では第八章どうぞ!
「あぁーっ!!」
朝、それは唐突にやってきた。霊夢の突然の悲鳴に、ピアは予定よりも早く目が覚めた。
「……んだよっ!朝からやかましい……いったいどうしたんだ!」
「お……お……」
「……お賽銭?」
「お茶が……ないっ!」
「……はい?」
ピアが台所へ向かうと、そこには空っぽになった茶葉入れを持った霊夢が立っていた。酷く絶望した表情に、ピアはやや呆れた様子で近寄った。
「お前……たかがお茶なんかに、そんなにショックを受けるか?」
「受けるわよっ!これはね、前に妖夢からもらったお茶で、すっごく美味しかったのよ!なのに……なんでもう無くなってるわけ……?」
「知らんがな。俺に聞くな」
「ピア、業務命令!ちょっと白玉楼へ行って、お茶をもらってきて!」
「別にいいが……俺は白玉楼なんて場所は知らんぞ?」
「適当に空を飛んでたら、勝手に見つかるわよ。変な大きい穴があると思うから、そこが入り口」
「……だけですか?」
「それだけよ。……あ~もう!すぐになくならないようにって、一日一杯って決めてたのにぃ―!」
「そういえば、俺も昨日はそのお茶を飲んだな。確かにあれはうまかった」
「人のお茶を……勝手に盗むなんて……」
霊夢はかなり落ち込んでいた。ピアもその味を知っているので、霊夢が落ち込む気持ちは十分理解できた。
「……俺が白玉楼ってところで、お茶をもらってくるからよ。そんなに落ち込むなって」
「許さない……。こんな血も涙もない行いを……私は……」
「……どうするんだ?」
「私個人への宣戦布告と判断するっ!!」
「だったら部下を巻き込まないでください」
「うっさい!ピアの活躍は私の手柄!私の失敗はあんたの責任!」
「そんな殺生な……」
「いいからお茶をもらってきて!はやくっ!業務命令なんだからっ!」
「……りょーかい」
いろいろと理不尽なことを言われたが、ピアは何一つ気にせずに白玉楼へと出発した。
「……と言われてもなぁ……空に入り口があるったって、わかるかよ……」
やはりわからずに飛んでいた。空を見上げながら飛んでいたが、どこにもそれらしい穴は見当たらない。
「……帰りたくなってきた」
ピアが半分ほど諦めかけていた時だった。
「春ですよぉー!」
「だからそれはわかって……って、この声はッ!」
ピアは声がする方へ振り返った。そこには
「あ……あの人は……リリーさん!」
リリーホワイトが空を飛んでいた。紅魔館への道を教えてもらって以来、ピアはリリーホワイトのことを頼りにしていた。
「リリーさん!」
「あれぇ~?あなたはあの時の……博麗の巫女の使いさぁ~ん」
「お久しぶりです!あの、また道を聞きたいんですけど……いいですか?」
「いいですよぉ~。でも、私……もうすぐいなくなっちゃうんですよねぇ~」
「え?そうなんですか?」
「はい~。もうすぐ春の季節が終わってしまうのでぇ~。私はいなくなっちゃうんですよぉ~」
「そ……そんなぁ……」
ピアはがっくりと肩を落とした。リリーはそっとピアの肩に手をのせて、にっこりと笑った。
「でも……巫女の使いさんが私を、春を忘れない限り……私はずっと、ここにいますよぉ~」
「リ……リリーさん……」
ピアは生まれて初めて優しい人に出会った気がした。ピアは改めて道を尋ねた。
「リリーさん。白玉楼ってわかります?どこにあるかとか……」
「知ってますよぉ~。私、あそこで四面の中ボスをやってたんですよぉ~」
「……はい?」
「今のは忘れてくださって結構ですぅ~。あそこへの入り口なら、もっとも~っと高く飛ばなきゃ見つかりませんよぉ~」
「そ……そうなのか……。ありがとうございますっ!助かりました!」
「それはよかったですぅ~。では、どうか春を大切にぃ~」
リリーホワイトは最後まで笑顔のまま飛んでいった。ピアその後ろ姿に、小さく敬礼をした。
リリーホワイトの指示通りに、ピアはさらに高度を上げた。
「……ん?あれは……」
そこには、さっきまで見えなかった巨大な穴が広がっていた。それは冥界に通じる道だった。
