ソードアート・オンライン 十人の物語   作:蹴急

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第一層ボス戦

第一層の迷宮区に俺達はいた。

 

「・・はああぁぁ!」

 

赤い光を纏った剣がモンスターを切り裂き、そして少しのタイムラグでモンスターがポリゴンとなり四散する。

 

「お疲れ!」

「ああ、にしてもなかなかボス部屋が見つからないな」

「まぁでも直ぐに見つかるんじゃねえの?一応この階にあるんだしよ」

 

俺、タクト、マルカは迷宮区のボス部屋のある階まで来ていた。

俺達以外にも何人かのプレイヤーがこのフロアにいる。

その中にはこの間であったワールンとその友人であろうカマクもいた。

 

先日の会議ではさほど実務的な内容は議論されていなかったが、プレイヤーの士気を上げるには充分だったのだろうか沢山のプレイヤーがこのフロアのマッピングに来ている。

そしてタクトの言う通り、ボス部屋はすぐ見つかった。

 

「「よっしゃーーー!」」

 

 

奥の方から数人の歓声が聞こえてくる。

 

「ねぇ、この歓声ってもしかして?」

「ああ、ボス部屋を見つけたんだろ」

「ちっ・・俺が最初に見つけたかったんだけどな~」

「仕方ないよ、こればっかりは人数が多い方がマッピングしやすいんだからさ」

「まぁいっか、どうする?戻るか?」

「そうね、早く帰ってご飯食べたい」

 

俺達は迷宮区を後にして町に戻った。

 

 

 

その日の夕方に再び攻略会議が行われた。

そこでディアベルらがボス部屋を少し覗き得た情報を告げた。

ボスの名前は<イルファング・ザ・コボルトロード>、その取り巻きに<ルインコボルト・センチネル>が三匹―――

 

会議は順調に行われていたのだが途中、例の本・・アルゴの攻略本が販売されていて、それを会議に参加していた全員が熟読する。

そこにはボスの情報が明確に載せられていたが今までには無かった一文も載せられていた。

【この情報はSAOのベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります】

それを見て俺は反射的にアルゴを探した、けれどその姿は見当たらなかった。

この注意書きは今までのアルゴの立ち位置を崩しかねないものだ。

これを読んだほとんどのプレイヤーがアルゴが元テスターなのでは?と疑いを持ちかねない。

ディアベルを見ると少し考え込んでいるみたいだがすぐに顔を上げ、張りのある声で叫んだ。

 

「みんな、今はこの情報に感謝しよう」

 

この発言後に彼は流石のリーダシップを見せ、場をまとめた。

周囲の喝采のあと彼は本題に入った。

 

「―――それじゃ、早速だけどこれから実際の攻略作戦会議を始めたいと思う!何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担も出来ないからね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティーを組んでみてくれ!」

 

この指示が出てからすぐに周囲がパーティーを作り始めた。

俺はどうしたものかと考える。

この場にいるのは四十四人・・・SAOではワンパーティー六人だ。

七パーティー作って二人余る計算になるが・・・・。

そんなことを考えていると横から声がかかる。

 

「ねえガタリ私たちはどうする?」

 

マルカだ、この発言から考えるに三人で行くのかあと何人か誘いフルパーティーで挑むのか、という事だろう。

 

「そうだな、とりあえず周りを見てからでもいい気はするんだけどな」

「おっけー、余った者同士で組むってことだな」

「まぁそういうことだ」

 

俺達は余った人と組むというスタンスで行こうと決め、周囲を見る。

殆どのとこが六人パーティーをすぐに作る。

元々六人パーティーだったディアベルは勿論、昨日の会議で暴れたキバオウや、巨漢のエギルもだ。

昨日出会ったワールはどうしているのだろうと思い、見てみるとまだパーティーを組んでいないみたいだった。

あちらもこちらに気づいたのか、こっちに向かってくる。

 

「やあガタリ、僕たちと一緒にパーティー組まないか?」

「そうだな、いいか二人とも?」

 

俺だけで決めるのも悪いので一応二人に確認する。

 

「俺は勿論いいぜ!」

「わたしもいいよ!」

「なら決まりだな、よろしくワールン!」

「ああよろしく頼むよ」

 

俺からワールンとカマクにパーティー参加申請を送る。

それを二人がOKし二人分のHPバーが視界の左側に表示された。

 

