東方魔郷談   作:Walther58

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遅くなりまして申し訳ありません(^_^;)
構想はあったのですがなかなか文章に書き上げるのに苦労しました(甘え)
第二十章どうぞ


第二十章 ~守る者、守られる者、それぞれの幸せ~

 

 太陽がそこそこ高くなり始め、ようやく朝を感じられた。

静かな幻想郷の朝に、弾幕の爆音がこだました。

 

紅魔館の門の前では、激しい弾幕勝負が繰り広げられていた。

美鈴、咲夜のペアと、布都、屠自古のペアだった。

 

「さ、咲夜さん!大丈夫ですか!?」

「問題ないわ。……美鈴、そっちは?」

 

「若干、押され気味です……。あの二人……なかなかのコンビネーションです!」

「まずいわね……。確かにこの二人……普通じゃないわね」

 

 状況は不利。咲夜たちの方が押されていた。

布都と屠自古には、いまだ余裕の表情がうかがえる。

 

「ふっはっは!どうした、紅魔の従者たちよ!おぬしたちの力はこの程度か!?」

「あいにくだが、私と布都はあなたたちが生まれる時代の、遥か昔より一緒だったのだ。数年ちょっとのお前たちの連携など、まったく通じないわ」

 

「くっ……!なにをっ!!」

 美鈴はダッ、と走り出し、布都に向けてスペルを放った。

 

「虹符、『彩虹の風鈴』!!」

「甘いわっ!」

 

 布都は美鈴の弾幕をかいくぐると、素早くスペルを放った。

「天符、『雨の磐舟』!!」

「うわあぁぁ!!」

 

 布都のスペルを受け、美鈴は再び咲夜のそばまで吹っ飛ばされた。

「美鈴!大丈夫!?」

 

「へ……へいきです、これくらい……!妹様と戦った、ピアさんの痛みに比べれば……!!」

「(まずいわ……。今の美鈴は冷静さを欠いている……。あなたらしくないじゃない……美鈴!!)」

 

 咲夜は気づいていた。美鈴は何かの衝動に駆られているのか、いつも以上に冷静ではなかった。そのため、咲夜との連携が合わず、苦戦をしていたのだ。

 

「ねぇ、美鈴。いったいどうしたというの?こんなに冷静じゃないなんて……あなたらしくないわ」

「……!!」

 

 美鈴はハッ、となって咲夜の方を見た。咲夜の心配そうな目を見た美鈴は、自分の頬をパシンッ、と叩いた。

「……すみません、咲夜さん。でも、私はどうしても……こいつらに負けるわけにはいかないんです!!」

「だったら、まずは落ち着きなさい。本当にどうしたの?」

「…………」

 

 美鈴は、咲夜にだけ聞こえるように説明した。

「実は……妹様が……」

「え?フランお嬢様がどうかしたの?」

 

「はい……。実は最近、妹様はピアさんのお話ばかりするんです。“お兄様と遊んでて楽しい”とか、“お兄様はまた来てくれる”とか、“お兄様と一緒にいると幸せ”……とか」

「……!」

 

「だから、さっきピアさんが来たときに決めたんです。妹様と……ピアさんの時間を邪魔する奴は……絶対に通さないと!」

「……美鈴」

 

「もちろん、お嬢様との時間も……ですよ」

「……ふふっ。そうね……守らないとね。私たちの……大切な方たちを」

 

 二人が話し終えたところで、布都が二人に話しかけてきた。

「おぉーい!作戦会議が終わりかのぉー?ならば、今度はこっちから行くぞぉー!……屠自古!」

「あいよ、布都」

 

 屠自古が前衛、布都が後衛となって二人はスペルを発動した。

「いくぞっ!雷矢、『ガゴウジトルネード』!!」

「援護するぞ、屠自古よ!!投皿、『物部の八十平瓮』!!」

 

 屠自古の弾幕の隙間を、布都の弾幕が埋めるように展開された。回避するには、布都の弾幕が屠自古の弾幕に追いつく前に、突破しなければならなかった。

「くっ……咲夜さん!時間を止めて、突破してください!」

「美鈴は!?」

 

「この弾幕を……受け切ってみせます!!」

「無茶よ!一人分ならまだしも、弾幕は二人分……耐えきれるかどうか……」

 

「大丈夫です……伊達に門番、やってませんから!!」

「……わかったわ。あなたを信じる……幻世、『ザ・ワールド』!!」

 

