東方魔郷談   作:Walther58

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ちょっとした小話です
第十八章どうぞ


第十八章 ~博麗霊夢の一日~

 

 私の名前は博麗霊夢。博麗神社の巫女である。博麗神社の朝は早い。私が雇った、博麗の巫女の使いであるピアは、朝早く起きると、境内の掃除を始める。掃除を終えると、次に朝食を作り始める。

 

「いただきます」

「いただきます」

「それじゃ、いただこうかねぇ~」

 

私たちは朝食を食べる。いつも通りの日常、何も変わらない日々、紅葉が残る山を背景にして私たちは食事をとった。

「ごちそうさん」

「ごちそうさま」

「はぁ~、おいしかった」

 

 そして私たちはいつも通り食事を終える。そしてここから、私にとっての日常が非日常へと変わる。

 

「霊夢ぅー!ピアを借りに来たぜぇーっ!!」

「げっ……魔理沙……」

 

 まず初めに魔理沙が来る。ピアを借りるとか言って、勝手にピアを拉致しようとする。もちろん、私がそんなことを許すはずがないので、魔理沙を撃退するために外へと出る。

 

「また来たわね、魔理沙……ピアはあんたに貸さないって何度も言ってるでしょ!」

「いいじゃんかよー。ちょっとだけ借りてくだけだって。な?」

 

「“な?”じゃないわよ!雇い主は私。貸すかどうかは私が交渉する。そして、私が貸さないと言ったら貸さないのよ!」

「えぇ~。……なぁ、ピア。ちょっと私に付き合ってくれないか?」

 

「あぁ、別にかまわn」

「ダメったらダメよっ!!くらえっ!珠符、『明珠暗投』!!」

 

 私がスペルカードを発動したので、魔理沙はとっさに回避した。

「う、うわぁっ!危ないじゃないか!!チクショー!今日は退散だ!!ピア、またお前を借りに来るからなっ!」

 

 魔理沙は慌てて逃げ出した。何度来ようと、私はピアを貸す気は一切ない。魔理沙を追い払い、私はピアをきつく睨み付けた。

 

「ピア!簡単に誘いに乗らないって、何度も言ってるでしょ!」

「いや、だがな……」

 

「これは業務命令っ!いいわね!!」

「……了解」

 

 ピアは誰かに誘われると簡単に承諾してしまう。ピアは遠慮というものを知らなさすぎる。どうせ連れていかれた先で、面倒事に巻き込まれているに違いない。だから私が、ピアが面倒事に巻き込まれないように守らなければならない。

 

「ほら、戻るわよ?」

「へい」

 

 私がピアを連れて戻ろうとした時だった。再び私たちの平穏を邪魔する奴が来た。

「やっほぉ~。ピ~ア~♪」

「げっ……今度は幽々子……」

 

 神社の上空から、今度は幽々子が現れた。ピアを自分の婿にもらおうと毎日毎日神社にやってくる、はっきり言って迷惑極まりない奴だった。

 

「なによ、幽々子。いったい何の用なのよ?」

「特に用なんてないわよぉ~?ただピアを私のお婿さんに……」

 

「絶対にダメよ!なんで亡霊のあんたにピアを譲らなきゃならないのよ!?絶対に認めないわ!!」

「別にいいでしょ~?私はピアのことが好きなの。霊夢は別に好きでも何でもないでしょ?」

 

「なっ!?そ……それは……」

「ん~?どうなの?好きなの?」

 

「す、好きかどうかはどうでもいいでしょ!?私はピアの雇主!私がダメと言ったらダメなのよ!!」

「ぶ~!ケチィ~!……ねぇ、ピアはどう思う?」

 

「い、いや……さすがに結婚は……」

「じゃあ……妖夢の剣の稽古相手になってくれないかしら?」

 

「それならもんd」

「ダメっ!とっとと帰れっ!!光霊、『神霊宝珠』!!」

 

 勝手に話を進める幽々子に、私はスペルを使った。

「いやん、危ないわねぇ。……しょうがないわね。今日はもう帰りましょうか。ふふっ……また来るわね……ア・ナ・タ♪」

「二度と来んなぁーっ!!」

 

 幽々子はふわふわ飛んで帰っていった。まったく、本当に二度と来ないでほしいものである。私とピアは、今度こそ神社の中へ戻った。

「お帰りぃ~。何かあったのかい?」

 

