ソードアート・オンライン 十人の物語   作:蹴急

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ビーター、そして第二層攻略

コボルトロードが消滅した。

そして周りにいたセンチネルも儚く散る。

少しして大きくCongratulationの文字が現れ、獲得経験値や分配されたコルの額などがメッセージとして俺の視界を流れた。

この場の全員がそれを確認すると、一瞬の溜めのあと、わあっ!と歓声を浴びせた。

 

「ふう・・・・・・終わったか」

 

俺は少し息を吐きその場に座り込んだ。

すると横にいたワールンから声がかかる。

 

「お疲れ・・・何とか勝てたな」

「・・・ああ」

 

曖昧な返事をするが、それでも満足したのかワールンの表情は明るかった。

周りを見るとマルカはタクトとハイタッチで喜びを表していた。

カマクも近くにいた藍色の少年に声をかけている。

他にも仲間と抱き合う者、両手を突き合わせ笑い合う者、やたらおかしな踊りをする者、嵐のような騒ぎに包まれる。

しかしこの喧騒を止める一言がフロアに響き渡る。

 

「何でや!・・・何でディアベルはんを見殺しにしたんや!」

 

声の主のキバオウが悲しげな表情で床に拳を叩きつけ叫ぶ。

それはあの黒髪の少年に対して言っているのであろう。

咄嗟の事で誰も理解できていない。

彼もそうだろう。

 

「見殺し・・・・・・?」

「そうやろが!自分はボスの攻撃を知ってたやないか!自分がそん情報を伝えっとたらディアベルはんは・・・死なずにすんだはずやろ!」

 

その指摘に周囲もざわつき、疑問を持ち始める。

マズイ・・・このままじゃあ、あいつが・・・いや、俺や他の元テスタ―達がビギナー達の敵意に晒されてしまう可能性が出てくる。

彼の疑問に答えたのはキバオウではなく、ディアベルとパーティーを組んでメンバーのシミター使いだった。

 

「オレ、・・・オレ知ってる!!こいつ元ベータテスターだ!だからボスの技も、旨いクエとか、狩り場とか全部知ってるんだ!知ってて隠していたんだ!他にもいるんだろ!出て来いよ!」

 

その声でこの場に他人への疑心暗鬼が生まれ広がる。

クソッ・・・俺もベータテスターだと名乗り出れば少しはあいつの負担や敵意を肩代わり出来るかもしれない・・・。

けれど、その一言がどうしても言えない。

手が、足が、震える。

怯えているんだ。怖いのだ。

自分ながら情けない。

カマクやワールン、エギルと彼とパーティーを組んでいた少女が止めようとするが、奇妙な笑い声がこの場を支配し、静寂が訪れる。

 

「くく・・・はははは!元ベータテスターだって?・・・俺を、あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

 

あいつ・・・何を言って・・・

俺は理解できず、そのまま動かず聞いていた。

 

「いいか?よく思い出せよSAOのCBTはとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。受かった千人のうち、本物のMMOプレイヤーが何人いたと思う?ほとんどはレベリングのやり方もしらない初心者だったよ。今のあんたらのほうがまだしもマシさ。」

 

侮蔑極まる彼の言葉に全員が押し黙る。

 

「でも俺はあんな奴らとは違う。俺はベータテスト中に、誰も到達できなかった層まで登った。ボスの刀スキルを知っていたのは、ずっと上の層で刀を使うModと散々戦ったからだ。他にも色々知ってるぜ、情報屋なんか問題にならないくらいにな。」

 

「な・・なんやそれ、そんなんベータテスターどころやないやんか、チートやチーターや」

 

周囲が黒髪の少年に罵詈雑言を浴びせる。

その中でベータテスターとチーターを合わせた<ビーター>という蔑称が生まれた。

彼はメニュー画面を操作しながら告げる。

 

「ビーター・・・いい呼び名だなそれ、そうだ俺はビーターだ。これからは元テスターごときと同じにしないでくれ」

 

言い終えると装備が変わり、先ほどのLAボーナスであろう黒のロングコートを羽織る。

そしてロングコートを翻し、玉座の奥の階段へと向かった。

 

