東方魔郷談   作:Walther58

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第二十七章どうぞ!


第二十七章 ~異世界からの侵略者~

 

 どこまでも続く星空。砂浜と海岸線がはるか遠くまで見ることが出来る。

ここは幻想郷の月。

そこにはビルのようなものがたくさん建っている、いわゆる月面都市である。

しかし、その月面都市は、今や見る影もなく無残に破壊しつくされていた。

 

月が攻撃を受けているからである。月のリーダーである、綿月姉妹、『綿月豊姫』と『綿月依姫』は謎の侵入者の迎撃に当たっていたが、防戦一方だった。

二人のもとに一匹の玉兎、『レイセン』が報告に来た。

 

「豊姫様!依姫様!報告します!!敵は中枢を突破し、こちらに接近している模様!!どうか、お二人だけでもお逃げください!!」

「レイセン、報告ご苦労……お姉さま!」

 

「……敵は単騎……なれど、一騎当千を誇る実力……ね」

「部隊はほぼ壊滅……月の都の被害も甚大……敵は目につくものすべてを破壊しつくしている……。お姉様!私が出ます!!」

 

「駄目よ、依姫。ここで私たちが先に動いては、指揮系統に支障をきたすわ」

「しかし!!」

「その必要はねぇぜ」

 

 二人の会話に割って入るように、誰かが扉を破壊して進入してきた。明らかに邪悪な意思を宿した男で、その手には血まみれの玉兎が一匹、掴まれていた。

 

「……はんっ!!大したことねぇな。何が最新技術の最新鋭だ……くだらん。悪いがこっちは殺戮(せんそう)をしてるんだよ。お前らの戦争(あそび)に付き合うつもりはねぇよ」

 

「なんだと……貴様ぁっ!!」

「……!駄目よ!依姫!!」

 

 男の挑発につられた依姫が、手に持った刀を抜いて男に突っ込んだが、男はほんの一瞬で依姫の後ろに回り込んで地面にたたきつけた。

「がはぁっ!!」

「おせぇよ、愚図が……一回死んで来い」

 

「依姫っ!!」

「お前も遅い」

 

 豊姫が反応するよりも早く、男が豊姫の背後に回り込み、回し蹴りを叩きこんだ。

「うぐぅっ……!!」

「豊姫様!!」

 

「どけよ……クソ兎」

「きさm」

「うるせぇ」

 

 男はレイセンの後頭部を掴み、一切の容赦なく地面にたたきつけた。

「ぐうぅっ……!!」

 

「……ふん。たった一撃で意識が飛ぶとはな……ほんっとに屑の塊だな。これで軍人なんて、戦争ごっこだな」

「きさ……ま……!何者だ……!!」

 

 起き上がった依姫は、男を強く睨み付けながら名前を聞いた。男へ首だけをまわして依姫を見ると、ニヤリと笑った。

 

「俺か?俺の名は『ネクロス』。お前たちの言葉を借りて言うなら、外来人ってやつだ。俺はこの世界の外から来たんだよ」

 

 ネクロスと名乗った男は、豊姫と依姫を見下すように言った。依姫はそれにも屈さず、男に聞き返した。

「なんだと……!?その男が、月の都に何の用だ!」

「いや、俺が用があるのは月じゃない……地上に住む、ある男だ」

 

「ある……男……?」

 やがて豊姫も起き上がり、依姫が慌てて肩を貸した。

 

「ありがとう、依姫」

「お姉様、ご無理はなさらず……」

 

「えぇ……。あなた、先ほど“ある男に用がある”と言いましたね。その男とは……」

「はぁ?うるせぇよ雑魚が。なんでお前らみてぇな三流兵士に教えなきゃならねぇんだよ?意味がわからん」

 

「貴様……!!」

「依姫!……では、あなたの目的は一体……?」

 

「目的……あぁ、そうだった。俺はその男に貸しがあるんでね。その男……殺すんだよ」

「殺す……?では、なぜ月に……?」

 

「決まってんだろ?普通に殺すだけじゃダメな男なんでね……いっそ盛大にぶち殺してやろうと思ったのさ」

「貴様……何をたくらんでいるっ!?」

 

「口の悪い女だな。お前みたいな強気な女は、精神をズタボロにするに限る。その後で、身も心もプライドも完膚なきまでに打ち崩す……想像するだけでも楽しいぞ?」

「くっ……なんと下品なっ!!」

 

