キャラ崩壊がいつも通りありますが苦手でなければ
リラックスした気持ちで読んでもらえると幸いです
第二十四章どうぞ!
紫との決着から三日後。博麗神社には前回以上に人が大勢やってきた。そして、子の宴会の音頭を取ったのは、やはり魔理沙だった。
「あー、あー……コホン。えぇ~それでは!ピアの活躍で、幻想郷全体を巻き込む大異変は無事解決した!!」
「……相変わらず魔理沙は針小棒大なことを……なぁ、霊夢?」
「まぁ、いいじゃない。ピアも嫌いじゃないでしょ?魔理沙のああいうところ」
「ははっ。それもそうだった」
「今日は、それを祝すための宴会だぜ!……よっしゃー!博麗の巫女の使い、ピア・デケムの活躍を祝ってぇ~……かんぱーい!!」
「「「かんぱーい!!!」」」
こうして宴は始まった。始まったばかりなのに、夜はまだまだ長そうだった。
「ピア……」
「ん?おぉ、レミィ」
「となり、いいかしら?」
「おう、いいぜ」
レミリアはピアの隣に座った。レミリアはピアにそっと寄り添った。
「ん?どした、レミィ?」
「ピア……もし、もしもの話だけど……霊夢に博麗の巫女の使いをクビにされたら……私のところへ来てくれる?」
「ん、あぁ……もしもの話か。う~ん……そうなるだろうな」
「本当に?」
「あぁ、もちろんだ。その時が来たら……よろしくお願いしますよ、お嬢様」
「!?!?!?!?」
レミリアは顔を真っ赤にしてピアの顔を見た。しかし、ピアにはただレミリアが酔っているようにしか見えなかった。
「ピア……」
「どうした?」
「なんだか……熱くなってきちゃった……」
「そりゃそうだ。酒を飲んでるk……え?」
ピアはレミリアの言葉に息をのんだ。
「レミィ……さん……?」
ピアはレミリアの顔を見た。レミリアは瞳をうるうるさせながら、上目遣いでピアを見てきた。
「ねぇ……霊夢と私、どっちが好き?」
「(なんで今ここでそれを聞くかなぁー!?)」
「ねぇ、どっちなの?」
「あ……えっと、その……」
「ピア……“レミィ”って答えてよ……?」
「(レミィの目が本気だ……マズイ、コマッタ、ドウシヨウ……!!)」
「今ならだれも聞いてないわ……さぁ、早く……」
「う~……」
ピアが返事に困っていると、後ろからまた幽々子が抱き付いてきた。
「ばあ~っ!」
「うおああぁっ!?……って、何だ幽々子か」
「幽々子!またあなたは私の至福の時を……!!」
「え~?だってぇ~、二人っきりの時のレミリアって、すっごく積極的じゃない?だからちょちょっとちょっかいをかけたくなったのよぉ~♪」
「よ……余計なお世話よ!!」
「ピア~」
「なんだ?」
「抱いて?」
「ぶふぉっ!?」
ピアは思わず飲んでいた酒をふいた。それを見たレミリアは幽々子に怒り心頭した。
「ちょっと、幽々子!ピアに何てことするのよ!」
「何って……プロポーズだけど?」
「げほっげほっ……!幽々子おま……何を言い出すんだ!?」
「ねぇ~ピア~。まだ結婚しないのぉ~?もう婚約届を勝手に出しちゃうわよぉ~?」
「やっ!やめっ、やめろぉー!」
ピアはとっさに幽々子に手を伸ばした。しかし幽々子が思いのほか抵抗しなかったので、そのまま幽々子を押し倒す形になってしまった。
「あっ……」
「……ふふっ。やっとその気になってくれたぁ?」
「なるかあぁぁぁっ!!」
ピアはものすごい勢いで後ずさりした。すると、レミリアがわなわなと体を震わせていた。よく見ると、目に涙をにじませている。
「あ……いや、レミィ……ちが……!」
「ピア……」
「……はい?」
「抱くなら私の方にしなさいよぉー!!」
「なぜそうなるっ!?」
「ちょっとレミリア~?先に“抱いて”って言ったのは私よぉ~?」
「先にピアと話をしていたのは私よ!だから、ピアが抱くのは私が先!!」
「(やべぇ……収拾つかなくなってきた……逃げよう)」
二人が言い争いをしている間に、ピアはこっそりと移動した。
「ピア、こっちよ」
コソコソと移動するピアの手を引いたのは咲夜だった。そこには咲夜と妖夢、そして鈴仙がいた。
