こんな歓迎会ならいいなと思う作者の願望です(^_^;)
ちなみにこの話につきましては本編とはあまり関係ありませんのでご了承ください
では第十四.五章、歓迎会へご招待
夏が終わり始め、涼しい風が吹くようになってきた。博麗神社を訪れた魔理沙は、霊夢に会って一言だけ言った。
「宴会をやろうぜっ!ピアの歓迎会だ!!みんなを集めてくるぜ!!」
それだけ言い残すと、さっさと帰ってしまった。
「…………」
霊夢は珍しく何も言わなかった。むしろ、魔理沙の意見に賛同していた。
「(……確かにそうね……。まともな歓迎もしていなかったし……たまにはいいかな)」
こうして、ピア・デケム歓迎会を開催することとなった。
夜。紅魔館から地霊殿まで、これまでピアと交流を深めた者たちが集まる博麗神社の宴会会場。
「よぉーしっ!みんな、酒は持ったかぁー?」
魔理沙が大きく盃を掲げた。みんなも、それに合わせて手をあげた。
「それじゃ!博麗の巫女の使い、ピア・デケムの幻想入りを祝して……乾杯っ!!」
「「「かんぱーい!!」」」
魔理沙の音頭を合図に、宴が始まった。
「ピ~ア~。私と飲みましょ?」
「あぁ、レミリアか。いいぞ。飲もう」
「うふふ……そういうと思ったわ。それで……どうかしら?少しは幻想郷にも馴染めたかしら?」
「まぁな。それもこれも、皆が俺に親切にしてくれたおかげだよ。レミリアにも礼を言っとかないとな……ありがとう」
「べ……別にそれくらいなら、礼を言わなくてもいいわよ。私は……あなたといるときが、一番幸せだから……」
「……レミリア?」
「ピア。私のことは……その……『レミィ』って呼んで……。ううん、呼んでほしいの」
「えっ?いいのか?」
「あなたじゃなきゃ嫌なのよ……。ねぇ?お願い……」
「わ、わかったよ。……レ……レミィ……」
「ふふっ……ありがと、ピア」
「ちょっと~?なぁに人の旦那を誘惑してくれているのかしら?」
「……!貴様……亡霊か……」
レミリアの至福の時を邪魔したのは幽々子だった。幽々子はピアの後ろから抱き付くようにもたれかかった。
「うわっ!幽々子!?」
「ふっふっふ~。つ~かま~えた!」
「ちょ!?あんたピアに何すんのよ!?」
「う~ん?夫に甘えるのは妻の務めです♪」
「あんたにピアはふさわしくないわよっ!その汚い手をどきなさいっ!!」
「あら、汚いなんて失礼ね~。ね?ピア?」
「え?あ、その……汚いはさすがに言いすぎかと……」
「ピア!?亡霊の肩を持つ気なの!?」
「あ、いや!そういうわけじゃ……」
「ふ~ん。じゃあ、ピアはどっちを選ぶの?」
「ぐぅ……」
「ピアったら……すっかりお嬢様を虜にしちゃったのね」
「それを言うなら幽々子様も……。あんまり、お兄さんにご迷惑をかけては……」
一部始終を見ていた咲夜と妖夢は、ピアに同情していた。そして、二人の話題は互いの主人の話に変わる。
「それにしても……お嬢様はすっかりピアに夢中ね」
「そうなんですか?」
「えぇ、それはもう。毎日毎日、ピアが専属執事になった場合の話をするのよ。あの時のお嬢様は、本当に楽しそうだわ」
「幽々子様も、お兄さんが旦那さんになったらって、いつも言うんですよ。もう子供の名前まで決めちゃって……すっかりその気になっちゃってるんですよ」
「あら?そっちも?」
「え?そちらもですか?」
そして二人は黙った。その後、お互いに笑いがこみ上げ、くすくすと笑った。
「なんだか……子供みたいね」
「えぇ。まるで子供です」
そして二人は、お互いに杯を交わした。
レミリアと幽々子に取り合いをされているピアを見て、神奈子が悪態をついた。
「あの悪魔……ほかにも女を手懐けていたのか。まったく下品なやつだ」
「手懐けてないよ。ただピアが人気者なだけだよ」
「諏訪子……」
「神奈子……意地を張ってないで、いい加減に認めなよ。早苗はピアが好きで好きでたまらないんだからさ」
「早苗……どうしてあんな男に惚れたんだ……?私にはさっぱりわからない」
