ソードアート・オンライン 十人の物語   作:蹴急

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魂の支配人

女神の試練クリア後家に帰宅するなり、マルカは急いで二人の人物にメッセージを送る。

その人物は一人は情報屋のアルゴ、女神の試練クリアの報告と50層のボスについての情報を打つ。

もう一人は血盟騎士団副団長のアスナ、内容はほぼアルゴと同じでそれに加え、明日にもう一度攻略会議を開くよう頼む。

それを5分ほどで打ち終え、リビングに戻る。

 

「ごめん、待った?」

「いや、大丈夫だ、それよりボスのことを聞かせてくれ」

 

マルカは手を合わせガタリ、タクト、チヒロ、ユウマに謝る。

それにガタリが応え、チヒロが椅子に座るように促す。

机においてある飲み物を軽く口に含むと再度みんなを見て話を切り出す。

 

「今から話すのは全部アウルからの情報よ、ボスの名前は<魂の支配人(ゼーレ・ディレクタール)>」

「支配人?人型ってことか?」

「容姿までは聞かされてないわ、とりあえず厄介なのがボスの特殊能力よ」

 

特殊能力と聞かされみんなが息をのむ、マルカは落ち着いた口調のまま言葉を続ける。

 

「敵の特殊攻撃を受けると一定時間受けた本人による回復行動が出来なくなるらしいわ。」

「回復行動の制限?それじゃあそれをうけたら解けるまで前線で戦うなんて無理だぜ?」

 

ガタリがマルカに問いかけるがそれを言われるのがわかっていたのかマルカはすぐにこたえる。

 

「本人による回復行動が出来ないだけで回復が出来ない訳じゃないのよ」

「どういうことだ?」

 

理解できないガタリに横からチヒロがマルカに確認も兼ねて自分の答えを述べる。

 

「本人による回復行動ということは他人による回復行為は出来るということですよね?例えば回復クリスタルで回復させたりとか・・・・」

「そういうことね、他には回復効果付きの投剣とか広域スキルによる回復ってとこかしら」

 

ガタリは二人の説明にやや混乱気味になりながらも何とか理解する。

タクトとユウマも頷き理解したことを告げる。

 

「けど自分で回復出来ないってかなりまずくないか?」

「ええ、けど回復できない訳じゃないから対策は取れるはずよ、そのためにアルゴとアスナに連絡したわけだし」

 

そこでタクトがあのさと言って割り込む。

 

「次のボスって50層だろ、その程度だとは到底思えないんだが」

「私も特殊攻撃以外にはこれといった情報をもらえてないの、何が武器なのか、どの攻撃が特殊攻撃なのかもね」

「まだ情報が足りないな」

「でも、偵察部隊が行ってるんだよね?」

 

ユウマが目の前のお菓子に手をつけながらマルカに聞く。

マルカも答える前にお菓子を手に取る。

 

「ええ、アスナがそう言っていたけど、どこまで敵の情報を得られるかどうか・・・・・・」

 

これ以上は討論のしようがないと判断し、今日はここでチヒロとユウマと別れることとなった。

その夜、マルカのもとにアスナから偵察部隊が半分壊滅したことを知らせるメッセージが届く。

 

 

 

翌日、49層の転移門前の集会所で第二回50層ボス攻略会議が開始された。

そこにはガタリ、タクト、マルカ、ユウマ、チヒロはもちろん、アスナの他に何人かの血盟騎士団の一員、聖竜連合、風林火山といったギルドに加えギルドに所属していない、プレイヤーの顔も見受けられる。

アスナを進行役として会議が始まる。

まず始めに、昨日行われた偵察部隊の成果を伝えるが、偵察部隊の約半数が死んだという事実にこの場の全員が、詳しくは前もって知らされたガタリ達以外が信じられないといった表情をする。

ガタリ達の近くに来たワールンがガタリに確認し驚愕する。

 

「嘘だろ・・・・・・・」

 

半壊という事実によって騒がしくなった場が静まったところでアスナが張りのある声で告げる。

 

「みなさん、今回のボス戦はいつも以上に厳しく、過酷なものとなると思います。ですがいずれ渡らなければならない道です、ですので今回は覚悟がある人だけ残っていただいて構いません。」

 