「おや、従者組の勢揃いか?」
「あはは……私も呼ばれちゃいました。いいですか?私なんか場違いみたいで……」
「何を言ってるんですか、鈴仙さん!せっかくみんなで飲んでいるんですから、楽しみましょう!ね、お兄さん?」
「……そうだな。妖夢の言う通りだ。たまにはお前も楽しんで行けよ、鈴仙」
「はい!ありがとうございます!」
「それいうならピア、あなたも一応は従者という立場ではないかしら?」
「うん?それもそうか」
「なら、あなたも一緒に飲みましょう?同じ従者同士、語り合うのもいいでしょ?」
「あぁ、たまにはそうするかな」
ピアはその場に座り、咲夜たちと盃をかわした。自分の主の自慢話や愚痴、一緒にいて嬉しかったことや楽しかったこと、そしてなによりピアの話が一番盛り上がった。
「いやいやいや!なんで俺の話が一番盛り上がるんだよ!?」
「そうは言ってもねぇ……。ウチのお嬢様は“ピアを絶対に執事にする!”って言って聞かないもの」
「そりゃそう言ってたけど……」
「幽々子様は……もうお兄さんとの子供の名前を決めてしまいました……。早く子供が欲しいと毎日毎日……」
「うわぁ……マジかよ……」
「姫様の場合は違いますね。あの人は“絶対にぎゃふんと言わせるんだから!!”って。ピアさんが来るのを待ってるんですよ」
「ほう、なるほどどうりで……」
ピアは振り返りながら言った。
「後ろからすっげぇ殺気を感じるわけだ……」
ピアの後ろには、殺気をむき出しにして睨み付けてくる輝夜がいた。永琳がなだめているようだが、聞く耳を持っていないようだった。
「……気をつけよう」
「すみません……姫様にはちゃんと言っておきますので……」
「まぁ、大丈夫……だろう」
「おぉーい!ピアぁ―!!」
四人の会話に割って入るように、魔理沙が大声で呼びながら走ってきた。
「うるせーよ。聞こえてる」
「ちょっとこっち来いって!いいから来い!つーか来い!」
「おい、こら!」
魔理沙に腕を引っ張られ、ピアは咲夜たちと別れた。
「……相変わらず、忙しい人ね」
「本当に……お兄さんは、ちゃんと休んでほしいです……」
ピアの後ろ姿を見ながら、咲夜と妖夢は小さく呟いた。
「こら、魔理沙!あんまり引っ張るな!!」
「えっへへ~!はやく来いよ!」
魔理沙に手を引かれて連れてこられた先には、霊夢がいた。しかし、もう一人見慣れない男性もいた。
「ほら、こーりん!!こいつが外来人のピアだぜ!!」
「魔理沙……?霖之助さんがピアに会いたいから来たって言うのは、本当だったのね」
「まぁね。僕としても、外来人の話には興味があるんでね」
「おい、霊夢。誰だ、そいつは?」
ピアは無意識に、ややとがった口調になった。ピア自身も認めたくはなかったが、なにやらイライラするものを感じた。
「この人は『森近霖之助』さん。魔法の森にある『香霖堂』の店主よ」
「初めまして、ピア君。君とは一度、会ってみたかったんだ」
「……けっ」
ピアはなぜか霖之助が気に入らなかった。胡散臭さでは紫の方が圧倒的なはずなのに、なぜか霖之助の顔は見ていてイライラする。
「(あぁ、そっか。あの“クソ狐”に似ているからだ。……あのクソ野郎……今頃は何やってんだか……)」
「ん?どうかしたのかい?」
「あぁ、いや。何も……ちょいと俺の世界の知り合いに、あんたが似てたもんでね」
「こーりんそっくりの外来人!?なぁ、ピア!どんな奴なんだよ?」
「思い出したくないくらいに大っ嫌いな奴」
「あ、あぁ……あっそう……」
ピアがあからさまに嫌な顔をしたので、魔理沙はそれ以上は追及しなかった。
「さて、ピア君。君には外の世界について、いろいろと聞きたいことが……」
「あぁ、大丈夫だ。俺にこたえられる範囲でいいなら、何でも答えよう」
「助かるよ。実は僕の店に外の世界のものが……」
二人が話し始めたところで、魔理沙は霊夢のところへ戻った。
「よう、霊夢。ピアって本当に人気者だな」
「……まったくよ。はぁ……私も、もっと素直になったらきっと……」
「ん?なんか言ったか?」