「……あそこ……だよな」
ピアは確信をもってその穴へと入っていった。しばらく進むと辺りは突然暗くなり、先が見えないほどの長い階段が続いていた。
「……よし、飛んで行こう」
ピアは迷うことなくそれを飛んだ。長い階段を上りきり、額の汗をぬぐった。
「ふぅ……長く苦しい戦いだった」
ピアの目の前には日本庭園のような風景が広がっていた。日本にもある程度なじみがあるピアは、その景色を懐かしく感じた。
「へぇ~。変なところにあると思ったが、意外と日本っぽいな」
ピアは見事に手入れがされている庭に感心した。庭を眺めながら歩いている時だった。
「…………!」
ピアはとっさに前へ飛びのいた。ピアのすぐ近くの枝木がきれいに切り落とされた。
「くっ……!誰だ!」
「それはこちらのセリフだ。人の屋敷に堂々と侵入するとは……いい度胸だな」
ピアの目の前には白髪に黒のリボン。緑色の服に背中に差している大小異なる二刀の刀を持つ少女だった。少女の周辺には、魂のようなものが浮いていた。
「……君は?」
「私は白玉楼の庭師にして、この屋敷の主である幽々子様の従者……『魂魄妖夢』だっ!」
「(……めんどくさそうなやつに見つかった。ん……?妖夢?妖夢ってたしか……)」
ピアは霊夢の言葉を思い出した。霊夢がお茶をもらった妖夢とは、この少女のことだった。
「なるほど……君が魂魄妖夢か。君を探してたんだ」
「む……!私が目的だったのか!だが、あなたをここから先に通すわけには行かないっ!」
「……なんで?」
「なぜ……?ふっ……そんなことは決まっている!」
妖夢は長い方の太刀をピアに向けた。
「あからさまにおかしな格好をした不審者を、この白玉楼に入れるわけがないだろうっ!」
「…………」
不審者扱いされていた。このままではいけないので、ピアは誤解を解くため、説得を試みた。
「待ってくれ、俺は霊夢に頼まれて……」
「問答無用ッ!」
妖夢はピアの弁解を聞かず、いきなり斬りかかってきた。
「あぶねぇっ!」
ピアはとっさに回避したが、妖夢は立て続けに斬撃を繰り出した。
「お、おいっ!こら、やめろっ!うわ!あぶなっ!」
「どうした!?さっきから避けてばかりだぞ!!」
「当たり前だ!俺は戦いに来たんじゃないんだよ!」
「嘘をつくな!不審者!!」
「いい加減にしろっ!辻斬り!!」
ピアはエッジを抜き、妖夢の刀を受け止めた。さらにそのまま右腕の封印を開放し、妖夢を力で押し返した。
「……っ!なんだ、その腕は?!」
「悪魔の腕」
「くっ……やはり、お前はここで仕留める!」
妖夢は再び刀を構えた。
「この妖怪が鍛えたこの『楼観剣』に、切れぬものなど……あんまりないっ!」
「やめとけ、どうせ刃(・)が立たねぇって」
「な……なんだとっ!?」
ピアはキャリバーを抜いた。しかし、キャリバーの姿を剣のままにした。
「来い」
「お前も二刀流か……ならばっ!」
妖夢は背中に差してある、もう一本の刀を抜いた。楼観剣とは異なり、短い小太刀だった。
「そっちも、もう一本抜いたな」
「この刀は『白楼剣』。楼観剣と白楼剣……この二本を私に抜かせたこと……後悔させてやるっ!」
「そいつは無理だね。俺、悔いの無い生き方しかしてないから」
妖夢は構えを取り、ピアに向かって突貫した。妖夢の素早い太刀筋に対し、ピアはエッジのパワーとキャリバーのスピードを駆使して打ち合った。
「コイツ……できるっ!!」
「残念だが……君と俺では、くぐり抜けてきた地獄の数が違いすぎるよ」
長いつばぜり合いの後、二人はお互いに距離を取った。
「(つ……強い!いや、強いなんてものじゃない……強すぎる!まるでケタ違いだ……。このままじゃ……勝てない……。幽々子様……私は……)」
「どうした?戦闘中に考え事か?」
「……っ!うるさいっ!!」
「手、震えているぞ。それは怒りか?それとも恐れか?」
「う……うるさいうるさい!誰が恐れなんか……」
「恐れだったのか。俺はてっきり怒りの方かと思ってたんだがな」
「くっ……誰が……お前なんかっ!」
