第十八章どうぞ
私の名前は博麗霊夢。博麗神社の巫女である。博麗神社の朝は早い。私が雇った、博麗の巫女の使いであるピアは、朝早く起きると、境内の掃除を始める。掃除を終えると、次に朝食を作り始める。
「いただきます」
「いただきます」
「それじゃ、いただこうかねぇ~」
私たちは朝食を食べる。いつも通りの日常、何も変わらない日々、紅葉が残る山を背景にして私たちは食事をとった。
「ごちそうさん」
「ごちそうさま」
「はぁ~、おいしかった」
そして私たちはいつも通り食事を終える。そしてここから、私にとっての日常が非日常へと変わる。
「霊夢ぅー!ピアを借りに来たぜぇーっ!!」
「げっ……魔理沙……」
まず初めに魔理沙が来る。ピアを借りるとか言って、勝手にピアを拉致しようとする。もちろん、私がそんなことを許すはずがないので、魔理沙を撃退するために外へと出る。
「また来たわね、魔理沙……ピアはあんたに貸さないって何度も言ってるでしょ!」
「いいじゃんかよー。ちょっとだけ借りてくだけだって。な?」
「“な?”じゃないわよ!雇い主は私。貸すかどうかは私が交渉する。そして、私が貸さないと言ったら貸さないのよ!」
「えぇ~。……なぁ、ピア。ちょっと私に付き合ってくれないか?」
「あぁ、別にかまわn」
「ダメったらダメよっ!!くらえっ!珠符、『明珠暗投』!!」
私がスペルカードを発動したので、魔理沙はとっさに回避した。
「う、うわぁっ!危ないじゃないか!!チクショー!今日は退散だ!!ピア、またお前を借りに来るからなっ!」
魔理沙は慌てて逃げ出した。何度来ようと、私はピアを貸す気は一切ない。魔理沙を追い払い、私はピアをきつく睨み付けた。
「ピア!簡単に誘いに乗らないって、何度も言ってるでしょ!」
「いや、だがな……」
「これは業務命令っ!いいわね!!」
「……了解」
ピアは誰かに誘われると簡単に承諾してしまう。ピアは遠慮というものを知らなさすぎる。どうせ連れていかれた先で、面倒事に巻き込まれているに違いない。だから私が、ピアが面倒事に巻き込まれないように守らなければならない。
「ほら、戻るわよ?」
「へい」
私がピアを連れて戻ろうとした時だった。再び私たちの平穏を邪魔する奴が来た。
「やっほぉ~。ピ~ア~♪」
「げっ……今度は幽々子……」
神社の上空から、今度は幽々子が現れた。ピアを自分の婿にもらおうと毎日毎日神社にやってくる、はっきり言って迷惑極まりない奴だった。
「なによ、幽々子。いったい何の用なのよ?」
「特に用なんてないわよぉ~?ただピアを私のお婿さんに……」
「絶対にダメよ!なんで亡霊のあんたにピアを譲らなきゃならないのよ!?絶対に認めないわ!!」
「別にいいでしょ~?私はピアのことが好きなの。霊夢は別に好きでも何でもないでしょ?」
「なっ!?そ……それは……」
「ん~?どうなの?好きなの?」
「す、好きかどうかはどうでもいいでしょ!?私はピアの雇主!私がダメと言ったらダメなのよ!!」
「ぶ~!ケチィ~!……ねぇ、ピアはどう思う?」
「い、いや……さすがに結婚は……」
「じゃあ……妖夢の剣の稽古相手になってくれないかしら?」
「それならもんd」
「ダメっ!とっとと帰れっ!!光霊、『神霊宝珠』!!」
勝手に話を進める幽々子に、私はスペルを使った。
「いやん、危ないわねぇ。……しょうがないわね。今日はもう帰りましょうか。ふふっ……また来るわね……ア・ナ・タ♪」
「二度と来んなぁーっ!!」