「何にも!……そういえば、今日はアリスと一緒じゃないのね」
「あ~アリスなんだけどな……“今回はパスする”って言ってた。なんかの人形を作ってたみたいだけど、何だったんだろ?」
「ふぅん……。あ……」
霊夢が気が付くと、霖之助とピアのところに早苗がいた。相変わらず早苗はベタベタとくっついてた。ピアは“自重しろ”と言わんばかりに引き離そうとしていた。
「早苗……まったく!!」
霊夢は早苗のところへ行くと、ピアから無理矢理引き離した。早苗は何かを叫んでいたようだったが、霊夢はそれを無視して早苗を引っ張っていった。
「やれやれだぜ。みんなは本当にピアが好きだな。……まぁ、私もピアのことが好きなんだけどな……」
魔理沙はお酒をクイッと飲んだ。その後、霊夢と早苗が取っ組み合いを始めて、慌てて止めに入ったピアが巻き添えになったことは言うまでもない。
「いっててて。まったくあいつら……酔ってるからって、容赦なさすぎるだろ……。本気で殴りやがった……」
「大丈夫ですか?ピア君」
「げぇ……白蓮……」
ピアのことを心配した白蓮が声をかけてきた。心底心配している白蓮に、ピアは殴られた頬をさすりながら答えた。
「問題ねぇよ。ちょっと殴られたぐらいで、すぐに心配すんなよ」
「あぁ、すいません。つい……」
「“つい”じゃねぇよ。……まだ、俺にアイツの面影を重ねてんのか?」
「……!!」
白蓮は言葉を詰まらせた。思わずピアから視線を逸らす白蓮に、ピアはため息をついた。
「(だめだ……こいつは優しすぎる。まるでアベルみたいなやつだ……)」
このまま会話が終わってしまうと非常に後味が悪いので、ピアは白蓮をフォローすることにした。
「あ~……まぁ、白蓮の気持ちもわからんでもないけどな。お前はアイツのことを慕っていたみたいだし……アイツがなんでお前を選んだのかは知らんが、お前もいつまでもあいつにとらわれすぎだ。それじゃあ、アイツも浮かばれんだろう?間接的とはいえ、アイツはお前に会えたんだ。もう充分だろ」
「ピア君……ありがとう。ピア君は本当に優しいんですね」
「う……うるせぇよ……。そんなんじゃねぇっつーに……もうほっとけ!」
ピアは慌てて白蓮から離れていった。白蓮は特に追いかけはしなかったが、その心はすうっ、と暖かくなっていた。
「……ピアさん、照れてたね」
「ふふっ……なんだかピアさんらしいわね」
「ピア殿は悪魔であるが、人を思いやる心を忘れてはおらぬようだな……」
二人のやり取りを見ていた水蜜と一輪、雲山は、ほほえましい表情で眺めていた。
宴会はさらに盛り上がってきた。すぐ近くでは、音楽団の演奏が聞こえてきた。
「なんだ?音楽……?文、この音楽は一体……?」
「あぁ、『プリズムリバー三姉妹』ですよ。『ルナサ・プリズムリバー』、『メルラン・プリズムリバー』、『リリカ・プリズムリバー』の三人です」
「へぇ~、すごく演奏がうまいな。さすがは姉妹ってところか」
「ま、音楽で彼女たちの右に出る者はいませんからね。それより、ピアさん!取材しちゃってもいいですか?」
「あぁ、いいぞ」
文は相変わらず仕事熱心だった。といっても、最近の新聞の内容が自分のことばかりだと、ピアはあえてツッコミを入れない。
「それにしても……ピアさんが幻想入りして、もう半年になりますね!」
「ん?もう半年か?随分と早かったな……」
「それだけピアさんが幻想郷になじめているってことですよ!ピアさんは人気者ですからね」
「そうか……文、取材をしようか」
「あ、はい!」
ピアは文の取材を受けた。幻想入りしてから半年たったことについて、いろんな人から勧誘されていることについて、紫の考えていることについてなど、様々な質問を受けた。
「ふむふむ……なるほどなるほど……はい!ありがとうございます!」
「文も、仕事熱心なのはいいが、たまにはお前も宴会を楽しめよ?」
「あはは……そうですね。今回はちょっとだけゆっくりして行きましょうかね」
「それがいいさ……じゃあな」
「はい!ピアさん、お疲れ様です!」