きっとあいつは俺達・・・ベータテスターの批判を少人数であろうビーターのみ集めようとしたのだろう。

俺には何も出来なかった、彼を助けることも、自分もビーターとなり一緒に批判を受けることも・・・動くことも出来ず、ただ立ち尽くすだけだった。

その場で俺は唇を噛みしめた。

 

「ガタリ・・・あなたが責任を感じることはないわよ、彼もきっと覚悟の上のはずだから」

 

マルカが俺の心情を察したのか心配そうに話しかけてくる。

そんなことはわかっている。

けれどあいつは前線でギルドやパーティーなどに入れる可能性を失ったんだ。

今の・・・デスゲームと化したSAOでソロは絶対に限界が来る。

 

「けど・・・俺は・・俺は・・・クソッ!!」

 

言葉の代わりに床を殴った。

言葉にならない、いや、出せないんだ。

悔やんではいても、内心どこかホッと安心しているからだ。

 

「なあガタリ?」

「・・・ワールン?」

 

唐突に横にいたワールンから声がかかる。

 

「いつかさ、あいつが助けを求めることがあるかもしれない、その時は手を差し伸べて助けてやろうぜ。誰だって独りは辛い。あいつが誰かを必要としたとき今度は僕たちが助けようぜ」

 

ワールンの言葉が胸に響く、何故かわからない。

でも・・俺の中に小さな灯火のように残った。

 

「ああ、この恩は必ず返す!」

 

俺達も彼の後を追うように第二層へと向かった。

 

 

第二層が開いてから七日目、僕と一緒にコンビを組んでいるユウマは第二層の東のある小屋に来ている。

僕たちを閉じ込めているSAOにはエクストラスキルといういわば、隠しスキルが存在する。

それはある条件をクリアすることで選択肢に出てくるスキルの事だ。

体術スキルはそのうちの一つだ。

僕は今、その体術スキルを手に入れるべく大きな岩の前に立っている。

 

「ナオキ君、無理だよ~、流石にこの岩を素手で砕くなんて無理」

「そうかもですが、僕には体術スキルをどうしても手に入れなくてはならない」

 

ここまで一緒に来てくれたユウマが涙目になりながら言う。

ユウマは僕よりも身長が小さく見た目も女の子と言われても疑わないくらいの容姿だ。

 

「ユウマは無理しなくてもいいですよ、僕が必要なだけですから」

「そうは言っても、このまま帰るのは嫌だよ・・・」

「うっ・・・・・確かに嫌ですよね・・・」

 

今僕とユウマの顔には妙なペイントが書かれている。

この体術スキルを得るクエストを受けると顔に落書きをされ、岩を割るまで消えないのだ。

因みにユウマは某ゴージャスのような星のペイントが僕はナオエもんらしい。

ピコンッという音が響いたメッセージが届いたようだ。

 

「ん?アルゴからですか・・・」

「どうしたの?」

「ええ、メッセージが来たんで・・・どうやら例の事件が解決したみたいですね」

「あの詐欺事件だっけ?」

「はい、どうやらキリトが見破ったみたいです」

 

約三日前僕達はキリトとアスナに出会い、とあるプレイヤー鍛冶屋に行った。

そこで強化詐欺が行われていることをしったのだ。

僕はすぐに謝罪させ、それ相応の対処をさせるつもりだったのだがキリトが方法もわかっていないのに行くのはダメだといい断念した。

その次の日にキリトが手段に気づきその準備をし、キリトとアスナがきちんと罪を償わせると言ったので、僕とユウマはこの件から手を引き体術スキルを得ることにした。

 

「凄いねキリト君は、それで強化詐欺をした人はどうなったの?」

「それが今からここにきて体術スキルを得るらしいのですが・・・」

「え?ここに来るの?」

「そうみたいです、詳しくはこっちに来てから説明するみたいです」

 

少ししてアルゴとその強化詐欺の実行者であるネズハが来て僕達と一緒に体術スキルのクエストを行った。

 

僕とユウマは次の日には岩を砕いた。

ネズハはもう少しかかりそうだったのでアルゴと一緒におつかい系のクエストをすることになった。

僕とユウマはそれが次のボス戦での重要なものとは知らずに・・・

 

