言いたいのか、判りません。ちゃんと、教えてください。」

 

「教えるわけにはいかないんだ、悪いんだが。とにかく、一旦離れて。」

 

 

 

震え始める山田。そこでタイミングを計っていた双葉が石川の脇に立つ。

そして顔を耳元に寄せて、山田には聞こえぬ様な声で2秒弱の話をした。

その2秒に何が伝わったのか、石川は視線を下に移して正体を確認した。

 

 

 

「―――や、山田先輩、その、キスとかでカンベンしてくれませんか?」

 

「んな?そ、それはどういうこと?いや、キスが嫌とかじゃなくてね?」

 

「―――無理です!処女はどうでもういいんですけど、山田先輩のが!」

 

 

 

無理宣言。そこで山田の身体から力が一気に抜け、膝を付き床に跪いた。

危機は回避された。部長として手を出すという最悪のシナリオは消えた。

非常に喜ばしい事の筈なのに、山田の目には大粒の涙が迸り続けていた。

 

 

 

「いや、よかったよ。無理か。無理だよな。気持ちが悪いんだもんな。」

 

「―――先輩、顔を上げてください。キスならちゃんとしてあげます。」

 

「あはは、もういいんだよ石川さん。そんな事はもうしなくてもいい。」

 

「―――それじゃあ、先輩が負けて私が勝ったって事になりませんか?」

 

「勝負とか心の底からどうでもいい。戦いは何も生み出さないんだよ。」

 

「―――じゃあ山田先輩の許可が下りましたので、彼女になりますね。」

 

 

 

俯いたままの山田の顔を無理やり持ち上げて、石川は自分へと向かせた。

そして不思議そうに眺める山田に微笑みかけて、そっと彼にキスをした。

山田はぬるぬるとする彼女の舌が唇から入っても、為すがままであった。

彼女は鼻を鳴らしながら可能な限り山田と繋がり、そして離れていった。

 

 

 

「――本当は山田先輩の方が、私より絵が上手いのって知ってました。」

 

「そ、そうなんだ。それは何より……じゃあ何で俺と勝負したのかな?」

 

「――強敵と書いてトモって読むじゃないですか。目標って大事です。」

 

「意外と熱いんだな。俺なら勝てると思うまで絶対勝負しないけどな。」

 

「――それよりも田中先輩が驚くほど冷静なんですけど、何でですか?」

 

「決まってるわ。正妻公認の浮気相手だもの、応援してあげたい位よ。」

 

 

 

そう言うや否や、双葉が白いワンピースを頭から抜き取り椅子にかける。

半裸になった彼女は石川と違い、素っ気無い姿勢などは絶対にとらない。

キビキビと写真集のようなポーズを付け続けて、山田に熱い視線を送る。

 

 

 

「山田クンのクラスになると私くらいじゃないと、受けきれないのよ?」

 

「――すごい自信ですね。私だって、育てば充分受けれると思います。」

 

「受ける受けないとか何の話だ?俺をピッチャーと勘違いしてないか?」

 

 

 

そこで山田はふと、不幸にも今の自分の周囲の状況を確認してしまった。

限りなく黒に近い下着で見事な裸体を押し込める双葉がポージング中だ。

そして石川にいたっては未だに全裸であり、何ら隠しさずに正面にいる。

 

決して身体に問題点の無い健康的な男子にとって、ここは桃源郷なのだ。

 

 

 

「も、もしも、もしもだが、俺が野獣と化したら、どうする2人とも?」

 

「――それなら仕方ありません。不安ですけど、いつかは通る道です。」

 

「あら、本気でそんなコト言っちゃうの?いいけど……30秒待てる?」

 

 

 

何故か視線を山田から外し妙な条件を出した双葉。素直に30秒待った。

そして30秒後、二人に向かって飛び掛ろうとする山田に雷光が閃いた。

その雷光は合宿の登場人物であり食堂には居なかった最後の登場人物だ。

 

阿形直美はバミューダを脱ぎかけてた山田の胸元を掴んで、持ち上げた。

 

 

 

「や・ま・だ・センパイ?!何ですコレ?なんで皆、脱がされてるの?」

 

「ちょ、待ってくれ、阿形さん!違う!誤解だ!曲解だ!事実無根だ!」

 

「じゃあその大根はなんなのよ!くらえっ!龍天昇ダブルボンバー!!」

 

 

 

龍天昇ダブルボンバーに関しては有名な技なので説明の必要は無かろう。

知らない人に説明すると、ムチャクチャスゴイ空手の人が使う技である。

山田は二回の衝撃を受けて空中を飛翔し、開いていた窓から飛び出した。

 

 

 

「もったいない、阿形さんも混ざればよかったのに。ノリが悪いわね。」

 

「手綱握れって言ったじゃないですかもう!……石川ちゃん大丈夫?!」

 

「――ホントにノリが悪いわ。一緒に食べちゃえば、面白かったのに。」

 

「合宿来てからおかしいよ?そんな事を言う子じゃなかったのにさ?!」

 

「――そうでもない。私は山田先輩に興味があって、合宿に来たもの。」

 

 

 

石川は思った。あの大根がせめて人参ならば、正直流されても良かった。

双葉は思った。あの大根で今回は助かったが、正直山田は目が離せない。

阿形は思った。あの大根にトドメを防がれた、正直渾身の一撃だったが。

山田は思った。俺の大根って言っていたけど、正直何の事かさっぱりだ。

 

こうして山田は翌日まで身体を休め(?)合宿最後の夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか名残惜しいわね。来年も3人でいらっしゃい?歓迎するわよ?」

 

「残念だが俺と貴様は今年で卒業だからな!合宿は物理的に不能だよ!」

 

「――合宿じゃなくてもいいですよね。来年も進展はなさそうですし。」

 

「山田センパイに付けれる首輪が出来たら呼んでください。迷惑です。」

 

 

 

 

門の前で談笑をする4人。そこで石川の携帯電話に着信音が鳴り響いた。

 

 

 

 

「――もしもし石川で……こんにちは。……居ますが……代わります。」

 

「え?俺?!……ぁ、はい、山田ですが……先生?なんでここの事が?」

 

「……えぇ?!いえ、それで?……はい……判りました、失礼します。」

 

 

 

 

そのまま電話を渡す山田。石川はそっと指で画面を滑らして画面を切る。

口を半開きにして呆然とする山田のアクションを待つ3人の女の子たち。

しかし、5分経っても変わらなかった。阿形が痺れを切らし問い質した。

 

 

 

「どうしたんですセンパイ?……まさかエロい事してたのバレました?」

 

「だ、だったら良かった……映研は、潰れるかもな、だってさ…………」

 

 

 

立ち尽くす3人の部員達。

頭を抱える1人の部外者。

 

だが、ここで箱根隊の模様はひとまず終了。

次回からは、藤沢隊の合宿がスタートする。

 

何故映研は潰れてしまうのかもしれないのか!

何故山田くんは余り幸せそうに見えないのか!

風雲急を告げる藤沢編に……

 

 

 

 

 

 

つづく。




今回で、箱根編が終了です。
長かった、本当に長かった。
しかし今度は藤沢編が始まります。
出てくるのはいったい誰なのか?
皆様、乞うご期待。

ではではw
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