聖なる夜が、明け2日経った日に血盟騎士団主催の年末ボス攻略会議が行われた。
内容は年を越す前に50層・・・このアインクラッドの丁度折り返し地点を攻略するかどうかである。
会議は二分されるかと思ったが皆今年中に攻略しようと意気投合した。
しかし、50層ということもあって全員の準備を万全にして挑むということになり、攻略は12月31日の午前となった。
間まで約一週間、各自レベルアップや武器の強化に勤しむこととなった。
ギルドに入っていないガタリももちろんレベリングをしようとクエストを漁っていた。
その中でとあるクエストの話を聞き、詳しく知ろうとアルゴの元へと訪ねた。
「久しぶりだナ、ガッちゃん」
「ガッちゃんはやめてくれって・・・・・」
情報屋界のトップとも言えるであろう人物それが鼠のアルゴ。
彼女のもとを訪れるプレイヤーは基本情報を求めてやってくる。
アルゴはいつもの調子でガタリをからかい、ヒゲのペイントのある顔で笑った。
「ニャハハ、でオレっちのとこにはどういったようなんダ?」
「あー、とあるクエストの情報を教えて欲しくてさ、聞いたことあるか?女神の試練っていうんだけど」
「その情報か、確かにあるヨ」
「ほんとか?よかったら教えてくれ」
アルゴの言葉についテンションが上がったガタリはアルゴに勢いよく聞く。
そんなガタリにもアルゴは表情を変えずに喋る。
「ああ、いいゾ。女神の試練ってのは聞くとこによるとキャンペーンクエストみたいなものらしい」
「キャンペーンクエストって言うと次の層とかまで続くヤツだよな」
「そうだゾ、でその出現条件なんだけド」
「何かあるのか?」
「イヤ、条件は男性プレイヤー女性プレイヤー両方2名以上ダ」
「なんだそんなことって・・・・・・男性女性プレイヤー両方2名以上!?四人以上じゃないと発生しないのか?」
ガタリは声を荒げかなりオーバー気味なリアクションを取る。
「そういくことだナ」
「パーティクエストってことか・・・タクトとマルカを呼んだとしてもあと女性一人いるのか・・・なぁアルゴ?」
「オレっちは別用があるから無理だゾ」
「せめて頼んでから断ってくれよ」
「先を読まれやすい自分を責めるんだナ」
「はぁ、マルカの伝手で探してもらうか」
「ちなみにこのクエストをクリアしたプレイヤーはまだいないゾ」
「そうなのか?けど挑戦した奴はいるのか?」
「ああ、とりあえずオレッちが持ってる情報はこんなけダ、頑張ってクリアしたら教えてくれヨ」
「わかったよ、じゃあな」
アルゴと別れた後、彼は自分のホームに帰りだす。
ガタリのホームは現在40層の都市でタクトとマルカと三人でシェアホームしている。
3LDKなので広さもあり、きちんと個人部屋もあるのでかなり快適である。
料理はマルカがしているのでこの男二人ははたから見れば最高である。
今日の昼飯は何かと考えながら歩いているとすぐにつき、家のドアをあける。
すると客が来ているのか奥から話し声が聞こえ、リビングに向かうとマルカともう一人女の子がいるのが分かった。
「ただいま~、マルカ、友達か?」
「あ、お帰り!うん、チヒロが来てるよ」
そう言われガタリがリビングに着くとマルカの向かいにチヒロが座っていた。
目が合うとチヒロが「どうも」っと軽く会釈し、つられてガタリもする。
それを見てマルカが話を切り出す。
「どこに行ってたの?」
「あー、アルゴに用があってさ・・・そうだ、チヒロ?」
「はい?どうしたんですか?」
チヒロが首を少し傾け問う。
「今日って他に予定あるか?」
「いえ、特にないですけど」
「ならよかった、この後付き合ってくれないか?」
「え!?」
ガタリの発言に顔が赤くなるチヒロ、ガタリはそれを否定の表情と取ってしまうが、諦めずに聞く。
「駄目か・・・?」
「い、いえ、そんなことないです」
「ホントか?ありがとうこれでメンバーが揃ったよ」
その言葉にチヒロが違和感を感じてしまう。
「え?揃ったですか?」
「ああ、今からクエストに行こうと思ってたんだけどあと一人女の子が必要だったからさ」
「ああ、そうですか・・・」
落胆するチヒロにガタリは首をかしげる。それを見ていたマルカがガタリに「あんたねぇ」とガタリを非難する。
訳が分からないとガタリは余計に困惑し、とりあえずとチヒロに頭を下げて謝る。
「気にしなくいいですから」
「ああ、わかった」
しばらく雑談をしているとタクトが帰ってきた。
「おう、戻ったぜ」
「やっと来たか」
「悪いな、途中でユウマに会ってよ、ここまで連れてきた」
