ダンガンロンパ -希望と絶望のバトルロワイアル- 作:roft
1日目 ①の島
AM10:00 山中
日向「ふぅ...」
日向はずっと歩き詰めだった。
昨日のヘリコプターでの移動時間の沈黙も中々の苦行だったが、歩きなれない山道を重い荷物を持って歩き続けるのはまさに地獄だ。
ただでさえ疲れる山道を死の恐怖を感じながら歩き回るのは、最早苦行以外の何者でもない。
日向(助けを呼びたいのは山々だけど、もしヤル気の奴が近くにいて声を聞きつけて殺しに来たら、それこそ本末転倒だ...あー、帰って草餅食べたい...)
???「止まれ」
背後から不意に声が聞こえた。
恐る恐る振り返ると...
日向「豚神!」
豚神「その呼び方いい加減辞めないか?デブは別にいいが、それは流石に胸に刺さる」
日向「だって同じ名前の奴がもう一人いるんだぞ?物凄い神経質だし、正直あだ名とかで呼び辛いんだよ...そんな事より、お前はあれから大丈夫なのか?」
豚神「腹が猛烈に減る事以外なら、全く問題ないぞ。だが安心しろ、この島には食べれそうな動物も植物もある。案外ここも住めば都かもしれん」
日向「本当に何者なんだよ...というか、そろそろ本名くらい教えたっていいんじゃないか?」
豚神「俺の名は、十神白夜だ」
日向「...ハァ」
豚神、と呼ばれる恰幅の良い少年は自ら『十神白夜』を名乗り希望ヶ峰学園に通う、能力不明正体不明の謎の生徒だ。
もう一人、 『十神白夜』という少年がいる為、皆には『豚神』『豚足ちゃん』等と呼ばれて慕われている。
正体は未だにわからないものの、人望が厚く責任感のある人物だ。コイツなら仲間になってもいいかも知れない、日向はそう思った。
日向「なぁ豚神」
豚神「どうした日向よ、本名は十神白夜だぞ?」
日向「その事はもういい。これからの話だ。もしお前さえ良ければ、俺はこれからお前と行動していきたいと思ってる」
豚神「ほぉ、それは何故だ?」
日向「確かにお前は、本当のところ誰なのかはわからない。けど、間違いなく人として筋が通っているし、人として信頼出来る気がするんだ。だから俺はお前と組みたい」
豚神「甘いな」
日向「!」
豚神「甘いと思った理由は2つ。1つは確かに俺は希望ヶ峰では皆に信頼され、有意義な学園生活に貢献してきたが、それはあの恵まれた学園内だったからに過ぎん。
ここは死と隣合わせの無人島、誰がいつ殺しにくるかわからんバトルロワイアルだ。こんな状況でも人を信じようとする奴など、お前か死んだ苗木くらいなものだ」
日向「豚神...!お前までそんな事よりいうのか!」
豚神「生き残りたいなら、甘さを捨てろ。冷徹になれ。それが出来ずにいるところを見ると、次に死ぬのは日向、お前かもしれんぞ」
自分の一番痛いところを突かれ、日向は言い返す言葉がなかった。
豚神「それともう1つの理由。それはお前が俺が超高校級の何かを見抜けなかったからだ」
豚神の言葉に、日向は動揺した。
日向「お前、超高校級の御曹司じゃなかったのか⁈」
豚神「超高校級の枠は各界毎年度1人しか選ばれない。もう一人の『十神白夜』が超高校級の御曹司だろう?俺は、そんな大層な物ではない」
日向「じ...じゃあ、お前は一体!」
豚神「超高校級の詐欺師。それこそが俺の、本当の超高校級の力だ。」
詐欺師。これ程信頼出来ない人物はいない。何せ、全てが嘘なのだ。日向は困惑していた。今までの豚神は全て嘘だったのか。自分達の知っている人物は、虚構の存在なのか。そう思うと、日向は酷く悲しくなった。
日向「豚神....お前は今までみんなを騙して生きてきたのか?」
豚神「お前の甘い幻想を壊した事はすまなかったな。だが、安心しろ。俺はお前の事を、少信頼する価値はある人物だと思っている」
日向「!それの何処に証拠があるんだよ!お前は詐欺師なんだろ!今話してる事も、全て嘘かもしれないじゃないか!」
動揺する日向に、豚神は優しく話しかけた。
豚神「いいかい日向くん、僕が詐欺師だったとして、それをただ闇雲に、誰かに打ち明けると思うかい?何の意味もなくそんな事をするなんて、自殺行為じゃないか。だが今は7日間も命が約束もされていない状況だ。そんな中で僕が君に超高校級の詐欺師だと伝える事にどんな意味があったと思う?」
日向「どういう意味だ?」
涙目の日向に、豚神はこう言った。
豚神「僕は君を信頼してる、本当の意味で仲間になりたいって意味さ。僕が詐欺師である事を隠して信頼されても、その信頼関係には何の意味もない。信頼されてるのは僕自身ではなく、僕が演じている『十神白夜』でしかない。僕は自分の嘘、才能にケジメをつけたんだ。こうする事でしか、僕は人を信じる事が出来ない、本当の自分を君に信じてほしかった。これでも日向くんがダメなら、僕はこの場から立ち去るよ」
日向「豚神....!そんな事を考えて...すまなかったなぁ...」
豚神「何で謝るんだい?」
日向「俺、豚神が自分の事を超高校級の詐欺師だって言った時、お前を疑ってしまった。お前の思いも知らずに...!」
豚神「いいんだよ、今信じてくれるなら僕はそれだけで嬉しいよ。一緒に頑張ろうね、日向くん」
日向「ありがとう....!頑張ろうな....!」
画して日向は豚神と組む事にしたのだった。
豚神「だが、普段はこの口調で喋るぞ。皆は俺の事を『十神白夜』だと思っているはずだ。急に口調や態度を変えようものなら何をされるかわからん!」
日向「いや、流石に本人がいるのにお前の事を十神だと思う奴はいないと思うぞ...?
