ソードアート・オンライン 十人の物語   作:蹴急

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リンク・スタート

「やっとだぜ・・・ついにこの時が来た!!」

 

赤みを帯びた茶髪の少年は笑顔で机の上にあるものをみる。

 

「どれだけ、この日を待ちわびたか」

 

時刻は12時55分。

彼が待ちわびている事まで後5分である。

 

「トイレオッケー。飯も水分もオッケーと・・」

 

彼は自分の体調を確認し机の上にある『ナーヴギア』を見つめる。

それは夢の機械で、これから彼に訪れる災厄をもたらす機械。

そんな事とも知らずに彼、「尾形 亮也」は『ナーヴギア』を被る。

彼がその機械で行く先はゲーム。

フルダイブ型MMO『ソードアート・オンライン』の世界である。

時刻は13時00分。

少年は期待を胸に言葉を口にする。

 

「リンク・スタート」

 

意識と景色が急速に流れる。

少年の意識の前に文字が現れそれを躊躇わずに操作していく。

名前の欄に「gatari」と打ち、男を選択しアバターを作る。

アバターの姿は少し彼よりでかく、大人びている。

 

「これで良しっと」

 

一度呼吸をしてから手前のOKボタンを押した。

光が彼を覆い、反射的に閉じ目を開けるとそこには日本には無いレンガ造りの町並み。

少年・ガタリは今一度自分の格好を確かめる。

少し高い視線に着ている服、何より自分の背中に担がれている剣を確かめると笑みをこぼし拳を作る。

 

「(戻ってきた。ソードアート・オンライン。浮遊城アインクラッドに)」

 

ガタリは一気に街を駆け抜け街の外に向かう。

その途中で突然肩を掴まれ、こけてしまう。

 

「ッ痛~んあ?」

 

ガタリが顔を上げると見たことの無い男女がいた。

 

「えっと~、どなたですか?」

「お前、尾形だろ?」

「ほぇ?」

 

自分のリアルネームを言われ頭の中に?が出てくる。

が、次の言葉でその疑問は解決された。

 

「俺だ、拓人だ。」

「・・拓人かよ!じゃあそっちは・・・?」

「遥よ。因みにこっちじゃマルカだからよろしくね」

 

彼らはガタリ、尾形のリアルでの友達だ。

男の名は雪ノ下拓人。女は眞野遥という。

 

「そうか、俺もこっちじゃガタリって名前だから頼むな」

「あんたも私と同じようなセンスで名前つけたわね」

「リアルネームをそのまま使うよりはマシだと思うがな」

「悪かったな、良いのが思いつかなかったんだよ」

 

文句を垂れつつガタリを引き上げるタクト。

 

「てか、俺ってよくわかったな」

「ああ、お前の走り方って結構解かりやすいから、もしかしてと思ってな」

「それが俺じゃなかったらなかなかに不味かったよな」

「まあ結果オーライってやつだ」

 

ははと笑い交じり話を流す。

横のマルカは呆れた表情を作り話題を変える。

 

「それよりガタリ、あなたってベータテスターでしょ?私たちにコーチしてくれない?」

「来たばっかでソードスキルの出し方もわからないんだよ」

「ああ、いいぜ、その前に二人とも武器は片手剣で良いのか」

 

快く了承し、二人に武器について聞くが二人とも大丈夫だと答える。

 

「ならこのまま街の外に行くからついて来てくれ」

 

三人は浮かれているのか足早にフィールドへと向かった。

 

☆

 

「はあっ!」

 

剣が青く光りフレンジーボアをポリゴンへと変える。

 

「ふぅ・・・とまぁこんな感じだな」

「流石だな、やっぱり慣れてるよな」

「確かに見てたら私も出来るんじゃないかなと思ってたんだけど難しい」

「慣れだよ慣れ、コツさえ掴めば何とかなるぜ」

「つってもそのコツを掴むのが難しいんだけどなっと!」

 

タクトが再びポップしたボアを見て剣を構える。

そして剣を中段から上へと振り上げる。

すると刀身から光りだしそのままモンスターを貫いた。

 

「うお!これか!?」

「出来るじゃないか、今のはスラントだ」

「うう、次は私がやる!」

 

二人に告げまたポップしたボアにマルカが向かう。

剣を大上段に上げるとタクトの時と同じような青い光りが発生する。

そしてそのままボア目掛けて剣を打ち込む。

ボアの体力が0になりポリゴンと為って散っていく。

 