幽々子はふわふわ飛んで帰っていった。まったく、本当に二度と来ないでほしいものである。私とピアは、今度こそ神社の中へ戻った。
「お帰りぃ~。何かあったのかい?」
萃香がのんきそうに聞いてきた。緊張感がなさすぎて、私としてはちょっと困りものだった。
「いつもの連中よ。はぁ……これだとレミリアあたりも来るわね……」
「そうか?ならお茶の用意をしないとな」
「しなくていいから」
「えっ……いや、一応お客さん……」
「あいつらは客でも何でもないわよ!いちいちもてなす必要はないのっ!!」
「あ……そうなのか……」
ピアはどうも私の意見に納得していないようだった。まぁ無理もない。ピアにとって、みんなは身近な友人のようなものだから、歓迎したいという気持ちはわからないでもない。でも、ここに来るほとんどの連中の目的が“ピア”なのだから、手を出させるわけにはいかない。
「ふぅ……しばらくは誰も来ないでしょうね。ピア、畑の様子を見てきましょ」
「お、そうだな。収穫できるものは収穫しとこう。行こうぜ、萃香」
「はいよ~」
よりにもよって、萃香に「行こう」と声をかけた。どうして私じゃなくて萃香なの?私は少しだけ拗ねてしまった。
「…………」
「……?霊夢、行くぞ?」
「……いいわよ。二人で行けば?」
「行こうって言ったのはお前だぜ?ほら、はやく行こう!」
ピアは私の手を握ると、裏の方へと引っ張ってきた。正直、ピアに手を握ってくれたのは、ほんの少し嬉しかった。
「ちょ、ちょっと!?」
「ほら、待ったなしだぜ?急げ急げ!」
「こ、こら!引っ張らないでよー!」
「やれやれ……じゃあ、行こうかな」
結局、私たちは三人で畑へ行くことになった。
畑に着くと、秋の旬の野菜が立派に成長していた。
「よし!カボチャは収穫できるな。あとはもうちょっと待つか……。萃香、カボチャは収穫するから、ほかのやつに水やりを頼む」
「わかったよ。お安い御用さ」
「霊夢、収穫を手伝ってくれないか?」
「べ……別に、いいけど……」
「サンキュ!助かるぜ」
ピアに手伝ってくれと言われたら、さすがの私も断れない。私はピアの収穫を手伝うことにした。
「えっと……ここをこうしてっと……よっと!」
ピアはカボチャの茎を綺麗に切って収穫した。悪魔の見た目と違い、手先が器用なピアのギャップは、ちょっとだけかっこいいなと思った。
「霊夢、できるか?」
「で、できるわよ!」
私だってピアに負けていられない。私はすぐに切ろうとしたが、思った以上に手ごたえがあった。
「う……うぅ~……!えいっ!」
私はカボチャの茎を切断した。しかし、茎を持っていた左手に思いっきり力を入れていたので、私は切った拍子に後ろへ倒れこんだ。
「きゃあっ!!」
「えっ……うわぁっ!」
不幸にも私が倒れこんだところにピアがいた。ピアは私の下敷きになる形で倒れた。
「いたた……。ピ、ピア……大丈夫?」
「あぁ……大丈夫だ」
私はすぐにピアの上からどいた。ピアはゆっくりと体を起こした。私は思わず心配になり、ピアに声をかけた。
「本当に?重く……なかった?」
「そんなわけないだろ?この程度、全然問題ないぜ。……それより」
「……?何よ?」
ピアが何かを言おうとしていたので、私はすぐに聞き返した。
「いや、ただ……霊夢って、すごくいいにおいがするなって思っただけで……」
「!?!?!?!?」
たまにこういうことがある。ピアは何の前触れもなく、いきなり褒めてきたり、思ったことを迷うことなく言ってきたりする。こういう不意打ちには、私はまだ慣れていない。だからすぐに
「ば……馬鹿ぁー!!」
パシンッ!
