田中双葉は御令嬢である。もちろん親御さんはそれなり以上に金持ちだ。
だがメイドを別荘に同伴させる程ではない。というか、メイドはいない。
食事だって家族で作るし、彼女も自分で作る位は出来る女の子であった。
「明日の朝まで持つかしら……ま、山田クンに毒見してもらおうっと。」
作り置いていた夕食を、勝負に使われた長机の上に並べて賞味していた。
これは山田たちが到着する直前に彼女が一人で用意していたものなのだ。
喜んでもらえるかという彼女なりの歓待であった。しかし予定は崩れた。
とりあえず持ちの悪そうなものを平らげ、食器を鼻歌交じりで洗い出す。
ただ水道は出しながら洗剤も大量に使う。食器用乾燥機に即座に入れる。
なんだかんだ言っても、やはり御令嬢とは庶民的には程遠い感覚だった。
一方、山田くんは手に持ったしおりを慎重に見つつ、階段を上っていた。
なにせ先程の双葉のセリフもある。また迷子になって笑われたくはない。
しおりと光景を何度も確認し、指差し確認をしてまで先へと進んでいく。
「階段は向かって左、一番奥のドア。い、一応隠し扉を探してみるか。」
通路の突き当たりの壁をトントン叩く山田。隠し扉は無さそうであった。
『だがスキルが足りないだけで、もう一回叩けば判るかもしれないな。』
約10分ほど山田くんは壁を押したり叩いたりしたが、ただの壁の様だ。
「……これだけ調べればもう大丈夫だろう。この奥には応接間は無い。」
常識で考えれば隠し扉の先に応接間を作る家なぞあってたまる訳が無い。
タフがウリの山田ですら疲れている。既に夜の2時をまわった所なのだ。
大きく欠伸をしながら、山田は地図に書いてあった自分の部屋に入った。
そんな山田が迷っている頃、阿形と石川は既に部屋にたどりついていた。
順番にシャワーで汗を軽く流し、それぞれがもう寝巻きに着替えている。
しかし早々に就寝したのかというと、まだ部屋の明かりはついたままだ。
「―阿形さん、せっかくだから聞くけど、貴方山田先輩ってどう思う?」
「うーん、まぁ子供っぽいかな。なんていうか、小学生みたいな感じ。」
「―そうじゃなくて、部長としてよ。阿形さんはさ、先輩尊敬できる?」
ベッドはセミダブルが一つだけだが小柄な二人には特に問題は無かった。
後輩二人はそこに並んで腰掛けて、深夜のガールズトークを続けていた。
石川はドット柄、阿形はストライプ模様、両者とも大きめのパジャマだ。
「部長としては尊敬できるかな。あれでもけっこう要所押さえてるし。」
「―仮に、田中先輩と山田先輩だったらさ、どっちが部長向きかしら?」
「……うーん、私はやっぱ山田センパイかな。教え上手って感じする。」
「―山田先輩ってカッコつけたがりよ。絵だって下手かもって思うし。」
阿形直美は思う。実力ある選手が必ず道場で成功しているわけではない。
抜きん出た才能を持った有名な選手が経営に失敗している例は多いのだ。
もちろん無名の看板に人は集まらない。しかし名トレーナーは存在する。
石川真理子は思う。漫画の世界は実力こそが絶対、無力な人間は消える。
そして、人に教えるのが巧いといえども実力以上を教える事は出来ない。
間違った道に踏み出せば踏み出すほど、戻るのには大きなロスが生じる。
「石川ちゃん、さっきから少しだけ気になってるんだけど訊いていい?」
「―どうしたの?急にあらたまって。」
「いつもより少し喋るの楽そうだね。やっぱりお風呂のおかげなんだ?」
「―うん、すこし喘息が楽になるの。」
「……今日はもう寝よっか。お泊りはまだまだ日にちがあるわけだし。」
「―そうね。じゃあおやすみなさい。」
二人のいる客間の照明は、リモコンで3段階での輝度調整が可能である。