アスナの言葉に数十名がこの場

から離れていく。

残った人数は42人、フルレイドとはいかないが仕方ないだろう。

アスナは残ってくれたプレイヤーに感謝の言葉を述べ会議を再開させた。

 

「今回の会議ですがマルカさんがボスの情報を手に入れたということになのでマルカさんに話してもらいます」

 

呼ばれたマルカは椅子から立ち、アスナのいる前へと向かう。

前に着き、プレイヤーの顔を一通り見渡すと、軽く息を吐き話し始める。

そして昨夜、ガタリ達に話した内容をもう一度みんなの前で話す。

アスナの偵察部隊からの説明も交えながら説明し、ボスの対抗策へと議題は移った。

そして今回で1番大切な回復については広域スキルがカンストしているマルカとチヒロが後衛で支援するということに決まった。

 

会議が終わり、プレイヤーがこの場から離れていく。

帰っていく中、カマクがマルカの下に行き声をかける。

 

「マルカ、頼みがあるんだがいいか?」

「カマク?いいわよ、ボス戦のこと?」

「ああ、念のためでいいんだがボス戦中なるべく投剣での回復は抑えていてほしい」

「ん?どうして?」

 

下から見上げるようにカマクの顔を伺う。

それに対しカマクは真剣な眼差しでかえす。

 

「一人ずつ回復するのが手間ってのもあるが、俺の考えが的中したら必ず必要になるからだ」

 

カマクの表情に重大さを感じたマルカはカマクの目を見て返事をする。

 

「よくわからないけど、あなたが言うならいいわ、回復はクリスタルとポーションでしてみる」

「悪いな、助かる」

 

軽く頭を下げ、カマクはワールンと共にこの場から離れる。

カマクと話していたのを見ていたガタリがマルカに声をかける。

 

「どうしたんだ?」

「ボス戦で投剣での回復を控えてくれって」

「どういうことだ?」

「私にもよくわからないわ、でもカマクのことだから何か考えがあるんでしょうね」

「確かに、あいつは攻略組の中で一番頭のキレるやつだからな」

 

ガタリとマルカもみんなの後を追うように外にでる。

すると目の前に珍しい組み合わせの二人が見え、ガタリが声をかける。

 

「ナオキとカヤじゃないか」

「ガタリ君、マルカさん、久しぶりですね」

「といってもクリスマスいらいだけどな、にしてもナオキとカヤの組み合わせは珍しいな」

「少しカヤ君に用事がありまして、先ほど終わったところです」

「そっか、じゃあ二人ともボス戦で」

「またね」

「はい」

「ああ」

 

二人を後にし、ガタリとマルカは帰路についた。

 

 

 

50層フロアボス攻略当日、50層の転移門広場にて攻略組が集まった。

アスナが全員来ていることを確認すると、ユウマが先日、ボス部屋前に回廊結晶を設置したことをいい回廊結晶を取り出す。

 

「ユウマくん、お願い」

「わかったよ、コリドーオープン!」

 

元気溢れる声で回廊結晶を使うと目の前にワープポイントが出現する。

それを見た攻略組から賛美の声があがる。

それもそのはず、回廊結晶など50層にたどり着いたといってもとても希少なもの、それをユウマは躊躇いなく使ったのだから。

そしてユウマが先頭となってワープポイントへと順番に入っていく。

ガタリが最後に入ったとこでワープポイントが閉じる。

先に入っていたものは最終確認を行っており、ガタリも確認を始める。

少し経ったとこでアスナが張りのある声で告げる。

 

「みなさん、準備はいいですか?中に入れば基本は先日話した通りの作戦でお願いします」

 

全員が頷き、先陣を任されているワールンとナオキがボス部屋の重々しい扉に手をつき同時に開けた。

ワールンとナオキが覗き部屋をみる。

部屋はドーム3つは入るのではないかという広さでまだ灯りがついていないため確かな大きさはわからない。

ワールンとナオキを先頭にプレイヤー全員が扉をくぐったところで部屋が照らされ、奥にいるボスの姿が見えてきた。

高さはおよそ10メートル、全身が闇の如き黒さを纏いそれと対極するかのように縁は金色に輝いている例えるならば暗黒騎士といったところであろうか。

だが手や腰、背中に武器のようなものは見当たらない。けれどこの場にいるプレイヤー全員が思った。

迂闊に飛び込めば確実に殺られると。それほどのプレッシャーを目の前のボスは立っているだけで感じさせる。

<ゼーレ・ディレクタール>が背中の青いマントを翻すとHPバーが現れる。それを確認するとこの中で一、二を争うスピードを持つナオキが飛び出した。それに呼応するかのようにワールン、キリト、タクト、ガタリと追随する。