タクトが言い終わると同時にユウマがタクトの後ろから顔を出す。
「どうも、お邪魔します」
「ようこそ、ユウマ君」
「こんにちは、ユウマ君」
「あ、マルカちゃんとチヒロちゃん、こんにちはです」
ユウマたちが挨拶しそれぞれが椅子に座るとガタリが先ほどアルゴに聞いたクエストについて話す。
「ってことなんだ、このまま行こうと思ってるんだけどいいか?」
「いいんじゃない?」
「ああ、俺も勿論大丈夫だぜ」
「私もいけます」
「僕もいいよ」
「みんなありがとな、じゃあ女神の試練目指して行くか!」
☆
「おっ?これが女神の試練の入り口か?」
森を抜けた先にあった洞窟の入り口を見てガタリが呟く。
クエストを受注した彼らはサクサクと43層の森林地帯を進んだ。
この洞窟はクエストを受注した時にしか発生しないのでかなり解り易い。
「へぇ、こりゃまた綺麗に開いてるんだな」
「ほんとだね、以前ここに来たときこんな穴、開いてなかったのに」
ユウマが疑問を口にするがすぐにマルカが疑問に応じる。
「て言っても前までここにでっかい岩が置いてあっただけなんだけどね、まぁ誰かさんは必死に退かそうとしてたけどね」
マルカがじっとガタリを見つめるがガタリはそれを聞いていないかのように無視をし、話題を変える。
「あーそんな事より早く入ろうぜ」
「ちょっ、待ちなさいよ!」
様子のおかしいガタリをマルカ以外が怪訝に思いながらもその背を追うように洞窟へと踏み入る。
「あっ結構明るいんですね」
その洞窟は普段の洞窟のダンジョンよりも明るくなっており、奥までよく見える。
そんないつもと違う様子を楽しんでいる一行のなかでタクトが不自然に洞窟の壁面に寄り壁を軽く叩きだす。
それを見ていたマルカと目が合い、ワタワタと言い訳をする。
「いや、別に隠し扉が合って宝箱とか財宝が無いかなと思って壁を叩いてるわけじゃないぞ?」
「言いながらも壁を叩いてたら説得力無いわよ?」
「あ、えっとこれはそう!罠が無いかって確認であって――って、うぉ!?」
突然、タクトの叩いていた壁がへこみ、上からタライが落ちてきた。
「ッ痛ぇ~、何だってんだよ?」
「ホントに罠があったな」
「これに懲りたら普通に歩きなさい」
「・・・はぃ」
タクトは大人しく探索をやめ、みんなの後ろを歩くようにした。
それを見てガタリとマルカが苦笑する中、前を歩くチヒロが辺りを見渡し不思議そうにする。
「それにしてもここ他の洞窟に比べて異様に明るいですね」
「そうだよね、僕、暗視スキルは取ってないから助かったよ、お蔭で奥までよく見える・・ってあれ?」
ユウマが歩くのを止め奥の方を指さす。その先には金属製の壁があった。
「何なんだこれ?」
先ほどの事で少し慎重に壁に触れるタクト。
何も仕掛けが無いとわかると軽く小突いたりとする。壁はかなり分厚く硬い。
ガタリ、ユウマ、チヒロ、タクトが壁を眺める中、マルカが少しみんなから離れ、何かを見つける。
「ここだけ、壁と材質が違う感じがするわよ」
みんながマルカの声で集まり、何かと確認するとそれは黒い六角形の紋様があった。
「ちょっとタクト、ここに手を置きなさいよ」
それに対しタクトはうへぇとした表情をする。
「嫌だぜ?さっきみたいなのはよぉ、ガタリがやってくれ」
「俺か?まぁいいけどさ」
ガタリは仕方なしと黒い六角形に手をかざす。と、その直後。
「うぉ!?」
――その六角形の頂点がそれぞれ光出し、線をなぞるようにして目の前の壁も幾何学模様を浮かばせながら光る。
それが壁全体を網羅すると少し明滅し、スゥっと消えた。
壁が消えた奥には少し広めの部屋があり先ほどの黒い機械が二つあった。
「・・・・へぇ~。」
ガタリが感心の声を漏らし、全員が奥の部屋に入る。
黒い機械の前に着くとマルカがみんなに声をかける。
「さて・・・こっからは何があるかわからないからみんな気を抜かないでね」
全員が頷き、再び黒い機械に目を落とすと突如光り出した。
『――――ようこそ、女神の試練<決断の洞窟>へ、召喚者たちよ』
「「!?」」
突如場に響き渡る、どこか無機質な女性の声。
声はさらに続く。
『私はここ<決断の洞窟>を含めた四箇所すべての試練を管理する者。以降、もし必要あらば「アウル」とお呼び下さい召喚者たちよ』
「え?ショーカンシャ?ってなに?」
ユウマが急の事で戸惑うもチヒロがすぐにフォローを入れる。
「召喚する者で召喚者ですよ、ユウマ君」
「ありがとう、チヒロちゃん」
それを聞いていたタクトが疑問を口にする。
「召喚するって言っても俺達そんな事した覚えがないぜ?」
「確かにそうだよな?」