 咲夜のスペル発動と同時に、時間が止まった。弾幕はまだ追いついていない。咲夜は止まった弾幕の隙間を抜け、攻撃を回避した。

「時が動き出す……美鈴!」

 

 そして時は動き出した。再び時間を取り戻した弾幕は、すべて美鈴に向けて動き出した。

「来るなら来いっ!すべて撃ち落とす……極彩、『彩光乱舞』!!」

 

 美鈴はありったけの弾幕を展開した。それでもすべてを撃ち落すことはできず、直撃を喰らった。

「うああぁぁっ!!」

「……っ!美鈴!?」

 

「おや!いつの間に突破した!?いいい、いったいどうやって!?」

「布都、動揺するな。ひとりは確実に潰した。あとは……もう一人だけだ」

 

「そ、そうだな……。よし、がんばれ布都、あと一人……あと一人だけ……」

「(くっ……さすがに二対一とは……)」

 

「さぁて、どうする?もうお前に勝利への算段は尽きたと思うが?」

「まだよ……まだ終わってないわ!!時符、『プライベートヴィジョン』!!」

 

 咲夜はスペルを使い、隙が出ないように立ち回った。しかし、相手は二人。さすがの咲夜でも分が悪すぎた。

「炎符、『桜井寺炎上』!!」

 

「くぅ……!!」

「諦めろ。もう勝ち目はないはずだ」

 

 咲夜は確実に追い詰められていた。美鈴が欠けた今、他に援軍は望めそうになかった。

「さぁて、これで終わりにするか……。怨霊、『入鹿の雷』……」

 

 屠自古がスペルを発動しようとした時だった。フッ、と屠自古を誰かの影が覆った。

「えっ?」

 屠自古はとっさに後ろを振り返ったが、手遅れだった。

 

「……気符……『地龍天龍脚』っ!!」

 ドゴオォォッ!!

 

先ほど布都と屠自古の弾幕を受けた美鈴が、ボロボロの体のままでスペルを屠自古に叩き込んだ。

「があぁぁぁっ!!」

「と、屠自古っ!?」

 

「遅いっ!!」

 布都が慌てる隙を逃さず、咲夜が仕掛けた。

 

「幻符、『殺人ドール』!!」

 咲夜が放った大量のナイフ型の弾幕が、一斉に布都へ襲い掛かった。

 

「う、うわあぁっ!!」

 屠自古に続き、布都も倒された。何とか勝利することが出来たが、美鈴は無茶をしたのか、その場に倒れこんでしまった。

 

「美鈴っ!」

「あ……あはは……大丈夫……ですよ。無事に……守りきりましたから……」

 

「……美鈴。あなたはゆっくりと休んでいいわ」

「は……はい。そうさせて……もらいま……」

 

 美鈴はやはり無茶をしていた。咲夜は一度、意識を失った美鈴を門の前に運んだ。

「あとは……私がするわ」

 

 咲夜が後ろを振り返ると、そこには霊夢がいた。霊夢は周りの状況を、すでに把握しているようだった。

「咲夜……どいて」

 

「お断りするわ」

「咲夜っ!!」

 

「霊夢……私にとっての幸せは、お嬢様がピアと一緒に暮らして幸せになること……。その邪魔立ては許さないわ」

「咲夜の……幸せ……?」

 

「……お嬢様は……ようやく生き甲斐を得られたのよ。ただ弾幕勝負をしたり、退屈な毎日を過ごす日々は、もうおしまい。ピアが……あの人が来てくれたおかげで、お嬢様は幸せを見つけることが出来たのよ」

 

「だったらなに?私を倒して、それでピアと仲良く幸せに暮らしていくとでもいうの?」

「その通りよ。否定はしないわ。だから守るのよ……私の……私たちの幸せを!」

 

「それはこっちも同じよ!人の幸せを奪って……なにが自分の幸せよっ!!」

「美鈴が守ってくれた幸せ……私も、必ず守ってみせるわ!!」

 

「私は……今ある時間が幸せなのよ!それを……どいつもこいつも邪魔をしてぇっ!!」

 咲夜はナイフを、霊夢はお札を取り出して構えた。それぞれの幸せを、守るために。

 

 外での戦闘が激化する中、紅魔館内部の戦闘も激しさを増していた。

「うおっと!!」

 

「ほらほら、逃げてばかりじゃだめなんじゃないの?」

「くっ……!」

 

「ピア……!天罰、『スターオブダビデ』!」

 レミリアの弾幕が、青娥とピアを引きはがした。青娥はすばやく身を翻して、レミリアに攻撃した。

 