「それは神奈子がピアのことを嫌っているからさ。ピアのことを知ろうとしないから、子の心親知らずって言われるんだ」
「それを言うなら、“親の心子知らず”だろう?」
「い~や!神奈子が早苗のことをわかってない!早苗に幸せになってほしくないの?」
「それは……なってほしいさ」
「だったら見守ってあげようよ。……ほら、見てごらん?」
「…………」
二人の視線の先には、二人だけで飲むピアと早苗の姿があった。早苗は幸せそうな笑顔をしていた。
「……まぁ、考えない……でもない」
「まったく……頑固だねぇ……」
諏訪子は再び二人に視線を戻した。ピアも早苗も、楽しそうに笑っていた。
「すごいですねっ!ピアさんの世界にも妖怪がいるなんて!」
「そんなに自慢できるもんじゃないさ。強い奴に限って、人間に作られた人工妖怪だしな」
「人間が妖怪を創れるんですか?!すごい科学力ですね!!」
「すごくねぇよ……。おかげで何人死んだと……」
「え?」
「いや、何でもない。……それでさぁ、人工妖怪第一号の十尾の狐が鬱陶しくてさぁ……」
「そうなんですか?」
「そーなんだよ!性格はひねくれてるし、すぐに喧嘩を売ってくるし……それなのに人望に厚いとは……許せんっ!!」
「でも、ピアさんは幻想郷では、いろんな人に慕われていますよ!そんな狐妖怪に比べたら、ピアさんの方がよっぽどかっこいいですよ!!」
「早苗……ありがとう。今、すっげー気持ちが楽になった」
「そ……そうですか?えへへ……嬉しいです!」
「早苗ぇっ!あんたはまたピアとイチャついてぇっ!!」
「うおぉ!?霊夢!!」
「あら?霊夢さん、どうしたんですか?」
「人が見てないところでイチャイチャしてんじゃないわよ!!ピアは私が雇ってんのよ!!」
「そうでしたか。では、霊夢さんの目の届く場所でイチャイチャさせてもらいますね♪」
「さあぁぁなぁええぇぇ!!いい加減にしろーっ!!」
「おうわっ!!」
霊夢が早苗を追いかけはじめたので、ピアは慌ててその場から退避した。避難先には、萃香と勇儀がいた。
「おぉ?ピア~、飲んでるかい?」
「お?萃香と勇儀か。そっちも楽しんでるか?」
「おいおい、何を寝言を言ってるんだい?楽しむべきはお前さんの方だろ?」
「そうだよぉ~。これはピアの歓迎会なんだからさぁ。ピアが楽しまなきゃダメだろぉ~?」
「……それもそうだったな。すまん、なんかいろいろあって忘れてた」
「あっはっはっ!いかにもお前さんらしいねぇ!どうだい?これから私ら二人と飲まないかい?」
「鬼と酒か……たまにはありかな」
「よっしゃ!!ジャンジャン飲むよ~!」
「(俺は酔うことがないからな……。二人がつぶれるまで飲むかな)」
ピアは萃香と勇儀に付き合うことにした。その間も、終始ピアは二人に弄ばれていた。
「ピ~ア~……うぇひひ~」
「おい、萃香。飲む勢いが速すぎるぞ」
「あははぁ~……。萃香もまだまだだねぇ~」
「勇儀もだ。その辺にしとけ」
「ん~?そうだね~……お前さんが膝枕をしてくれるってんならねぇ~」
「なぜにっ!?」
「あー!勇儀だけずるいぞぉ~。私も膝枕ぁ~!」
「……わかったよ。ほら」
ピアはあぐらをかいて、二人の頭を膝の上に乗せた。
「いやぁ~。お前さんの膝枕は気持ちいいねぇ~」
「まったくだぁ~……ぐうぅ……」
「寝たよ……」
萃香と勇儀はピアの膝の上で、そのまま眠りについてしまった。ピアが全く動けずに困っていると、ヤマメとパルスィがやってきた。
「やぁ、ピアさん!おや、何かお困りかな?」
「いや、困っているというかなんというか……」
「勇儀がよつぶれるまで飲めるなんて……そのお酒への強さが妬ましいわ……!」
「そうだ!ピアさん、膝枕を代わってあげるよ!ほかの人とも飲みたいでしょ?」
「すまない、頼めるか?」
「合点承知の助!ほら、パルスィは勇儀の方を頼むよ」
「なっ!私もするの!?」
「やるの!ほら」
ピアは二人を起こさないようにそっと頭をあげた。そして、慎重にヤマメとパルスィと入れ替わった。
「助かるよ。……なんかごめんな」
