遂に来ました最終話!?
では第三十章どうぞ!
「俺を……信じろっ!!」
「“ピアああぁぁぁぁぁっ!!”」
ピアはネクロスの方へと向き直った。ネクロスは少し不思議そうな顔をしていた。
「お前……なんか独り言が多いぞ?頭は大丈夫か?」
「心配は無用だ。お前よりも固いんでね」
「あぁ……そうかいっ!!」
ネクロスはさらに力を開放した。ピアもまた、己の中にある力を解き放った。
「容赦は……しないっ!!」
「ぜってぇぶっ殺してやるっ!覚悟しやがれ……魔王っ!!」
再び両者はぶつかり合った。ピアは先程の負傷が嘘のように、素早い身のこなしでネクロスの攻撃をかわした。
「……ちっ!さっきよりも速くなってやがる!?」
「魔王を……なめんなぁっ!!」
ピアの蹴りがネクロスを捉えた。みぞおちに綺麗に入った蹴りは、ネクロスに手痛いダメージを与えた。
「ぐあっ!!くそったれがあぁぁぁっ!」
ネクロスは怒りのままに、さらに力を開放した。すると、ネクロスの全身が機械におおわれ、巨大な兵器と化した。
「……巨大化なんてますます死亡フラグだぜ?」
「今度は世界に対する死亡フラグだ!殺す……こぉろしてやぁるぞおおぉぉぉぉぉ!!」
「やってみな……死ぬのはお前の方だぁっ!!」
ネクロスは左腕の指先に巨大なサーベルのようなものを、一気に五本も出現させた。
「指の数だけサーベルか……。だが……弾幕だと考えれば、避けることはたやすい!!」
「ごちゃごちゃうるせぇっ!覚悟しやがれっ!!」
ネクロスは巨大な左腕を振り回した。ピアはそれをレーザーを避ける感覚で回避した。回避しつつ、ピアは切断された右腕を再生させた。
「くそがっ!」
ネクロスは右腕に巨大な砲台を創りだした。そしてそれを、迷うことなくピアに向けた。
「知ってるだろうから、言わせてもらうぜ……。コイツはコロニーレーザー級だ……避ければ地上も吹き飛ぶ!!」
「……!!」
「くたばれぇ!!」
ネクロスは超巨大なレーザー砲を発射した。ピアはそのレーザーに合わせて翼を巨大化させ、シールドのように展開した。
ズドオオオォンッ!
巨大な翼でシールドを張ったピアに、コロニーレーザーが直撃した。
「うっ……ぐううぅぅぅぅぅっ!!」
「はっはっは!いつまで持つかねぇ!?足掻いて見せろよ?ははははは!!」
「くっ……ううぅぅっ……」
照射され始めて、三分が過ぎた。ピアの翼が徐々に焼き切れ始め、シールドが薄くなってきた。しかし、そのことを予見していたピアは、キャリバーにありったけのエネルギーをチャージしていた。
「っつぅ……!!覇滅……『裂光覇』……フルパワーッ!!」
今まで誰にも見せたことがない全力で、ピアはコロニーレーザーを撃ち返した。徐々にレーザーの方が押し込まれ、最終的にはネクロスの右腕ごと吹き飛ばした。
「な……なにぃっ!?」
「言わなかったか……?“なめんな”ってな……」
ピアは宇宙を漂うエッジを再び右腕に引き戻した。右腕の封印を開放し、その真の姿を現した。
「俺はあの世界を守らなきゃならない……そのためにここにいる……退く理由も、負ける理由もないっ!!」
「悪魔が誰かのために戦うなんぞ、余も末じゃねぇか!テメェは魔王なんだろうが!!」
「……さぁな。少なくとも……今は人間の気分だ」
「はぁ!?」
ピアの言葉に、ネクロスは心底呆れた様子でため息をついた。
「もはや何でもねぇ……テメェは人間でも悪魔でもねぇ!存在を持たぬ者……いや、もはや生物でもねぇな!!」
「何とでも言え……俺は……“世界からはみ出された者(魔王)”だからな!!」
「ほざけぇっ!!」
ネクロスは背中のバックパックから、大量のミサイルを発射した。ピアはそれを回避しつつ、滅符『滅閃光』ですべて撃ち落とした。
「くそったれがっ!!」
「甘いんだよっ!!」
ピアはネクロスの背後に回り込み、バックパックをバラバラに引き裂いた。
ドオオンッ!