「かかって来いよ。ここまで来たら、俺はもう逃げも隠れもしない。どうした……怖いのか?」
「なっ……!だ……誰が……」
妖夢は怒りにわなわなと震えていた。そしてグッ、と顔をあげた。
「お……お前なんか怖くないっ!……野郎、ぶっ殺してやらあああぁぁぁぁぁ!!!!!」
とても女の子が言ってはならないようなセリフを吐きながら、妖夢は無謀ともいえる突貫をした。
「(……戦闘中に魔王が放つ“恐怖の気”に押しつぶされたか……。この子はまだまだ半人前だな……)」
ピアは冷静に妖夢の攻撃を捌いた。見事に受け流され、妖夢は突貫の勢いのまま壁に激突した。
「うわあぁぁ!!」
「…………」
「うっ……ま、まだまだあぁぁ!!」
「……はぁ」
ピアはため息をつくと、エッジを背中に戻した。キャリバーも腰に差し、両手をあげた。
「参った参った、降参だ。俺が悪かったから、許してください」
「…………」
ピアがエッジを戻したことにより、“恐怖の気”から解放されたのか、妖夢はその場にうつ伏せに倒れこんだ。
「あ……」
“恐怖の気”に押しつぶされつつも戦闘を続けていた反動で、妖夢は意識を失っていた。
「……まずい……どうしよう……」
「それなら心配はいらないわよぉ」
困惑しているピアの後ろから、誰かが声をかけた。ピアが後ろを振り返ると、ふわふわと浮いている人間がいた。
「あんたは……?」
「初めまして。私は『西行寺幽々子』。この白玉楼の主で、この冥界の管理もしているの」
「そうか……すまない。あんたの従者を、ちょっとやりすぎた」
「ふふっ。別にいいのよ。妖夢ならすぐに目を覚ますだろうし……それより、あなたは誰かしら?」
「あぁ、すまない。俺は博麗の巫女の使い。ちょっと理由があって……」
「知ってるわ。あなた……ピア・デケムでしょ?」
「俺の名前を……なんで?」
「私の知り合いから聞いたのよ。幻想郷を滅ぼす……危険人物だってね」
「なっ……なんだそれっ!?」
「安心して。私はその知り合いとずっと付き合いが長いんだけど……その話だけは信じられなかったわね」
「そ……そうなのか」
「それよりも……あなた、外来人なうえに魔王なんでしょ?妖夢が目を覚ますまで、世間話でもしてもらえないかしら?」
「え?あ、あぁ……わかった」
「うふふ。外の世界の話……楽しみだわぁ~」
「(やばい……俺、この人ちょっと苦手だ……)」
ピアは幽々子に誘われて、白玉楼の中へと入っていった。その途中で、幽々子が何かを思い出したかのように言った。
「あ、そうだ!妖夢はあなたが運んでね。お願いするわ」
「……そういうのは、中に入る前に言ってくれよ」
「うっふふふ。ごめんね」
幽々子に言われるがままに、ピアは妖夢を運んだ。その際、ピアは幽々子に常に見られていたが、ピアは全く気付かなかった。
白玉楼の中は広く、床は畳で敷き詰められていた。ピアは幽々子に縁側で座って待つように言われた。
「……しっかしまぁ、ただお茶をもらってくるだけのつもりが、こんなことになるとはな……」
ピアは、目の前にある大きな枯れ木に目が留まった。かなり歳があるらしく、いつ倒れても不思議ではなかった。
「こんな大きな桜の木が……他にもあるのか?」
そう言ってピアが木から一瞬、目を逸らした時だった。ピアの顔をのすぐ近くを、桜の花びらが舞い落ちた。
「ん?」
ピアが再び、先ほどの木に視線を戻した。しかし、そこにあったのは、枯れ木などではなかった。
「なっ……!」
ピアの目の前にあった木は、満開になっていた。桜の花びらが所狭しと舞い散り、今にも体が包まれそうだった。
「あ……」
「……ア。……ピア……」
「これは……一体……」
「ピアってば!」
「はっ……!」
幽々子に呼ばれ、ピアは我に返った。先ほどまで満開だった桜は、いつもの枯れ木に戻っていた。
「い……今のは……?」
「どうしたの、ピア?」
「いや、何でもない。……それより、どうしたんだ?」
「お団子、食べる?」
「……食べる」
幽々子はお団子の乗ったお皿をピアの横に置くと、お皿を挟むようにして自分も座った。