 萃香がのんきそうに聞いてきた。緊張感がなさすぎて、私としてはちょっと困りものだった。

「いつもの連中よ。はぁ……これだとレミリアあたりも来るわね……」

 

「そうか?ならお茶の用意をしないとな」

「しなくていいから」

 

「えっ……いや、一応お客さん……」

「あいつらは客でも何でもないわよ!いちいちもてなす必要はないのっ!!」

「あ……そうなのか……」

 

 ピアはどうも私の意見に納得していないようだった。まぁ無理もない。ピアにとって、みんなは身近な友人のようなものだから、歓迎したいという気持ちはわからないでもない。でも、ここに来るほとんどの連中の目的が“ピア”なのだから、手を出させるわけにはいかない。

 

「ふぅ……しばらくは誰も来ないでしょうね。ピア、畑の様子を見てきましょ」

「お、そうだな。収穫できるものは収穫しとこう。行こうぜ、萃香」

「はいよ~」

 

 よりにもよって、萃香に「行こう」と声をかけた。どうして私じゃなくて萃香なの?私は少しだけ拗ねてしまった。

「…………」

「……?霊夢、行くぞ?」

 

「……いいわよ。二人で行けば?」

「行こうって言ったのはお前だぜ?ほら、はやく行こう!」

 

 ピアは私の手を握ると、裏の方へと引っ張ってきた。正直、ピアに手を握ってくれたのは、ほんの少し嬉しかった。

「ちょ、ちょっと!?」

「ほら、待ったなしだぜ?急げ急げ!」

 

「こ、こら!引っ張らないでよー!」

「やれやれ……じゃあ、行こうかな」

 

 結局、私たちは三人で畑へ行くことになった。

 

 畑に着くと、秋の旬の野菜が立派に成長していた。

「よし!カボチャは収穫できるな。あとはもうちょっと待つか……。萃香、カボチャは収穫するから、ほかのやつに水やりを頼む」

「わかったよ。お安い御用さ」

 

「霊夢、収穫を手伝ってくれないか?」

「べ……別に、いいけど……」

「サンキュ!助かるぜ」

 

 ピアに手伝ってくれと言われたら、さすがの私も断れない。私はピアの収穫を手伝うことにした。

「えっと……ここをこうしてっと……よっと!」

 

 ピアはカボチャの茎を綺麗に切って収穫した。悪魔の見た目と違い、手先が器用なピアのギャップは、ちょっとだけかっこいいなと思った。

「霊夢、できるか?」

「で、できるわよ!」

 

 私だってピアに負けていられない。私はすぐに切ろうとしたが、思った以上に手ごたえがあった。

「う……うぅ~……!えいっ!」

 

 私はカボチャの茎を切断した。しかし、茎を持っていた左手に思いっきり力を入れていたので、私は切った拍子に後ろへ倒れこんだ。

「きゃあっ!!」

「えっ……うわぁっ!」

 

 不幸にも私が倒れこんだところにピアがいた。ピアは私の下敷きになる形で倒れた。

「いたた……。ピ、ピア……大丈夫?」

「あぁ……大丈夫だ」

 

 私はすぐにピアの上からどいた。ピアはゆっくりと体を起こした。私は思わず心配になり、ピアに声をかけた。

「本当に?重く……なかった?」

 

「そんなわけないだろ?この程度、全然問題ないぜ。……それより」

「……?何よ?」

 

 ピアが何かを言おうとしていたので、私はすぐに聞き返した。

「いや、ただ……霊夢って、すごくいいにおいがするなって思っただけで……」

「!?!?!?!?」

 

 たまにこういうことがある。ピアは何の前触れもなく、いきなり褒めてきたり、思ったことを迷うことなく言ってきたりする。こういう不意打ちには、私はまだ慣れていない。だからすぐに

「ば……馬鹿ぁー!!」

 

 パシンッ!