「やったー、私も出来たわ」

「マルカもやるな!バーチカルをだすなんて」

「やるじゃん、俺ほどじゃないけどな」

「素直に褒めなさいよ、すごいって」

「はいはい」

 

三人はそれからもポップしたモンスターを見つけては倒していき日が傾き始めるころまで続けていた。

 

「そろそろ一回落ちるか」

「そうだな、俺も親が晩飯作ってるだろうし」

「私も一旦落ちるね、用事が終わったらまた来るつもりだけど」

「俺も戻るし、一応フレンド登録しとこうか」

「タクトも戻ってくるよね?」

「・・ん?ああ・・ってかガタリ、ログアウトボタンってどこだ?見当たらなくてさ」

 

それを聞きガタリはすかさず右手の振りウインドウをだす。

そしてあるはずのあって当然のログアウトボタンが無いことに気づく。

 

「・・嘘だろ?ない・・」

「え?本当かよ?」

「ちゃんと探してよ、β版とは違うのかもしれないし」

 

他にも見てみるがどこにも存在していない。

現実世界へと帰れる唯一無二の手段が。

 

「もしかしたバグじゃないのか?」

「そうだとしたら大変じゃない?何か情報とかないのかな?」

「運営から何かあるかもしれないしもう少し待ってみるか」

 

どこからか急に鐘の音が響く。

そして彼らは光に包まれ、始まりの街の広場に強制転移させられる。

 

「うお!?」

「え?ここって・・?」

「・・・強制転移!?」

「おい、二人とも上だ!!」

「何だよ・・あれ?」

 

上空をWARNINGとSYSTEM ANNOUNNCEMENTと書かれたものに赤く染められる。

そこから現れる謎のフード。

 

「もしかして運営?」

「いや、それにしては様子が・・」

「今の状況を説明してくれるんじゃねえか?」

 

タクトの発言通りフードが説明を始めた。

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。」

 

フードは手を広げ語り始める。

 

「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ。」

「なっ!」

 

ガタリの頭の中に名乗った人物のことが思い浮かぶ。

 

「ねえ、茅場って・・」

「ああ、このゲームを作った人物だ」

「マジか、本人が出てくるのかよ」

「だが、茅場はあんまり表舞台に立ったりしないはずなんだけど・・・」

 

周囲も茅場の発言に反応する。

しかし茅場はそれを気にも留めずに語り続ける。

 

「プレイヤーの諸君はすでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う」

 

茅場は右手の人差指と中指でメニューを開く。

 

「しかしこれはゲームの不具合ではない。繰り返す、不具合ではなくソードアート・オンライン本来の仕様である。諸君らは自発的にログアウトすることは出来ない。また外部の人間によるナーブギアの停止、あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合、ナーブギアの信号阻止が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。」

 

プレイヤーが死ぬかもという事を理解し、周囲がざわつき始める。

 

「たかがゲームだろ?そんなこと出来る訳が・・」

「いや、出来る信号阻止のマイクロウェーブは電子レンジと同じ原理だ」

「そんな・・でも制限とかされているはずなんじゃ・・」

「その制限さえ外せば脳を焼き切ることなんて簡単だ」

「なら電源を切ったらいいんじゃないの?」

「ナーブギアは内蔵バッテリーがあるんだ」

「それじゃあ・・・本当に・・」

「マジかよ・・」

「・・くそっ!」

 

三人の顔に絶望の顔が見え始める。

だがガタリは二人よりもゲームをしていたからなのか、それとも二人を見ていたからなのか冷静だった。

 

「残念ながら、現時点でプレイヤーの家族・友人などが警告を無視し、ナーブギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからずあり、その結果213名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からも永久退場している。」

「213人もだと・・!?」

「っ信じれるか!」

「ガタリ、タクト・・」

「ご覧のとおり多数の死者が出たことも含めこの状況をあらゆるメディアが繰り返し報道している。」

 

茅場の周りに現実世界のテレビのニュースなどと思われる画面が現れる。

 

「よってすでにナーブギアが強制的に解除される危険は低くなっていると言ってよかろう。諸君らは安心してゲーム攻略に励んでほしい。しかし十分に留意して貰いたい、今後ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳はナーブギアによって破壊される。」

 

「・・なっ!?」

 