「はぁ~、お団子美味しいわぁ~」
「幽々子……だっけ?ここは本当に冥界なのか?冥界ってことは……幽々子や妖夢は幽霊なのか?」
「惜しいわね。正確には亡霊よ。ただ、妖夢の場合は半人半霊ってところね」
「半人半霊……人間と幽霊のハーフか……」
「そういうこと。……それでね、あなたを見た時から……思うところがあったのよ」
「……それは?」
「その前に、言っておかなくてはね……。私、どうやらあなたに惚れちゃったみたい」
「……はぁ!?惚れ……えぇ?!」
「あなたと妖夢の戦い、ずっと見てたのよ。あなたの体から感じる力に……私は心を奪われた」
「え……えぇ~……」
「うふふ……。亡霊だと、素敵な出会いはないものだと思ったけど……。私の運命の人と呼べる人……あなたに出会えるなんて、私は幸せよ」
「俺はすっごい複雑です」
「ねぇ、うちの妖夢は半人半霊だけど……」
幽々子はピアに近寄ると、耳元で小さくささやいた。
「“半霊半魔”も、ひょっとしたらできるんじゃないかしら?」
「……うえぇ?」
幽々子はズイッ、とピアの目の前に寄ってきた。あまりに距離が近すぎたのか、ピアは幽々子から目を逸らした。
「ねぇ……ダメかしら?私はできると思うんだけどなぁ~」
「やめてください死んでしまいます。……主に俺が」
「いいでしょ?ピア……子作りしましょ?」
「まぁて待て待て待て!落ち着くんだっ!!いいか、冷静になって考えろ……」
「私は至って、冷静よん」
「やめてくれ……半霊半魔の子供とか、俺は見たくないっ!」
「私は欲しいな」
「人間と悪魔じゃ、何もかもが違うんだっての!というか、俺は幽々子のことはなにも知らねぇし……」
「だったら教えてあげるわよ?頭のてっぺんから足の先まで……隅々まで……ね」
「もう卑猥にしか聞こえねぇよっ!!」
幽々子の連続アプローチを、ピアはことごとく拒絶した。しかし、幽々子の方は本気だったらしく、頬を膨らませた。
「ぶーっ。女の子にここまで言わせておいて、ぜーんぶ断っちゃうなんて……ピアのいじわるぅ」
「い……意地悪って、あのなぁ……。あ、そうだ幽々子。聞きたいことがあるんだが」
「ん~?結婚式は来年にするけどぉ?」
「しないよっ!!……って、そうじゃないんだよ。ほら、あれさ……」
ピアはすぐそこにある大きな枯れ木を指さした。
「あの木、随分と枯れ果ててるな。何の木だ?」
「あぁ、あれね。あれはただの木じゃないわ。あれはね、『西行妖』っていうの。もうず~っと昔からある木なんだけど、どれくらいかは、私も知らないわ」
「あれってさ……咲かないのか?」
「えぇ……だから前に咲かせようとしたんだけど……霊夢や魔理沙たちに邪魔されちゃった」
「……もしかして……霊夢から聞いたことあるんだけど、『春雪異変』って、お前のせいだったのか?」
「あら?誰がやったとかまで聞いてないの?」
「いや、教えてくれなかった」
「そうなの。霊夢もひどいことをするわねぇ。私だったら幻想郷の歴史から、私の○感帯まで余すことなく教えてあげるのに」
「……いまサラッとやばいこと言ったぞ……。これって、ほかの人が知っても大丈夫なのか?」
「ぜ~んぜん、大丈夫よ」
「……あぁ、これは大丈夫じゃないヤツだ……」
「それで……何の話だったかしら?」
「……もういいです」
ピアは会話を諦めた。そして再び考え事を始めた。
「(……西行妖。白玉楼に昔からある桜の木……。幽々子はあれは咲かないと言った。だが、俺はあれが咲いているところを見た。……なぜだ?)」
謎の桜、西行妖のことを考えていると、妖夢が戻ってきた。
「ゆ……幽々子様……申し訳ありません」
「あら、妖夢。起きてたのね?」
「はい……。先ほどから、陰でお話を伺わせていただきました。……お兄さん。誤解とはいえ、あなたに攻撃してしまった無礼を、どうかお許しください」
「別に……気にしてないよ。それより、妖夢に怪我がないか心配だ」
「私ですか?いえ……私は大丈夫です。お兄さんが、上手に私の攻撃を受け流してくれたから……」