破壊されたバックパックは豪快に爆発し、ネクロスは多少吹き飛ばされた。
「ぐああぁぁっ!ちく……しょおぉぉっ!!」
「うおお!!」
ネクロスは右腕を再生させ、左腕と同じようにサーベルを発動した。ピアは巨大サーベル十本の隙間をくぐるように回避に徹した。
「おらおらっ!にがしゃしねぇよぉっ!!」
ネクロスはひたすらサーベルを振り回した。ピアもまた、ただひたすらサーベルをかわし続けていた。
「……ちっ!指をサーベルにするとは……考えるじゃねぇか……」
「逃げてばっかじゃ勝てねぇぞ!ひと思いに……仕留めてくれるわぁっ!!」
ネクロスは指をくっつけて一本の巨大なサーベルにすると、それをピアにめがけて振り下ろした。
「あっぶねっ!!」
「もう片方もあるんだよ!!」
ネクロスの右手のサーベルが、横からピアを襲った。
「くっ……!くそっ!!」
ピアはなかなか近寄れずに苦戦していた。
「そら、そら、そらぁっ!!」
ネクロスの絶え間のない連撃に、ピアはとうとう体勢を崩してしまった。
「しまっ……!!」
「もらったあぁぁぁっ!!」
ネクロスの左腕の横薙ぎがピアの下半身を引き裂いた。
「がはぁっ!!ぐおぇっ……!!」
「ほらほらどうした?さっさと再生しねぇと……上半身も消し飛ばすぞ?」
「うっぐぅ……があぁ……!!」
ピアは何とか下半身を再生させた。しかし、次第にピアの息が荒れ始めていた。
「はっはっは!再生に魔力を使うから、かなり力を失ってるんじゃないか?そんなんで、この先俺と戦おうっていうのか?そいつぁ傑作だぜ!あっははは!!」
「だ……黙れ……!」
「もうやめときなって。地上ならともかく、宇宙で俺に勝てると思ってんのかよ?そもそも、テメェが誰かのために戦うこと自体がキチガイだってのに、まだやるのかよ?これ以上は無駄だぜ?」
「無駄……?ふん……やっぱりお前は雑魚の範疇を越えられないみてぇだな……」
「……なんだと?」
ピアはネクロスを睨み付けた。それは、ネクロスが知っている魔王、ピア・デケムの目ではなかった。
「……テメェ……」
「今の俺は……少なくとも人間だ……!誰が何と言おうと……この世界だけは守ってみせる!!」
「ほざけぇっ!世界一の嫌われ者の憎まれ役がぁ!!生意気なことを言ってんじゃねぇよ!!」
ネクロスは両手のサーベルを束ねて、ピアに向かって振り下ろした。ピアはそれをエッジだけで受け止めたが、エッジだけでは持ちこたえられずに折れてしまった。次にピアは、自分の右腕でそれを受け止めた。
「……っ!!」
「お前は一生憎まれ……恨まれ……妬まれて裏切られる!!テメェに仲間も友達もいない……いるのは自分だけだぁ!!お前はすべてを支配する黒だ!馴れ合いなんてできやしない……すべてを支配し、すべてから忌み嫌われる黒色なんだよ!!」
「そうだ……俺は黒……。絶対にして無二の色……他者を侵食し、支配し、自分と同じ色に染め上げる……。だからこそ俺は、誰からも嫌われる存在でなければダメだった……」
「はっははは!そいつぁ残念だったなぁ!!世界はお前という存在を見捨てようとはしない!お前がどれだけ望もうとも!お前という黒色が、誰かの領域を侵さない日なんてのはないんだよ!!お前は黒(やみ)だ!絶対的な悪(くず)だ!そして……存在すら認められない無(ゼロ)なんだよ!!ははははは!はははははは!!」
「……その通りだ。それが正しいと、俺はずっとその生き方をしてきた。……後悔なんてなかった……自分で決めた道だからな。でも……それでも……」
ピアはぽろぽろと涙をこぼしていた。今まで流したことがないものが、自分の目から溢れてきていた。
「それでもなぁ……誰も俺を見捨ててくれないんだよぉ……。みんな……俺のこと心配したり、俺のために戦ってくれたり……意味がわかんねぇんだよ……なんで……どいつもこいつも……」