「いいよいいよ!ほら、あっちで魔法使いの人たちが飲んでるよ!行ってあげなよ」
「わかった。二人は任せたぜ」
ピアは席を離れると、魔理沙たちのもとへ向かった。去り際にパルスィが何かを言っていたが、ピアにはよく聞こえなかった。
「……というわけだから、ピアの魔力で新技術を開発することも夢ではないわ!!」
「へぇ~。さすがはパチュリーだな。ピアの魔力にそんな力が……知らなかったぜ」
「それほど強力な魔力があるなら、私が目指している自律型人形も夢じゃないかしら?」
「もちろんよっ!ピアの魔力は、万物に無限の可能性を与えてくれるわ!まさに、私の研究は間違っていなかったってことよ!!」
「ふ~ん……。意外とすごかったのね……ピアって……」
「誰がすごいって?」
三人の会話に、ピアが入り込んできた。魔理沙とアリスが場所を作ってくれたので、二人の間に座った。
「悪いな」
「いやいやなになに。今さっきまで、ピアの魔力はすごいって話をしてたんだぜ」
「俺の魔力?パチュリーが言ってたやつか」
「えぇ、そうよ。それと……私のことは『パチェ』で構わないわ」
「そうか?じゃあ、パチェ。俺の魔力のどこがすごいんだ?」
「ピアの魔力はその場の状況や環境に応じて、様々な力に変化……というより、擬態するのよ」
「擬態?」
「そう。相手と同じ力になることで、耐性をつけているのよ。同じ力同士で相殺したり、相手の力を吸収しているのね」
「なるほど……。それは確かにすごいわね。ぜひ私の人形にも試してみたいわ」
「まじでか?」
「冗談よ。そういうのは、自分の力で作り上げてこそだもの。私は自力でやってみせるわ」
「さすがだな、アリス。まだ会って間もないけど……これからもよろしく頼む」
「……そうね。こちらこそ、よろしくね」
「まぁまぁ!そんな堅苦しいことせずに……ピア!ポッキーゲームしようぜ!!」
「え……えぇっ!?ちょま、待て待て待て!!」
「待ったなしだぜ!!ほら、咥えろよ!」
「魔理沙……酔ってるわね?」
「わたしはべちゅに!よってなんか……ふわぁ……」
魔理沙は大きなあくびをした。とても眠たそうにしていたので、アリスが魔理沙を横に寝かせてあげた。
「ほら、もう寝なさい。ちょっと飲みすぎてるのよ」
「わらしはぁ……へいきらへぇ……」
魔理沙はそのまま眠った。アリスがやれやれ、といった顔をした。
「まったく……すぐ調子に乗るんだから……」
「アリスは随分と面倒見がいいんだな」
「違うわよ、ピア。ただのお節介」
「パチュリー!変なことを吹き込まないで!」
「いや……アリスはいい奥さんになると思うぞ」
「えっ……?」
アリスはぽかん、としていた。ピアはそのまま続けて言った。
「たまにきついことを言うこともあるけど、それもアリスの優しさあってこそなんだろうな。俺はアリスのような女性は……結構好きかな」
「なっ……!好きって……そんな……」
アリスは顔を真っ赤にしてうつむいた。ピアがわけもわからずにいると、パチュリーが気を遣い、この場を離れるように言った。ピアはパチュリーに言われたとおりにした。
「……どう?なかなか悪くない男でしょ?」
「悪くないっていうか……真っ直ぐすぎるでしょ……?思ったことは口にするタイプ……?」
「みたいね。嘘はついてないみたいよ?」
「はぁ……なんだかちょっと……照れ臭いわね……」
アリスはピアという人間が、どういう人物なのかを理解した。理解すると、アリスの心の中は、不思議と暖かくなった。
「うん。どうやらみんな、楽しめているようだな」
「あ……あの……」
宴会の様子を眺めていたピアに声をかけたのは、鈴仙だった。ピアはその場に座り、鈴仙にも座るように促した。
「よっと……ふぅ。幻想郷はどうですか?もう慣れましたか?」
「まぁ、かなりね。迷いの竹林ばかりは、一人で攻略するには時間がかかりそうだ」
「うふふ……そうですね。もしそうなったら、ピアさんはいつでも一人で来れますね」