「きっと、召喚されし者で召喚者じゃないかしら、一応私たち現実から仮想世界に来た訳だし?」
「それだと、納得できますね」
全員がとりあえずマルカの説明を受け入れ、また黒い機械に向き直るとタイミングを見計らったように再び声・・・アウルが解説をつづける。
『ここから先の扉は、全て二択に回答することで開かれます。提示された二択のうち、最初に読み上げられた選択肢を取る場合は、左。後者の選択肢を取る場合は右の認証装置に先ほど装置に手をかざした召喚者が手をかざしてください』
「え~ならそれに正解したら次に進めるってことか?」
『いえ、この試練に<正解><不正解>という概念はございません。心の赴くままに自由に選択して頂ければ、それだけで道は開きます』
「なんだそれ、楽勝じゃねえか」
タクトが気の抜けた様子で呟く。
他もこれならただのアンケートだと思い、試練と言われて入っていた気を抜かれる。
しかしアウルは『ただし』と付け加える。
『選択の制限時間は三十秒。それを超過した場合のみ、試練失敗と見なされます』
「確かにこれはその名の通り決断能力が試される洞窟というわけね」
マルカが少し楽し気な表情で言い、全員が頷く。さらにアウルの声は続く。
『ちなみに、試練を失敗された際は、罰として―――』
その言葉に、ここにいる全員がごくりと唾を飲み込む。
女神の試練と言われるほどだ、全員が失敗=死を連想し、緊張で冷や汗をかく。
その中でもアウルは淡々と、罰則を告げてくる。
『―――アレをアレな器具でアレされます』
「「ペナルティがアバウト過ぎて逆に怖い!!」」
機械的で無感情な音声とのギャップもあり、かなりの恐怖に襲われる。
何をされるかわかったものでない、ガタリ達のそんなリアクションに構わず、アウルは淡々と状況を進めていく。
『では、第一問』
「「!?」」
唐突に始まった問題に、全員が慌てて耳を澄ます。
『まず通路選択です。この洞窟を進むにあたり、次の二つの道―――』
問題の序盤を聞き、とりあえずは大した決断を迫られないとホッと胸をなで下ろす彼ら。
これなら、迷ってタイムオーバーの危険もないだろうと気を緩める中―――アウルはその選択を告げる。
『ちょっぴり太る通路と、うっすらハゲる通路どちらを通りますか?』
「「選びがたあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあああああああああああああい!?」」
全員の絶叫が響く。
「こんなの今までの人生でも最高難易度の選択だぜ・・・」
タクトが本気で迷いながらつぶやく。
それもお構いなしと音声による秒数カウントが始まる。
「く・・・!なんて残酷なんだよ、確かにこりゃ、今までクリアした奴がいない訳だ」
「ガタリ!?それ初耳なんだけど?」
「マルカちゃん、それよりも早く決めないと時間が来ちゃいますよ」
「そうだよ・・・・僕は太る方かな、ハゲるのはちょっと嫌だし・・・」
「・・・私はまだ髪には余裕があるので太るのは嫌です・・・」
ワイワイ言いながらも2人が意見を表明し、ガタリがタクトを見つめる。
「この世界じゃあ体型は変えられないからな、それならまだハゲるほうがマシか・・・」
そう言ってマルカに視線を移す。マルカはお腹と頭に手を当て悩む。
「う~~、私も毛量は多い方だから・・・それに太るの嫌だし・・・」
これで三対一。決まった訳だがそれでも全員の視線は自然とガタリに向かう。
「まぁ俺はどっちでもいいんだけど・・・」
「ふざけないで!」
「ふざけないで下さい!」
「うぇえ!?そんなに怒るなよ、わかったから多数決でハゲる方でいいな」
一応全員の意思を再確認しガタリが右の装置に手をかざす。
タイミング的には制限時間ギリギリだが間に合い目の前の壁が光り消える。
先に続く道が出来る、道はやたら白く目が開けるのが苦ではないくらいに輝いている。
ユウマが少し頭を押さえだし、他もそれに続いて頭を触る。
「「・・・・・・」」
全員がごくりと息を呑み込むと、覚悟を決め、とぼとぼとその道を歩き始めた
歩くこと五分ほどで次の部屋に着き、全員が髪の毛を触る。
「確かに髪の量が減ったような、そうでもないような・・・」
「これならまだ露骨に減った方がギャグ的には救いがあったんだけどよ・・・」
ガタリとタクトが二人で文句を垂れながら次の装置の前に向かいだす。
読んで頂きありがとうございます。
今回はラノベのぼくのゆうしゃの話を混ぜてみました。
つい先日完結したのですが興味が出た方は是非読んでみてください。
ではまた次回。