ピアに別れを告げ、文は別の人へ取材しに行った。ピアが文と別れ、しばらく一人でいると
「こんばんは」
すぐ近くにいた神子たちが声をかけてきた。
「おぉ、神子か」
「どうもピア君。まぁまぁ、とりあえず座りましょうか」
「そうだな」
ピアと神子はその場に座り、盃をかわした。
「神子……一つ聞かせてほしい」
「うん?なんだね?あなたの質問なら、答えられる限り答えましょう」
「じゃあ、聞く。なぜ実力行使するような真似をしたんだ?宗教ってのは、考えが違う者はすべて敵なのか?」
「……いきなり辛辣なことを言いますね。確かに……我々は聖白蓮ら仏教徒とは敵対しています」
「他者を受け入れるのは……簡単じゃなさそうだな」
「えぇ。仏教と道教はいがみ合う者同士……。信仰するものが違いますからね……簡単には行かないでしょう」
「そうか……」
ピアは少し残念だ、と肩を落とした。そんなピアに神子は笑って見せた。
「大丈夫ですよ。もしもピア君……貴方がその気になれば、仏教と道教を一つにすることが出来るかもしれませんよ?」
「俺がかぁ?無理だっての。俺は宗教とか全然わからんし」
「無理に理解をしろとは言ってません。ただ、あなたの仁徳をもってすれば、両者が歩み寄る日も近い……そう言ってるだけですよ」
そう言って神子は立ち上がった。くるりと向きを変えると、そのまま歩き去っていった。
「神子……」
ピアも思わず立ち上がって追いかけようとした、その時だった。
「つっかま~えたっ!」
「うわっ!」
後ろから勢いよくこいしが抱き付いてきた。ピアは慌ててこいしを注意する。
「こら、こいし!危ないだろうが!いきなり飛びつくな!!」
「えっへへ~!今日は私が一番乗りだよ、お兄ちゃん!」
「いやいやいや、一番とか二番とかいいから!普通に今のは危ないから!」
「あ~!こいしちゃんずるい~!!フランもお兄様にくっつく~!!」
フランはピアの右手にくっついてきた。二人とも、お互いに負けじとピアに甘えてくる。
「おま、お前ら……!こら、やめ……おぉい!」
ピアが必死に二人の相手をしていると、遠くから視線を感じた。そちらの方へ振り向くと、陰でこそこそとしているぬえがいた。
「…………」
ピアは黙って空いている左手でぬえに手招きをした。少しだけおどおどしながらも、ぬえはピアの方へ近づいていった。
「ほら、おいで」
「……うん」
ピアが手を伸ばすと、ぬえはピアの左手にくっつく。結局三人を相手することになったが、ピアはさほど気にしてはいなかった。いや、気にしないようにしていた。
「(はぁ……結局こうなるのか……)」
「あ、そうだお兄様!」
フランはピアの手から離れて、ピアの正面まで回り込んだ。
「なんだ?フラン?」
「えへへへへ~」
フランは両手をグーの形にし、手首を前の方にまげてにっこりと笑った。
「フランだにゃん♪」
「おぶぅっ!!」
ピアは精神に多大なダメージを負った。多少むせ返りながらも、ピアはフランにやめるように言った。
「あ!じゃあ私も……お兄ちゃん、こいしだにゃん♪」
「ぐはぁっ!!」
ピアの精神はどんどんダメージを重ねていった。何とか心を保ち、ピアはフランに訊ねた。
「フ……フラン……!どこでそれを……!?」
「えっ?咲夜が言ってたの。“ピア様はネコが好きだから、にゃんって言ってあげたら喜びますよ”って」
「ああぁぁのお喋りメイドおおぉぉぉぉっ!!」
いまさら叫んでも手遅れだった。ピアは動物は猫が好きだった。宴会の二日前、紅魔館を訪れたピアは、咲夜と雑談中に、ネコ好きであることを話していた。それを何を考えたのか、咲夜はフランに教えていたのだ。
「(あのやろぉ……あとでぜってぇに文句を言う!!)」
「あの……兄貴……」
ぬえが何やらもじもじしながら話しかけてきた。まさか、とは思いつつそうならないことを願いつつ、ピアは返事を返した。
「えっと……なんだ?ぬえ?」
「あの……その……」
ぬえは恥ずかしそうにしながらも、二人と同じポーズをとった。
「にゃ……にゃん……」
「…………」
