ソードアート・オンライン 十人の物語   作:蹴急

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渋くて薄くて金色の果実

朝方、メユからのメッセージで呼び出した人物は己を象徴する盾を持たずして現れた。

 

「よぉ、ヒースクリフ。悪いな、あんたも忙しいとは思ったんだけどよ」

「いや、構わないさ。団員以外とも交流するのは団長の務めでもあるだろう」

 

ヒースクリフを呼んだ場所は本日も休業しているメユ防具店だった。

 

「にしてもあんたとメユに交流があったとは知らなかったぜ」

「なに、私の盾はいつも同じように加工しなくてはならなくてね、彼女の鍛冶屋としの能力は私も買っているんだよ」

「そうですよ、このおじ様。月一くらいで新しい盾を持って来ては同じデザインに変えてくれって頼んでくるですよね」

 

立ち話もなんだしとカマクが座るよう促しヒースクリフと机を挟んで対面するようにカマクとメユも座る。

 

「それで要件とはなんだね?私も団長を務めているのでこれでも時間に余裕はそう無いんだ」

「なら本題にいくが、あんたももう知ってるとは思うけど先日起きた圏内事件についてあんたからの話を聞きたくてな」

 

カマクからの話にヒースクリフは険しい表情へと変わる。

 

「確かに報告があったよ、その前にカマク君、<棋士>たる君の推測から聞かせて貰おうか」

 

両手を前で組みカマクに話を振る。カマクは背に持たれて推測を語る。

 

「そうだな、最初はデュエルだと単純に考えていたが、何処にもウィナー表示が出ていなかった」

「そうですよね、広場にいるみんなが探した中で見つからなかったからそれは無さそうです・・・そういえばウィナー表示の出る位置ってどういう決まりなんですかね?」

 

首を傾げカマクを見るがよく知らないのかヒースクリフに視線を促す。迷う事なくヒースクリフが答えた。

 

「決闘者二人の中間位置。あるいは、決着時二人の距離が十メートル以上離れている場合は、双方の至近に二枚のウインドウが表示される」

「随分詳しいじゃねえか。となると、カインズから最も遠くて五メートル弱の位置にいたって事になるが・・・」

 

目の前にあったコーヒーをズズッと口に含む。

 

「・・・教会には誰も居なかったし、この推測は無しだ。他に思い当たるのは既知の手段の組み合わせによるシステム上の抜け道か、圏内・・・アンチクリミナルコードを無効化する未知のスキル、もしくはアイテムが存在するってとこだが?」

「最後の可能性は除外してよい」

 

即座に言い捨てるヒースクリフにカマクとメユが思わず凝視する。

 

「やけに断言しますね」

「想像したまえ。もし君らがこのゲームの開発者なら、そのようなスキルなり武器を設定するかね?」

「しないな」

 

次はカマクが即座に言い切った。

 

「何故そう思う?」

 

真鍮色の双眼にカマクは僅かな微笑で返す。

 

「そりゃあ、フェアじゃねえからな。認めたくねぇがこのSAOのルールは基本的に公平だ。一つの例外を除いてな」

「例外・・・ですか?」

「こいつの持つユニークスキル、神聖剣だけは公正さとか無いからな」

「ああ、成る程」

 

メユは納得するなりまじまじとヒースクリフを見つめ、探偵気分になってきたのか手を顎に持っていく。

 

「なら残ったのはシステム上の抜け道ですか・・あの槍に何か違和感を感じたんですよね」

「違和感かね?」

「何ていうかあれは見せしめの為だけじゃなかった気がします。圏内殺人をするにはどうしても槍・・・貫通継続ダメージが必要だっんじゃ無いかなって思うんですよ」

「ほぅ、メユでも気付いていたんだな」

 

カマクの言葉にメユは拗ねた様子を見せる。

 

「なっ、酷いですよ!そりゃあカマクにしたら頭の悪い奴かもですけど」

「すまんすまん、確かにそれについて聞こうと思ってあんたを呼んだんだしな」

 

メユを宥めてヒースクリフに問う。

 

「継続ダメージってのは圏内に入ればHPの減少は止まるのか?」

「勿論だ」

「他には回廊結晶で圏外から来たりしてもか?」

 

またも、ヒースクリフは鋭く言い切る。

 

