月明かりのみに照らされているほの暗い森の中に学生服を着た一人の少女が、月明かりを反射する野太刀を構え立っていた。
「ふぅ」
少女は一息つくと、構えていた野太刀を鞘へと仕舞い込み、スカートについているポケットへと手を入れた。ポケットの中から徐に携帯を取り出して、誰かに連絡を取るべく電話番号を確認し耳へと当てて会話を始めた。
「こちら桜咲。こちらに侵入したと思われる侵入者の排除が終了しました。召喚された者だけで召喚主は見当たりません、とりあえず一通り見回りをした上で寮に帰ります」
「えぇ、別にかまいません。ただ私はあくまでお嬢さまの護衛。本来であればこのようなことは・・・」
「はい、では」
少女は電話を切り、話し相手の顔を思い出して少し嘆息した上でその場を後にした。離れた位置で援護していた相棒である褐色の少女に見回りをすることのなったことを伝えようと電話を再びかけようと耳に当てた時
―ガサッ
「誰だっ!」
近くの草むらから草をかき分けて進んでいるような音が聞こえてので、携帯をしまいすぐさま音が聞こえた方向へと身体を向けて、野太刀をいつでも抜けるよう構えると
―ガサッガサッ
「子供?・・・っ!?」
草むらの中から出てきたのは、ぼろきれのような服を着た白い髪の6歳ぐらいの少年だった。少年は怯えるような表情をしながらその様に合わぬものを手に握っていた。
「抵抗の意思がないのであれば、その手に持っているものを放して両手を上にあげていろ」
少女は明らかにおびえている少年を前にしても警戒を解くことはなく、更に強く野太刀を握りしめていつでも抜けるようにしている。それはひとえに少年の右手の中にあるもののせいであろう。少年の右手の中には、血のついた刃、明らかに何かを斬ったと思われる日本刀、細かく言うのであれば打ち刀を持っていた。少年の体躯では明らかに使えそうにないであろう武器を少年は持っていた。
少女に話しかけられた少年は、ふと顔をあげて話しかけてきた相手の顔を確認して、恐怖に染まった顔を更に歪ませた。傍目に見ても見目麗しい少女を見て
「・・桜・・咲・刹・・那?なら、ここは・・・・・どこ?」
「貴様っどうして私の名前を知っている!?」
「くっ、うるさい・・丸。こんな相手に刀なんか向けられる・・・本当に帰れるのか?本当に?あの世界に?・・・・・・・なら殺す、殺してやるよ」
「何を、くっ!?」
少年は急に独り言を言いだしたかのように、虚空に向けて何かをブツブツと言いだし、急に右手を振り上げてその手に握っていた刀で少女へと斬りかかった。
「降伏の意思はないようだな。悪いが捕まえさせてもらうぞ」
少女は少年から振り下ろされた刀を自らの持つ野太刀を鞘から抜いて防ぎ、今度は逆に少年へと斬りかかった。しかし少年は少女と同じように、少女の刃を防ぎ少女と同じように切り返した。少女は身を捻ることによってそれをかわし、袈裟切りに少年へと斬りかかるが少年により振るわれた同じような袈裟切りによって防がれる。
「貴様っ!!ふざけてるのか!!」
少女は激昂した。それもそうであろう、少年の刃の太刀筋は完全に少女のものだ。鏡などではなく左右が対称ではない完全に少女と一緒の速度、角度、力で振るわれている。気で強化されている彼女の力と同等に返してくるなど少女には、侮辱にしか感じられなかった。
「ふざけてなんかいないさ」
先ほどのまるで少女を相手にしていないような、少女が見えていないような状態から一転し、少女の全てを写し取ろうとするビデオカメラのような透き通る瞳で少女を見つめ、少年は少女に話しかける。
「僕はこれしか出来ないんだ。刀を振るなんてことはこれが初めてだしな」
「なっ!?」
唐突に喋りだした少年の言葉に少女は、愕然とした。敵の言葉故に惑わされぬように気をつけていても、今の言葉は聞き逃すことなど出来はしない。刀を振るったことのない少年が刀を振るい続けてきた自分についてきている、いや合わせてくるなどとは
少女が愕然として生まれた隙に対しても少年は刀を振るうのではなく、少女と同じように刀を下ろし、相手を見ている。
「やっぱり、相手の真似をしているだけじゃ殺すことは出来ないな。
折角いい眼もあることだし…」
少年は先ほどまでとは、うってかわり少女の真似をすることなとせずに構えることなくダランとぶら下げていた刀を眼の位置まで持ち上げて刀の刃を地面と平行にするように構え。、右足を前に左足を後ろにすることによって身体を半身にした。
「まぁいい。全ては貴様を倒してしまえば分かることだ」
少女は少年のそのふざけたような構えなど気にせずに少年とは対称的に右足を後ろに左足を前に置き半身の姿勢をとり、刀を地面と垂直にするように構えた。
「こいつを殺した約束を守れよ…丸」
「いくぞ神鳴流奥義…」
「悪いな恨みもないが死んでくれ…『桜夏七式:一の太刀…』」
『雷鳴剣』
『五月雨』
互いの技がぶつかり合い、決着がつこうとした…その時
「全力で左に避けろ桜咲刹那っ!!」
刀を振るっている少女とは、また違う少女がこの戦いに乱入してきた。
《続く》