「ぐえっ!?」

 

 すぐにピアを殴ってしまう。本当は嬉しいのだけど、プライドとか立場とかが邪魔をして、素直に喜べない。だからこうしてピアを殴って紛らわせている。だけど多分、殴られた本人はあまりいい気分じゃないと思う。

 

「いってぇ……いきなり何すんだよ!?」

「あっ、その……ごめん……」

 

「……別に大丈夫だけど。いきなり殴るなよな?殴るときはちゃんと“殴る”って言ってくれよ?でないと反応できないだろうが」

「わ……悪かったわね」

 

 とりあえず私はピアに謝った。ピアは私に怒ることはないが、冗談まじりに注意をしてくる。こういうピアの何気ない優しさに、私はいつも助けられていた。

だが、逆に私はそんなピアに、少し甘えているところもある。妖怪退治も、神社の掃除も、毎日の食事も、ほとんどピアに任せっぱなしにしている。

「……いつも、ありがとう」

 

 私は何気なくお礼を言う。しかし、ピアはそんな私の気持ちも知らず、当たり前のように返した。

「当然だろ?俺は“博麗の巫女の使い”なんだからさ」

 

 当たり前のように返す返事。でも、私が聞きたかったのはそんなものではなかった。もっと……私を信じてくれているあなたの……。

「……今のなし」

 

「はい?」

「さっきの“ありがとう”はなし!別に感謝なんかしてないわよーっだ!!」

 

「うぉい!いきなりなんだよそれは!!」

「ふんだっ!」

 

 私はとうとう意地になって、自分で収穫したカボチャを持って神社へ戻ってしまった。本当は……そんなことはしたくないのに……。

「…………?」

 

 ピアはもちろん私の考えていることを理解しているはずがなく、収穫の続きをしていた。

「…………」

 

 遠くで眺めていると、水やりを終えた萃香がピアを手伝い始めた。二人で仲良く収穫していたのが、私には気に食わなかった。

「まったく……萃香相手に、あんなにへらへら笑って……」

 

 自分でもわかっていた。私は萃香に嫉妬している。萃香だけじゃない。

ピアに近づこうとする全ての女性に嫉妬している。

そんなはずはないと何度も否定した。でも、私の中にあるこの思いは、間違いなく嫉妬。地底にいる嫉妬妖怪にあったら、おそらくすべてを見抜かれるかもしれない。

「ばかばかしいっ……」

 

 私はすぐにその考えを捨てた。ただ、認めたくなくて。ただ、信じられなくて。そんな時だった。

「こんにちはーっ!!」

 

 外から声が聞こえた。この声の正体はすぐにわかった。

「今度は早苗か。……もうっ!どいつもこいつも!!」

 

 どうせ早苗のことだから、ピアとの交際の許可でも取りに来たのだろう。そんなことを私は絶対に許さない。私は早苗を撃退するべく、外へと飛び出した。

 

「霊夢さん、待ってました!今日こそピアさんとの交際を……」

「こ・と・わ・る!!」

 

「おやおや?霊夢は冷たいことを言うねぇ~」

「うげっ……。諏訪子までいるの……?」

 

 よく見ると、早苗の後ろに諏訪子までいた。今、思い出した。神とはいえ、諏訪子はピアを気に入っていたことを。

「……で、何?いまさら諏訪子を連れてきたって、私の意見は変わらないわよ?」

 

「以前、レミリアさんから伺いました。……“霊夢を倒せば、ピアは思いのままだ”……と」

「ちょ、はぁ!?」

 

「ですから!私たちは確実に勝ちを取りに行くため、諏訪子様にご同行願いました!!」

「というより、私はピアのことを気に入ってるからねぇ。霊夢を倒してピアを手に入れられるなら、これほど安い条件はないだろうと思ってね」

 

「安い……?言っとくけど、私は負けるつもりはないから」

 とは言ったものの、これは正直厳しかった。神奈子がいないだけマシだが、諏訪子がいるのは想定外だった。それでも、私は引き下がることはできない。

 

「さぁ、来なさいっ!二人だろうと、まとめて相手してあげるわっ!!」

「霊夢さん!今日こそ勝って、ピアさんを守矢の神主にさせてもらいますっ!!」

「いくよっ!これも早苗の将来のためなんでね!!」

 

 早苗は秘術、『グレイソーマタージ』、諏訪子は神具、『洩矢の鉄の輪』を同時に放ってきた。私は二つのスペルを同時にかわしつつ、スペルを発動する。

「大結界、『博麗弾幕結界』っ!!」

 

 私は弾幕結界を使い、二人のスペルの間に隙を作る。そして、弾幕と弾幕の間を夢符、『夢想亜空穴』で一気に突破した。

「なっ!?」

 

「とりあえず、早苗から潰すわ!霊符!夢想……」

「姫川、『プリンセスジェイドグリーン』!」

「……っ!!」

 