「そっちの二人は初めてだから自己紹介するな、僕はワールンだ、両手剣を使ってる、それで昨日の会議で知っているとは思うけどチャラそうな金髪がカマクだ」

「チャライは余計だアホ!カマクだ、そっちのタクトとはこの間あったな」

「おう!昨日ぶりだな!俺はタクト、片手剣使いだ!」

「みんなどっちかと面識があるんだ・・・、わたしはマルカ、私も片手剣よ盾持ちだけどね」

「最後は俺か・・、ガタリだ、ワールンは知ってるけど一応元テスターだ、昨日は助かったよ二人ともありがとう」

 

昨日二人がベータテスター達を庇ってくれたのは本当に感謝しているので伝えておかなくてわ、と思っていたので口にする。

自己紹介も終え、あと一人ならパーティーに入れられると思い周りを見ると、反対側で三人のパーティーを組んでいるのが見えた。

無理に入れなくてもいいのでこの五人で行くことにした。

 

ディアベルの指揮の下、七つ出来たパーティーを目的別に分け壁部隊、攻撃部隊、支援部隊の大きく三つに分かれた。

俺達は半分が片手剣で後二人が両手剣とランスなので、攻撃部隊に入れられた。

最後に攻撃パターンの確認などをして別れた。

俺はこの時に何故か攻略本の注意書きの事を思い出していた。

 

 

俺達は五人でNPCのレストランに行き、作戦の再確認を行った。

 

「っとこんなところか・・・」

 

俺がある程度の説明を終え、変わった味の飲み物を口に入れる。

 

「ねえガタリ?」

「なんだ?」

「会議の最後の方に何か考えてたみたいだけど・・・」

 

どうやら攻略本の事を考えていたのを見られていたみたいだ。

一応、こいつらには知ってもらった方がいいよな。

 

「その攻略本に書いてた注意書きの事なんだが・・・」

「ああ、あれな!情報はベータテスト時のやつってのだな」

「そうだ」

「何だ?ガタリは何かあると思ったのか?」

「へぇ、そいつは気になるな、教えてくれよ」

 

ワールンとカマクも話に入ってくる。

 

「もしかしたら何だが・・・ボスの攻撃パターンとかが変わっている可能性もあるよなと思ってさ」

「確かに・・・その可能性は高いな・・」

 

カマクが手を口にあて考え出す。

 

「他にも武器や特殊攻撃も付くかもしれないみんなも頭の片隅にでも置いといて欲しい」

 

俺の発言にみんなが了承してくれる。

正直に言ってあまり言いたくはなかった。

みんなを必要以上に心配させてしまうかもしれないからだ。

でもこのことを少しでも知っておいたら本当に敵に変更があった場合すぐに対応できるはずだ。

 

 

俺は少しの不安を持ちながら、宿に戻り眠りについた。

 

 

 

 

十二月四日 日曜日 午前十時。

デスゲームが始まってから後三時間で四週間目を迎える。

そんな中、俺達は四十四人の行軍でトールバーナーから迷宮区のボス部屋を目指す。

 

普通のRPG等ならボス部屋に一度辿り着いたならテレポート等で楽に行けるのだろうがSAOでは結晶アイテムが無ければ出来ず、よもや大人数となるとかなりレアな回廊結晶が必要になる。

そのようなレアアイテムが第一層で手にはいる訳もなく歩きで目指すことになる。

フィールドなので勿論モンスターとも戦闘になる。

目的のボス部屋まで約二時間かかった。

 

全員がアイテムや装備の確認を行う。

 

「何か緊張するな」

 

横にいたタクトが不意に話しかけてくる。

 

「確かに初めてのボス戦だからな・・・」

「あんたら何ビビってんのよ!」

 

マルカが後ろから俺達の背中を軽く叩き、笑顔でこちらを向く。

だけどよく見るとマルカの手がほんの少しだが震えている。

自分だってビビってるくせに強がりやがって・・・。

 

「マルカ、タクト・・・絶対生きて帰ろうな・・・」

「はっ!当たり前だ!」

「うん」

 

ディアベルが大扉に手を置き開く。

 

「―――行くぞ!」

 

全員が長方形の広いフロアに入る。

少ししてフロア全体が明るくなる。

奥を見ると玉座に巨大なシルエットが見える。

それは高く飛び雄叫びを上げ中央に降り立つ。

 

「全軍突撃!!」

 