「そこら辺は、妹紅にでもアドバイスをもらおうか……。そういえば向こうに永琳がいるのに、てゐたちはいないんだな」
「あ……それなんですけど……」
「ん?どうかしたのか?」
「姫様は、“あいつは顔は見たくないわよっ!!”と言ってまして……。てゐに至っては、“なんか会うのが気恥ずかしい”って言ってました」
「それで来てないのか……。輝夜はともかく、てゐのその理由は何だ?」
「多分ですけど……ピアさんって、てゐのことをかなり褒めてたじゃないですか。それで、ちょっと照れてるんじゃないかと……」
「なんだそりゃ……。その程度の理由なら、来ればよかったのにな……」
「私も何度もそう言いましたよ。でも、“あの人には嘘をつけない”って言って、ずっと部屋の奥に引き籠ってました」
「……そっか。じゃあ、またいつか永遠亭に会いに行ってやるかな?」
「ぜひ、そうしてください!てゐったら……“ピアの言うことなら聞いてもいいけどねー?”とか言って、私の言うことを全然聞いてくれないんですよ!」
「そ……そうか……。なら、ちょいと会いに行かないとな」
「その時はぜひ……。あ!師匠が呼んでいるので、私はこのあたりで失礼させていただきます」
鈴仙が立ち上がるのに合わせて、ピアも立ち上がった。
「あいよ。またな、鈴仙」
「はい!それでは、また!」
鈴仙は永琳の方へと駆けていった。鈴仙がいなくなり、ピアは再び一人になった。
「ふぅ……」
カシャッ!!
「うん?文か?」
シャッター音に反応してピアが振り返ると、カメラを構えた文がいた。文は笑顔でピアに返事をした。
「はい、どうも!清く正しい射命丸です!!ピアさん、楽しんでらっしゃいますか?」
「まぁな。文も楽しんでいるか?」
「はい、もちろん!ピアさんのあんな写真やこんな写真も、いっぱい取らせていただきました!!」
「……おい、ちょっと待て。まさかそれ全部……?」
「あ、それはないですよ。ピアさんのことは、世間の誤解を受けないように、ある程度いい意味で捏造させてもらっているので!!」
「いい意味だとしても、捏造するな。言葉を選んで、ありのままに起こったことを知らせればいい」
「しかし、幻想郷におけるピアさんの立ち位置は相当重要なものでして……軽率には扱えないんですよ~」
「……そうなのか?まぁ、そっちの事情にまで踏み込む気はないが……。そうなっているというなら、あまり文句は言えないな」
「申し訳ありません。私としても、ピアさんの意見はぜひ尊重したいのですが……」
「わかったよ。とりあえず、敬語は何とかならんのか?」
「こればかりは……」
「……そうか。無理にとは言わないよ。新聞、楽しみにしてるよ」
「はい!期待しててくださいねっ!!」
文はそういうと、別の写真を撮るために飛んで行った。それを見送った後、ピアはさっきから袖を引っ張られていることに気付いた。
「ん?」
後ろを振り返ると、袖を引っ張っていたのはフランだった。フランは上目遣いでピアを見上げると
「お兄様……フラン、お兄様のそばにいてもいい?」
ピアの体にくっついて甘えてきた。ピアにそれを拒む理由がないので、許可をしてあげると満面の笑みでお礼を言った。
「えっへへ……お兄様ぁ~」
「わかったわかった。よ~しよしよし……」
ピアはその場に座り込み、フランはピアの膝の上に座った。ピアがフランを可愛がっていると、不意に肩を叩かれた。
「ん?」
ピアがもう一度振り返った。ピアの肩を叩いていたのは、こいしだった。
「ねぇ……私、お兄ちゃんと一緒にいてもいい?」
こいしもまた、ピアにくっついてきた。すると、こいしが甘えていることに気付いたフランが頬を膨らませた。
「あぁ~!こいし!?お兄様はフランと一緒にいるの!!」
「何を言ってるの、フラン?お兄ちゃんは私と一緒にいるのよ!!」
「お兄様はフランのお兄様だもん!!」
「違うよ!お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだってば!!」
「お前たち……ちょっとは落ち着けって……」
