ソードアート・オンライン 十人の物語   作:蹴急

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贈り物

時刻は深夜3時、通常なら活動しているであろう人があまりいない時間、そのような時刻にジェット機のような轟音が響きわたる。

その音のあと蟻型のモンスターがポリゴンへとなり、散らばった。

ポリゴンの先には剣を鞘に納める黒の剣士の姿がある。

キリトはある情報を3日前に手に入れてからは毎日ここでレベルを上げるためにこもっている。

その情報とは5日後の12月24日の深夜0時に現れるイベントボスから死者を蘇らせることのできるアイテムが手に入るという物。

キリトはこれでサチを生き返らせるつもりである。

彼を見守るようにしている人物が三人、1人はギルド風林火山のリーダー、クライン。

彼はキリトが交代の一時間が経つと同時にキリトの下へ行き、ギルメンに自分は後で行くと告げキリトに声をかける。

後の二人はナオキとユウマ、彼ら二人はキリトのしようとしていることをやめさせるために来た。

キリトがクラインとの会話を終えこちらにくるとナオキが声をかける。

 

「キリト君、ソロでフラグボスに挑むなんてやめませんか?」

「俺はやめるつもりなんてないぜ」

「君もわかっているはずです、ソロで挑むのは無謀だということが....」

「さっきクラインにも言ったけど、俺は可能性があるなら足掻くつもりだ、悪いがナオキの話は聞けない」

 

キリトの言葉にナオキは食いつくことが出来なかった。

誰かがやめるように言えばキリトはやめてくれるのではと淡い期待をしていたのだ。

けれどキリトの気持ちはそんなもので揺らぐ筈はない。

それを感じ取ってしまった。

ナオキは悔しくて拳を強く握る。

それを後ろで見ていたユウマがキリトに提案をする。

 

「なら、せめて他のギルド、風林火山の人達と手を組んでもいいんじゃないのかな?」

「悪いがこれは俺が1人でしたいんだ。それにそうするとアイテムが自分のものになるとは限らなくなるからな」

 

それだけ言うとキリトは二人を置き、歩き出す。

キリトの姿が見えなくなると二人のもとに人影が現れる。

 

「すいません、止められませんでした」

「仕方ないサ、オレっちもこの後言ってみるつもりダ、けどあんまり意味がなさそうダナ」

「だよね、後はあの子に任せよう」

「そうですね」

 

雪が降り一面白くなっている中、白とは対照の黒い人影が迷いの森を何のためらいもなく走っている。

 

「はぁはぁ・・・・・・出て来いよ、そこにいる奴」

 

キリトは立ち止まり索敵に引っかかったプレイヤーを呼ぶと木の後ろから二人、姿を見せる。

 

「カマク!やっぱりばれたじゃないか!」

「お前の隠れ方が下手くそだからだろうが!」

「何?僕が悪いのか!?カマクがとろいからばれたんだろう!」

「いーや、お前の大剣がデカくて気付かれたんだ!短剣にでも変えやがれ!」

 

「お、おーい」

 

おいてけぼりにされているキリトは戸惑い少し立ち尽くすがすぐに思考を戻す。

 

「悪いけど用がないなら、いいか?今、お前たちに付き合えるほど暇じゃないんだ」

 

キリトの言葉に二人とも言い合いを止めキリトに向き直す。

 

「そうか?そいつは悪かったな・・・・・ところでどこに行くんだよ、キリト?」

「お前達には関係ないだろ」

 

ワールンの言葉にキリトは冷たく返す。

キリトは気づいているのだ、この二人もみんなと同じで俺を止めに来たということをけれど少し違和感をを覚える。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

少しの静寂が訪れる・・・、キリトが静寂を嫌い無視して走り出す寸前にキリトの背後のワープポイントから複数のプレイヤーが現れた。

現れた集団はクラインの率いる風林火山、人数はおよそ十人。

風林火山はキリトに近づくとクラインがキリトの後ろにいる二人を無視しキリトと話し始める。

内容は蟻の谷と違いはない、二人が論争している間にカマクが誰かにメッセージを送る。

キリトとクラインがヒートアップし、キリトが剣の柄に手を持ち全員斬るかと葛藤しているとさらにワープポイントから先ほどの三倍以上のプレイヤーが現れる。

それを見たキリトがクラインにぼそりと声を投げかける。

 

「お前らも尾けられたな、クライン」

「・・・・・・ああ、そうみてェだな・・・・・・」

 

現れた集団を見てこれまで特に行動を起こさなかったカマクが声をあげる。

 