 

「回避!回避――――ッ!!」

 

広大なボス部屋でやや裏返り気味な絶叫が響く。

それを聞き、俺、タクト、マルカ、ワールン、カマク・・・そして前回は例の黒ビーターことキリトと組んでいた藍色の髪の少年・カヤは全力でバックダッシュする。

俺達は今回はこの六人でパーティーを組んで第二層のボス戦に挑んでいる。

攻略組は現在ボスの取り巻きである<ナト・ザ・カーネルトーラス>とボスである<バラン・ザ・ジェネラルトーラス>と戦っている。

この間キリトを糾弾したシミター使いのリンドの回避命令の後、バラン将軍が、携えている黄金のハンマーを床に轟然と叩く。

 

「ヴゥオオオルヴァァルァアアアア――――ッ!」

 

インパクトの衝撃波が俺達のところを一気に駆け抜ける。

そして、それを追うようにスパークの渦が広がる。

バラン将軍のユニーク技<ナミング・デトネーション>だ。

プレモーションは非常に解り易いのに、それでも二人が安全圏まで退避しそこね、足を黄色のスパークに飲み込まれた。

それは一瞬でプレイヤーを縛り付け<行動不能>状態にした。

スタンは三秒ほどで回復するのだが、雑魚モンスター相手ならいざ知らず、ボス相手だと途轍もなく長く感じる。

そして三秒が経つその直前プレイヤー・リンド隊の一人から武器が抜け落ちる、スタンしたときに稀に起きる<ファンブル>だ。

落ちた武器を反射的に拾おうとする。

 

「ばかッ!二発目が来るぞ!下がれ!」

 

俺の声は無残にバラン将軍の二回目の<デトネーション>によりかき消された。

それによりリンド隊の一人は麻痺状態に陥る。

この間の会議でキリトがすぐに武器は拾わず、二発目が来るかどうかボスのハンマーを確認しろって言ってたじゃないか。

俺は不意に後ろで麻痺の回復を待っている人数を確認する。

一、二、三・・・・・八人か。

このままじゃあ一時撤退も厳しくなりそうだな。

今回のリーダーであるリンドに撤退の提案をしようか迷っていると前にいるタクトから声がかかる。

 

「おいガタリ!スイッチの用意!」

「悪い!今行く!」

 

仕方ない、俺が言ったところであまり意味がないし、ここはボスだけに集中しよう。

俺は走ってバラン将軍に向かい、タクトとカマクがハンマーを打ち上げたタイミングで懐に入り込む。

右手の片手剣を左の腰近くに構え、両足に力を込める。

片手剣が赤いエフェクトに包まれ斬り上げ飛ぶ、そこから手首を返し叩き斬る。

片手剣空中二連撃技<タイガーブレイド>だ。

この技は飛んで攻撃するので飛行しているモンスターや体が大きく弱点が上の方にあるモンスターに有効な技だ。

さらに叩き斬ることで相手の追撃も受けにくい。

この攻撃でバラン将軍の最後のHPバーに到達した。

俺はソードスキルを放ちバラン将軍と距離をとるとリンドを見る。

何やらキリトと話をしているようだ。

様子からしてキリトも撤退を考えていたのだろう。

そこにキバオウも加わり、話が着いたようだ。

 

「ねえガタリ?」

「どうしたんだ、マルカ?」

 

POT休憩を終えたマルカが訪ねてくる。

 

「今の所、ベータの時と変化ないよね?」

「ああ、一応変化が無いかボスの装備も確認したが変化は無かったよ」

「そうよね・・・少し気になったんだけど、一層の時って王・ロードだったじゃない?なのに今回は将軍ていうのが・・・」

 

マルカの言葉でその可能性に気づく。

 

「・・・それだとかなりマズイことになる」

「これってリンドさんに伝えた方が・・・・」

 

ごおぉぉん!