MAX明るく、少々明るく、そしてオレンジ小丸と呼ばれる夜間用照明。
石川の寝息を聞いた阿形はオレンジ小丸照明にして布団に入っていった。
阿形が寝入った頃、山田次郎は部屋に付いている浴槽に身を沈めていた。
軽くシャワーに入っただけの遠慮深い後輩たちと違って躊躇しなかった。
もちろん小動物な山田が決断に踏み切ったのにはそれなりの理由がある。
「風呂まで沸かせてあるとか金持ちって凄過ぎるな。少しぬるいけど。」
既に沸いていたのだ。部屋に入ってすぐ横の扉が脱衣所とお風呂だった。
しかも扉は開き脱衣所の明かりも煌々とついており、すぐに気がついた。
家族とすらずっと外泊していない山田にとって、その歓待に驚いたのだ。
そして彼は特に疑問に思うことなく用意されてた浴槽に身を沈めていた。
部屋付きの風呂とはいえ思った以上に広く、深さもあって足も伸ばせる。
「なんだ、大浴場とか要らないだろコレ。だから金持ちは好かんのだ。」
そんな金持ちのおかげで風呂に入れているのだが、気にならないらしい。
そんな傲慢な山田くんだが、いつも無遠慮なのかというとそうではない。
行列は消えるまで並ぼうとしないし、エレベーターでも相乗りは避ける。
ちょっとでも双葉嬢に負担になるならという黒い意図もそこにはあった。
「しかし、石鹸は減ってるし歯ブラシもある。よほど客が多いんだな。」
浴室に持ち込んだ自前のタオルを湯船に沈めて、空気を入れて遊ぶ山田。
やがてそれにも飽きてくると、タオルはきちんと畳み浴槽の外に置いた。
そして腕を浴槽の縁に大きく乗せて、足も浴槽から出して大胆に寛いだ。
そんな北斗の拳の葉巻おじさんみたいなポーズで、彼はまどろんでいく。
そのころ双葉は簡単な片づけを済ませ、音を立てず大浴場にやってきた。
きっと応接間で困った山田が居るであろうから茶化そうとして来たのだ。
しかし鍵はかかったまま。合鍵で開けて中を伺うも人の気配は全く無い。
「ま、まさか……山田クンてば本気で早川に入りに行ったのかしら……」
双葉嬢が口にした早川とは、強羅の近辺にある早川渓谷のことであった。
その景観は確かに素晴らしく一見の価値がある。今が真夜中でなければ。
一応最悪を想定しようとするが、流石に山田もそこまで馬鹿ではない筈。
きっと面倒臭いから、そのまま寝たに違いない。そう彼女は結論付けた。
「しょうがない、山田クンをからかうのは明日にして私も寝ようっと。」
一階から左に曲がる階段を上り、奥まった場所にある自室へと向かった。
扉を開けると出た時と同じく照明も付いている。そのまま部屋に入った。
モノトーンを基調にしたインテリアで、ベッドも小さな丸テーブルも黒。
おや?と思われた読者もいるかもしれない。彼女の部屋はピンク色の筈。
そう、あのピンクに包まれた部屋は彼女の部屋ではなく、姉の一葉のだ。
そしてATG創刊号も双葉の持ち物ではなく姉の持ち物という事なのだ。
「さーてと、確か残り湯抜いてなかったわよね。面倒だし今日も使お。」
純白のワンピースを頭から抜いて、そのままベッドに投げ捨てる双葉嬢。
しかし、実はここで彼女は気がつかなければいけない事がひとつあった。
それは自分の脱いだワンピースが、山なりに盛り上がっていたという事。
一方、山田次郎は夢を見ていた。
見渡す限りの黄色い山。無論黄金ではなく砂。彼のいるのは砂漠だった。
軍服を着込み、角ばった戦車の砲塔ハッチから颯爽と身を乗り出す山田。
「ふーむ、情報によればこの辺に英軍の駐屯地があるはずなんだがな。」
「そうね、ただ昨日かなり強い嵐があったみたいだし、移動したかも。」
「すると斥候に出た一之瀬くんが頼りだな。そうだ、阿形さんたちは?」