ディアベルの叫びに攻撃隊が飛び出す。

勿論、俺達も攻撃隊なのでイルファング・ザ・コボルトロードに向かう。

見た目はベータテストの時と変わっていない。

俺は情報通りなのを確認し、ひとまず安心する。

 

敏捷値の高いマルカとタクトが同時にボスのファーストアタックを取る。

 

「はあぁぁ!」

「やあっ!」

 

それから遅れて俺、ワールンの順で攻撃を当てる。

 

「はっ!」

「んっ!」

 

コボルトロードも反撃を開始する。

持っている斧を振り被る。

それを受けようとカマクが盾を構え、コボルトロードの攻撃を受け切る。

少しばかりHPが削れるが一割も減ってはいない。

 

この調子で何事もなく終わってくれるといいんだけどな・・・

 

 

「スイッチ!」

「任せて!」

 

俺がセンチネルの長斧を弾き、アスナが喉元の弱点に細剣スキルのリニアーを打ち込む。

それで敵は青い撒き散らして消滅していく。

正直アスナのリニアーの速さには今更ながらも驚嘆している。

これで二匹目のセンチネル、取りこぼしが担当の俺らだが三人なのに他の六人パーティーより早く敵を倒している。

俺も勿論頑張っているが、アスナの速さともう一人のカヤの技術が何よりだろう。

カヤはクリティカルに当てるのが上手い。

あそこまで弱点部位に的確に当てることのできるプレイヤーはいないだろう。

この調子なら俺達がボスに攻撃するチャンスも出てくるかもしれない・・・などと考えていると横から声がかかった。

 

「アテが外れたやろ。ええ気味や」

「・・・・・・なんだって?」

 

キバオウのセリフの意味が解らず振り返りながら声をあげる。

センチネルの次のポップまで少し時間があるので会話は出来そうだ。

 

「ヘタな芝居すなや。こっちはもう知っとんのや、ジブンがこのボス攻略に潜りこんだ動機っちゅうやつをな」

「動機・・・だと?ボスを倒すこと以外に、何があるって言うんだ?」

「何や、開き直りかい。まさにそれを狙うとったんやろが!わいは知っとんのや。ちゃんと聞かされとんのやで・・・あんたが昔、汚い立ち回りでボスのLAをとりまくっとったことをな!」

「な・・・・・・・・・・」

 

俺が元テスターということを知っているプレイヤーは限られている。

なら誰かがその事をこいつに伝えたということだろう。

きっとアニールブレードの件もその黒幕だろう。

誰がその黒幕か考えようとすると、大きな叫びがそれを中断させた。

 

「ウグルゥオオオオオ――――」

 

コボルトロードのHPがついに一本になったようだ。

同時にセンチネルが三匹現れる。

 

「雑魚コボ、もう一匹くれたるわ。あんじょうLA取りや」

 

憎しみの滴る声でそう告げると、キバオウはE隊の仲間の下へと去った。

 

センチネルの相手をしている刹那、俺は本隊の方に少し目をやった。

コボルトロードが武器の変更を行うみたいだ。

そこで俺は何かがピクリと来る感覚になった。

湾曲・タルワールに変えるだろうと思い武器を見ると上の層で見たベータ時代、最大の強敵が持っていた曲刀。

プレイヤーに扱えない、モンスター専用カテゴリの――――

 

「あ・・・、ああ・・・・・・」

 

引き攣るような声が出た。

俺は無理矢理空気を吸い込み叫んだ。

 

「だ・・・だめだ、下がれ!!全力で後ろに跳べ―――ッ!!」

 

 

 

 

くそっここまで変更点がなかったから完璧に油断していた。

あれは野太刀か・・・ここは一旦引いてもう一度やり直したほうが・・・

 

「みんな下がれ!俺が行く」

 

ディアベルが前へ出てソードスキルの構えをとる。

・・・なっ、ここは一旦引くのが定石だ。

しかも相手の武器まで変わってるんだぞ。

俺の考えなどお構いなしにコボルトロードが垂直に飛んだ。

あれは・・・刀専用スキル重範囲攻撃・旋車―――

後ろから声が聞こえるがソードスキルのサウンドエフェクトで上手く聞き取れない。

 

「カマク盾を構えくれ!」

「はぁ何で?」

「いいから!頼む!」

 

俺が強めの口調で言うと素直にカマクは聞いてくれ盾を構える。

 

「タクト、マルカ、ワールンは全力で下がれ!」

「わかった!」

「ああ!」

「了解!」

 