「そりゃあ、全部テメェのせいだ!テメェみてぇな日陰者が、のこのこと白日に晒されに行くからそういうことになるんだよ!お前のせいでどれだけの人間が傷ついた?お前のために何人の人が死んだんだ?お前とともに、どれだけの人間が世間から蔑まられた!?答えてみろよぉ!えぇ!?」
「……知らねぇよ……そんなの知らねぇよ……。俺にはわかんねぇよ……!俺はただ……俺のせいで誰かが死なないようにしていただけなのに……人の優しさだって無碍にしてきた……子供だって怒鳴り散らして恐怖を与えた……なのに……どうしてみんな、俺についてくるんだよ……なんでだよぉ!?」
「そんなのこっちが聞きたいわっ!!テメェ見てぇなバケモノ、信頼するに値するような価値なんてねぇだろうに!!」
「……そうだ……その通りだ……。だが……!」
ピアは右腕一本で、サーベルを押し返した。ネクロスは思わずたじろいだ。
「なっ……!バカなっ!?」
「だが……今の俺は信頼されている……。悪魔ではなく、人間として(・・・・・)信じてくれている……!だから……」
ピアは顔をあげた。もう泣いてはいなかった。そこには人間としての強い意思が宿っていた。
「負けるわけには……行かねえんだよぉぉー!!」
「……ピア……ピア……!」
地上から見守ることしかできない。そばで一緒に戦えないことが、霊夢にとってどれだけ歯がゆいものだったのかは、みんながよくわかっていた。
「霊夢……」
「大丈夫……ピアならきっと……大丈夫……!」
「……そうだな!私も……ピアを信じるぜ!」
「私も信じるわ、魔理沙。あの魔理沙がここまで信じてるんだもの。私も……信じたくなったわ」
「アリス……」
「……まぁ、ピアは私の専属執事に相応しい、私が認めた男よ?出来るに決まっているじゃない。ねぇ、咲夜?」
「はい……ピア様なら……きっと成し遂げてくれます」
「レミリア……」
「ピアはみんなから愛されている人……大丈夫、ピアならできるわ」
「私も……お兄さんを信じます!お兄さんは……強いですから!!」
「幽々子……妖夢……」
「たとえ一緒に戦えなくとも……祈りましょう。彼が生きて帰ってくるために……!」
「永琳……」
「ピアさんならできます……たとえ心が見えなくても、彼の言葉は信じることが出来ます!」
「さとり……」
「ピアは私ら鬼が見込んだ男だ!絶対に……勝つ!!」
「そうだねぇ……勇儀の言う通りかな。ピアは負けない……絶対に負けない……!!」
「勇儀……萃香……」
「ピアさん……負けないで……生きて帰ってきてください……!!」
「早苗……」
「ピア君は……あの人……先代魔王の遺志を継いでいます……!きっと……きっと帰ってきてくれます!!」
「白蓮……」
「彼は……バラバラになった意思を、一つにまとめる力があります。その力は……なににも屈さぬ、絶対的なものになるでしょう……」
「神子……」
「霊夢……みんながピアを信じてる!だから……霊夢もピアを信じようぜっ!!」
「……うん!」
みんなの意思が一つになろうとしていた。その様子を、遠くから紫が眺めていた。
「……不思議ね。幻想入りして一年が過ぎようとしているというのに、みんなが彼を信じている……」
「それは当然じゃないかしら?」
紫は後ろから声をかけられ、振り返った。
「あなた……風見幽香……?」
「そ。私よ。ちなみに……私も彼を信じているわ。不思議と……信頼できるのよね」
「私は……初めは彼を殺そうとしたわ。でも……彼は私を許してくれた……」
「それがピアにできて、紫にできないところよ。だって、彼は」
「すべてを拒絶する身でありながら、すべてを受け入れる覚悟があります」
もう一人、別の声が聞こえた。二人が振り返った先にいたのは、意外な人物だった。
「これはこれは……かの閻魔さまも、彼に興味があると?」