「ぐえっ!?」
すぐにピアを殴ってしまう。本当は嬉しいのだけど、プライドとか立場とかが邪魔をして、素直に喜べない。だからこうしてピアを殴って紛らわせている。だけど多分、殴られた本人はあまりいい気分じゃないと思う。
「いってぇ……いきなり何すんだよ!?」
「あっ、その……ごめん……」
「……別に大丈夫だけど。いきなり殴るなよな?殴るときはちゃんと“殴る”って言ってくれよ?でないと反応できないだろうが」
「わ……悪かったわね」
とりあえず私はピアに謝った。ピアは私に怒ることはないが、冗談まじりに注意をしてくる。こういうピアの何気ない優しさに、私はいつも助けられていた。
だが、逆に私はそんなピアに、少し甘えているところもある。妖怪退治も、神社の掃除も、毎日の食事も、ほとんどピアに任せっぱなしにしている。
「……いつも、ありがとう」
私は何気なくお礼を言う。しかし、ピアはそんな私の気持ちも知らず、当たり前のように返した。
「当然だろ?俺は“博麗の巫女の使い”なんだからさ」
当たり前のように返す返事。でも、私が聞きたかったのはそんなものではなかった。もっと……私を信じてくれているあなたの……。
「……今のなし」
「はい?」
「さっきの“ありがとう”はなし!別に感謝なんかしてないわよーっだ!!」
「うぉい!いきなりなんだよそれは!!」
「ふんだっ!」
私はとうとう意地になって、自分で収穫したカボチャを持って神社へ戻ってしまった。本当は……そんなことはしたくないのに……。
「…………?」
ピアはもちろん私の考えていることを理解しているはずがなく、収穫の続きをしていた。
「…………」
遠くで眺めていると、水やりを終えた萃香がピアを手伝い始めた。二人で仲良く収穫していたのが、私には気に食わなかった。
「まったく……萃香相手に、あんなにへらへら笑って……」
自分でもわかっていた。私は萃香に嫉妬している。萃香だけじゃない。
ピアに近づこうとする全ての女性に嫉妬している。
そんなはずはないと何度も否定した。でも、私の中にあるこの思いは、間違いなく嫉妬。地底にいる嫉妬妖怪にあったら、おそらくすべてを見抜かれるかもしれない。
「ばかばかしいっ……」
私はすぐにその考えを捨てた。ただ、認めたくなくて。ただ、信じられなくて。そんな時だった。
「こんにちはーっ!!」
外から声が聞こえた。この声の正体はすぐにわかった。
「今度は早苗か。……もうっ!どいつもこいつも!!」
どうせ早苗のことだから、ピアとの交際の許可でも取りに来たのだろう。そんなことを私は絶対に許さない。私は早苗を撃退するべく、外へと飛び出した。
「霊夢さん、待ってました!今日こそピアさんとの交際を……」
「こ・と・わ・る!!」
「おやおや?霊夢は冷たいことを言うねぇ~」
「うげっ……。諏訪子までいるの……?」
よく見ると、早苗の後ろに諏訪子までいた。今、思い出した。神とはいえ、諏訪子はピアを気に入っていたことを。
「……で、何?いまさら諏訪子を連れてきたって、私の意見は変わらないわよ?」
「以前、レミリアさんから伺いました。……“霊夢を倒せば、ピアは思いのままだ”……と」
「ちょ、はぁ!?」
「ですから!私たちは確実に勝ちを取りに行くため、諏訪子様にご同行願いました!!」
「というより、私はピアのことを気に入ってるからねぇ。霊夢を倒してピアを手に入れられるなら、これほど安い条件はないだろうと思ってね」
「安い……?言っとくけど、私は負けるつもりはないから」
とは言ったものの、これは正直厳しかった。神奈子がいないだけマシだが、諏訪子がいるのは想定外だった。それでも、私は引き下がることはできない。
「さぁ、来なさいっ!二人だろうと、まとめて相手してあげるわっ!!」
「霊夢さん!今日こそ勝って、ピアさんを守矢の神主にさせてもらいますっ!!」
「いくよっ!これも早苗の将来のためなんでね!!」
早苗は秘術、『グレイソーマタージ』、諏訪子は神具、『洩矢の鉄の輪』を同時に放ってきた。私は二つのスペルを同時にかわしつつ、スペルを発動する。
「大結界、『博麗弾幕結界』っ!!」
私は弾幕結界を使い、二人のスペルの間に隙を作る。そして、弾幕と弾幕の間を夢符、『夢想亜空穴』で一気に突破した。
「なっ!?」
「とりあえず、早苗から潰すわ!霊符!夢想……」
「姫川、『プリンセスジェイドグリーン』!」
「……っ!!」
完全に早苗に狙いを絞っていた私は、諏訪子のスペルへの反応が遅れた。弾幕をかすり、態勢が崩れたところを狙った早苗が追い打ちをかけてくる。
「隙ありっ!秘法、『九字刺し』ぃ!!」
完全によけきれず、私は早苗のスペルをまともに喰らった。
「きゃああぁぁ!!」
スペルに吹き飛ばされて落下していく私に、さらなる追撃が待っていた。
「とどめですっ!準備、『サモンタケミナカタ』!!」
「一気に行くよ!土着神、『七つの石と七つの木』!!」
二人のスペルが、無抵抗の私に向かって飛んでくる。負ける、そう思った。私が負けると、ピアが連れていかれる。そんなの……いやだっ!!