「ハっ!こりゃあ<聖竜連合>かよ、ぞろぞろ寄ってたかりやがって」

「あいつらかなり血の気の多いギルドだよ、カマク」

「チッ・・・予定変更だ、・・・・・・キリト!」

「な、何だ?」

 

急な指名にキリトが驚くがそんなことなどお構いなしとカマクが叫ぶ。

 

「お前だけ先に行け!!ここは俺らが食い止めてやる!」

「おい!勝手に決めんじゃねぇ!」

「じゃあお前が一人で相手するか?」

 

クラインが講義するがそれすらも押しのけようとするカマク。

けれどこうなってしまってはクラインもこの選択を選ぶと自分の中でわかっていた。

 

「くそッ!くそったれがッ!!仕方ねェ、行けッ、キリト!お前は行ってボスを倒せ!だがなぁ、死ぬなよ手前ェ!オレの前で死んだら許さねェぞ、ぜってぇ許さねェぞ!!」

 

キリトはそれを聞くとすぐさま背を向け、何も言わずに最後のワープポイントへと足を踏み入れた。

それを確認するとカマクがまたもメッセージを送りだす。

 

{キリトだけがそっちに向かった。悪いが後は任せた。死ぬなよ。}

 

メッセージの送信を確認すると素早くウインドウを閉じ武器を構え、目の前の集団に目を向ける。

 

「カマク、良かったのか?」

「ああ、俺達が出来るのはここまでだ、こっから先はキリト次第だろうよ」

「だな、上手く渡せるといいんだけど・・・」

 

 

雪が降り注ぐモミの巨木の下に彼女はいた。

軽く息を吐くと白い吐息でより寒さが助長されるような感覚になる。

動き易く耐寒にも優れるみどりを基調とした服を纏う少女の右腰には片手剣が、左の手首に簡易な盾がある。

それだけならどこにでもいる普通の片手剣使いだが彼女の背中にあるものが普通でなくする。

彼女の背中には弓と矢が入った矢筒が背負われている、意識を背中に持っていき、弓を確認すると彼女は約半年ほど前の事を思い出す。

中層で出会った一人の友達の事を・・・・・・・託された約束。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇマルカ、私ね、好きな人が出来たんだ」

「えっ!?ほんとに?ちょっと待って当てるから」

「きっと当たらないよ、マルカの知らない人だと思うし」

「ってことは黒猫団じゃないのよね?」

「え~っと、実は最近黒猫団に入った人なんだよね」

「そうなんだ、名前教えてもらっていい?」

「キリトって言うんだけど知ってるかな」

「!?・・・サチ・・その人って全身真っ黒な盾なし片手剣使いだったり・・・しないよね?」

「え?どうしてわかったの?」

「ははっ・・・(まさかあのキリトとは・・・ん~でも黒猫団って中層ギルドなのになんでそこに入ったんだろ?)」

「マルカ、キリトの事知ってるの?」

「まぁ知ってるというか・・・何というか・・・一緒に戦ったことがあるっていうか」

「そうなんだ!?でもキリトってソロでレベルも私たちより少し高いくらいなのに・・・どこで知り合ったの?」

「(キリト、自分のレベルとか隠してるんだ・・・私が勝手に教えちゃまずいよね・・)ま、前に下層行ったときに偶然一緒になったことがあるんだ」

「ふーん、そうなんだ」

「そ、それよりさ、サチ。盾持ち片手剣士に転向したの?」

「あ~そうなんだよね・・・」

「やっぱり怖い?」

「・・・うん。今まで後ろで突っついてただけなのに前で攻撃を受けるのが怖くて・・・、で、でもキリトが助けてくれるから・・・」

「そっか・・・、キリトに想いは伝えるの?」

「わからない、好きだけど、伝えるのが恥ずかしくって・・・」

「伝えるのが難しいなら手紙とか書いたら?あっでも手紙とかこの世界じゃないわ

よね・・・」

「それいいね、今度してみる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピコンッと鳴ったメッセージ受信の音が彼女を思い出の感傷から現実へと戻す。

 

「もうすぐキリトが来るのね・・・、サチ、あなたの思いはちゃんとキリトに届けるからね」

 

フレンド欄にあるモノクロで表示されているサチの名前を軽く眺め決意を固める。

彼女の目的は二つ、キリトの思いを出きるだけ尊重すること、そしてサチから託されたものを渡すこと。

キリトが話を聞いてくれるかわからない、もしかしたら攻撃してくるかもしれない。

けれどマルカは託されたものを必ずキリトに届けるとサチと約束した。

矢と矢筒をストレージに直し、視界の端の時計を見て時間を確認する。

 