「興味があるわけではありません。彼は私が唯一裁けない者……灰色の存在なのですから」
そこにいたのは、“地獄の最高裁判長”、『四季映姫・ヤマザナドゥ』と、その部下で“三途の水先案内人”、『小野塚小町』だった。
「灰色……ねぇ。確かにあの人は不思議な人ですよねぇ、四季様。能力を無効にして、四季様にも裁けなくしているもんですからねぇ」
「私にとって、彼は天敵ともいえる存在……いずれは正式に白黒はっきりとつけなければ……」
「それは無駄ですわ。いくら閻魔と言えど、彼を裁くことはできません……なぜなら彼は、すでに裁きを受けている身ですから」
「どういうことでしょう?」
「彼ならきっと……貴方にお説教をされても、こう言い張りますわ。“俺を裁けるのは閻魔じゃない。神だけだ”……と」
「ふ……ふはははは!あっははははは!!」
「…………」
ピアの目を見て、ネクロスは再び大笑いをした。
「……なにがおかしい?」
「全部だよ、全部っ!何カッコつけてエラそうなことを言ってんだよボケェッ!お前みてぇな人間以下、悪魔未満な屑に、そんなことを言う権利でもあると本気で思ってんのかよ!?そいつぁ、マジで傑作だぜ!神も思わず大爆笑だ!ハハハハハ!」
「……ふっ。そうかもな……アベルや刹那が見たら、きっと笑うだろうな……」
「ふん……アベルか……。また懐かしい名前を聞いたな……あのクソガキぃ……」
「まったくだ。あいつはただのクソガキだ。お人好しで、おせっかいで……そのくせ、傍迷惑なほどに善意を向けてくる……本当に許せねぇ奴だ……」
「あぁ?」
「許せねぇけどよ……必要なんだ、あいつは。アベルは世界から必要とされている……だから守るべき盾が必要だった」
「あぁ……あの狐か」
「そうだ。刹那とアベル……二人が手を組めば、この先ずっと世界は平和だ。そのためには……きっかけが必要だった」
「そのための……魔王復活……だろ?」
「そうだ。俺が魔王となることで、二人は急接近した。……これでいい」
「だが!お前は世界全体を敵に回した……ほんっとにざまぁないなぁっ!!アホらしくて笑いが止まらないぜ!!
「笑えるうちに笑っとけ……二度と笑えなくなるからな……!!」
「だったらお前も、愛する人の名前でも叫んどきな……すぐにそいつんところに送ってやるからよぉっ!!」
「やだね」
ピアはサーベルを受け止めている右腕を、思いっきり振った。右腕は千切れたが、ネクロスのサーベルを弾き返すことに成功した。
「なにっ!?」
「俺、死なないから」
ピアは残った左腕で、キャリバーを構えると、ネクロスに向けて突撃した。
「うおおおぉぉぉーっ!!」
「なっ……くっ!!」
ネクロスは全身から大量の小型レーザーを乱射した。それは何十発、何百発もピアに命中したが、ピアはまったく怯まずにネクロスの腹部にキャリバーを突き刺した。
「ぐはぁっ!き……貴様っ!!俺を直接狙えば、俺が体内に吸収した核が……!」
「だからどうした?まさか……死ぬのが怖くなったのか、ネクロス?」
「な、なんだとっ!!」
「今なら俺は死んでも構わないと思っている……もう……何も怖くはないっ!!」
「やめろおおぉぉぉぉぉっ!!」
ネクロスの叫び声と同時に、ピアは左腕のキャリバーをネクロスの顔面に突き刺した。途端に、ネクロスの全身から爆発が起こり始めた。
「がっあ……俺が……貴様なんぞに……っ!ピア・デケムぅ!滅べ……滅んでしまええぇぇぇ……!!」
「(……これでいい……)」
ネクロスに差したキャリバーから手を離すと、ピアは大気圏に吸い込まれていった。
「(あぁ……満足だ……。もう……思い残すこともないだろう……。たとえ俺がいなくなっても、霊夢なら大丈夫だ……あいつは……強いからな……)」
ピアは大気圏を落ちていくなかで、自分の左腕を顔の前まで持ってきた。腕は徐々に燃えていき、今にも消えそうだった。