「情報部の話だと兵站への道は危険が無い筈よ。少し遅れてるだけね。」
そして車輌のすぐ脇で双眼鏡を構えてる黒い軍服の少女が双葉嬢である。
二・三度周囲を見渡し、飽きたのか双眼鏡を首にまたぶら下げてしまう。
そして車輌後部にある突起を足がかりによじ登って、砲塔に腰を掛けた。
「やっぱ地道に進むしかないわね。努力に王道なしって言うじゃない?」
「そ、それの事なんだがな、何で田中双葉がそれを知っているんだよ。」
「いまさらなに言ってるのよ。だって私と山田くんは――――でしょ。」
「え?なに?今、なんって……」
しかし会話は途切れてしまう。戦車の近くで弾頭の着弾音が響いたのだ。
しかも二度三度と増えていき、やがて周囲全てが爆音に包まれていった。
山田は双葉の手をとって、共にハッチから車内へと滑り込む様に逃れた。
「まずいな、ここは一旦逃げよう!このままじゃあいずれやられるぞ!」
「でも何でなの?周りに車輌どころか兵隊一人だっていなかったのに?」
「野砲か空爆か、とにかく理由は後!今は逃げるしかない!回避機動!」
ジグザグに角度をつけつつ進む三号戦車。車体が小さい分小回りは効く。
だが周囲の砲火は衰える事を知らず、土煙と閃光により視界はほぼ無い。
やがて火砲の凶悪な手は装甲板に到達する。内側にひしゃげていく外壁。
そして砲塔は轟音と共に吹き飛び、山田達は守られていた空間を失った。
呆然とする二人の見る光景は地獄。一撃で致命傷になる砲弾が空を覆う。
「ど、どうするの?わたし怒られたくない!わたしわるくないからね!」
「え?ぼ、ぼくのせいじゃないよ?!そっちがやろうっていったんだ!」
「いったけどいってない!わたしのせいじゃない!ママにそう言うわ!」
「なんで?なんでそういうこというの?だったらふたりであやまろう!」
「いや。わたし怒られたくない。次郎くんのせい。次郎くんのせいよ!」
そこで気がつくと何故か山田次郎も田中双葉も小さな子供になっていた。
ともに泣きじゃくり、どことも知れない見慣れぬ駅前で口論をしていた。
「わかった。ぼくはわるくない。でも、そういうんならぼくがわるい。」
「ありがとう次郎くん。でも、わたし、もうひとつおねがいがあるの。」
「な、なあに?」
「……起きて。」
そして、起きた。
山田次郎が目を覚ますと、バスルームの中で奇妙な光景が広がっていた。
浴槽に身を沈めている自分を見下ろす様に仁王立ちしている田中双葉嬢。
読者諸氏には何が起きたかお判りとは思うが、時間を巻き戻してみよう。
双葉は脱衣所でブラとショーツも脱ぎ、その他全て外して浴室に入った。
すると、ぼんやりと見慣れぬ黒い塊が視界に入る。小首を傾げる双葉嬢。
仕方ないのでメガネをかけもう一度浴室に入る。するとその正体が判る。
後頭部。そして首。少々筋肉質の肩が生え更にその先には足首も見えた。
ここは自分の部屋。そして自分の風呂。そして来客は客間と応接間の筈。
しかしその情報を総合すれば、ここに誰かいる事はあってはならない筈。
しかし、いる。
呆然とし状況を把握できない彼女は想像通りか確かめる為、歩を進めた。
そっと回り込んで顔を覗き込む双葉。やはりこの男は山田次郎であった。
苦しそうに目を瞑る彼は悪夢を見ている。そこで双葉の表情は和らいだ。
「……起きて。」
搾り出せた言葉は、一言のみ。だが効果は絶大だったのかすぐに起きた。
「ぼくは悪くない!やっぱりおかしいよ!ぼくだけのせいじゃないよ!」
「……いいえ、悪いのもおかしいのも全部あなただわ、山田次郎くん。」
「ふぇ?あ、あれ??なんで俺がお風呂に?それに、なんで君が裸……」
そこには髪の長い女の子がいた。大きな丸いめがね。もちろん双葉嬢だ。