 

「・・・・ハッ!!」

 

ナオキが先手必勝とばかりに体術下位スキルの<三散華>を繰り出しファーストアタックを取る。

ナオキの攻撃が終わると後ろから追いかけていたワールン達も攻撃しようとモーションを準備する。

それを見てディレクタールがはじめて動いた。

真っ直ぐ走りだし、ワールン達のまえに約2秒でたどり着く。

咄嗟のことに全員が唖然とするがディレクタールは目の前のワールンに右手で殴りにかかる。

 

「・・・・くっ!!」

 

何とか大剣で直撃を免れるが後ろにいたマルカ達の付近まで押し戻された。

ディレクタールはたった一撃でワールンのHPを約四割削った。

その光景に全員が己の目を疑った、いくら50層のボスといえど直撃でないワールンのHPの四割を削ったのだ。

もし直撃を食らえば一瞬で自分のHPバーは赤く染まり、二撃目をもし受ければ防いだところで意味は無く、死に至るであろう事実に全員が恐怖を覚える。

そんな恐怖の渦巻く中、鋭い声が部屋に響く。

 

「臆するな!奴を取り囲め!!」

 

声の主は血盟騎士団団長にして現在のプレイヤーで唯一ユニークスキル保持者のヒースクリフだ。

彼の言葉に全員が我に返り、事前の作戦通りに敵を囲み動きを封じる。

事前情報によりボスのスピードを抑えることが優先された。

ディレクタールの移動速度は普段のボスの移動速度を大幅に超えており、それが縦横無尽に動き回られては攻撃のしようがなくなってしまう。

さらに特殊能力を警戒して前衛、後衛と分けたのにボスに動き回られてはそれすら意味を無くす。

故にすぐにディレクタールを囲うことに成功したのは幸運と言ってもいいだろう。

三方向にそれぞれつき、1方向に八人が組み敵の行く手を阻む。

正面を支えるA隊にはヒースクリフとカマクが指揮し右手後方にいるB隊はユウマとワカナを筆頭として、C隊はディレクタールの左手後方に位置取りアスナが指揮を執っている、カヤもここに配属されている。

A、B、C、隊が前衛で後衛はAとBの後ろにマルカを中心としたD隊がAとCの後方にチヒロが率いるE隊がいる。

先ほど一番に飛び出したナオキ達が遊撃隊として攻撃重視で組まれている。

A隊には壁役が多くボスの正面を陣取っているにもかかわらず、とても安定してこなしている。A隊は何といってもヒースクリフの貢献がでかいであろう。

本来なら三人で受けきる限界の攻撃を一人で受けきっているのだ、彼のおかげでA隊は余裕を持っている。

C隊もこれといった事もなくアスナの指示が飛び交いこちらも安定している。

だがB隊は特別な能力を持ったプレイヤーがいるわけでも指揮官がいるわけでもなかったのでかなり不味かった。

それでも今の状況を保てているのはワカナのピカチュウによる援護が何よりだろう。ピカチュウの電撃による攻撃がボスの行動遅延を招き、辛うじてB隊の行動が間に合っているのだ。

こうして各隊の奮闘により遊撃隊もこれまた自由に攻撃しまくりボスのHPを削っていく。

だがちょうどディレクタールのHPバーの一本目を削ったとこでボスに変化が現れた。

その変化にいち早く気がついたのは後衛で支援に徹していたマルカだった。

 

「気をつけて!何かくるわよ!!」

 

その声に普段から付き合いのあるガタリ達はすぐにディレクタールから距離を取った。

それを見て他のプレイヤーも距離を取り始めるがC隊はマルカから距離があったのか反応が遅れ、二人ほど出遅れる。

それが致命的だった。

ディレクタールの左手に光の粒子が発生し、収束するとそれは斧槍へと変わっていく。

刃は先端が別れておりギロチンを思わせる。だが柄は1つのため挟むことはない。

ディレクタールは斧槍を掴むと後ろに振り抜き出遅れた二人を薙ぎ払った。

体が二分され、二人とも八割近くあったHPバーは一瞬にして黄色から赤になり――――。

 