「(体に力が入らない……俺は……ここまでのようだな……。あぁ……俺はなんて愚かな奴だ……。今になって、死ぬのが怖くなるなんてな……魔王失格だ)」
次第に意識も遠くなってきた。すべてが燃え尽きようとしている。ネクロスの体は今にも大爆発を起こしそうだった。ピアはそっと右腕を上げ、人差し指をネクロスに向けた。
「(俺はすべての罪を背負い……罰を受ける覚悟で今まで……。あぁ、そうか……“死ぬな”ではなく、“生きろ”ということだったのか……アベル……)」
やがてピアは、指先に小さなエネルギーを集め始めた。その指先はぶれることなく、真っ直ぐにネクロスを捉えていた。
「(俺の罰は……“生きて罪を償うこと”か……。まったく……とんだお笑いだよ……ただの案山子じゃねぇか……。でも……悪くは……なかったな……)」
パンッ。
ピアが打ったエネルギー弾はまっすぐ飛んで行った。それはネクロスに徐々に近づいてった。ピアは最後に小さくほほ笑んだ。
「……ははっ……。アベル……俺を笑うか……?フェン……俺は……誇れるか……?」
やがてエネルギー弾はネクロスに優しく振れた。そして
ドオオオオォォォォォォォォォンッ!!!
それは巨大な核爆発を生み、ピアの全身を一瞬にして飲み込んでいった。
「(ありがとう……)」
ピアは最後にそう願い、やがて……消えていった。
巨大な核爆発は、地上からも太陽と同じくらいの大きさと明るさで、はっきりと見えた。
「くっ……!なんだ!?」
「爆発……?ピアさんは!?」
「……っ!霊夢、通信機は……」
「ピア!ピア!!お願い……返事をして!!」
「霊夢……」
「ピア……お願い……返事を……して……」
霊夢が必死に人形に語りかけるが、人形は何も答えないままうつむいていた。耳を澄ましてもそこからは雑音しか聞こえず、ピアの声は全く聞こえない。
「……月は大気圏外に脱出。侵略者の気配も消えたわ。作戦……成功よ……」
紫は静かにそう言うと、それ以上何も言わず、藍と橙とともにスキマの中へと消えていった。人形は霊夢の手の中から静かに落ちた。
「おい……霊夢……」
魔理沙が心配そうに声をかけるが、霊夢は何も言わずに走って博麗神社の石階段を下りていった。
「霊夢……!」
「魔理沙、追うんだ!」
「こーりん……」
「いいから……行くんだ」
「……!わかったぜ……」
魔理沙は霊夢の後を追って階段を下りていった。それを見ていたレミリアは、涙をこらえながら空を見上げた。
「(馬鹿……死ぬなって……あれほど言ったじゃない……!!)」
咲夜がそっとレミリアの肩に手を乗せた。するとレミリアは咲夜の方に振り返って抱き付いた。そしてそのまま静かに泣き始めた。
「うっ……くっ。ピア……ひっく……死なないって……あれほど……!!」
「お嬢様……」
「嘘よ……私……死なないって……ピアぁぁ……」
「お嬢様……!」
咲夜もレミリアを抱きしめた。他にできることが思い浮かばなかった。フランも美鈴に抱き付いて号泣していた。周りにいる者たちも、次第に涙がこぼれ始めていた。
「諏訪子様ぁっ!ピアさんが……ピアさんがっ……!」
「早苗……」
泣きじゃくる早苗を諏訪子が慰めていた。神奈子は空に浮かぶ月を眺めながらつぶやいた。
「馬鹿者……。早苗を泣かしたら許さんと……あれほど言っただろう……!!」
この時、神奈子はピアのことを信じていた。力も仁徳もあり、誰からも信頼されている。この男なら信じられる、そう思った矢先の出来事だった。
「(私が……もっと早くピアを信じてやれれば……ピア……すまない……!)」
後悔先に立たず。神奈子は思い知らされたのだった。ピアを失うことの重大さを。人としてきた悪魔が、世界に与えた影響の大きさを。そして、それに気づくのがあまりにも遅すぎたことを。