そこまでの認識は出来たものの、残念な事にその後がまったく続かない。
というより、彼には見えているその光景に情報処理が追いつかないのだ。
頭のカチューシャどころか服装が全く無い。下着すら身に着けていない。
大きく盛り上がった乳房も、その先端も、薄い繁りでさえ隠れていない。
「山田クン、お得意の言い訳で逃げてみる?一応、聞いてあげるわよ。」
「………………申し訳ございません。」
「よろしい。じゃあ、ちょっと詰めてくれる?私もそこに入るからさ。」
「え?!ちょ、ちょいまて!今出る!」
「大声出したら人生粉砕できるわよ?いいから言うとおりにしなさい。」
全く躊躇せず浴槽に進入する双葉。後ずさりしながら場所を空ける山田。
山田と双葉は正面から向き合ってしまっている。その全てが見えていた。
目の前の女性が全裸のまま隠そうともせず、自分の前で枠を跨いでいる。
目の前の男性が全裸の自分に釘付けになって、股間を熱膨張させている。
そして双葉はゆっくりと座りひざを抱え、上を向いて顎で何かを伝えた。
山田も何かを感じ取ったのか、彼女の前でひざを抱え同じ姿勢をとった。
「やっぱり少しぬるくない?どうせ入るんなら沸かせばよかったのに。」
「俺んち古いからさ、この手の風呂の使い方って判らなかったんだよ。」
「まぁ別にいいけど。風邪ひくほどお湯が冷たいって訳でもないしね。」
山田は暴力的な気配を予め察知をして、幾度もピンチを切り抜けてきた。
小指が動けば危険は無いというもの。そっと少女に隠れて確かめてみる。
動かない。少女は優しげな表情で自分を見ているだけ。しかし動かない。
山田とはいえど腕力で女子に負けるわけはない。つまり別の暴力である。
彼女はやると言ったらやる。どんな方法かは不明だが人生は粉砕される。
「しっかし遠慮ないわね。もっとヘタレかと思ったけどガン見なのね。」
「……ああ、その、ごめん、目閉じとく。……やっぱり先に出ようか?」
「褒めてんのよ私。で、何でこの部屋なの?しおりに無かったでしょ?」
山田はそこそこにクレバーである。彼女のその一言で大体の原因が判る。
しおりにミスがあったのだ。おそらくは二宮のケアレスミスなのだろう。
その事を伝えれば自責を免れることが出来る。無罪になるかもしれない。
「な、なんとなく足が向いた。ここが俺の部屋なんだって思ったんだ。」
「へー。私の部屋は山田クンの入る部屋なんだ?それ本心なのかしら。」
「そうだ。本心だ。誰が何と言おうと、どんな事があっても、本心だ。」
山田は『言い訳は好き』なのだが『誰かのせいにするのは嫌い』なのだ。
山田次郎は、この案件における真実の情報を全て遮断することに決めた。
偶発的事故であり自分だけの判断、そして謝罪と賠償に異議を唱えない。
「もう一度だけ訊くわ。この部屋に来た本当の理由を私だけに教えて。」
「何度だって答えるさ。この部屋に来たのは俺の意思でそれ以外ない。」
山田もまた無表情になり、田中双葉を凝視する。
田中は逆に笑みを浮かべ、山田次郎を注視した。
「判ったわ山田クン。そこまで覚悟が出来てるならもう何も聞かない。」
「……お、お手柔らかに。」
「大丈夫よ、自分のオモチャを粉砕するほど私だって馬鹿じゃないわ。」
「………オモチャなのか。」
「そうよ?あなたは私にしか見えないリモコンで動くオモチャなのよ。」
「…………り、了解した。」
双葉嬢の右手の人差し指が、山田の顎先をかなり大きく押し上げていく。
促されるまま山田は顔の角度は修整され、視線がその分だけ上を向いた。
そして山田は浴室内照明を見る。そして、そこに覆い被さった影を見る。
光源に向かってカメラを向けると、その間に有る物が黒くなってしまう。
これを逆光という。山田の眼に今起きている現象もまさにそれであった。