ピアは頭の中でピチューン、という音が聞こえた気がした。ピアが聞いていないと思ったのか、ぬえはもう一度同じことをした。
「ぬ……ぬえ……だにゃん……」
「ぬえ……。もういい……無理しなくていい……」
ピアはネコ好きを認めたうえで、三人にやめるように言った。しかし、ピアが喜んでくれると思っているのか、三人はなかなかやめなかった。
「フランだにゃん♪」
「こいしだにゃん♪」
「ぬえ……だにゃん♪」
「あぁ、もうわかったわかった。……よーしよしよしよし……」
とりあえず頭を撫でてあげる。三人は幸せそうな笑顔で笑った。
「えへへ~」
「お兄ちゃんに撫でられたぁ~♪」
「あ……えへへ……」
「(……こいつらを見てると、自分の世界を思い出すな……。こんな感じに、俺を慕ってくれる奴らがいて……いいや、忘れよう……)」
ここは幻想郷。外の世界から隔離された世界。そして自分もまた、外から隔離された者の一人。今は自分の世界のことは忘れてもいい。何者にも縛られず、何者にも支配されないこの世界で、これから先を生き続けるのも悪くはない。今までそう思ったことは一度もないのに、今だけ不思議とそう思えた。
「(いや、やっぱり忘れよう……。この時間も……きっと長くは……)」
「お兄様……?」
「うん?」
フランが心配そうピアに声をかけてきた。ピアはいつも通りの調子で答えた。
「どうした、フラン?俺の顔になんかついてるか?」
「ううん……なんか、今のお兄様の顔……すごく寂しそうだった」
「お?寂しいだって?」
「うん……なんていうか、心ここにあらずって感じだった」
「あ、それ私も思ったよ。お兄ちゃん、たまにどこを見てるだろうって、最近はそう思うの」
「そうか?俺はいつもお前たちを見てるけどな」
「本当に?兄貴は嘘をつかないって信じてるけど……でも、ちょっとだけ怖いな……」
「それはないって。心配させて悪かったよ、ぬえ」
「うん……」
本当に慕ってくれているからこその言葉。心から信頼しているからこその不安。守らなければならない、その資格が自分にあるのだろうか。
「(そんな資格は無くてもいい……。守らなければいけないから守る……。……ちっ、こんな姿……あいつらが見たら笑うだろうな……)」
自分の世界に住む二人の神。一人は妖怪と人間の橋渡しを担う人工妖怪の神、妖神。もう一人は、全知全能にして最強。種族を問わずに慕われ、皆に守られ、皆を守る者。天界のはるか上をゆく世界、神界より人として舞い降りた者、創造神。そして、魔王の敵。
「(……そうだな。ここは向こうとは関係ない……今、すべてを忘れてしまえば……きっと)」
ピアが物思いにふけっていると、突然目の前にスキマが現れた。
「ごきげんよう」
そこから紫と藍、橙の三人が現れた。橙は出てきてすぐにどこかへ行ったが、紫と藍だけが残った。
「……っ!紫!!」
「…………!!」
紫が現れたため、フランとこいしは思わず身構えてしまった。ピアは二人をぬえに任せて後ろに下がらせ、紫と向き合った。
「よう」
「えぇ」
「来てくれたんだな」
「えぇ、これまでのことでお詫びを……それと、貴方と話をするために」
「お詫びなんてどうでもいいから、話をしよう。俺は前から紫と、ちゃんと話がしたいと思ってたんだ」
「……えぇ、そうでしたわね」
「普通にタメ口で話そう、紫。俺もお前に聞きたいことが山ほどある。……藍も一緒にどうだ?」
「では、ご一緒させていただきます」
「ふふっ……やっぱりピアは変わっているわね」
「そうかぁ?俺自身はいつも通りだぜ?さぁ、飲もうか」
「えぇ、飲みましょう」
ピアと紫は盃をかわす。初めての相手と飲む酒はうまいと萃香がよく言っていたが、きっとその通りなのだろう。他愛のない話から、ピアが住む世界についての話など、会話のネタは最後まで尽きなかった。飲み、歌い、語らう時間。ピアが決して味わえないであろう時間。この幻想郷において、ようやくそれを実感することが出来た。
「……やっぱり、誰かと飲むのはいいことだな」
「そうね。まさか貴方とここまで会話が盛り上がるなんてね……正直、思ってもみなかったわ」