「お姉ちゃん……?お……お兄ちゃんは……?死んじゃったの……?」
「こいし……!ごめん……ごめんね……!」
「そんな……!いやぁ……お兄ちゃん……!!」
さとりはこいしをそっと抱きしめた。声を張り上げて泣くこいしを、ただ抱きしめてあげることしかできなかった。マヨヒガに戻った紫は、一人だけ月を見ていた。
「幻想郷は……すべてを受け入れる……たとえ彼の死であっても……。それは……残酷なこと……」
「紫さま……」
「わかっているわ。私も……この幻想郷も……何もかもが遅すぎた……。もっと早く彼のことを知ればよかった……」
「紫さま……」
「藍……明日からは私たちで、霊夢の全面補佐をするわ。……あの子はきっと……すぐには立ち直れないでしょうから……」
「……わかりました」
「はぁ……はぁ……!はぁ……はぁ……!」
霊夢は石階段を下り、その場にうずくまった。
「う……うぅ……うあぁぁぁ……」
そしてそこで泣いた。初めて人を愛した。初めて誰かに心を許した。初めて誰かと一緒にいたいと思った。初めて生きる意味を見つけた。だが、空に浮かぶ月が、そのすべてを一瞬にして奪い去った。
「いやぁ……いやああぁぁぁ!!」
なぜ彼だったのか。なぜ彼が死ななければならなかったのか。なぜ月が落ちてきたのか。なぜ異世界から侵略者が来てしまったのか。今になってはすべてが謎。だが、その謎が霊夢の心を締め付けて、そして苦しめた。
「うああぁぁぁぁっ!!あああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
もう一度、やり直したかった。もう一度、すべてをリセットしたかった。初めて出会えたあのころに。初めて好きになれたあの場所に。もし、因果律を操ることが出来るなら、この異変を無かったことにしたい。
「うああぁぁ……ピア……ピアあぁぁ……」
進んだ時間はもう戻らない。起きてしまった出来事も、失われた命も、霊夢にはどうすることも出来なかった。一人泣き続ける霊夢に、ようやく魔理沙が追いついた。
「……霊夢……」
「…………」
「霊夢……!」
「だい……じょうぶ……」
「霊夢……?」
霊夢は立ち上がると、魔理沙の方へ振り返った。大丈夫、とは言っていたが、その表情には悲壮感が残っていた。
「もう……大丈夫だから……」
「でも、霊夢……」
「ピアは……生きてる」
「!!」
霊夢は月を見上げた。自分のすべてを奪った、憎むべき月を。しかし、霊夢は決して月を憎んではいなかった。
「ピアは……ちゃんと帰ってくるって……言ってたから……。私は……ピアを信じる……」
「霊夢……」
「魔理沙……戻りましょう。みんなのところへ……」
「……わかったぜ」
今、一つの異変が終わりを告げた。それにより失ったものも大きく、幻想郷は結果的に大きな傷跡を残すこととなった。それでも霊夢は、前だけを見ていた。ピアがそうしたように、決して後ろを振り返りはしなかった。
「(ピア……私は……出来るだけ頑張ろうと思うわ。でも……やっぱり、ピアがいなきゃ……私……)」
「霊夢?」
「ううん……何でもない。さぁ、戻りましょ」
「あ……あぁ」
「ピアは帰ってくるって……そう言ってたから……。私はピアを信じる……。ピアを……ずっと待ってる……」
「……そうだな。ピアを……待つか。あいつ……帰ってくるもんな……」
魔理沙もピアの帰りを信じることにした。霊夢は階段を一段一段上がるたびに、ピアのことを思い出していた。ピアは最後に言ってくれた。“愛してる”と。その言葉を支えにして、霊夢は階段を上がっていった。異変を終えた幻想郷に、新たな歴史が生まれた。“幻想の英雄”、ピア・デケムの誕生だった。
Next Phantasm…
「……んあ?」
「よう、クソッタレ。気分はどうだ?」
「……サイアクだな。目を覚ましたらお前とか、吐き気がする」