「邪符、『ヤンシャオグイ』!」

「させるか!殺符、『三日月斬』!!」

 

 青娥のスペルを、ピアの全方位弾幕が全て相殺した。青娥は思わず拍手をした。

「お見事。可愛い姫様を守りながらの戦闘……さながら騎士のようですわ」

 

「……そりゃどーも」

「当たり前でしょ?ピアはいつか、私の執事になる男よ!貴様なんぞに倒されるわけがないのよ!」

 

「ふっふふ。そういう騎士様は、さっきから防御しかしていないような気もするけど?」

「……っ!ピア!なんで攻撃しないのよ!?」

 

「……俺は、ここで戦うのは得策ではないと思う」

「なんですって!?」

 

 ピアはまるで開き直るように呟いた。これにはレミリアも、ただ驚いた。

「だったら、アイツらに降伏でもするつもり!?」

 

「そういうわけじゃない。……なんか、嫌な予感がするんだよ」

「嫌な予感……?」

 

「あぁ……。今、こうしている間にも……誰かが内側から、俺たちを崩そうとしているような気がしてな……」

「内側……」

 

「とにかくそれは後だ。今は目の前の敵に集中する」

「……わかったわ」

 

 ピアの感じる嫌な予感。それはピアにとって、決して的中してほしくないものだった。

 

「霊符、『夢想妙珠』!!」

「奇術、『ミスディレクション』!!」

 

 紅魔館の外では、霊夢と咲夜が戦っていた。しかし、咲夜は先程の戦闘での負傷が原因で、動きが鈍っていた。

「くっ……!」

「(咲夜……?動きがおかしい……まさか……!)」

 

 霊夢はあたりを見渡した。門には気を失っている美鈴。さらにその周辺には布都と屠自古も転がっていた。

 

「咲夜!こいつらをやったのはあんたたちなの!?」

「……えぇ、そうよ」

 

「だったら、あんたはさっきの戦闘で……」

「敵に余計な気遣いは……無用よ。私は……怪我をしているからって、情けをかけてもらうつもりは……ないっ!」

 

 咲夜は疲労と苦痛に悲鳴を上げる体に鞭をうち、スペルを発動した。

「奇術、『エターナルミーク』!!」

「くっ……!」

 

 霊夢は咲夜の弾幕をかわした。弾幕を放った直後、咲夜は体勢を崩し、膝をついた。

「うっ……くぅ……!」

「やめときなさいよ、咲夜。今のあんたじゃ……時を止めても私には……」

 

「それでも……お嬢様のためなら、私は命を捨てる覚悟で……!」

「それで命を捨てたら、本末転倒でしょ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)!」

「……!!」

 

 咲夜はハッとなった。それは、かつてピアに言われた言葉と同じものだった。霊夢は門の前に立ち、ゆっくりと門を開けた。

 

「死んだら守れるものも守れないわ……。あんたは守る者として、守られる者の幸せを見届ける義務があるはずよ」

「霊夢……!」

 

「…………」

 霊夢は門をくぐった。太陽は一番高いところに上っていた。時間はすでに昼。霊夢は従者を守るため、紅魔館へと入っていった。

 

「邪符、『グーフンイエグイ』!」

「ちっ……!斬符、『斬鋭弾』!」

 

「紅符、『スカーレットシュート』!」

「入魔、『ゾウフォルゥモォ』!!」

「くっ……!」

 

 ピアとレミリアは、青娥一人を相手に苦戦していた。というより、ピアが青娥に攻撃を当てようとしないので、レミリア一人で攻撃を行っていた。

「ふふふ……」

 

 青娥は能力、『壁をすり抜けられる程度の能力』で壁抜けをして弾幕をかわしていた。

「ちっ!また壁に……!!」

 

「こっちよ」

「……っ!」

 

 青娥はレミリアの背後の壁から出てきて、スペルを使った。

「道符、『タオ胎動』!」

「ああっ!!」

 

「レミィっ!」

 回避が間に合わず、レミリアは弾幕の直撃を受けた。ピアはとっさにレミリアを受け止めた。

 

「おい!大丈夫か!?」

「うっ……。こ……この程度……!ぐぅ……!」

 

「ちっ……!」

 ピアは青娥を睨み付けた。青娥は壁から抜け出し、ゆっくりと下りてきた。

 

「ふふっ……。さて、どうするかしら?私たちに従ってくだされば、こんな手荒い真似はなさらなかったのですが……」

「レミィ……すまない……。俺のせいで……」

 