「とにかく、その男を殺すために……この月を……落とすっ!!」

「!?!?!?!?」

 

「月を……落とすですって!?」

 豊姫と依姫は驚愕した。月を落とす。それはいまだかつて、誰一人として試みなかったことであった。

 

「月が……月が落ちてしまったら、地上は……」

「もちろん、木端微塵だ。そして、お前ら月の民も全滅する。地上の生物も残らず殲滅……最も効率のいい排除方法だぜ!!」

 

 そう言うとネクロスは、月を落とす準備でも始めるように、自身に力を込め始めた。

「そうは……!」

「させないっ!」

 

豊姫と依姫はネクロスの目的を阻止しようと果敢に挑むも

「邪魔だぁっ!!」

 

ネクロスの圧倒的な力の前に太刀打ちできず、二人して壁に打ち付けられた。

「がはっ!!」

「くっ……つぅ……!!」

 

「そこで見ていろ、ポンコツ。お前たちの町……そして、世界が終わる様をな!!あっはははははははは!!」

 ネクロスがさらに力を蓄えはじめようとしたその時だった。

 

「ええいっ!!」

 その場に伏せていたレイセンが突如起き上がり、ネクロスにしがみついた。

 

「貴様っ!」

「豊姫様っ!依姫様っ!今のうちに地上へ!!地上へお逃げくださいっ!!」

 

「レイセンっ!?」

「……わかった」

「依姫……!!」

 

 豊姫は依姫の反応に異を唱えようとしたが、それよりも早く依姫が豊姫のみぞおちに一撃を入れた。

「うっ……!」

「お姉様……お許しを……」

 

 意識を失い、ぐったりとする豊姫を抱え、依姫は部屋の出口を目指した。

「(レイセン……すまない……)」

 

 最後に心の中でレイセンに詫びをすると、急いで脱出した。ネクロスはしがみついていたレイセンをもう一度地面にたたき伏せ、高笑いをあげた。

 

「あッははは!!なんだぁ?逃げるのか!部下どもを見捨てて逃げるのかぁ!?俺らの世界の神様とは大違いだねぇ!!あははは!はーっはっはっはっ!!」

 崩れ落ちる月の都。劫火に包まれる街の中で、ネクロスの笑い声だけが響き渡っていた。

 

「霊符、『夢想封印』!!」

「刃符、『天裂刃』!!」

 

 ここは地上の博麗神社。今、博麗神社ではピアと霊夢による弾幕勝負が繰り広げられていた。ピアは勝負中にもかかわらず、霊夢に話しかけた。

 

「珍しいな、霊夢!お前が“修行をしよう”なんて言い出すとはな!」

「たまにはいいでしょ!運動でもしないと、腕が鈍っちゃうからね」

 

「運動って……お前、ふとっt」

「そんなわけないでしょーが!霊符、『陰陽印』!!」

 

「おわっとと!あっぶねえなっ!!俺が何をしてったんだよ!?」

「思いっきり言おうとしたでしょ!……その……太ったって……」

 

「いや、俺はあの時“太った様には見えない”って言おうとしたんだが……」

「…………」

 

「霊夢はスタイルもいいし、栄養面にも気を遣っているから、太ってるなんて誰も思わないしな!ははは!」

霊夢は突然黙り込み、スペルカードを数枚取り出した。

 

「……夢想封印……全種類……」

「え?それってはんそk」

 

「喰らえええぇぇぇぇぇっ!!」

 霊夢はピアの言葉を無視して、夢想封印と名の付くスペルをすべて発動した。

 

「いや、待て!それやっぱり反則……うぎゃああぁぁぁ!!」

 ピアの弁解も虚しく、夢想封印・全種類をまともに喰らった。ここでようやく修行が終わった。

 

 修行を終えたピアは、主に左腕の傷を手当てしながら霊夢に文句を言っていた。

「……いってぇ……。いくら何でも全弾発射(フルバースト)はないだろ?そんなルールは聞いてないぞ」

 

「……うるさい。紛らわしいことを言うからよ……」

「それ以前に、言わせてもらってなかったと思うが?」

「う……」

 

「はぁ……。最近霊夢は勘違いが多い気がする。いや、早とちりかな?」

「何でもいいでしょ?私が悪かったわよ、すいませんでした」

 

「いやいやいや、何もそこまで言ってないだろ?言い過ぎたなら、俺が謝るよ」

 ピアが逆に謝ると、霊夢はほんの少しムキになって言い返した。

 