「(ピア……っ!!)」
スペルが私に直撃する直前だった。
「刃灰、『龍炎刃』っ!!」
聞きなれた声とともに、爆炎を身にまとった斬撃型の弾幕が、二人の弾幕を一瞬にして掻き消した。それを見た二人はかなり驚いていた。
「えっ、スペルカード!?一体どこから……」
「それより早苗……さっきの声って……」
二人がスペルについて話し合っている中、落下する私を受け止めた人物がいた。それは、間違いなくピアだった。
「よう、霊夢」
「……な、なによ?笑いに来たの?」
「いやいや、そうじゃないっての。俺の技、スペルカードにしてみたんだ。どうだ?うまくできてるか?」
「あんた……何を考えているの?」
「なにって……決まってるじゃねぇか」
ピアは早苗と諏訪子の方を見た。二人も、声とスペルの主がピアだとわかり、さらに驚いていた。
「おいおいおい、二対一とはずいぶんなことだなぁ!こっからは……俺も混ぜてもらおうか!!」
「え……えぇっ!?」
「ちょっとぉ~。ピアが加わるなんて聞いてないよぉ~!」
早苗と諏訪子が口々に文句を言う中、ピアは小さい声で私に話しかけてきた。
「……一人で無茶すんなよ。いざとなったら、俺を頼れとあれほど……」
「……別に……これくらい、全然平気よ。むしろこれから本気だったのに……」
「今ボロボロになってんのに、どうやって本気を出すって?」
「うぅ……だって……」
「“だって”じゃねぇよ。俺のことも頼ってくれよ。俺はお前の使いでもあり、仲間なんだからさ」
「……!仲間……」
ピアに仲間と言ってもらえた。それだけで、私は全身に力があふれてきた。
「……さぁてと!ピア、仕切り直しと行くわよ?」
「……おう!」
私とピアはお互いに並びあった。早苗と諏訪子も、同じように私たちと対峙した。
「い、いまさらピアさんが加わったって、怖くありませんっ!」
「……まさかここでピアの力を量れるとはねぇ……。こうなりゃ、本気で行くよっ!!」
「そうかしら?博麗の巫女と、その使いの力を、侮るんじゃないわよっ!!」
「さぁて、雇い主が散々世話になったんだ。こりゃ、働き手としても失礼がないようにしないと……な!!」
ピアはキャリバーを抜いて構えた。おそらく一撃で決めるのだろう。私もピアにあわせて一撃で決めることにした。早苗と諏訪子も、ピアの考えていることがわかっているのか、強力なスペルを発動した。
「絶対に負けませんっ!!大奇跡、『八坂の神風』!!」
「いまさら後には引けないね!祟符、『ミシャグジさま』!!
「これで決めるわ!夢符、『退魔符乱舞』!!」
「遠慮はしないぜっ!覇滅、『裂光覇』!!」
四人のスペルが激突した。相手のスペルを圧倒したのは、私たちだった。
「きゃあぁ―!!」
「うわあぁ―!!」
早苗と諏訪子が私たちのスペルを受けて悲鳴を上げた。私はいい気味だと思ったが、やっぱりピアはピアだった。
「あっ、やべっ!!やりすぎたか……?」
「十分よ。むしろこれくらいじゃないとだめ」
「そうかぁ?ちょいと力を入れすぎたような……」
「問題ないったら問題ないのよ」
「そ……そうか……」
ピアは二人を心配していた。まったく……どうしてピアは私のことは心配してくれないのかしら?