覆い被さってきた少女の表情も、豊満な体の詳細も、すべてが黒である。
やっと表情が見れるかどうかという時には、もう唇に何かが触れていた。
「本当に山田クンって諦めがいいのね。そんなんじゃ人生損するわよ?」
「そうでもないさ田中――。フルネームで呼ぶのは変か。何て呼ぼう。」
「そうね、双葉ちゃんとかいいかしら?山田クンにオマカセするわよ。」
「判った、マイハニーと呼ぼう。……だがひとつだけ言わせて欲しい。」
「なに?まさか欲情したから襲いたい?だめよ、初めてはもっと後で。」
微笑みながら胸を隠すような動作をする双葉。些か遅すぎる感はあるが。
2人の入浴タイムは随分と時間が経過している。その間は隠していない。
ただ不思議な事に、この時山田くんは実はあまり凝視しなくなっていた。
彼女の顔だけを見つめ、そこはかとない既視感とずっと戦っていたのだ。
「いや、つまらんことだけど、唇、柔らかいんだな。少し意外だった。」
「クチバシが付いてるわけじゃあるまいし、大体柔らかいんじゃない?」
こうして山田と双葉の2人は、何だか良く判らない内に契約を交わした。
山田次郎は田中双葉のオモチャになるという、絶対の服従を誓ったのだ。
しかし山田くんは、彼自身も驚く程この状況を受け入れていたのである。
そして翌朝、例の勝負があった一階の大広間に館の全員が集合していた。
そして映研の下級生はその光景に眼を疑った。いや、呆れて果てていた。
なにか生気の抜けたような表情の山田が、双葉の肩をきつく抱いていた。
そして満面の笑みを浮かべている別荘の主。昨日とは何かが違っていた。
「田中センパイ、質問がありますが。」
「なあに?プライベートに関する事以外なら全部お答えしちゃうわよ?」
「……あの、山田センパイは一体……」
「オホホホ!ごめーん、そこ超プライベートなのよ。ねぇ、山田クン?」
「ははは、そのとおりさマイハニー。」
「―――そうでしょうね。ところで今日の予定は、どうなってますか?」
「え?ええ?石川ちゃんスルーなの?」
ちなみに山田くんは昨晩、あまりお楽しみとは言い難い様な状況だった。
双葉は結局山田を使っていいように遊んだ、という表現が一番近かった。
体も髪も彼に洗わせ、更にバスタオルで拭かせ、服も全て着させている。
ただ、彼は言われた以上をする事がなかった。むしろ出来なかったのだ。
山田の小指は依然として動かず、彼女を拒否する事が全く出来なかった。
驚くべき事に、彼女が就寝した後でさえ、その小指が動く事は無かった。
繁茂能力に満ち溢れた若い牡には酷すぎる状況が一晩ずっと続いたのだ。
「まずは昨日の残りがあるから食事にしましょ?山田クン、手伝って?」
「ははは、当たり前だろマイハニー。キミの求めれば全て差し出すさ。」
後輩たちは仲の良さげな先輩たちの動きを、ずっと目で追い続けていた。
そして奥に消えていったのを確かめると、やっと阿形らは目を合わせた。
その後輩の二人の表情はもちろん、理解でも了解でも納得でもなかった。
「―――間違いないわね。たぶん昨日の夜、山田先輩は、喰われたわ。」
「な、何を?……あ、いや、やっぱ言わないでいいわ、だいたい判る。」
「―――映研、これから、どうなるのかしらね。山田先輩が抜けたら。」
「ぬ、抜けるって?!なんで山田センパイが映研を抜けちゃうのよ?!」
「―――田中先輩って、何事も中途半端はしないって、感じがするし。」
やがて鮮やかな料理を乗せた皿を持ち、軽やかな足取りで双葉が現れる。
その後ろから山田。しかしその手の荷物は圧巻と言わざるを得なかった。
両手にスープの寸胴、更に腕の甲には皿を二枚、曲げた肘上に更に二枚。