「フランのお兄様なの~!!」
「私のお兄ちゃんだってば~!!」
ピアはフランとこいしに引っ張られ、ヤジロベエのように体を左右した。
「こら、お前ら!やめ……やめろっての―!!」
「…………」
「…………」
その様子を、姉二人が眺めていた。やがて、レミリアがゆっくりと話し始めた。
「なんていうか……ねぇ?」
「まぁ……そうよね……」
「これは……喜ぶべきかしら?それとも、嫉妬するべきかしら?」
「さぁ。でも……私は少し、うれしいわね」
「……なぜかしら?さとり」
「あのこいしがピアさんと会って以来、よく私たちの前に姿を現すようになったの。今回の宴会も、“お兄ちゃんがいるなら行く”と、言ってくれたんです」
「うちのフランも一緒ね……。ピアの歓迎会をすると言ったら、“フランもお兄様に会いに行く”って言ったのよ。私たちもあの子たちも……似た者同士ね」
「そうね……。本当によく似てるわね、私たち」
そう言って二人は、互いに妹のことを思いながらお酒を飲んだ。
「あぁ、もう!なら……これでどうだ!!」
ピアは引っ張り合う二人を抱き寄せた。一気に引き寄せられ、二人はピアと密着した。
「ほら、これで文句はないだろ?」
「……ま、まぁ……フランは別にいいけど……」
「私も……気にならない……かな……」
「ならいいじゃないか。二人一緒に相手してあげるよ」
「やったぁ!お兄様、大好き!!」
「私も!ありがとう、お兄ちゃん!!」
二人同時に甘えられては、さすがのピアは身動きが取れなかった。ピアは二人が満足するまで、甘えられることにした。
宴会はやがて終わりを告げた。皆が帰っていくなかで、ピアは宴会の後片付けをしていた。
「ふぅ……」
ピアの視線の先には、神社の中で酔いつぶれた魔理沙と疲れ果てた霊夢が一緒に寝ていた。
「やれやれ……」
ピアは魔理沙に毛布を掛けた。その後、霊夢にも毛布を掛けようとした、その時だった。
「……は……から……」
「…………?」
霊夢が何やら寝言を言っていた。しかし、ピアにはよく聞き取れなかったので、もう一度耳を傾けた。
「ピアは……私が……守るから……」
「……!霊夢……」
ピアは霊夢を起こさないように、そっと毛布を掛けた。その後、後片付けをするために再び外に出た時だった。
「待っていたわ……ピア・デケム」
「……!この声は……八雲紫!?」
ピアが空を見上げると、月を背にした紫が宙に浮いていた。その隣には、見慣れない人物がいた。
「(九尾の狐か……この世界にもいたんだな……)」
「紫様……あの男が……?」
「えぇ、そうよ」
紫は地上に降り立つと、ピアを睨み付けた。ピアは紫から敵意を感じ、とっさに身構えた。
「……何の用だ?八雲紫?今は片付けで忙しいんだが?」
「そうでしょうね?今ならば……誰にも気づかれない……」
「……あ、そうだ」
「……?何かしら?」
「ありがとう」
「!?!?!?!?」
紫は突然お礼を言われ、ひどく動揺した。それもそのはずである。紫はピアを殺しに来たのだから。
「な……何のことかしら?」
「能力のことだ。教えてくれてありがとう。あれからすごく助かってるんだ」
「…………!」
「能力を無効にするのはさすがに危険だが……それでも、誰かの役には立ってるよ。本当に助かった!」
「……っ!」
紫は険しい顔つきになった。しかし、そのまま何も言わずに振り返ると
「……戻るわよ、藍」
「……!紫様!?」
「安心なさい。私は必ず……ここを守るわ」
「……わかりました」
紫はゆっくり振り返ると、優しくほほ笑みながら言った。
「……また……来るわ」
「……?あぁ、また今度お茶をおごらせてくれ」
紫は狐とともに、スキマの中へと消えていった。ピアには結局、紫が何をしに来たのかはわからないままだった。ピアは空を見上げた。
月は満月だった。ピアはそれだけを確認すると、霊夢が途中で起きる前に片づけを終わらせるため、作業を続行した。
紫さんがピアの事を理解してくれる日が来ることを願う…
ではまた次回m(_ _)m