「なっ・・・・・?」

 

そして、ゼロになった。二分された体は無数の結晶に変わり散らばった。

目の前で見ていたカヤが目を見開く。

 

「・・・そんな・・・無茶苦茶よ」

 

横にいたアスナが歯をくいしばしり、呟く。

新たに斧槍を手にしたディレクタールは何も無い右手を握るとそこから黒い靄が現れる。

それを見て、ガタリとワールンは直感で例の特殊能力だと気づいた。

 

「「みんな、退がれ!!」」

 

二人の声を聞き、理解する前にディレクタールはそれを正面のA隊へと放つ。

咄嗟のことでヒースクリフ、カマクも含めたA隊は盾を構えるが黒い靄は盾にぶつかると四散しA隊の全員にまとわりついた。

すぐに逃れようとするが靄は張り付いたまま離れない。

 

「チッ!マルカ、回復は任せた!この間言った通り投剣は使うなよ!」

「わかったわ!無茶はしないでよ」

 

カマクが叫ぶとマルカはすぐにA隊の近くへと向かう。

ディレクタールは斧槍を華麗に操りプレイヤーに攻撃する隙を与えない。

誰もがジレンマを感じる中、キリトとタクトがほぼ同時にディレクタールの斧槍へと攻撃を仕掛ける。

二人の剣が水色と青色に輝くと先にキリトが前に出た。

 

「うおおぉぉぉ!!」

 

片手剣上位スキル高速四連撃<バーチカル・スクエア>をディレクタールの斧槍に当てる。

当たるたびに2つの間に火花が散り、甲高い金属音が鳴り響く。

最後の一撃でキリトはディレクタールの体制を崩すことに成功した。

ちょうど当たる直前にタクトがキリトの脇を抜け出た。

 

「ハアァァ!」

 

気勢を剣に乗せディレクタール自身に攻撃を繰り出す。

片手剣三連重攻撃<サベージ・フルクラム>により攻撃がボスにヒットするたびにディレクタールは仰け反りを繰り返す。

だがタクトのソードスキルが終わった直後、ディレクタールが右の拳を技後硬直で動かないタクトへと振り下ろす。

タクトは反射的に目を閉じ、身構えるがいつまでたっても攻撃が来ないことに片目を開けて確認する。

すると前に金色の髪をなびかせて左手に持つ盾でディレクタールの拳を抑えているカマクがいた。

 

「やらせるかヨォ!!」

 

盾で敵を押し返し、右手に持つランスを軽く引く。

ランスがオレンジの光芒を放ち、ディレクタールの右手へと一直線に向かう。

 

「吹き飛べやぁあっ!」

 

ランス重単発攻撃<ガングニール>。

カマクの荒々しい雄叫びと共にランスによる大威力の突きが決まる。

その一撃でディレクタールの2本目のHPバーが大きく減った。

攻撃の隙ができたことによりそれぞれの隊も攻撃を仕掛けに出る。

A隊が回復行動の制限によりどうなることかと思われたがマルカの支援が遅れることもなく再び安定した戦いが続く。

2本目のHPバーも削り切ったとこで再び戦況が動き出す。

今まで取り囲んでいたディレクタールが大きくジャンプしてプレイヤーの包囲から抜け出した。

C隊とE隊の間に着地したディレクタールがE隊に斧槍で攻撃を仕掛ける。

必死に猛攻に耐えるチヒロや他のプレイヤーだが壁役ばかりのA隊でやっと耐えることのできるディレクタールの攻撃を壁役が全くいないE隊では耐えるどころか一瞬で陣形を崩される。

他の隊が応援に向かおうとするもディレクタールの右手の黒い靄による牽制により阻まれる。

チヒロがその身軽な動きで ディレクタールを翻弄するも一人、二人と結晶に変わっていく。

変わっていくプレイヤーを見てチヒロの中でやるせない思いが募る。

ここで止めなければ被害は増え続ける一方だ。

これ以上はやらせないとチヒロは斧槍を地に叩きつける瞬間見計らってディレクタールの腕を駆ける。

肩まで来たとこで右足に力を入れディレクタールの頭上まで飛び上がる。

 