「そうか。よかった」
ピアはほっとした。
「(妖夢が大怪我したら、幽々子に“責任とれ”とか言われて結婚させられそうだしなぁ……)」
「ピア?何か言ったかしら?」
「え、あ、いや!なんでもねぇよ、幽々子」
「ふぅん。そうなの」
「(……ふぅ)」
妖夢が戻って、ようやく落ち着いてきたのを見計らって、ピアは本題を持ち出した。
「それより……白玉楼にあるお茶を分けてもらえないか?神社にあるお茶がなくなっちまったみたいでさ……」
「そうなんですか?……わかりました。少々お待ちください、お兄さん」
「ありがとう、妖夢」
「ピア。西行寺幽々子はお茶提供の見返りとして、あなたを要求します」
「却下です。だめです。いけません。無理です。諦めてください」
「残念……」
幽々子はしょぼんとした。ピアはため息をつくと、幽々子の肩にそっと手を乗せた。
「そんながっかりするなよ。……また遊びに来てやるからさ」
「……本当?」
「本当だ。約束するよ」
「……それなら……いいかな」
「よし」
「そのかわり……ちゃんと遊びに来るのよ?」
「来るっての」
「お兄さん、お待たせしました」
妖夢がお茶の葉を持ってきた。ピアは妖夢が持ってきた小さな包みを受け取った。
「助かった。これで霊夢を安心してやれるよ」
「そうですか。……すいません、これくらいしかできなくて……」
「それなら妖夢、今度からピアに稽古をつけてもらえばいいじゃない」
「ちょ!幽々子様、何を言ってるんですか!!そんな……お兄さんに迷惑が……」
「いや、大丈夫だ」
「お……お兄さん……」
「妖夢……俺でよかったら、模擬線の相手くらいにはなってやれる。お茶を分けてもらった、お礼代わりにな」
「お兄さん……。はい!よろしくお願いしますっ!!」
「……っと、さすがに今日は無理かな?霊夢がお茶を待ってるからな」
「わかりました。また、いつでもいらしてください」
「ピア、私はいつでも待ってるからね」
「何を待ってるって?」
「秘密よ」
「……そうかい」
ピアは白玉楼の門まで見送ってもらった。門をくぐったところで、もう一度振り返った。
「本当にありがとう。助かったよ」
「こちらこそ」
「また来てね。待ってるわぁ~」
妖夢と幽々子に別れを告げ、ピアは博麗神社へと帰還した。また来てねと言われたが、幽々子は勘弁してほしいと、ピアはつくづく思った。
「あぁ~面白かった。博麗の巫女の使い……ピア・デケム。なかなか悪くなかったわね」
幽々子は一人、お茶を飲みながらつぶやいた。わずかに残る桜の木を見上げ、満足した顔をした。
「……そこにいるんでしょう?」
幽々子はお茶を置き、視線を後ろの方へとやった。
「……紫」
「幽々子……これはどういうことかしら?」
そこには紫がいた。紫にしては珍しく、スキマの外にいた。
「どういう?何のことかしら?」
「とぼけないで。“ピアが警戒を解いて能力を使っていない隙に、幽々子の能力を使ってあの男を殺す”。私はそう言って、あなたはそれを了承したはずよ?」
「えぇ、たしかにそうね」
「……!ならば、なぜ!?」
「そんなの簡単よ、紫。“気が変わった”……それだけよ」
「幽々子!!」
「紫。あの子……ピアはあなたが考えているほど愚かな男ではないわ。彼はけっして……幻想郷を滅ぼすような真似はしないわ」
「……どこにそんな保証があるというの?幽々子のその確信は、いったいどこから来るのよ!?」
「乙女の勘。あと……私は好きよ。ピアのこと」
「……幽々子」
「ごめんね、紫。今回ばかりは……あなたの指示には従えないわ」
「霊夢だけじゃなく幽々子まで……どうして、あの男……くっ!!」
紫はスキマの中へと消えていった。
幽々子は黙ってそれを見守り、再び向きを戻すと、静かにお茶を飲んだ。
幽々子様ファンの方には申し訳ないですm(_ _)m
ですが私の中のイメージで書く幽々子様はこうなります。
しかし誰にでもではないです、一途なだけです
仕事が多忙で返信出来ない事もありますがいつでも感想募集中です!