「あと五分でイベント発生か・・・、それまでにキリトを説得できるかな?せめて死なずに渡せればいいんだけど。もうキリトもみんなも遅い!」

 

少し待たされることに苛立ちを感じながら時計の秒針を眺めていると後ろから人の気配を感じる。

 

「やっと来たわね、どれだけ待ったと思うのよ!」

 

振り向くとそこには驚きを顔に出しているキリトが居た。

 

「何でマルカがここに・・・」

「何でってあんたを待っていたのよ?」

「この場所は簡単に見つからないはず・・・!?」

 

キリトは自分だけがイベントボスの場所を知っているものばかりと思っていたが先ほどのワールンとカマクが自分の事を待っていた違和感に今、気づいた。

 

「私の家にね、スギの木とモミの木が植えられていてね、以前ここに来た時にこれだけモミの木なのがおかしかったのを覚えていたの」

「そういうことか、おかしかったんだ、ワールンとカマクが先回りしていたのが・・・これで納得したぜ」

「そう?じゃあ、私がここにいる理由も検討がついてそうね」

「おおかた、あいつらと一緒でソロで攻略するなってとこだろ?」

 

キリトが剣の柄を掴みマルカを切りかかる体制に入る。

それを見てもマルカは態度を変えずに会話を続ける。

 

「正解・・・でもね、私は自分の意思じゃなくて友達から頼まれてここにいるのよね」

「友達?」

「そう、もうこの世にはいないんだけどね、キリトもよく知っている子よ」

「俺も知っている?」

 

キリトはマルカの言葉でつい柄から手が離れる。

 

「うん、名前は・・・」

ゴォーン、ゴォーン

 

マルカのセリフはどこからか響く鈴の音によってかき消された。

 

「あっちゃー、間に合わなかったか」

「マルカ・・・悪いが俺は止まらないぜ、一人であいつを倒す、邪魔をするなら・・・お前も斬る!」

 

キリトは再び剣の柄を握り直すと上空から落ちてくる物体に目を向ける。

マルカは仕方ないとばかりに後ろに下がりキリトの邪魔になら無いようにする。

直ぐにボス<背教者ニコラス>は現れ、その奇妙な容姿から奇声を放つ。

 

「うるせえよ」

 

キリトは呟き、剣を抜くと、右足で思いきり雪を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトがソロで<背教者ニコラス>と対峙すること三十分、後ろから見ていたマルカの下にガタリ、タクト、ナオキ、ユウマが駆けつける。

 

「マルカ!!キリトはどうなった?」

「まだやられてねぇだろうな」

「うん、まだ戦ってる」

 

マルカ達の前ではキリトがポーションを口にしながら走り回る姿がある。

 

「すごいですね、もう二本もバーを削っているなんて」

「でもキリト君、かなり疲弊してるように見えるよ」

 

駆けつけた四人はすぐにでもキリトの加勢をしたいのだがマルカにキリトがみんなの力を求めるまでは助力の禁止を言ったのだ。

 

「おい!マルカ、まだだめなのかよ!」

「だめよ!キリトは一人で自分の責任を罪を償おうとしてるんだもの・・・」

「そんなの死んじまったら無意味だろうが!」

 

助けに行こうとするガタリだがマルカが袖を引っ張り止める。

マルカはわかっているのだ、死ぬどころか今のキリトがしていること自体無意味なことだと・・・。

 

「分かってる!でもお願い!まだ・・・・」

「・・・・くっそ!!」

 

マルカの手を振りほどくがマルカの意思に負けガタリはその場でキリトの戦いを眺める。

足場の悪い雪の中、キリトは敵の攻撃を避けソードスキルを当てる、何度この行動をしたのかなんてもう覚えてはいない。

ただ闇雲に突っ走り、ソードスキルを繰り出す。

サチを生き返らせるために・・・・。

しかし・・・キリトに底が見え始めた。

 

「・・・なっ!?」

 

回復のためのクリスタルもポーションもキリトのアイテム欄から無くなってしまった。

その異変に気づいたのはユウマだ。

 

「あれ?キリト君の様子がおかしいよ?」

「まさか・・回復アイテムを使い切ってしまったのでは・・・」

「そんな・・・おい!マルカ!」

「うっ・・・・、サチ・・・」

 

マルカも助けに行きたいがサチの遺言を思い出し躊躇ってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

サチが死んだ一週間後マルカの下にメッセージ録音クリスタルが一つ届いた。

差出人は死んだはずのサチからだ。

 

 