「あ……あんたのせいじゃ……ないわよ……。私の……ミス……」

「いや、俺のせいだ!俺が……力を出し惜しんでいたばっかりに……」

 

「別に……いいじゃない……。ピアらしくて……私……好きよ……」

「!!」

 

「ピア……私……あなた……が……」

「……!レミィ……?レミィ!?」

 

「意識を失っただけですわ。かなりの直撃でしたし……まぁ、寝かせてやればそのうち……」

「……ははっ……。やっぱりな……やっぱりだよ……。結局……話し合いどうこうではどうにもならない……。誰が誰もが戦おうとする……それも……俺のために……」

「……ピア様?」

 

「俺の問題だって言うのに……俺はみんなを巻き込んで……みんなを傷つけて……。やっぱり俺は……誰かと一緒にいるのは……誰かを傷つけるだけ……」

 

「そのようなことは……けっして……」

「事実だ。俺のせいでお前とレミィが戦い、レミィが傷ついた……。俺は……」

 

 ピアはレミリアをその場に寝かせ、ゆっくりと立ち上がった。そして、青娥に対して殺意を向けた。

「俺は……罪人……。傷つき……倒れ……死んでいくのは……俺の役目だぁっ!!」

 

 その直後だった。ピアの中から、得体の知れない力があふれだして来た。それは、ピア自身にもどうすることも出来ないほどに強力な力だった。

「なんだ!これは……う……うああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「……!ピア様!?」

 

「ぐっ……あ……っがああぁぁぁぁ!!」

 ピアの周りを、どす黒い瘴気が包んでいった。そしてやがて、ピアは叫ぶのをやめた。だらんと腕を垂らし、力が抜けたような立ち方をしていた。さすがの青娥も、ピアの異変に驚いた。

 

「(これは……ピア様から、何か違う存在が……?)」

「……因果よ……我の望むままに……」

 

 ピアは小さく呟き、レミリアの頭の上に手をかざした。

「……否定……『理想への永久迷路(パーマネントメイズ)』……」

 

 すると、レミリアの体にあった傷は一瞬で治った。しかし、青娥はその治療法に違和感を覚えた。

「(……!一瞬で治った……。いや、違う……。消えた……!?)」

 

 青娥は気づいていた。それは“治る”というよりも、“消えた”に近かったからだ。まるで、初めからなかったかのように。

「くっ……!これは……!?」

 

 青娥はとっさに壁を抜けようとした。しかし、ピアはそれを逃がさなかった。

「……無効……『ロストスキル』……」

 

 ピアはスペルを発動した。その直後、青娥は壁にゴンッ、と激突した。

「いったぁ……。わ……私が壁を抜けられない……?というか、能力が使えない……!?」

 

 青娥は何度も壁を抜けようとしたが、それが出来なかった。能力が使えなくなっている。明らかにピアのスペルが原因だった。

「ピア様……なにを……?」

 

「力は無限であり有限……。すべては虚(ゼロ)にあり、虚(ゼロ)に帰すモノ……。虚(ゼロ)は絶対にして、曖昧……ゆえに揺らぐことを知らず……」

「……!」

 

「……肯定……『現実への捏造交錯(ファブリケーションミクスチャー)』……」

 ピアが青娥の真上の天上を指でさしながら、スペルを発動した。すると、何の前触れもなく天井が崩れ、能力が使えない青娥に襲い掛かった。

 

「きゃあぁぁっ!!」

「……!!」

 

 青娥の悲鳴で、ピアは我に返った。翼を広げ、見えない速さで青娥を救い出した。

 ドガアァァンッ!!

 

 先ほどまで青娥がいたその場所に、天井が落ちてきた。しかし、ピアは何が何だか分からず、思わず青娥に訊ねた。

「おい……これって……どういうことだ……?」

 

「え?ピア様……記憶が……?」

「なんかすっげぇー曖昧になっちまってる……。いったい何があったんだ……?」

「…………」

 

 青娥はあえて何も言わなかった。ピアが能力の存在を自覚した時のことを想定すると、恐ろしかったからである。

 

「いえ……何でもないですわ……」

「…………?」

 

 ピアはとりあえず青娥を降ろし、レミリアの方へとかけよった。レミリアの無事を確認すると、彼女を抱いて立ち上がった。

「青娥……俺はお前たちに守られるほど、弱くはないつもりだ」

 

「……それでも、あなたは八雲紫に手を出せない……」

「たしかにな。だが……戦う以外の方法だって、探していれば、いずれ見つかるはずだ。俺はその手を使うぜ」

 