「止まるとも、徒歩だろうと、テレポートだろうと、あるいは誰かに放り投げられようと圏内・・・つまり街の中に入った時点でコードは例外なく適用される」

「待ってください。街の中っていうのは地面や建物の内部だけですか?空からとかならどうなんです?」

 

メユの質問にヒースクリフも戸惑うがすぐにいつもの毅然とした面に戻った。

 

「いや、厳密に言えば圏内は街区の境界線はら垂直に伸びた、空の蓋、つまり次層の底まで続く円柱状の空間だ。その三次元座標に移動した瞬間コードはそのものを保護する」

「へぇーっ」

 

カマクとメユが同時に嘆声を漏らす。

ギルドマスターとなるとここまで勉強しているのかと素直に感心したのだ。

 

「な、なら凄い威力の攻撃を喰らったらどうです?HPは右端からスライドして減っていくから・・・」

「無理だな」

 

口を挟んだのはカマクだ。

 

「あいつを殺した凶器は槍だ。貫通武器を使う俺だから分かるってわけじゃないが、槍やランスの特性はリーチと装甲の貫通だ。大したことのないショートスピアであれほどの壁戦士を殺すなんて無理だ」

「む、いけると思ったんだけどなぁ」

 

メユはガックリと項垂れる。

 

「あんたは何か思いついたことがあるか?」

「ふむ、時間もあまり無いのでこれだけは言おう」

 

湯気が消え冷えたであろうコーヒーを飲み干し、コップを置く。

 

「現時点の材料だけで、何が起きたのか断定することはできない。だが、これだけはいえる。いいかね・・・この事件に関して絶対確実と言えるのは、君らがその眼で見、その耳で聞いた一次情報だけだ」

「どういう意味ですか?」

「つまり、アインクラッドに於いて直接見聞きするものはすべて、コードに置換可能なデジタルデータである、ということだよ。そこに幻覚幻聴の入り込む余地はない。逆に言えば、デジタルデータでないあらゆる情報には、常に幻や欺瞞である可能性が内包される。この殺人・・・圏内事件をおいかけるのならば、眼と耳、つまるところ己の脳がダイレクトに受け取ったデータだけを信じることだ」

 

では、カマク君、メユ君。今度此処を訪れる時は客としてだ。と最後に言い添えヒースクリフはこの場から去った。

 

「さっきの意味わかります?」

「ああ、伝聞の二次情報を鵜呑みにするなってことだ。いうなら今、キリト達がヨルコさんからの話を聞いてるのを簡単に信じるなってことだな」

「え?ヨルコさんを疑えって言うんですか!?」

「さぁな、それでも情報の裏付けとかは出来ればした方が良いかもしれん。仕方ないがあいつらにも手伝って貰うか」

 

そう言ってコーヒーを一気に飲み干した。

思っていたより苦く、ヒースクリフとの年季の差を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

キリト達と情報をまとめる為にとアルケードへと向かった。

キリトとアスナは先に来ていたのか転移門広場に着くとすぐに分かった。

 

「どんな話が聞けたんだ?」

 

着くなりカマクが話し掛ける。

ヨルコと会うとこは知っていたのですぐに情報を聞き出す。

 

「ここでは何だし昼飯がてらどこか店に入ってから話すよ」

 

そう言われアルケードの隘路を五分ほど歩かされた。

胡散臭そうな薄暗いNPCメシ屋に着くと店外を眺めてアスナが言った。

 

「・・・帰りもちゃんと案内してよね。わたしもう広場まで戻れないよ」

「ウワサじゃあこの街には、道に迷ったあげく転移結晶も持ってなくて、延々さまよってるプレイヤーが何十人も居るらしいよ」

 

キリトが薄く微笑みながら脅かすと、それに乗ってカマクも注釈を加える。

 

「道端のNPCに頼めば、10コルで案内してくれるらしいぞ。その金すら持ってなかったら・・・」

 

両の掌をひょいっと持ち上げ、先に店に入っていく。

 

「うう、そうやって脅かすのやめて下さい!」

 

カマクの後を追うようにメユとキリト、アスナも店に入る。

店には客がおらず、四人掛けの机にカマクとメユが隣に座り、対面にキリトとアスナが席についた。

キリトが陰気な店主にアルケードそばを四人前注文して曇ったコップに氷水をすする。

 

「なんだか・・・残念会みたくなってきたんだけど・・・」

「気のせい、気のせい。それより、午前中に集まった情報の擦り合わせだったよな」

 