「……そんなに心配なら、見てくれば?」
「わかった」
「…………」
ピアは即答して二人のところへ向かった。ピアは私よりもほかの女性がいいのかしら?もし、そうだとしたら……私は……。
「ピアにとって……私は一体なんなのかしら……」
わからなかった。ピアのことがわからなくなってしまった。近くにいるのに、遠くに感じてしまう。それなのに、いつも近くにいてくれる。だけど、その心は常に遠いところにある。もう……届かないのだろうか……。
「おーい!霊夢―!」
ピアが戻ってきた。私は少しふてくされた態度で返事をした。
「……なによ?二人はどうだったの?」
「帰ってもらったよ。とりあえず、これでよかったんだろ?」
「……えぇ、そうよ」
「ふぅ……霊夢、お前は大丈夫か?」
「えっ……私?」
「お前だよ。大丈夫か?二人分のスペルを喰らったようだし……心配なんだよ」
「な、なによ!さっきまで二人方を心配していたくせにっ!!」
「何を言ってんだよ?俺にとってお前の方が大事に決まってるだろ?」
ピアはさも当然のように言った。でも、そう言ってもらえるだけで、私は嬉しかった。嬉しかったけど、言葉にすることはできなかった。
「ほら、行こうぜ?夜にはレミィも来るんだろ?」
「……そうね。きっちりと追い返さないとね!」
「あ……やっぱり追い返すのか……」
私たちは神社に戻り、私はレミリアの対策準備に、ピアは萃香と一緒に夕食作りを始めた。私は一旦食事をとり、次の戦いに備えることにした。
夜。月が高く昇り、世界全体を照らすころ、レミリアは私の前に現れた。
「来たわね……レミリア……!」
「クックック……霊夢、いい加減にピアを渡す気になったかしら?」
「なるわけないでしょ!あんたの執事にする気はないわよ!!」
「ふん……。さっさとピアを私のものにしてしまえばよいものを……。そうすれば、私はピアとずっと一緒にいられる。そして私はピアとの従者と主という関係を越えて、あんなことやこんなことを……ふふふ……うふふ……あはははは……」
「うわぁ……妄想、乙。さぁ、妄想で満足したならさっさと帰りなさい!」
「はぁ?帰るわけないでしょ?ピアは私の執事!眷属なのよ!!そうなるにふさわしいと決めたのは私!だからこそ、ピアは私の従者になるべきなのよ!!」
「そんな理屈が通るわけないでしょ!ピアは私が雇ったんだから、ピアをどうこうするかは私が決めるのよ!!」
「はんっ!あんたみたいなガサツな女に仕えるなんて、ピアがかわいそうなのよ!いい加減に気付きなさいよ?霊夢はピアを束縛したいだけなのよ。霊夢は自分が楽をするために、ピアを置いておきたいだけなんでしょ?どうせ霊夢にとっては、ピアはただの稼ぎ手なのよ。私は違うわよ?ピアを咲夜と同じように扱うわ。霊夢みたいに、物を見るような目で見たりはしない!」
「……っ!!」
散々好き放題に言われたのに、私は何も言い返せなかった。すべてレミリアの言う通りだったからだ。ピアを雇い始めたころの私は、ピアをただの収入源としか思っていなかった。だからこそ、私は何も言い返すことが出来なかった。
「うん?どうしたの?言い返せないのかしら?やっぱりピアはただの働き手だったのね!」
「ちっ……違う……!」
「違わない。私にはわかるわ。ピアを愛している(・・・・・)からこそ、わかるのよ!」
「違う……違うっ!」
「だったらここで宣言してみなさいよ?……“私はピアを愛しています”と」
「……くっ!!」
「ほぅら、どうしたの?できないの?」
「そ……それは……」
できたとしても、その後の関係が気まずくなってしまう。私はまだ、自分の気持ちを伝えることが怖かった。
「……自分の気持ちとまともに向き合えないとはね。失望したわ……霊夢!」
レミリアはスペルを発動した。
「この感じ……グングニル!?」
「そうよ。神槍、『スピア・ザ・グングニル』……このスペルで、確実にしとめてあげるわ」
「そんなもの……簡単に当たるわけないでしょ?」
「それはどうかしら……?必殺、『ハートブレイク』……乱れ打ち!!」