「やあッ!!」

 

短い気合と共に棍棒を振る、片手棍五連撃<スタッフ・レイン>黄色の流星がディレクタールに降り注ぐ。

それにより、ディレクタールの動きが鈍る。その隙に遊撃隊のガタリ達が着き体制を整えることに成功する。

けれどこの間に回復行動の制限をかけられたのが約半数近くに及んだ。

 

「アスナ!どのくらい特殊能力にやれているんだ?」

 

たまたまアスナの近くになったワールンが問う。

 

「見た所、半分がかかっているわ、まだチヒロとマルカの回復が間に合っているからいけてるけど・・・」

 

広域スキルがカンストしている二人のおかげで直撃さえ受けなければ回復できている。

 

「けれどそろそろ二人とも回復アイテムが底に着くんじゃないか?」

「ええ、だから今マルカと共通ストレージを持っているガタリとタクトに回復アイテムを集めるよう頼んでいるわ」

 

それを聞きワールンがガタリとタクトを見ると攻撃しながらも余裕が出来れば、制限のかかったプレイヤーからポーションやクリスタルを受け取っている姿が写る。

けれどマルカだけがアイテムの補充ができてもチヒロもいなければ回復が間に合わないのではという考えに至る。

その考えを見抜いたのか回復しに下がってきたカヤが口にする。

 

「チヒロの方はワカナがやっている。こんなところで油を売っているなら早く貴様も攻撃に参加しろ」

 

いつもの冷淡な口調で告げワールンを見やる。

それを聞かされバツが悪そうな顔をするがすぐに真剣な表情に戻り、両手剣を握る。

 

「悪かったな。直ぐに戻るさ、僕もやるときはやるんだよ」

 

それだけ囁くとディレクタールの下に向かった。

ガタリとタクトは攻撃をしながらアイテムの補充を行っている息もあっておりかなり頼もしい。

 

「タクト!スイッチ!」

「ああ、任せろ!」

 

ワカナはピカチュウに攻撃は任せ、ひたすらアイテムの補充のために駆け回っている。

 

「ピカチュウ!電撃お願い!」

「ピッカ!」

 

三人と一匹の働きにより戦闘が安定してくるかと思われたがそれよりもディレクタールの攻撃が圧倒的だった。

少しづつだが回復制限をかけられるプレイヤーが着実に増えていきマルカとチヒロの広域スキルだけでは追いつかなくなってきた。

今では遊撃部隊とワカナ、アスナ、マルカ、チヒロだけがかかっていない。

特にA隊は特殊能力が解けてもすぐにかけられ常にマルカかチヒロが近くに居なくてはならない。

アスナやナオキらがクリスタルでヒールをしたりもしているが自分の回復も行わなくてはならないのでどうしても間に合わない。

それでもようやくディレクタールのHPを最後の一本へと持ち込んだ。

 

「全員気を引き締めろ!何が来るかわからないぞ!」

 

カマクの声が響き渡る。

その言葉にこの場のプレイヤー全員がどんな攻撃を仕掛けてくるのかと身構える。

ディレクタールは斧槍を地面に突き刺すと両手を広げた。

すると、両手に黒い靄が集まる、それは先ほどまでの黒い靄よりも黒く濁っている。

それをまたもガタリは直感で危険だと悟る。

喉からかすれた音が漏れるがそれを呑み込み、出せる限りの声で叫ぶ。

 

「ッ・・・・・・全員そいつから離れろ!マルカ!チヒロ!お前らは絶対に―――」

 

食らってはいけないと言う直前に<ゼーレ・ディレクタール>は両手の黒い靄を部屋全体に解き放った。

それは瞬く間にプレイヤー全員を抜け纏わりつく。

それを見て全員が理解し絶望をするまでにどれだけの時間も必要なかった。

 

「・・・・・・最悪だ」

 

ガタリは絶望を口にした。

ここにいるプレイヤー全員が回復手段を閉ざされた瞬間だった。

 




読んで頂きありがとうございます。

今回は五十層ボス攻略戦となります。
ガタリ達はこの危機をどう潜り抜けるのか?

ではまた次回。
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