「……それでも、あなたは……」

「いいんだよ、これで。戦うって言うのは……面倒くせぇからな」

 

「……ふふっ。あなたららしいですね。わかりました……太子さまには、私から伝えておきましょう」

「すまない」

 

「お礼なんて、恐縮ですわ。それでは……私はこれにて……」

 青娥はふわふわと飛んで行った。ピアはそれを追いかけることはせず、レミリアをベッドの上にそっと寝かせた。

 

「……すまない……俺は……」

 意識を失っているレミリアに静かに謝罪した。霊夢が紅魔館へ来ていることも知らず、ピアはその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館の地下室。ピアの帰りを待っているフランが、退屈そうに人形で遊んでいた。

「はぁ~……お兄様、まだかなぁ~……。なんかいろんなところで弾幕ごっこが始まってるけど……お兄様、弾幕ごっこなんかやってないよね……?」

 

「それはどうかしら?」

「うわぁ!びっくりしたぁ……って紫じゃん」

 

 地下室に現れたのは紫だった。紫は軽くほほ笑みながらフランに話しかけた。

「ふふふ……大好きなお兄様にかまってもらえなくて、さみしいんでしょう?」

 

「仕方ないよ。お兄様……なんか忙しそうだし……。今日だって、お姉さまに呼ばれたとかいって……」

「貴方を無視した」

「……!違うよっ!!」

 

 フランはとっさに否定したが、紫はそれを否定するようにつづけた。

「どうかしら?彼はあなたが知らないところで、いろいろな女性と遊んでいるそうよ?」

「え……嘘……」

 

「まぁ、無理もないわね。あなたと遊びたくても、ほかの女が寄ってくるもの。そりゃあ、あなたにかまっている暇なんてないわ」

「し……仕方ないよ……。お兄様は……人気者だから……」

 

「仕方ない?それは違うんじゃないかしら?だって、考えてみてごらんなさい。もし彼がレミリアに呼ばれてさえなければ、あなたと遊べたのよ?」

「えっ……あ……」

 

「ピアがあなたと遊べないのは、ピアのせいじゃないわ。ピアの邪魔をする、ほかの人間たちが悪いのよ。ピアの周りには、いろんな女性がいるわ。でも、その中にあなたはいるのかしら?」

「あ……う……」

 

 紫は人形を一つ拾い上げた。そのまま人形をつかんだ手に、力を入れた。

「ピアだって生き物よ。自分のお気に入りの人形だって、いずれは見つかるわ。そして、必要なくなった人形は……」

 

 紫は人形を握りつぶした。

「ステルだけ」

「……!!」

 

 紫は人形を放り捨て、フランの前に詰め寄った。

「捨てられた人形は……どうなるのかしらね?」

「…………」

 

「さようなら、哀れな人形さん。あなたはもう主のもとには戻れない」

 紫はスキマの中へ消えていった。一人取り残されたフランの目の色は完全に死んでいた。

 

「……いやだ……お兄様……捨てられたくない……。ようやく……手に入れた……幸せ……失うなんてヤダ……。お兄様……フランと遊んでほしいよぉ……。独りは……もう嫌だよぉ……」

 フランはゆっくりと立ち上がった。

 

「あぁ……そうかぁ……。みんながお兄様を忙しくさせているんだぁ……。

お兄様は悪くない。お兄様を忙しくさせているみんなが悪いんだぁ……。

みんながお兄様の自由を奪っているんだぁ……。

お兄様のことをみんなが邪魔をするんだぁ……。

お姉さまも、咲夜も、パチュリーも、美鈴も、こぁも、

あぁ……魔理沙や霊夢もいたなぁ……。

亡霊とか、妖怪の山の神様とか、あ、こいしちゃんもいたなぁ……。

お寺のお姉さんとか、仙人とかいう人もいたなぁ……。

みンナがお兄様を自由ニさせてくレナいんダねぇ……。

大丈夫だよぉ……。フランはお兄様の味方だカラぁ……。

お兄様のジユウを奪うやつは許さない……お兄様のテキはフランの敵……。

お兄様はフランが自由にシテアゲルヨ……。お兄様はフランが守るンダモん……。

フランはお兄様をウラぎらないよ……。お兄様のテキは……全部……」

 

 フランは持っていた人形を床にたたきつけた。

「全部!フランが壊してヤルんダからっ!!あっはハハハはははハハはハははハハハは!!」

 




フランちゃん暴走!どうなる紅魔館メンバー、どうするピア!?
狂い始めた歯車を止めるのは?
では次回…
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