「いいわよ。ピアが謝らなくても……私が悪いんだし……」

「いや、俺の方が……」

 

「私よ!」

「俺だっての!」

 

「まぁまぁ、二人とも……って、なんで二人して自分が悪いって言ってんの?」

「あ……」

「あ……」

 

 萃香に言われて、二人はようやく気付いた。二人が思わず顔を逸らすと、萃香は大笑いをした。

 

「あっはっは!まるで痴話喧嘩だねぇ。いや~、初々しくて何より……」

「誰が夫婦よ!」

 

「おや?私は”夫婦”とは一言も言ってないけど?」

「あぅ……」

 

「やめろ、霊夢。なんかいろいろと墓穴を掘ってるぞ……」

「うぅ……」

 

 霊夢は抵抗を諦めた。その代わりに、ピアが霊夢とバトンタッチした。

「んで、萃香。いきなり現れて、まさかからかいに来たとかじゃないよな?」

「まさか!そんなわけないじゃん。ちょっと二人の小耳にはさんでおきたい情報があってね……」

「情報……?」

 

 萃香は瓢箪の酒を飲むと、少しだけ真剣な表情になった。

「最近……月が大きくなってない?」

「は?月が?どういうことなのよ?」

 

 霊夢がわかりやすく疑問を尋ねるが、萃香にもいまいちわかっていないようだった。

「いやぁ、まだはっきりとしていなくてね……。でも、たしかに月が大きくなっているんだよ……」

 

「それは……月が大きくなっているんじゃない……月が近づいてきているんだ……」

「……!ピア、知ってるの?」

 

「あぁ……。月は基本的に、地上の周囲を一定の距離を保って周回しているんだ。だが、月が地上の引力に引かれるようなことがあったら……可能性としては否定できない」

 

「そ……そうなの……?」

「かもしれないねぇ……。もしピアの言う通りなら、月が地上にぶつかるかもしれないってことになるねぇ」

 

「そうなったら……どうなるの?」

「地上の生物は残らず全滅。月も粉々に砕け、すべてが消滅する」

「な、なんですって!?」

 

 霊夢は思わず立ち上がった。しばらく立ち尽くしていた霊夢だったが、すぐに博麗神社を飛び出した。

「おい、霊夢!どこに行くんだ!?」

「月といえばあいつらよ!とっとと行って、さっさととっちめてくるわ!」

 

「待てよ!月のあいつらって、永琳たちだろ?あいつらがこれを引き起こしているっていうのか!?」

「少しでも可能性があれば、さっさと終わらせるに限るのよ!」

 

 霊夢はそう言うと本当にさっさと飛び去って行った。ピアも霊夢の後を追おうとしたが、萃香によって止められた。

「萃香!何を……!?」

「行かせてやりなよ。なぁに、霊夢なら大丈夫だって!信じて待ってやろうよ」

「…………」

 

「もうすぐ日も暮れる……月が見えれば、すべてわかると思うよ」

「……あぁ」

 

ピアは永遠亭がある方向へと視線を向けた。そして、萃香の報告にあった“近寄ってくる月”について、考え始めた。

 

「輝夜ぁ―!出てきなさぁーい!!」

 霊夢が永遠亭に着く前に、すでに永遠亭には妹紅が殴り込みに行っていた。

 

「……なによ、妹紅。今はすっごく忙しいんだけど?」

「輝夜!あんたの目論見はわかってるのよ!今すぐに月を止めなさい!!」

「は?月を止める?なんのことよ?」

 

 あくまでしらを切る輝夜に、妹紅は怒鳴り散らした。

「とぼけんなアホォッ!月が地上に近づいてきてんのよ!どうせあんたが絡んでるんでしょう!!」

 

「そんなわけないでしょ!というか、なんで月が近づいてきてんのよ?」

「は?まさか……本当に知らないの?」

 

「知るわけないでしょ。今の私は月とは無関係なんだから」

「…………」

 

 妹紅が黙り込むと、今度は輝夜が妹紅に聞いた。

「ねぇ、妹紅。その話……もうちょっと詳しく聞かせてくれないかしら?」

「な、なんで!?」

 

「捨ててきたとはいえ、月は私のかつての故郷……それなりに心配なのよ」

「…………」

 

「お願い、妹紅。土下座でも何でもするから……」

「し、しなくていい!わかったわ!教えるわよ!」

 