やっほ、マルカ。久しぶりかな。これを聞いたってことは私死んじゃったんだね。

マルカにこれを送ったのはお願いがあったからなんだ・・・死んだ私からの最後のお願い。

私が死んだらね、きっとキリトが自分を責めると思うんだ・・・実はね私が一度みんなから逃げたことがあって、そのときにキリトが私を見つけてくれて励ましてくれたんだ。

それからキリトは毎晩、私に大丈夫って君は絶対死なないって言ってくれたの。

だからキリトは私が死んだら自分を許せなくなっちゃうと思うんだ。

それでマルカにキリトを少しの間でいいから支えて欲しいの。

うんうん、見守ってくれるだけでいいの、キリトが本当に自分のために生きていられるかどうか。

極力自分の好きなようにさせてあげて、それでキリトが自分でその間違いに気づけるならそれが一番だと思うんだ。

見てられなくなっても次のクリスマスまではマルカがキリトに何かするのは避けてほしいんだ。

クリスマスまでにキリトが立ち直れなかったら、この後に送っているものをキリトに渡してください。

マルカ・・・後はお願いするね。

バイバイ・・・・・マルカ。

 

メッセージが終わるとサチからの渡し物が送られてきた。

さっきと同じクリスタルと中身が分からない紙袋が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルカがキリトに目を向けた瞬間それは遂に起きた。

キリトのHPが赤色になったのだ、彼自身このゲームが始まって初めてHPが赤色になった。

マルカはこのままではキリトが死ぬと理解したがそれでも動けない・・・。

それを見たガタリがマルカの前で一歩前に出た。

 

「悪いな、マルカ・・・俺は行く!」

 

そう言うと全力で駆けだしキリトと<背教者ニコラス>まで向かう。

「待って」っとマルカが言うがガタリにはもう聞こえていない。

 

「マルカ、お前にはお前の理由があるのかもしれない、けどな・・あいつにもお前と同じように理由があるんだよ、きっと・・・」

「タクト・・私・・・」

「マルカの友達を無下にする訳じゃねぇけどお前も自分のしたいようにしてもいいんじゃねえか?」

 

タクトは左腰にある剣を抜くとガタリを追うように走り出す。

それに続いてナオキとユウマも飛び出した。

 

「すいません、マルカさん」

「ごめん、僕も・・・」

 

向かうみんなを見つめ、マルカも決心する。

 

(ごめん!サチ、私はキリトに死んでほしくない!)

 

マルカも走り出しポーチから急いでクリスタルを取り出す。

しかしそれよりも早く<背教者ニコラス>の拳がキリトに届こうとする。

キリトは自分がこれを避けられないと自覚すると走馬灯のようにサチのことを思い出し涙が一粒零れ落ちる。

 

(ごめん・・・サチ、君の最後の一言を聞きたかったのに)

 

「うおぉぉぉぉぉ!とどけっーーーーーー!」

 

ガタリが雄叫びをあげながら<背教者ニコラス>にソードスキルを叩きこむ。

それはニコラスのちょうど腕の関節に決まり、拳の軌道をキリトから逸らした。

 

「え・・・・?」

「キリト・・・悪いけど俺も戦わしてくれ、嫌かもしれない、本当はさっきので死にたかったかもしれない・・・・けど俺はお前に救われた、そいつが泣いて死ぬとこ何て見たくないんだ」

 

そう言われてキリトは自分が涙していることに気づく。

直ぐに拭い涙を振り払う。

 

「いいのか?俺は何度も拒んだんだぞ」

「当たり前だろ、俺はお前と対等で居たいんだ」

 

ガタリの言葉にキリトは自然と笑顔になってしまう。

 

「・・・・・ありがとう」

 

 

 

 

ニコラスからの攻撃が地面に着き白い煙に包まれた二人を確認しようとタクトが声をかける。

 

「おい!無事か!」

 

返事は特にない、けれどゆっくりと視界がはれてくると2人の影が在ることに安堵する。

 

「まったく、無茶しますね」

「ひやひやしたよ」

 

ガタリは前を向くと剣を再び構え直す、それにつられてタクト、ナオキ、ユウマも戦闘モードに切り替える。

 

「行くぜ、キリト」

「ああ」

「マルカ!お前もいいか」

 

マルカはガタリの言葉を聞くとクリスタルを砕きながら返事をした。

 

「勿論よ!」

 

キリトはマルカのお蔭で回復したHPを確認すると先ほどと同じように雪を蹴る。

けれど彼の気持ちは先ほどよりもとても軽く、温かかった。

 

 

 

「決めろ!キリト!」

 

ガタリは<背教者ニコラス>にソードスキルの最後の一撃を与えると叫んだ。

その声にキリトは強く返事をし、剣を肩の高さまで構え、右腕を全力で引き絞る。

 

「はあぁぁぁぁ!」

 