そして口にくわえた調味料のバケット、頭の上にはナプキンの束もある。
「ちょ、山田センパイ?!運ぶの手伝いますって!あぶないあぶない!」
「大丈夫、山田クンはお願いした事は、ちゃんとやってくれるもんね?」
「ふぁ、ふぁがひほへヴぁいはひー。ほへはひゃうほひっはははうへ。」
「なになに?双葉ちゃんカワイイ愛してる?んもう、そんな本当の事!」
照れながら山田の背中を叩く双葉嬢。彼女の皿は既に卓に置かれていた。
しかし叩かれた方の山田は卓に到着するかなり手前、そこで攻撃された。
目を背ける後輩2人、悠然と見守る双葉、そして、雄叫びを上げる山田。
崩れかかった重心を戻した時には、肘に乗せた料理のバランスは崩壊中。
彼は全て立て直すのを諦め、両肘の料理を放棄し手の甲の料理を救った。
そして腰を引き中腰になる。ポーズ的には空気椅子に座っている状態だ。
肘から落ちた料理をその膝で受け止め、皿を持つ手で膝上の料理を固定。
奇跡に気付き手を叩いて賞賛する石川、助ける為に歩み寄っていく阿形。
だが、何故か部長を助けようとするその後輩を、田中双葉が手で制した。
「大丈夫、山田クンはお願いをきいてくれるもの。貴方は必要ないわ。」
「でも、あのままじゃ持ち直せませんけど?たぶんお皿落としますよ?」
「それも大丈夫よ。私は山田くんを許すわ。だから、全く問題ないの。」
「……変ですよそれ。山田センパイ凄く頑張ってるのに『許す』って。」
「ぬうう!だっらっしゃあああ!みっしょんこんぷりーと!どーだー!」
若干お料理は乱れてはいるものの、山田の運ぶ皿は全て机に並んでいた。
よっぽど嬉しかったのか、ガッツポーズで感動を表現している山田くん。
その脇ではやっぱり先ほどと同様に、手を叩きながら感心している石川。
「ほら、山田クンはすごいのよ。なんだって言う事聞いてくれるのよ。」
「そうでもないです。センパイは私達のお願いだって聞いてくれます。」
「ヒヨコさんにも人気なのね山田クン。でも駄目よ。私、ずうっと……」
ここで部屋に大きな鈍い音が広がる。山田が大の字になって倒れていた。
山田本人もキョトンとした表情で、不思議そうにじっと天井を見ている。
照れくさそうに笑って起き上がろうと手を床に突いたが、動かなかった。
呆然として見つめる阿形と田中に対し膝を突き冷静に山田を調べる石川。
「―――山田先輩、熱出してますね。無理させすぎたんじゃないですか?」
「馬鹿言わないで!山田クンは私の部屋で一緒に……寝て、ないの?!」
「すまんな田中双葉、あいやマイハニー。悪いが床で……座ってて……」
悪戯っぽく口角を上げウィンクする山田。格好良い仕草だと思っていた。
しかし双葉の表情は前向きな評価のものではなく、責める様な顔つきだ。
失敗したのか、だから俺はモテないのか、そう考えながら、瞬きをした。
だが何故か瞬きが辛くなってきて、やがて目蓋を持ち上げるのをやめた。
つづく。
もっとエッチに作れればきっと少しはPVもUAも増えるんでしょうね。
出来ません。出来ないです。出来ない理由があるんです。その理由とは、
才能無いからwwwwww
エッチいの嫌いじゃないんですけどね、やっぱ自分でとなると無理です。
クロスオーバーもアダルトも、あれは一種のタレントが必要なんですよ。
生まれ付いての才能、目が無いと光が見えぬ的な感覚器官の有無に近い。
しかし合宿編全然おわらねえじゃんかとご心配の皆様、どうかご安心を。
まだまだ続きます。だって、もうひとチームの合宿有りますからwww
一気に4万字フルで使って一気に終わらせても良いんですが、さすがに
平均文字数上げると読みにくいのがバレちゃんでカンベンしてください。
では、次のお話で会いましょう。