「気まずくなる……ってか?俺はあんまり気にしてないからな……別に問題はないぜ?」
「ふふっ……。貴方の強さ……きっとそこにあるのでしょうね」
「そこ……って、どこよ?」
ピアの質問に、紫はピアの胸をまっすぐ指さした。
「そこに……心にあるわ」
「……嫌味?」
「いいえ、皮肉よ」
「はっはっは!こりゃ一本取られたな」
「ちょっとピア―!あんた誰と飲んで……って、紫!?」
「ごきげんよう、霊夢。飲ませてもらってるわ」
「あんた……ほんっとに変わるのは早いわね……」
「ふふっ……そういうあなたも、彼を見る目が変わったのではなくて?」
「なっ……!!か、関係にゃいでしょ!?」
「ほら、噛んでるし」
「ぐぎぎ……」
紫と霊夢が何の話をしているのか、ピアにはわからなかった。それでもピアは霊夢に杯をかざして、一緒に飲もう、と合図した。
「……もう、しょうがないわね……」
「霊夢……」
紫は霊夢の耳元で小さくささやいた。
「甘えられるうちに甘えなさい……でないと、失った時に後悔するわよ……」
「ちょ、何の話……?」
「何でもないわ……ただ、失ってから大切さに気付くようでは遅すぎる……そう言いたいだけよ」
「…………!」
「おい、何の話をしてるんだ?いいから飲もうぜ、四人でさ」
「そうですね……紫様」
「そうね、霊夢もたまには一緒にどう?」
「……わかってるわよ……」
「あ、それと……まだ縁談の話が残ってるんだけど……」
「だから!あんたの娘になるつもりはないって、最初から言ってんでしょーがっ!!」
「むぅ……。あ、そうだ!ピアが私と結婚したら、必然的に霊夢が私の娘に……」
「ならねぇよっ!!」
「ならないわよっ!!」
「あら、残念……」
二人に否定され、紫はしょぼんと肩を落とした。すると、その姿を見た霊夢が突然笑い始めた。。
「あははは!あは、あっははは!!」
「ちょっと……そんなに笑わなくても……」
「や、やっぱり……紫はそれくらいがちょうどいいのよ!それくらいふざけているくらいが……ね」
「……霊夢……」
「けど……あんたの娘になるつもりはないんだからねっ!!」
「えぇ~。娘になってよぉ~。一緒に暮らしましょうよぉ~。ねぇ、霊夢ぅ~」
「うっさい!近寄んなっ!!」
紫は霊夢に抱き付こうとしたが、霊夢は必死にそれを押さえつけた。
「ふぅ……」
ピアは安堵の息をついた。この時間がいつまでも続けば、一生楽しいままでいられる。それでも時間は待ってくれない。無情にも、時の流れは止まってはくれない。だからこそ、守る必要がある。ピアはそう思った。そして、この世界が不変不動であることを小さく願った。
宴会はやがて終わり、ピアは霊夢とともに片づけをした。すべてを一通り片付け、寝る準備をしていた。
「萃香……は、もう寝てるな」
「ホントに……散々飲んで勝手に寝ちゃって……自由すぎるわよ」
「ははは!まぁ、そういうなって!萃香もかなり楽しんでいただろう?それでいいじゃんか!」
「まぁ……そうだけど……」
二人分の布団を敷き、ピアと霊夢はそれぞれの布団の中へ入った。
「じゃあ、寝るかな」
「あ、ピア。ちょっと待って」
「ん~?」
ピアが霊夢の方へ振り返った、その時だった。
チュッ。
「……へっ?」
「お休み……」
「ちょ、霊夢……」
「いいから、お休み!」
「あぁ、はい。お休みなさい……」
布団に入り、しばらくすると霊夢の寝息を立て始めた。ピアは天井を見つめたまま、時間が止まったような気がしていた。
「(どうしよう……眠れないじゃねぇか、馬鹿野郎……)」
霊夢にキスをされた。唇に唇を重ねられた。そして、霊夢は隣にいる。おそらく霊夢なりの労いのつもりだったのだろう。本当に時間が止まってしまえばいい。外から差し込む月明かりに照らされながら、ピアは静かに願いつつ、眠りについた。
次回投稿はすみませんが遅れます
ちょっとしたトラブルと
まだ構想が練られていない為です
お待たせしてしまいますことをお詫び申します
出来次第正午投稿します