レミリアは左手でハートブレイクを発動し、それを乱射してきた。
「くっ……!乱れ打ちにもほどがあるわよ!!」
「そうかしら?」
「なんですって?」
私はレミリアを動きを見た。よく見ると、右手に持っていたはずのグングニルを、レミリアは持っていなかった。
「……はっ!」
私はとっさに上を見た。私の真上から、グングニルが私にめがけて飛んできた。
「……っ!」
私はその場から移動しようとしたが、レミリアのハートブレイクの乱れ打ちのせいで、思うように動けなかった。
「しまった!!」
「もらったわ!グングニル……曲射投げ!!」
私はとっさに夢符、『二重結界』で防御したが、それでも遠くに弾かれてしまった。
「くぅ……っ!!」
何とか受け身を取ったものの、受けた衝撃はかなりのものだった。正直、かなり痛いじゃない。
「まったく……容赦ないわね……」
「当たり前じゃない。愛する男のためよ?なんだってするわよ!」
「やりすぎはよくないわよ?ピアって、しつこい女は嫌いなのよ?」
「……なんですってぇ!!」
レミリアは激怒した。明らかに自分が馬鹿にされていることを、よく理解できていた。さすがは吸血鬼というかなんというか……でも、ピアはしつこい女は嫌いなのかしら?
「さぁて、ここからは私も本気で行くわ!夢符、『夢想亜空穴』!」
私は亜空穴で瞬間移動をして、素早くレミリアの懐に入り込んだ。しかし、レミリアもそれを待っていたかのようにスペルを発動した。
「終わりよっ!神技、『天覇風神脚』!!」
「甘いわっ!悪魔、『レミリアストレッチ』!!」
お互いの格闘スペルが直撃し、お互いに吹き飛ばされた。私は連戦からの疲れのせいで、そのまま意識を失ってしまった。
次に私が目を覚ました時は、神社の中だった。私が隣の方へ寝返りを打つと、ピアが隣で眠っていた。
「……ピア」
私はピアに呼びかけた。しかし、ピアは静かに寝息を立てていて、起きる気配はまったくなかった。
「ピア……」
私はピアに近寄り、ピアの背中に自分の頭をコツン、と当てた。
「ピア……寝ている……よね……?」
もう一度たずねたが、やはりピアは寝ているようだった。私は静かにピアに語りかけた。
「ねぇ……ピア。あなたは一体……誰を見ているの?いつも……どこにいるの?ピアにとって、私は何?私にとって、ピアは何?ピアは何を求めているの?ピアは誰を求めているの?みんな……ピアのことを気に入って、いつも誘ってくれているのに……ピアはどうして、その気持ちに応えないの?ピアが求める答えは、いったいどこにあるの?誰がその答えを持っているの?あんたは……なにも教えてくれないのね……。私は……ピアのことを、知りたいのに……。ピアにもっと、近づきたいのに……。ピアは強すぎる……そして、優しすぎる……。ピア……私は……」
独り言のように長い言葉に、ピアは寝返りを打った。
「……!ピア……?」
「……むにゃむにゃ……。かあ……さん……」
「ピア……!」
「…………」
寝言だった。“かあさん”と言ったピアの顔は、どこか悲しそうだった。
「……大丈夫よ。ピアは……私が守ってみせるから……。紫からだって……守ってみせるから……」
「ん~……れぇいむぅ~……むにゃむにゃ……ぐぅ……」
「あ……。ふふ……ピア……」
寝言でも私の名前を呼んでくれた。いったいどんな夢を見ているのだろう?
ピアが前に話してくれた、ピアの世界のことを思い出した。
幻想郷の異変よりも、さらに危険な戦いの毎日を送っている世界。しかし、ピアの世界にも神がいて、その神によって世界の秩序と平穏が保たれているらしい。
ピアが神様が嫌いなのは、この神が原因らしい。それも、神様は少女らしい。
もしかしたら、ピアはその神様のことを……。そう考えると、少しだけ不安になった。もし、ピアが自分の世界に帰りたいと言い出したら……。あれこれ考えているうちに、私は眠気に誘われ、次第に眠りについていった。
冗談まじりに注意出来るピア君は紳士です
ではまた次回…