 完全に早苗に狙いを絞っていた私は、諏訪子のスペルへの反応が遅れた。弾幕をかすり、態勢が崩れたところを狙った早苗が追い打ちをかけてくる。

「隙ありっ!秘法、『九字刺し』ぃ!!」

 

 完全によけきれず、私は早苗のスペルをまともに喰らった。

「きゃああぁぁ!!」

 

 スペルに吹き飛ばされて落下していく私に、さらなる追撃が待っていた。

「とどめですっ!準備、『サモンタケミナカタ』!!」

「一気に行くよ!土着神、『七つの石と七つの木』!!」

 

 二人のスペルが、無抵抗の私に向かって飛んでくる。負ける、そう思った。私が負けると、ピアが連れていかれる。そんなの……いやだっ!!

「(ピア……っ!!)」

 

 スペルが私に直撃する直前だった。

「刃灰、『龍炎刃』っ!!」

 

 聞きなれた声とともに、爆炎を身にまとった斬撃型の弾幕が、二人の弾幕を一瞬にして掻き消した。それを見た二人はかなり驚いていた。

「えっ、スペルカード!?一体どこから……」

「それより早苗……さっきの声って……」

 

 二人がスペルについて話し合っている中、落下する私を受け止めた人物がいた。それは、間違いなくピアだった。

「よう、霊夢」

 

「……な、なによ?笑いに来たの?」

「いやいや、そうじゃないっての。俺の技、スペルカードにしてみたんだ。どうだ?うまくできてるか?」

 

「あんた……何を考えているの?」

「なにって……決まってるじゃねぇか」

 

 ピアは早苗と諏訪子の方を見た。二人も、声とスペルの主がピアだとわかり、さらに驚いていた。

「おいおいおい、二対一とはずいぶんなことだなぁ!こっからは……俺も混ぜてもらおうか!!」

 

「え……えぇっ!?」

「ちょっとぉ~。ピアが加わるなんて聞いてないよぉ~!」

 

 早苗と諏訪子が口々に文句を言う中、ピアは小さい声で私に話しかけてきた。

 

「……一人で無茶すんなよ。いざとなったら、俺を頼れとあれほど……」

「……別に……これくらい、全然平気よ。むしろこれから本気だったのに……」

 

「今ボロボロになってんのに、どうやって本気を出すって?」

「うぅ……だって……」

 

「“だって”じゃねぇよ。俺のことも頼ってくれよ。俺はお前の使いでもあり、仲間なんだからさ」

「……!仲間……」

 

 ピアに仲間と言ってもらえた。それだけで、私は全身に力があふれてきた。

「……さぁてと!ピア、仕切り直しと行くわよ?」

「……おう!」

 

 私とピアはお互いに並びあった。早苗と諏訪子も、同じように私たちと対峙した。

「い、いまさらピアさんが加わったって、怖くありませんっ!」

「……まさかここでピアの力を量れるとはねぇ……。こうなりゃ、本気で行くよっ!!」

 

「そうかしら?博麗の巫女と、その使いの力を、侮るんじゃないわよっ!!」

「さぁて、雇い主が散々世話になったんだ。こりゃ、働き手としても失礼がないようにしないと……な!!」

 

 ピアはキャリバーを抜いて構えた。おそらく一撃で決めるのだろう。私もピアにあわせて一撃で決めることにした。早苗と諏訪子も、ピアの考えていることがわかっているのか、強力なスペルを発動した。

 

「絶対に負けませんっ!!大奇跡、『八坂の神風』!!」

「いまさら後には引けないね!祟符、『ミシャグジさま』!!

 

「これで決めるわ!夢符、『退魔符乱舞』!!」

「遠慮はしないぜっ!覇滅、『裂光覇』!!」

 

 四人のスペルが激突した。相手のスペルを圧倒したのは、私たちだった。

「きゃあぁ―!!」

「うわあぁ―!!」

 

 早苗と諏訪子が私たちのスペルを受けて悲鳴を上げた。私はいい気味だと思ったが、やっぱりピアはピアだった。

「あっ、やべっ!!やりすぎたか……?」

 

「十分よ。むしろこれくらいじゃないとだめ」

「そうかぁ?ちょいと力を入れすぎたような……」

 

「問題ないったら問題ないのよ」

「そ……そうか……」

 

 ピアは二人を心配していた。まったく……どうしてピアは私のことは心配してくれないのかしら?