コボルトロードのソードスキルがC隊の六人に決まり全員がスタンする。

その中にはリーダーのディアベルも含まれている。

コボルトロードは続けざまに刀スキルの浮舟を放とうとしている。

狙いは正面にいるディアベルだ。

俺は全力で駆け、浮舟を片手剣で受ける。

 

「うっ・・・・・・くっそ!」

 

俺はディアベル諸共打ち上げられた。

浮舟はスキルコンボの開始技だ、本来なら体を丸くして受けるのが普通だがディアベルは反撃のソードスキルをしようとする。

だがそんな不安定なモーションでは発動するわけもなく、コボルトロードがディアベルを刀スキル三連撃の緋扇でHPを削り、二十メートル近く吹き飛ばす。

 

「ちくしょっ!」

 

俺は何とか<スラント>をコボルトロードに当て距離をとる。

そしてディアベルの方を見ると誰かと話しているのが見え、そのままポリゴンとなりこの世から消えた。

直後フロア全体にうわあぁぁという叫び声が聞こえ、レイドメンバーのほぼ全員がパニックに陥っている。

だがそんなときでも敵が待ってくれる訳もなくこちらに向かってくる。

 

「ガタリ!俺らはどうしたらいい?」

 

タクトが俺の下まで駆けつけてくる。

その後ろにマルカ、ワールン、カマクもいる。

みんな俺が言ったことを覚えていたのかこの状況でも落ち着いている。

 

「このパニックが落ち着くまで俺達で持ちこたえるぞ!」

「ああ、やってやるか!」

「私だってやるわよ!」

「あまり目立ちたくないんだけどな」

「アホか!お前はこの前の会議で十分目立ってる」

「作戦はさっきまでと一緒だ!行くぞ!」

 

全力でコボルトロードに向かう。

カマクとマルカが盾で敵の攻撃を受け止め、受け流し俺、タクト、ワールンで一気に攻める。

しかし、相手はボスだ、俺達だけでは対処しきれないところがちょくちょく出てくる。

ふと全員のHPバーを見るとみんなもう緑を越えて黄色だ。

コボルトロードに向かってから五分もない間相対していると後ろから三人のプレイヤーがこちらに来る。

 

「すまない、今からは俺達も戦う!少しなら耐えれるから回復してきてくれ!」

 

黒髪の少年が険しい表情ながらも申し訳なさそうに告げる。

 

「…助かるよ、俺達だけじゃ限界だったとこだ」

 

礼を言いポーションを口に含む。

とりあえずHPが回復するまで後ろで休むことにする。

 

「アスナ、カヤ、手順はセンチネルの時と同じだ!・・・行くぞ!」

 

フードの人物がチラリと黒髪を見るが、すぐに前方に視線をもどし返事をする。

藍色の髪の少年は鋭い眼光で敵を見つめながら応える。

 

 

「解った!」

「・・・ああ」

 

前にいたタクトとワールンが後ろに下がる。

すると、コボルトロードが両手で握っていた野太刀から左手を離し、左の腰だめに構えようとする。

あのモーションからくる技は・・・刀直線遠距離技<辻風>だ。

 

「・・・・・・ッ!!」

 

それに気づいたのか黒髪の少年がソードスキルを発動させた。

地を這うような低さから、全力で駆けだす。

片手剣基本突進技、<レイジスパイク>。

同時に、ボスもスキルを発動させ野太刀を視認不可能な速度で切り払う。

 

「う……おおッ!!」

 

二つの剣の軌道が交わり、甲高い金属音と大量の火花を散らす。

黒髪の少年とコボルトロードは互いの剣技を相殺させて二メートル以上もノックバックする。

その生まれた隙をフードが物凄いスピードで敵を捉える。

 

「セアアッ!!」

 

短く鋭い気勢に乗せて放たれ<リニアー>は、コボルトロードの右腹を深々と打ち抜く。

 

「・・・フッ!!」

 

続けて少し遅れた藍色の髪の少年が<リーバー>で敵の喉元を的確に切る。

二人の攻撃で四段目のHPバーが少しだが確かな幅で減少する。

 

何度か同じ状況が続く。

この戦いを少し見ただけでもあの三人の実力の高さが解る。

フードの速さや、藍色の少年の剣捌きと技術・・・そして何より何度もボスの攻撃を相殺している黒髪の少年だ。

彼はソードスキル発動時に体を意図的に動かし、技の速度と威力をブーストしている。

あんなシステム外スキルが出来るなんて・・・・コボルトロードの刀スキルにもきちんと対処できている、彼はきっと俺と同じ元テスタ―なのだろう。

 