「感謝するわ。妹紅」

「(なんか……調子狂うわね……)」

 

 妹紅は怪訝そうな顔をしながらも、輝夜に事情を説明した。

「なるほど……月が地上に近づいてきてるなんて、たしかに普通じゃないわね……」

「でしょ?だから私は、どうせあんたが絡んでるって思ったけど……違ったとはね」

 

「多分これだと……霊夢が来るわね」

「博麗の巫女か……。よし、あいつは私に任せろ!」

「いいの?妹紅?」

 

「……月が地上に落ちることに比べたら、あんたとの殺し合いなんてちっぽけだもんな……。だから、今回だけは協力してやるって言ってんのよ!」

 

「ふふ……妹紅って、味方になるとこんなに頼りがいがあるのね。信じてるわ」

「お……おう。任せときなさい!」

 

 妹紅は霊夢に事情を説明するため、一度竹林の中へと戻っていった。

「……まったく、本当に生真面目なやつね。おかげで利用しやすいというかなんというか……。でも、今回は本当に頼りにしているからね……妹紅」

 輝夜はひとり呟くと、永琳に今回の話をするために永遠亭の中へと戻っていった。

 

 霊夢は永遠亭に向かうべく、迷いの竹林の突破を試みていた。しかし、迷いの竹林だけあって、なかなか突破できないでいた。

「あぁ、もう!さっさと異変を解決して、ピアと一緒にゆっくりしたいっていうのに……絶対に許さないだから!!」

 

「今回の件については、輝夜は関係ないわよ」

「……っ!この声は……藤原妹紅!!」

 

 霊夢は声のした方へと向いた。そこには妹紅と、さらに慧音までいた。

「もうすぐ夜だというのに、随分と物騒じゃないか?一体どうしたんだ、霊夢?」

 

「慧音……妹紅も、そこをどきなさい。私は輝夜に用があるのよ」

「さっきの言葉……聞いてなかったかしら?今回は輝夜は無関係よ。わかったらさっさと引き返しなさい」

 

「うるさい!輝夜を倒して、さっさと月を止めてもらうのよ!」

「私もそのつもりで、一度永遠亭に行ったんだけどね……。どうも輝夜は知らないみたいよ。なんなら、永遠亭まで案内したげよっか?」

 

「う……まぁ、背に腹は代えられないし……お願いするわ」

「任せて。……慧音も、一緒に来てくれる?」

 

「もちろんだ、妹紅。最近の月は見ていてすごく不安になるからな……。私も知りたいと思っていたんだ」

 妹紅は慧音と霊夢を永遠亭に案内することにした。ゆっくりと沈みかけている夕日を見つめながら、霊夢は妹紅の後を追った。

 

 永遠亭に着くと、そこにはすでに輝夜と永琳、さらに鈴仙とてゐもいた。妹紅たちは四人と合流した。

 

「よ、輝夜。慧音と霊夢を連れてきたわ」

「ありがとう、妹紅」

 

「ひ、姫様!?姫様が妹紅さんと協力体制を……!?」

「おぉ、妹紅。ついに輝夜と仲直りをしたのか?」

 

「するわけないでしょ?今回だけ、よ」

「まぁ、そうね。今回だけね」

「(今回だけ……か。うどんげも驚いているけど、私もちょっと驚いちゃったわね。一過性のものとはいえ、喜ばしいことね)」

 

「……?永琳、どうしたの?」

「いいえ、なんでもありません。さて……情報をまとめましょうか」

 

 永琳の一言で、その場の空気が一変した。

「まず初めに、月が落ちてくるということ……これは普通じゃないわね」

「たしかに妙だ。過去に隕石というものが落ちてきたと記されていた書籍は存在するが、月が落ちてくるなど……」

 

「お師匠様……月が落ちてくれば、取り返しのつかないことになるかと……」

「鈴仙の言う通りだと思う。月ってかなり大きいんでしょ?そんなものが落ちてきたら、きっとみんな死んじゃうよね……」

 

「でも、月には月のリーダーたちがいるんでしょ?もしかしたら……そいつらが……」

「それはないわね」

 妹紅の発言に、永琳が即答で答えた。

 

「月のリーダーたちは、私の元教え子……そんなことをする子達ではないはずよ」

「そうですよ!豊姫様と依姫様が、そんな酷いことを……」

 

「……となると、犯人は別にいるということかしら……?でも、誰が……」

「誰だって構わないわ。要するに、そいつを倒せばこの異変は解決するってことでしょ?」

「異変……?」

 