切り出したキリトがヨルコから聞いた話をしていく。

合間にアスナも補足して話を進めていく。

カマクは勿論であったがメユはヒースクリフの助言から鵜呑みにしないようにと話を聞いていく。

 

「指輪事件か・・・、ヨルコさんに、カインズ、グリムロック、そして聖竜連合のシュミット。思ったよりきな臭せぇ」

 

カマクが眉間に皺を寄せ深く黙り込む。

 

「そっちは何かわかったの?確か、殺害方法を探る予定だったと思うんだけど?」

「えっと、私達だけじゃ厳しそうだったんでおじ様・・・じゃなくて、血盟騎士団の団長さんに色々聞いてみました」

「団長に!?」

 

メユの発言にアスナが飛びつく。キリトも意外だったのか目を見開いている。

 

「ええ、結局システムについて詳しく聞けましたけど、殺害方法がシステムの抜け道だろうって事くらいしかわからなかったですけど

ね」

「そっちはあんまり収穫無しってとこかー」

 

キリトの言葉についメユが食いかかろうとする前にキリトの隣にのそっと立つ人影が見えた。

 

「・・・・・・おまち」

 

注文したそばが四つテーブルに置かれ、それぞれがひとつずつ自分の下へと引き寄せ、割り箸をとった。

 

「・・・なんですか、これ?」

「・・・ラーメン・・・に、似た何かじゃないかな?」

 

怪訝な表情でメユとアスナがどんぶりとキリトを交互に見る。

カマクが躊躇う二人を見て先に料理に手を出す。

縮れたメンを引っ張り上げ、ズルズルと豪快に口に入れていく。

 

「・・・・・・」

「どうですか?」

「味はどうなの?」

 

二人の視線がカマクへと集中する。キリトは遅れてラーメンに似た何かを食べ始める。

 

「・・・これはラーメンじゃねえ、絶対違う」

「うん、俺もそう思う」

「お前らも食べてみろ。食べればわかる」

 

カマクに促されメユとアスナもどんぶりに手を付ける。

 

「うわ、味、薄っ!てか何ですかこれ!何かが完璧に抜け落ちてますよ!」

「確かに、これはラーメンとはいえないわね」

 

二人とも文句を言いつつも礼儀はあるのでちゃんと食べ切っていく。

キリトとカマクはスープまできっちり飲み干すと、席を立ち、店主に「ごっそさん」と声をかけノレンを潜った。

外を出るとキリトが先を歩き広場を目指す。

後ろを歩いていたアスナとメユから「醤油が無いんだわ」とか「スープも何から取ってるかわかったもんじゃないですよ」と話し声が聞こえるもキリトとカマクは特に突っ込まないようにする。

 

「そういえば、ヒースクリフが言ったんだが。二次情報を鵜呑みにするなだってよ」

「二次情報?」

 

キリトが首を傾げ、カマクが答えるより先にアスナがこたえた。

 

「黄金林檎の指輪事件のことでしょ」

 

アスナの言葉にキリトが唸り声を上げる。

 

「ヨルコさんを疑えってのか?そりゃあ証拠なんてないけど、さっき、アスナも裏付けの取りようが無いって諦めたじゃないか」

「そうだけど、この際、もう一人の関係者にも聞きに行きましょう」

「誰か、宛てがあるんですか?」

「昨日の夜に会った人よ」

 

それで理解したのかキリトがああ!と声を漏らす。

広場に着くと再び別れ、夜にまた会うこととなった。

 

 

 

 

 

 

キリト達と別れてから再び店が閉店中のメユ防具店へとカマクとメユは戻って来ていた。

 

「私たちは今からどうするんです?」

「正直、殺害方法は解らねぇからな、今からは足で情報を集める」

「うへぇ、ドラマに出る警察みたいなこと言い出しますね」

 

何か閃きでもあるのではないかと内心思っていたのでかなりガックリ来ている。

 

「で具体的にはどうするんです?足で集めるにしてもアインクラッド全部行く訳じゃ無いと思いますし」

「ああ、ある程度目星はつけておいた」

 

そう言ってウインドウを操作しメユにメッセージを送りつける。

送られてきた文を見ると幾らか項目のように今回の事件のポイントと集まった情報について纏められていた。

目を通すと、一緒にいるときには無かった情報が幾つか載っている事に気づいた。

 