「ガタリ!俺達もそろそろ行かねえと!」

 

タクトに声をかけられ体力が回復していることに気づく。

どうやらあの三人に見惚れていたようだ。

気合を入れなおすべく声をかける。

 

「うし!あいつ等だけにカッコいいとこ持ってかれないように俺らも行くぞ!」

「何それ!?まぁ確かに目立ち過ぎだよね」

「僕は別に目立ちたいとかじゃないのだけど・・・」

「はっ・・・いいじゃねえか」

「行くか」

 

俺達五人も再びコボルトロードに向かう。

全員でコボルトロードに行きHPを削る。

途中でセンチネルが再びポップするというベータ時からの変更があったものの後ろに控えていたE隊、G隊が相手をしている。

俺達もPOTローテを行い、今は黒髪の少年が回復に専念しながら俺達に技の軌道などを言いフォローしてくれている。

そして遂に最後のHPバーが赤くなる。

しかしそれで気を抜いたのかタクトがよろめきコボルトロードの後ろに位置取ってしまう。

 

「タクト!急いで動け!」

 

不意に叫ぶが遅かった。

それをボスが取り囲まれた状態だと判断し獰猛に吼える。

ベータ時と違い、この咆哮には軽いスタン効果に類似したものがあり、近くにいた者は耳を塞がなければならなくなる。

コボルトロードと相対していた俺も勿論例外なく耳を塞がなければならなくなる。

そしてボスは<旋車>を発動させようと高く垂直にジャンプする。

このままではディアベルの二の舞になる・・・・・・。

 

「う・・・おおああッ!!」

 

すると後ろで見ていた黒髪の少年が短く吠えながら、壁際から飛び出した。

片手剣を右肩に担ぐように構え上空のコボルトロード目掛けて飛び出す。

片手剣突進技<ソニックリープ>だ、先ほどの<レイジスパイク>とは違い、軌道を上空にも向けられる技だ。

 

「届・・・・けエ――――ッ!!」

 

それは<旋車>発動寸前のコボルトロードの左腰に決まり、クリティカルヒット特有のざしゅうっ!という重く鋭い斬撃音をさせる。

そのままボスは床にまで叩きつけられる。

立ち上がろうと手をばたつかせる・・・ヒト型モンスター特有のバッドステータス<転倒>状態だ。

これは好機だ、一気に攻めるべく俺は肺の空気を絞りつくす勢いで叫んだ。

 

「全員!全力攻撃だ!――――囲んでもいい」

「おおオオオ!!」

 

コボルトロードを相手にしていた全員が様々なソードスキルでボスのHPをガリガリ削る。

あと五パーセントというところでコボルトロードが立ち上がった。

くそっ、間に合わなかったか・・・

 

「アスナ!カヤ!最後のソードスキル、一緒に頼む!」

「了解!!」

「・・・わかった!」

 

俺はその声を聞き笑みをこぼした。

体を少し横にずらし道を作る。

ワールンも気が付いたのか俺と同じように俺とは反対側に体を寄せる。

そしてフードがその間を駆け抜ける。

そのときフードが捲れ栗色のロングヘアがあらわになる。

その姿はまさに流星、彼女の渾身の<リニアー>がコボルトロードの右脇腹に打ち込まれる。

続けて藍色の髪の少年がまたも見惚れるような<リーバー>で敵の左腰を切り裂く。

僅かに遅れ、青い光芒を纏った黒髪の少年の剣がコボルトロードの右肩口から腹までを斬り裂いた。

HPゲージ・・・・残り一ドット。

目の前でボスがにやりと嗤った気がした、しかし黒髪の少年も獰猛な笑みを返す。

 

「お・・・・・おおおおおッ!!」

 

手首を素早く返し、気合の咆哮と共に剣を跳ね上げる。

先ほどの斬撃と合わせⅤ字の軌跡を描く。

片手剣二連撃技<バーチカル・アーク>。

コボルトロードの巨躯が不意に力を失い、後方へとよろめく。

そして野太刀を床に転がすと、体にひびが入る。

そして、アインクラッド第一層フロアボス≪イルファング・ザ・コボルトロード≫は無数のガラス片へとなり盛大に四散した。

 




読んで頂きありがとうございます。

新キャラのカヤです。

彼もこれから出番が増えると思います。

ではまた次回。
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