 

「……そんなに心配なら、見てくれば?」

「わかった」

「…………」

 

 ピアは即答して二人のところへ向かった。ピアは私よりもほかの女性がいいのかしら?もし、そうだとしたら……私は……。

「ピアにとって……私は一体なんなのかしら……」

 

 わからなかった。ピアのことがわからなくなってしまった。近くにいるのに、遠くに感じてしまう。それなのに、いつも近くにいてくれる。だけど、その心は常に遠いところにある。もう……届かないのだろうか……。

「おーい!霊夢―!」

 

 ピアが戻ってきた。私は少しふてくされた態度で返事をした。

「……なによ?二人はどうだったの?」

 

「帰ってもらったよ。とりあえず、これでよかったんだろ?」

「……えぇ、そうよ」

 

「ふぅ……霊夢、お前は大丈夫か?」

「えっ……私?」

 

「お前だよ。大丈夫か?二人分のスペルを喰らったようだし……心配なんだよ」

「な、なによ!さっきまで二人方を心配していたくせにっ!!」

「何を言ってんだよ?俺にとってお前の方が大事に決まってるだろ?」

 

 ピアはさも当然のように言った。でも、そう言ってもらえるだけで、私は嬉しかった。嬉しかったけど、言葉にすることはできなかった。

 

「ほら、行こうぜ?夜にはレミィも来るんだろ?」

「……そうね。きっちりと追い返さないとね!」

「あ……やっぱり追い返すのか……」

 

 私たちは神社に戻り、私はレミリアの対策準備に、ピアは萃香と一緒に夕食作りを始めた。私は一旦食事をとり、次の戦いに備えることにした。

 

 夜。月が高く昇り、世界全体を照らすころ、レミリアは私の前に現れた。

「来たわね……レミリア……!」

 

「クックック……霊夢、いい加減にピアを渡す気になったかしら?」

「なるわけないでしょ!あんたの執事にする気はないわよ!!」

 

「ふん……。さっさとピアを私のものにしてしまえばよいものを……。そうすれば、私はピアとずっと一緒にいられる。そして私はピアとの従者と主という関係を越えて、あんなことやこんなことを……ふふふ……うふふ……あはははは……」

 

「うわぁ……妄想、乙。さぁ、妄想で満足したならさっさと帰りなさい!」

「はぁ?帰るわけないでしょ?ピアは私の執事!眷属なのよ!!そうなるにふさわしいと決めたのは私!だからこそ、ピアは私の従者になるべきなのよ!!」

 

「そんな理屈が通るわけないでしょ!ピアは私が雇ったんだから、ピアをどうこうするかは私が決めるのよ!!」

 

「はんっ!あんたみたいなガサツな女に仕えるなんて、ピアがかわいそうなのよ!いい加減に気付きなさいよ?霊夢はピアを束縛したいだけなのよ。霊夢は自分が楽をするために、ピアを置いておきたいだけなんでしょ?どうせ霊夢にとっては、ピアはただの稼ぎ手なのよ。私は違うわよ?ピアを咲夜と同じように扱うわ。霊夢みたいに、物を見るような目で見たりはしない!」

「……っ!!」

 

 散々好き放題に言われたのに、私は何も言い返せなかった。すべてレミリアの言う通りだったからだ。ピアを雇い始めたころの私は、ピアをただの収入源としか思っていなかった。だからこそ、私は何も言い返すことが出来なかった。

 

「うん?どうしたの?言い返せないのかしら?やっぱりピアはただの働き手だったのね!」

「ちっ……違う……!」

 

「違わない。私にはわかるわ。ピアを愛している(・・・・・)からこそ、わかるのよ!」

「違う……違うっ!」

 

「だったらここで宣言してみなさいよ?……“私はピアを愛しています”と」

「……くっ!!」

 

「ほぅら、どうしたの?できないの?」

「そ……それは……」

 

 できたとしても、その後の関係が気まずくなってしまう。私はまだ、自分の気持ちを伝えることが怖かった。

「……自分の気持ちとまともに向き合えないとはね。失望したわ……霊夢!」

 レミリアはスペルを発動した。

 

「この感じ……グングニル!?」

「そうよ。神槍、『スピア・ザ・グングニル』……このスペルで、確実にしとめてあげるわ」

 

「そんなもの……簡単に当たるわけないでしょ?」

「それはどうかしら……?必殺、『ハートブレイク』……乱れ打ち!!」

 