「あれ?これって・・・」

「ああ、それは他の奴等に少しだけだが頼んでな。いくらか集めて貰った」

そこに書かれていたのはグリムロックのよく使う店や黄金林檎の詳しい情報が載っていた。

 

「他のメンバーの情報もあるが、直ぐに接触するのは厳しいな」

「ですね、このお店にとりあえず行ってみますか?」

「行ってどうする?俺たちはグリムロックの容姿なんて知らないんだぞ」

「はぅ・・・確かにそうですね、でもそれ以外出来そうにないと思うんですけど」

 

カマクがメッセージをスクロールしていき目を通すがそれほど有力な手掛かりは無いが、所々で引っかかるところがあった。

 

「指輪何だが・・・おかしくないか?」

「そうですか?確かにレアアイテムですし、ギルドで揉める事はあるかと思いますけど」

 

先ほどよりゆっくりとスクロールし、見ていく。

 

「指輪を奪ったのが内部の犯行なのはわかるがそのやり方に何か引っかかる・・・・・・他にもアイテムを奪うには指に装備するか、オブジェクト化していないと無理だろ?」

「言われてみれば確かに・・・ですけど眠っていたんならウインドウを操作してっていうのなら・・・」

「・・・まさかっ!?」

 

メユが送られたメッセージを消そうとした直前、カマクががたっと音を立てて立ち上がった、その直後机の上に置いていたコップが落ち結晶へと変わった。

それを見て目を見開く。

 

「これか!」

「どうしたんですか?」

「メユ・・・この事件思ったより厄介かもしれねぇ」

 

カマクの中で次々と嫌な予感が溢れていく。

しかし、考え付いた先は最悪のシナリオ。

声に出すか迷うが、それでも決定的な何かが足りないのかまだ口に出せない。

机に視線を落とし、これまでの話を思い出していく。

さらに、キリト達から伝えたれた情報を合わせていく。

 

「圏内での殺人、指輪、黄金林檎、リーダーのグリセルダ、睡眠PK、結婚相手のグリムロック・・・」

 

声に出す事で明確になったのか落ち着きを取り戻し、椅子へと座りメユに話す。

 

「半年前だと睡眠PKはそこまで広まっていなかったよな?」

 

突然の質問に驚くがどうだったかと考え口にする。

 

「そう・・・だったと思います。私が知ったのが四カ月程前なのでその辺りじゃまだ・・・それと今の事件に何か関係があるんですか?」

「直接って訳じゃ無いけどな・・・だけどこの圏内殺人のトリックは解けた」

「本当ですか!?」

 

とメユが身を乗り出したとこでカマクにメッセージが届いた。相手はキリトだ。

 

「なんてきたんですか?」

「・・・ヨルコさんが殺されたらしい」

「え?ヨルコさんも?」

 

驚愕の事に肩を落とすがカマクがそっと手を置く。

 

「大丈夫だ。俺の推測が正しければヨルコさんは生きてる」

「・・・え?でも」

「説明は後でする。多分直接見た方が信じられるだろうし。一応確認しておかないといけないからな」

「何処に行くんですか?」

 

そっとメユの手を取りカマクが扉へと向かい出す。

 

「第一層の生命の碑。そこで全部わかるはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一層に着き転移門から少し離れるとすぐに転移門が光り、そこからキリトとアスナが現れた。

 

「圏内殺人のトリックが分かったってのは本当か?」

「ああ、とりあえずついて来てくれ」

 

トリックの内容が早く気になるが口を挟まず、キリトとアスナ、メユは大人しく生命の碑まで付いて行った。

着くなりカマクは指を指す、その先にはヨルコの名前が横線を引かれる事なく生きている事が確認できた。

 

「そんな・・・本当に・・・」

「確かに俺たちの前で亡くなったはずだろ」

 

信じられない光景にキリトとアスナが驚き、その理由をメユがカマクにたずねる。

 

「どういう事ですか?」

「俺もさっき気づいんたんだが、圏内殺人だけどなあれは、殺人に似せかけた唯の破損エフェクトと転移だ」

「本当か!?」

 

そう説明し、一つの大きな鉄板を取り出し、手持ちのピックで貫いた。

 

「圏内でプレイヤーのHPは減らないが・・・こうやってアイテムの耐久値は減らす事が出来る」

「耐久値・・・そうか!」

 

キリトが答えに行き着き、声を出す。

カマクもそれにニヤリと笑い返す。

貫かれた鉄板からはプツプツと赤いポリゴンが浮かび上がり耐久値が減っている事を伝えてくる。

 