ところで豚神」
豚神「何だ、日向よ」
日向「組むならお互いの武器を知っておいた方がいいと思うんだ。もし別の奴に襲われた時にカバーが効くかもしれないだろ?」
豚神「確かに、それもそうだな。日向よ、お前の武器は何だ?」
日向「俺は、これしか入ってなかった...」
日向はおもむろにスクールバッグから武器を出した。その手には大ぶりな軍用ナイフナイフが握られていた。
日向「こんなので生き残れって、無茶だろ..」
豚神「凶器...だと!日向、それはまだ当たりに近い方だと思うぞ」
日向「豚神は、何が入ってだったんだ?」
豚神「これだ」
豚神の手にはヘッドギアのついた双眼鏡のような物が握られていた。
日向「これは..?」
豚神「暗視スコープだ、これでは敵に襲われても戦う事すらままならん」
日向「大当たりじゃないか!夜に奇襲を仕掛けてくる奴がいるかもしれない、それさえ使えば暗闇で遠くに誰かがいてもすぐわかるし、行動も早く出来る」
豚神「確かにそれもそうだな、それに俺にはお前がいるからな」
日向「豚神!誰かの役に立ててこんなに嬉しいのって、何だか久しぶりかもしれないな」
豚神「安心しろ、俺がお前を導いてやる!」
2人は雑木林の中、一時の安堵を手に入れた。
③の島
AM10:00 岬
???「んー...ほんとーにダーレもいないっスねー...」
澪田唯吹は海辺の岩場に1人身を潜めていた、大きなギターを抱えながら。
澪田唯吹は、超高校級の軽音楽部と呼ばれており、その並外れた音楽センスでJ-POP界に衝撃を走らせたプロのギタリストだ。
無人島の潮風が、アーティストである彼女のセンチメンタルな感性に影響を与えるのに時間はかからなかった。
澪田「いやー...こーも誰もいないと、何だかバンド抜けた時の事、思い出しちゃって寂しーっスね....それにしても果てしなく続くこの綺麗な海、何だかシャウトしたくなるっスー♪」
澪田は大声で今の自分の思いの丈を即興の歌と愛用のギターの音色に乗せて、高らかに歌った。
その歌声はまさに、海辺にやって来ては美しい歌声で人を魅了する海の妖精セイレーンのようであった。
???「流石は超高校級の軽音楽部さんだね」
背後から拍手と共に声がした。
澪田「転校生の..!ナギトちゃん..!」
背後にいたのは、転校生コマエダナギトだった。
コマエダ「君はこんな時でも素敵な歌を歌う事が出来る、本当に素晴らしいよ!」
澪田「な、何言ってるんスかー!そんな事言ったって唯吹からは何も出ないっスよー!」
コマエダ「そんな事はないよ、君の素敵な歌声が聴けただけで僕はとても満足さ」
そう言いながら、コマエダはそっと澪田の隣に座った。
コマエダ「そんな素敵な超高校級の歌声を持っている君と、チームを組みたいんだ!」
澪田「そーなんスか?」
コマエダ「今僕は、モノクマに立ち向かう為の精鋭チームを作ろうとしているんだ。こんな馬鹿げた殺し合いなんて、僕ももう嫌なんだ」
澪田「け、けど、ナギトちゃんってー、確かプログラムに参加するって言ってたような...?」
澪田は怪訝そうな顔で、コマエダの顔を見る。
コマエダ「イヤァ、僕だって芝居くらい打つ事あるよ。あれはモノクマにこの計画がバレないようにする、ハッタリだよ。他のみんなにもわかってもらえるよう話すのに苦労したよ....」
コマエダは困った顔で、澪田に話した。
澪田「ナギトちゃんって、実はメチャメチャ考えて話してたんスね!何か最初は正直ちょっと怖かったスけど、何だか安心したっスー♪」
コマエダ「そう思ってもらえると僕も嬉しいよ!島から帰ったら澪田さんのファンクラブに入っちゃおうかな?」
澪田「ありがとうございまむ!最高にハイって奴っスーッ‼︎」
潮風が、岸壁の白い花を揺らしていた。
コマエダ「ところで、澪田さんの持ってる武器って何かな?」
澪田「武器っすかー?」
コマエダ「みんなで集まった時に、どんな武器を持ってるかわからないと作戦が立てにくくなるかなってさ。早めに知っておけば、作戦を事前に作っておけるしね」
澪田「流石はナギトちゃんっすね!イブキの武器はー、これっす!」
澪田がスクールバッグから出したのは、携帯型の機器だった。
澪田「これはー、みんなが何処にいるかとどんな武器を持ってるかがわかる『レーダー』ッス!だからナギトちゃんの武器もわかるっスよー、えーと確かにナギトちゃんはー」
コマエダ「僕のはこれだよ」
コマエダがスクールバッグから出したのは
マシンガンだった。
澪田「す、スゴイっスねー☆これってどうやって使うんスか?」
コマエダ「こうやって使うんだよ」
海辺の岩場には穴だらけになったギターと、同じく穴だらけになった澪田唯吹が転がっていた。
コマエダ「まずは1人、か。けどなかなか良い物を手に入れたね」
コマエダは一人ほくそ笑んだ。
潮風が、岸壁の赤い花を揺らしていた。
1日目 AM11:37
女子16番 澪田唯吹 死亡
残り30人