マルカの声を遮る突然の轟音。

まさか本当に?と思い音の聞こえたコロシアムの中央をみるが変化が無い。

ほっとするのも束の間、部屋がわずかだが動いていることに気づく。

三重の円を描く敷石が少しづつスピードを変えて反時計にスライドする。

見る間に石たちは床面からゆっくりせり上がり、やがて三段ステージを作り出した。

その上空でゆらりと背景が歪みだし巨大なオブジェクトをポップさせる。

そして雄叫びが迸り、新たに出現したモンスターの周りに次々と雷が落ちる。

最後に六本のHPバーが現れ、俺はその下にある文字列を凝視した。

<アステリオス・ザ・トーラスキング>。

 

「最悪だ・・・」

 

俺はこの状況に絶望した。

今の今まで対峙していたバラン将軍がこの第二層のフロアボスだと信じていた。

きっとここにいる誰もがそう思っていただろう。

しかしそれだけでなく撤退しようにも出来ないこの状況が絶望的なのだ。

スライドしたせいで俺達、バラン将軍を相手にしていたプレイヤーは全員部屋の最奥部にやられている。

撤退するには部屋の中央に陣取っているあの<アステリオス王>の攻撃圏を突破しなければならないのだ。

アステリオスは将軍よりも強いのは確実だ。

それを麻痺しているプレイヤーを守りながら抜けるなど無理ゲーすぎる。

けれど何もしなくては死ぬのは確実だ。

ひとまず移動を開始しようとするアステリオス王から視線を外し、目の前のバラン将軍を見る。

最優先にすることはレイド全員の生還だ。

それをするにはバラン将軍とアステリオス王の挟み撃ちになるという最悪の事態は避けねばならない。

俺はパーティーメンバーに聞こえるよう短く叫ぶ。

 

「みんな、とりあえずアステリオス王がくるまでに目の前の将軍を倒すぞ!」

 

パーティーメンバーの五人は無言でうなずくと全力でバラン将軍と対峙する。

カマクがバラン将軍のハンマーを受け止め、両側からタクトとワールンが<ホリゾンタル>と<アバランシュ>を放つ。

そしてワールンの後ろから走ってくる藍色の影、カヤだ。

 

「・・・しゃがめ!」

 

短く言うと軽くジャンプする。

ワールンはそれを聞きしゃがむ。

そしてカヤはワールンをジャンプ台にして飛んだ。

 

「おい!勝手に人を台にするんじゃない!」

「お前がしゃがんだのがいけないだろ」

 

ワールンは文句を言うが素直に聞いたお前が悪いと内心で叫ぶ。

カヤはバラン将軍の頭付近まで来ると振り向き曲刀を右の腰に構えると曲刀が黒く輝く。

そしてすぐに前に振り向き駆け抜け、すれ違いざまに切りつけた。

曲刀突進技<ファントム・エッジ>だ。

それが敵の弱点である二つの角の間にヒットしバラン将軍がディレイする。

四人の戦闘を見て残りの三十人のプレイヤーも動き出す。

俺も将軍に向かいソードスキルを叩きこむ、そこでバラン将軍の最後のHPバーが赤くなる。

ふと、ナト大佐の方を見ると、ナト大佐がポリゴンとなり消滅した。

あちらの部隊も来るだろうがまだ余裕はない。

アステリオス王が接触するときにバラン将軍を倒せていなければ絶望的な状況は変わらない。

HPバーが赤くなったことでバラン将軍がバーサーク状態になっており、<ナミング・デトネーション>を連発してくる。

横にいたマルカが投剣スキル<シングルシュート>で偶にバランの<デトネーション>を不発にさせるが、所持していた武器が底を尽きはじめたみたいだ。

 

「ガタリ!もうあの技止められそうにないわよ!」

「くっ・・・このままじゃあアステリオス王が来ちまう」

 

あと三十秒ほどでこちらの本隊と接触するであろう。

アステリオス王の位置を確認しているとアステリオス王の右側を駆け抜けている黒い影に目が映る。

キリトだ!リンドとキバオウもキリトに気が付いたのか目を見開いている。

その二人の間を駆け抜け、将軍の真ん前に出るや床を蹴りジャンプした。

 

「お・・・らああッ!」

 