 レミリアは左手でハートブレイクを発動し、それを乱射してきた。

「くっ……!乱れ打ちにもほどがあるわよ!!」

「そうかしら?」

「なんですって?」

 

 私はレミリアを動きを見た。よく見ると、右手に持っていたはずのグングニルを、レミリアは持っていなかった。

「……はっ!」

 

 私はとっさに上を見た。私の真上から、グングニルが私にめがけて飛んできた。

「……っ!」

 

私はその場から移動しようとしたが、レミリアのハートブレイクの乱れ打ちのせいで、思うように動けなかった。

「しまった!!」

「もらったわ!グングニル……曲射投げ!!」

 

 私はとっさに夢符、『二重結界』で防御したが、それでも遠くに弾かれてしまった。

「くぅ……っ!!」

 

 何とか受け身を取ったものの、受けた衝撃はかなりのものだった。正直、かなり痛いじゃない。

「まったく……容赦ないわね……」

「当たり前じゃない。愛する男のためよ?なんだってするわよ!」

 

「やりすぎはよくないわよ?ピアって、しつこい女は嫌いなのよ?」

「……なんですってぇ!!」

 

 レミリアは激怒した。明らかに自分が馬鹿にされていることを、よく理解できていた。さすがは吸血鬼というかなんというか……でも、ピアはしつこい女は嫌いなのかしら?

「さぁて、ここからは私も本気で行くわ!夢符、『夢想亜空穴』!」

 

 私は亜空穴で瞬間移動をして、素早くレミリアの懐に入り込んだ。しかし、レミリアもそれを待っていたかのようにスペルを発動した。

 

「終わりよっ!神技、『天覇風神脚』!!」

「甘いわっ!悪魔、『レミリアストレッチ』!!」

 

 お互いの格闘スペルが直撃し、お互いに吹き飛ばされた。私は連戦からの疲れのせいで、そのまま意識を失ってしまった。

 

 

 次に私が目を覚ました時は、神社の中だった。私が隣の方へ寝返りを打つと、ピアが隣で眠っていた。

「……ピア」

 

 私はピアに呼びかけた。しかし、ピアは静かに寝息を立てていて、起きる気配はまったくなかった。

「ピア……」

 

 私はピアに近寄り、ピアの背中に自分の頭をコツン、と当てた。

「ピア……寝ている……よね……?」

 

 もう一度たずねたが、やはりピアは寝ているようだった。私は静かにピアに語りかけた。

 

「ねぇ……ピア。あなたは一体……誰を見ているの?いつも……どこにいるの?ピアにとって、私は何?私にとって、ピアは何?ピアは何を求めているの?ピアは誰を求めているの?みんな……ピアのことを気に入って、いつも誘ってくれているのに……ピアはどうして、その気持ちに応えないの?ピアが求める答えは、いったいどこにあるの?誰がその答えを持っているの?あんたは……なにも教えてくれないのね……。私は……ピアのことを、知りたいのに……。ピアにもっと、近づきたいのに……。ピアは強すぎる……そして、優しすぎる……。ピア……私は……」

 

 独り言のように長い言葉に、ピアは寝返りを打った。

「……!ピア……?」

 

「……むにゃむにゃ……。かあ……さん……」

「ピア……!」

「…………」

 

 寝言だった。“かあさん”と言ったピアの顔は、どこか悲しそうだった。

「……大丈夫よ。ピアは……私が守ってみせるから……。紫からだって……守ってみせるから……」

 

「ん~……れぇいむぅ~……むにゃむにゃ……ぐぅ……」

「あ……。ふふ……ピア……」

 

 寝言でも私の名前を呼んでくれた。いったいどんな夢を見ているのだろう?

ピアが前に話してくれた、ピアの世界のことを思い出した。

幻想郷の異変よりも、さらに危険な戦いの毎日を送っている世界。しかし、ピアの世界にも神がいて、その神によって世界の秩序と平穏が保たれているらしい。

ピアが神様が嫌いなのは、この神が原因らしい。それも、神様は少女らしい。

もしかしたら、ピアはその神様のことを……。そう考えると、少しだけ不安になった。もし、ピアが自分の世界に帰りたいと言い出したら……。あれこれ考えているうちに、私は眠気に誘われ、次第に眠りについていった。

 




冗談まじりに注意出来るピア君は紳士です
ではまた次回…
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