絶叫と共に剣は深い赤色に染まりキリトの体をシステムの力で動かす。

それはジェットエンジンのような音と共に<背教者ニコラス>を突き抜け、HPをゼロにした。

<背教者ニコラス>は頭陀袋を残し消え、少しすると頭陀袋も光芒を散らして消えた。

 

「ふぅ、やったか・・・」

 

口を開いたのはタクトだ、腰を下ろしボスからドロップしたアイテムを確認すると自分の方にお目当てのものが無かったことを報告する。

 

「俺の方には無かったぜ、お前らはどうだ?」

「僕もないよ」

「こっちもですね」

 

ユウマとナオキにも無かったことで他の三人に目が行く。

 

「私も見当たらないわね」

「俺もないな・・・キリトはどうだ?」

 

そう言われキリトは剣をすぐに納めると、大きく息を吸いアイテムウインドウを確認する。

かなりアイテムが手に入ったのかスクロールする手はとても慎重でしっかりとひとつずつ確認する。

みんなが見つめるなかキリトはあっさりと見つけ震える手で操作をミスりながらもそれを取り出す。

<還魂の聖晶石>それはそういう名前であった。

 

「・・・・あった」

 

キリトがポツリと呟くと全員が「本当か?」など確認の声をあげキリトに駆け寄る。

 

「ああ、けど・・・・」

「どうした?」

 

キリトの様子を見たガタリがウインドウをのぞき込み解説を読む。

 

「・・・・マジかよ」

 

これしか言えなかった。ガタリの反応にみんなも確認するが嘘であってくれとしか言いようのない文であった。

 

「これじゃあ・・・サチは・・・」

 

マルカは涙が出るのをぐっとこらえるが、SAOでは感情表現が異常で涙を止めることが出来ない。

 

「うああ・・・・あああ・・・・・・」

 

キリトは泣き叫び、地面に両手をつけながら数分間泣き続けた。

キリトが泣き止むまで待ち、マルカ以外のみんなはその場を後にした。

 

「キリト、大丈夫?」

「ああ、もう落ち着いたよ」

 

そう言うキリトはまだ心ここにあらずといった様子である。

 

「あのね、ボスが来る前に言ってたことなんだけど・・・」

「友達がどうとかのやつか?」

「そう、その友達の名前なんだけどね」

 

マルカはウインドウを開きながら軽く息を吐き、アイテムをオブジェクト化させる。

 

「・・・サチ・・っていうの・・・私の・・友達だったんだ」

 

マルカの言葉にキリトは目を見開き、自分の聞いた人物が本当かどうか聞き直す。

 

「サチ・・・だって?」

「うん、サチ」

「そんな・・・」

「私ね、サチに頼まれたの、これをキリトに渡してって」

 

そう言ってキリトに手渡したのは包装された紙袋と録音メッセージクリスタル。

 

「これをサチが・・・?」

「彼女ね、キリトの事が好きだったの。・・・それで思いを伝えようとしてたんだけど結果できなくなっちゃったのね。それで死ぬ前にこれを残していて私からキリトにって託されたんだ」

「う、うぅ・・・」

 

キリトは手渡されたものを強く抱きしめ涙をこらえる。

 

「キリト!あなたは自分の所為でサチが死んだと思ってるかもしれない、でも彼女は絶対そんなこと思ってない!街に戻ってちゃんと聞いて、サチのホントの気持ちを・・・」

「・・・・ああ」

 

キリトが振り向くとワープポイントからクラインが現れ、キリトの下まで駆けよってくる。

 

「・・・キリト!?」

「クラインか・・・すまない」

 

キリトはそれだけ言うとクラインが出てきたワープポイントへ歩きだす。

クラインはキリトを止めようと手を伸ばすがマルカがその手を掴み遮る。

クラインもマルカに気圧され開いた手を強く握り涙を流しながら叫んだ。

 

「キリト・・・お前ェは・・お前ェは生きろよ・・・もしもお前ェ以外の全員が死んでも、お前ェは最後まで生きろよぉ・・・」

 

泣きながら何度も生きろと繰り返すクラインにマルカもつい掴んだ手を離しクラインとキリトを見つめる。

クラインはその場で座り込むがキリトは手に持った結晶と紙袋をストレージに直す。

 

「じゃあな」

 

それだけ言い、キリトは迷いの森を出るため歩み去った。

 

 

 

 

「キリト・・・絶対死なせないから・・・サチのためにも」

 




読んで頂きありがとうございます。

今回はクリスマス編となります。

この後のキリトは原作通りとなってます。

次回から少し本編とずれていきますのでご了承ください。

ではまた次回。
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