<ソニックリープ>を的確に弱点にあてディレイさせる。

このディレイが最後のチャンスであろう。

動ける全員がさまざまなソードスキルを放つ。

俺も遅れて<タイガーブレイド>を放つが残り数ドットというところでHPが残る。

しかしキリトが崩れ気味の態勢から体術スキルの基本技<閃打>を将軍の胸板にヒットさせる。

その攻撃で巨体が膨張し破砕する。

 

「よしっこれなら・・・・」

 

将軍が倒れたことを確認すると俺はすぐにアステリオス王を見て驚愕した。

こっちに来るまでにあと十秒ほどあったはずのアステリオス王がいっぱいに上体をそらし、逞しい胸を大樽の様に膨らませている。

俺はそれを見た瞬間に全力でダッシュした。

周囲を見ると、パーティーの五人も危険を感じたのかダッシュで回避を試みている。

しかし無情にも俺達を含む二十人を超えるプレイヤーが白い閃光に包まれた。

その中にはリーダーのリンド、サブリーダー的立ち位置のキバオウもいる。

自分のHPを確認すると麻痺状態になっていることがわかった。

すぐにポーションを取り出そうとするが思ったように体が動かない。

麻痺になっていないプレイヤーはリンドとキバオウが麻痺しているためかどう動けばいいかわかっていないみたいだ。

 

「これで終わりか・・・・。」

 

俺は小さく呟いた。

マルカやタクト、カマク、カヤも俺と同じように思っているのか、恐怖よりも悔しい表情をしている。

しかしワールンはまだ終われないと言わんばかりに必死に体を動かそうとしている。

そんな絶望的な状況の中一筋の光が天上付近を横切った。

その光は目の前のリンドとキバオウにハンマーを振り下ろさんとしているアステリオス王の額の王冠に当たり、甲高い金属音を響かせた。

先ほどまでマルカが使っていたスキルと同じ投剣スキルであろう。

しかしマルカの時とは違い武器がその場で落ちて消えずに、見えざる糸に引かれるかのように後方へと戻っていく。

すると不意に体が引っ張られた。

 

「大丈夫か?今動かすから我慢してくれ」

 

そのまま俺を東側へと運んでくれたのはエギルと同じパーティのプレイヤーだ。

少し動く首を出口の方を見ると三人の人影があった。

その内の一人は俺も知っている、第二層で鍛冶屋をしていたネズハというプレイヤーだ。

そして彼が何故だかわからないが一瞬だけ沈痛な表情を浮かべたが、すぐに毅然と叫んだ。

 

「僕たちがぎりぎりまでボスを引きつけます!その間に、態勢を立て直してください」

 

そしてその三人はアステリオス王のタゲを順番にとりながら時間を稼いでいる。

何やら横でキリトとどこから現れたのかアルゴが話している。

三人はアステリオス王のブレス攻撃を知っており約二分、タゲを三人で取っていた。

その間にレイド全員の麻痺が回復し、ボスの攻撃パターンを聞いた。

後で聞いた話だが、アルゴとネズハ以外の二人がとある連続お使いクエストをクリアし<アステリオス・ザ・トーラスキング>の情報を手に入れたらしい。

リンドの指揮の下、ボス戦が再開される。

 

ボス戦をしているとネズハ以外に目立つプレイヤーが何人かいたが、そのほとんどが今回新規で参加してきたオルランドなど五人だ。

この五人はナミングを受けてもスタンをしないのだ。

この五人の働きは目を見張るが少しばかり違和感を覚えてしまう。

 

「うりゃああ!」

「おおおぉぉぉおお!」

 

タクトとワールンがアステリオス王に攻撃をするが仰け反らせるまでには至らず、アステリオス王の目が光る。

ブレス攻撃がくる前兆だ。

それなのに突撃する人影が一つ。

両手斧を持ったオレンジ色の服をきた少年だ。

彼はネズハと来た二人のうちの一人だ。

茶髪の少年はハンマーを掲げたボスの懐に入ると低く屈んだ。

そしてソードスキルを発動させる。

 

「やあああ!!」

 

獅子のエフェクトが出現し、アステリオス王を一メートルほど弾き飛ばす。

あとで調べたらあれは、斧・体術複合スキル<獅子戦吼>というらしい。

それによりアステリオス王のブレス攻撃を中断させる。

そして仰け反ったアステリオス王を追う紫の髪に紺の服を着たプレイヤー。

 