「それで耐久値が無くなったらこうやって・・・」

 

耐久値の無くなった鉄板がポリゴンとなり四散した。

 

「これで死亡エフェクトに限りなく近い破損エフェクトが起きる。カインズやヨルコさんはこのタイミングで転移結晶を使って消えたんだろう」

「じゃ、じゃあ・・・あの時砕けて飛び散ったのは、カインズさんの肉体じゃなくて・・・」

「ああ。あいつの着ていた鎧だ」

 

アスナとメユもそこで理解したのかアスナが別の疑問を出した。

 

「なら、ヨルコさんも同じトリックで消滅したって事よね?」

「そうなるな」

「で、でも。確かに彼女、やたらと厚着はしてたけど、スローイングダガーはいつ刺したの?圏内じゃコードに阻まれて体に触れる事すら出来ないはずだわ」

「刺さってたんだ、最初から」

 

今度はキリトが即答した。

 

「ほら、思い出しみろよ。俺とアスナ、シュミットが部屋に入ってから、彼女一度も俺たちに背中を見せなかっただろ?」

「そういえば、そうね。・・・てことはキリト君が追っかけた黒ローブは・・・」

「十中八九、グリムロックじゃない。カインズだ」

 

キリトが断定すると、アスナは視線を上げ嘆息した。

 

「そういえば、私たちゆうべわざわざここまで確認しに来たじゃない。カインズさんの名前には、確かに横線が刻まれてた。死亡時刻もぴったりで、死因も貫通属性攻撃だったわ」

「それなんだが、カインズの名前の表記は憶えるか?」

 

カマクが頬をかきながら言い、先ほど見ていたメッセージを開こうとする。

 

「えっと・・・確か、K、a、i、n、s、だったかな」

「そうですね、私とアスナはヨルコさんからそう聞いてますよ」

「そうだ。それを俺たちは頭から信じたわけだが・・・これを見てくれ」

 

カマクがメッセージを可視化モードにして他の3人に見せる。

それを見るなり三人とも「えーっ」と叫んだ。

 

「Caynz・・・!?これがカインズさんの本当の綴りなの!?」

「そのメッセージの間違えじゃないのか?」

「それに関しては俺がシュミットから確認もいれた。こんだけ違えばシュミットの覚え違いはないだろ」

「じゃあ、俺たちが確認したのは去年の死亡時刻だったわけか・・・」

「・・・?・・・どういう事?」

 

キリトの言葉に全く理解できないアスナが頭をかたむける。

 

「生命の碑の死亡表記はサクラの月22日、18時27分ってなってただろ。アインクラッドにサクラの月、つまり4月22日が来たのは昨日で二回目なんだよ」

「あっ、だから去年なのね。そんなこと考えもしなかったわ」

「まあ、これがこの偽圏内殺人計画の出発点だったんだろう」

 

カマクは大きく息を吐き、ここからの推察を語りだす。

 

「これは推測だがカインズさんとヨルコさんは最初からシュミットを指輪事件についてある程度疑っていたんだろう。そして圏内殺人でまんまと炙り出されたってわけだ」

「あの人がグリセルダさんを殺して指輪を奪ったの?」

 

答えを求める視線はアスナだけでなく他の二人もカマクに求めた。

 

「正直言ってそこだけは俺も分かっていない。けどそれに関してだが、俺は少なくともレッドギルドが関わっているだろうと思ってる」

「え?なんでですか?」

「まぁ確信があるって訳じゃ無いんだ。けど半年前に睡眠PKをしたとなると広まってもいないからできる奴が限られているんだよ」

 

僅かに沈黙が訪れる。

 

「まぁでも、流石にシュミットもビビってるから圏外に行くとは思えないから今すぐに殺されることは無いはずだけどな」

「そうですね」

「てことだ、これで俺たちの役回りは終了だ。まんまと騙されていたがな」

「そうだな。結果としてヨルコさんたちの目論見通りに動いちゃったけど、でも俺はそんなに嫌な気分じゃないよ」

 

アスナが薄く微笑み、この事件は終わったかに見えた。




読んで頂きありがとうございます。

予告通り圏外事件は終わりました。
うん、終わった、終わってないのは指輪事件ですからね。



すいません。・゜・(ノД`)・゜・。
次でちゃんと終わらせます。

ではまた次回。
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