 霊夢の言葉に一同が反応した。霊夢は当たり前のように続けた。

「だってそうでしょ?これも誰かが引き起こした異変……解決しちゃえば全部終わりよ」

「解決って……犯人が誰かもわからないのに、どうやって止めるんだ!?」

 

「それは……これから見つけるわ!」

「……ふぅ。相変わらず根拠のない勘で動くのね。でもね、霊夢……今回ばかりはそうはいかないかもよ?」

「うっ……」

 

 輝夜の一言に、霊夢は言葉を詰まらせた。輝夜はやれやれ、と言わんばかりにため息をついた。

「はぁ……どうしてこうなるのかしらね」

「まったくです……。……!」

 

 鈴仙は何かを察したかのように、門の方へ体を向けた。

「お師匠様!誰かいます!!」

「……数は?」

 

「二人です……こ、これは!?」

「どうしたの、うどんげ?」

 

 永琳が鈴仙に聞こうとした時、永遠亭に二人の人間が入り込んできた。その二人を見た永琳は、驚きに目を見開いた。

「……豊姫、依姫!?」

 

 そこに現れたのは、全身に傷を負った綿月姉妹だった。二人とも息が絶え絶えになっており、危険な状態だった。

「うどんげ、二人をすぐに部屋へ!てゐも手伝ってちょうだい!!」

「は、はい!」

「りょ、了解!」

 

 永琳の突然の指示に、てゐは素直に従った。永琳と鈴仙、てゐの三人で豊姫と依姫を運んでいる間に、輝夜は重苦しく呟いた。

「二人が誰かにやられた……。まさか、月が……?」

「ちょ、輝夜!いったい何が起こっているのよ!」

 

 状況が呑み込めない妹紅に、輝夜は冷静に説明した。

「妹紅……月のリーダーっていうのは、あの二人のことよ……」

「あの二人が……」

 

「そして、その二人がボロボロにされて地上(ここ)にいる……。どういうことか、もうわかるわよね」

「……!月には今、リーダーたちがいない……!」

 

「そう。つまり、そこから導き出される結論は一つ……」

 輝夜はその場にいる全員に聞こえるように言った。

 

「何者かにより……月が乗っ取られた(・・・・・・・・)ということよ」

「な、なんですって!?」

 

「そして、月が近づいてきている……。敵の目的はわかったわ。月を地上に落とそうとしているのよ」

「月を……地上に……!?」

 

 慧音は空を見上げた。月は昨晩以上に大きく見えた。そして、本当にわずかだが、確実に大きくなっているようにも見えた。

 

「……確かに、昨日よりも大きく……いや、近くなっている……!!」

「このままじゃ、月が落ちてくる……そんなこと……!!」

 

「させないって?霊夢……」

「当たり前でしょ!?止めなかったらどうするっていうのよ!」

 

「じゃあ聞くわ。どうやって止めるの(・・・・・・・・・)?」

「……そ、それは……」

 

 どうやって止めるか。そう聞かれて、霊夢は答えられなかった。妹紅も慧音も、誰一人答えられなかった。

 

「そう、止められない。月の地表を押し返せば何とかなるんでしょうけど、私たち程度の力で何とかなるものではないでしょう?私たちでは、月は押し返せない。仮に押し返せたとしても、その後に控えている黒幕に倒される可能性がある。おそらく月は、もうすでに大気圏に突入しているかもしれないわね」

 

「そんな……!もしそうなら、今からでは……」

「止められないでしょうね。私たちが大気圏で燃え尽きてしまうわ。……っていうか、ロケットなんか作っても、どうせ撃ち落とされるのがオチよ?」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 三人が黙り込むと、輝夜は月を見上げた。月を見ながら、遠くを見るような目をしながら言った。

「考えるしかない……考えるしかないのよ……。この状況を覆すだけの……最大の方法を……」

 

 輝夜につられて、三人も月を見上げた。月は止まる気配を見せず、微動しつつも確実に迫ってきていた。やがて、永琳が姿を見せて、四人を呼んだ。

「二人が意識を取り戻したわ。……話を聞きましょう」

 

 四人は永琳に呼ばれ、中へと入っていった。霊夢は中にはいる前に、もう一度月を見た。そして、不安を拭い去るように急いで中に入った。

 




綿月姉妹を圧倒するほどのネクロスとは一体…
ではまた次回…
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