「はあああ・・・・ッ!」

 

ジャンプし回転しながら三回、蹴りを繰り出す

体術空中技<飛燕連脚>だ。

彼は何と剣、つまり武器を手に持たず素手で戦っているのだ。

盾や剣を持たないので敵の攻撃を防ぐことが出来ないので彼は敵の攻撃を全て避けている。

素手ではモンスターへ与えるダメージは少ないのでは、と思っていたのだが筋力値が非常に高いのかこの場にいるプレイヤーの中で一番アステリオス王にダメージを与えているのだ。

そして遂にアステリオス王の最後のHPバーが赤くなる。

 

「ヴォロロルルヴァラアア―――ッ!!」

 

アステリオス王はバーサーク状態となっており、ブレス攻撃を繰り出そうとするが、ネズハのチャクラムによる攻撃と茶髪の少年の<獅子戦吼>で何度も不発に終わっている。

最後の抵抗と言わんばかりにアステリオス王がハンマーを高々と振りかざす。

それを見たアステリオス王の前にいたB隊が悔しげに退避する。

しかしオルランド率いるG隊はここぞとばかりに大技を繰り出す。

きっとLAを狙っているのであろう。

そこで俺は前回LAをとったキリトを見た。

キリトはアスナと共に思いきり跳んだ。

 

「ヴォラ―――ッ!」

 

アステリオス王が咆哮と共にハンマーを振り下ろした。

それによりG隊の何人かがスタンになる。

跳んでいるキリトらも着地すればナミングの餌食だ。

しかし―――。

 

「セイ・・・リャアアアッ!」

 

先にアスナが苛烈な気勢と共に細剣突進技<シューティングスター>を空中発動させた。

 

「おおお・・・らああああッ!」

 

続けてキリトも<ソニックリープ>を発動。

それはアステリオス王の額に決まり、アステリオス王を爆散させた。

 

 

アステリオス王が消滅した後、実はネズハが強化詐欺を行っていたことが発覚。

そしてそれにオルランドら、レジェンド・ブレイブスも関わっていたことで一時はどうなることかと思ったが、リーダーのリンドが何とかうまい事治めた。

この時俺はネズハと一緒に来た二人、ナオキとユウマからことの真相をきいた。

 

「・・・というわけで僕たちはここに来たということです。あとは皆さんが知っているとおりです」

 

ナオキが説明し、たまにユウマが補足をした。

 

「そいうことだったのね・・・」

「ああ、確かにあいつらがしたことは決して許されることではないが、それでも償うことはできるだろ」

 

マルカは今まで起きていたことについて行けてなかったので納得したみたいだ。

カマクは彼らレジェンド・ブレイブスの復帰に期待しているのであろう。

カヤを見ると何も言わず、特に興味もなさそうにしている。

因みにタクトは今、行われているオークションに参加している、何というか現金なやつだ。

 

「・・・許せないな」

「えッ・・・?」

 

ワールンが低く呟く、俺は理解できず反射的に聞き返してしまった。

 

「それってネズハたちの事?」

 

マルカがワールンに尋ねる。

 

「いや、違うよ。僕はネズハに強化詐欺を教えた人物が許せない。人の弱みに付け込んで悪意を広めようとしているのが許せないんだ!」

「そうだね、僕もそれを聞いた時、その人物に憤りを覚えました。けれどその人物の情報は得られなかったんです」

 

ワールンとナオキは俺達とは違うところを見ていたようだ。

ネズハが強化詐欺をした原因である人物にすごく怒っている。

きっと彼らの正義感や誠実な気持ちが酷く反応したのだろう。

しかし、ナオキの言ったようにその人物のことは情報が無いためにこれ以上話しようがない。

俺はふと思った、いつかそいつ殺り合うときが来るかもしれないと。

 




読んで頂きありがとうございます。

今回は一層から一気に二層攻略まで飛びました。

オリキャラのナオキとユウマも登場しました。

次は多分三十層くらいに行くと思います。

ではまた次回。
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