ガタリは想像してしまった、自分がモンスターにやられる事を。

他のプレイヤーも同じような事を考えたのだろう。

全員が茅場の次の言葉を静かに待つ。

 

「諸君らが解放される条件はただ一つ、このゲームをクリアすればよい。現在君たちがいるのはアインクラッドの最下層、第一層である。各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒せば上の階に進める。第百層にいる最終ボスを倒せばクリアだ。」

「クリア・・第百層・・」

「ねぇガタリ、ベータテストの時はどの位まで行けたの?」

「・・・二か月で第八層だった」

「二か月でってそんなの二年以上もかかるじゃない!」

「その間俺らの体持つのかよ!」

 

周囲は茅場に対し怒声や罵声を浴びせる。

だがそれでも茅場は話す。

 

「それでは最後に、諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ。」

「プレゼント?」

「この手鏡ってやつかな?」

「うおぉ!?」

「タクト!?」

「きゃあ!?」

「マルカ!なっ!?」

 

プレイヤーが次々に光、姿が変わっていく。

 

「大丈夫か?マルカ、タクト・・って」

「だいじょう・・ガタリその姿って」

「うお、何だ!?顔がってお前らも・・」

「これって現実の俺の姿だよな」

「ええ、私もそうよね」

「何でこんなことが?」

 

ガタリたちは現実世界での姿になった。

ガタリの容姿は赤みがかった茶髪で赤い瞳、タクトは青紫の髪で水色の瞳、マルカは黄緑のボブカットで濃い緑の瞳。

 

「スキャン・・ナーブギアは高密度の信号阻止で顔をすっぽり覆っている、それで顔の形を把握しているんだろうけど・・体は」

「あれじゃない、ナーブギアを最初に使ったときにやったキャリブレーションとかいう、体のあちこちを触ったやつ」

「でも、何でわざわざこんな事するんだよ」

「すぐに答えてくれるだろ」

 

ガタリは指を茅場に向けて指す。

 

「諸君は今、何故?と思っているだろう。何故ソードアート・オンライン及びナーブギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのかと。私の目的は既に達せられている、この世界を作り出し、観賞するためにのみ私はソードアート・オンラインを作った。そして今すべては達成せしめられた。以上でソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る。」

 

そう言い残し茅場は姿を消した。

一人が叫びそれが引き金になったのか周囲は騒然となる。

その中でガタリ、タクト、マルカは決意をする。

 

「タクト、マルカ!こっちだ!」

「ガタリ?うん」

「ああ」

 

三人は広場を出て路地に行く。

 

「俺は今からここを出て次の街に向かおうと思っている」

「外に出たら、死ぬかもしれないのよ」

「ああ、わかってる。でも外から何も出来ないのだとしたらここを出る方法はゲームをクリアするしかないんだ」

 

ガタリはその赤い瞳に炎を灯したような眼差しで二人を見つめる。

 

「お前はそれを自分でやろうって思ってるのか?」

「そうだ。」

「そうか、・・なら俺はお前について行くよ」

「良いのか?」

「良いもなにも、俺はこの状況になってからお前について行くって決めたからな。」

「タクト・・・・ありがとう」

「私だって行くよ。ガタリやタクトだけには任せられないもん」

「ありがとな、マルカ」

 

三人は次の街までの道を話し合い、そして始まりの街を出た。

三人が話ていた路地の横で、二人の男が話していた

 

「キリト!お前案外かわいい顔してんじゃねぇか。結構好みだぜ。」

「クラインこそそっちの野武士面の方が十倍似合ってるよ」

 

黒髪の少年は街を走り抜け、赤髪の青年は広場に戻った。

 

☆

それぞれの思いが交錯する。

勇気を持った少年。

友のために戦う少年。

愛を求め探す少女。

優しさの理由を見つけたい少女。

自分に正直に誠実に生きる少年。

希望を持つ少年。

己の正義を貫く少年。

信頼することをやめた少年。

真実を追い求める少女。

友と待っている大切な人のために戦う少年。

 

黒と閃光以外にも現れる十人の戦士達。

英雄であるが英雄とは呼べない。

そんな者たちの物語。

 




読んで頂きありがとうございます。

これは別で書いてるものの息抜きで書いています。

その別の方でもこのオリキャラは出てきますの覚えてもらえれば嬉しいです。

また次回。
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