「……もう一回死ぬか?」
「……やれよ」
「おや、珍しいな?いつもみたいに殴りかかってこないのか?」
「……そんな気分じゃない……」
「お前……この一週間の間、何があった?」
「一週間……?あぁ、そうか……時間の流れが違うのか……」
「何を言っている?アイツも随分と心配を……」
「あっ!意識を取り戻したのね!!よかった……本当によかった……」
「…………」
「ねぇ、いったい何があったの?一週間も姿を消して……私、すごく心配して……それで……」
「異世界を含む、全世界を探しても見つからなかったんだぞ?お前は一体どこにいたんだ……ピア?」
「…………」
「黙ったままじゃ、何もわからんだろうが。さっさと答えて……」
「なぁ……アベル……刹那……」
「なんだ?」
「何?」
「俺の……幻想は……」
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…END?
……やぁ、こんにちは。初めましてだね。ん?ボク?僕の顔は見せられないけど、名前は教えてあげよう。ボクは『時空(じくう)空時(そらとき)』。あ、一人称はボクだけど、一応女の子だからね?そこんところ、よろしく。……え?何しに来たのかって?君に道を尋ねに来たのさ。誰のって?誰って……彼のさ。
あぁ、そうか。君はここで終わったとか勝手に思っているのか。……あぁ、それはそれでいいんだ。彼の幻想はここで終わった……っていうのも、一つの物語の区切りでもあるしね。でも……もし君が道を決められるなら……どうする?もしかしたら、君の決定次第で、下の空白に新たな物語が生まれるかもしれない。……えっ?なぜそんなことが出来るのかって?だって……君はこの物語の因果律を操れるからさ。この物語はフィクションです。実際の……って、こんな説明はいらないか。君は目の前にあるキーボードで、この物語の因果を操れるじゃないか。……知らなかったのかい?君はこの物語を読みながら、それに気付けなかったと?……だったら黙ってた方がよかったか?いや、もういいだろう。
さぁ、どうする?正確に言えば、因果を変えられるのは君じゃなく、この物語の創造主。動画で言うところの、うぷ主……(?)ってやつか。まぁ、いい。君なら、彼を説得できるかもしれないね。彼はこのまま物語を終わらせるつもりだし……。あ、でもそのころにはこの空間は無くなっているかもね。そうなれば、ボクも君に会えなくなる。……ま、いいけど。
すべては読み手の君次第……。書き手は読み手の意見に応じて、物語を改変することだってあるのさ。もしかしたら……この物語も……不可能ではないね。彼の幻想はここで終わるのか……それとも、この幻想はいつまでも続くのか……それも君次第だね。
あぁ、感情移入したとか、霊夢さんたちが可哀そうだとか、そんな下らないことの為に答えなくていいよ。ただ純粋に……このまま終わったら面白いか、面白くないかだ。作者なんて、みんなそんなものさ。……ここの創造主は、まだまだ子供だけどね。
さぁて、ボクもそろそろ消えようかな?おっと、君が決めてしまえば、多分この空間は消えるよ。他の人に、決定権はない。今この空間にいる、君にしか決められないことだ。期待しているよ。
ちなみにボク的には……いや、やめておこう。ここでボクの意見を聞いたところで、それは何の意味もなさないからね。……あまり彼には同情しないことだ。彼は同情が一番嫌いな悪魔だからね。敵に回すことはオススメしないよ?
それじゃあ、お別れだ。ボクもこの空間から、この物語の結末を見るとするよ。……は?どういう意味かって?だって、この物語は、まだ結末を迎えていない。そして、優柔不断な創造主に変わり、君に決めてほしいのさ。この物語の……ピアの人生の……結末を……ね♪
2か月もの長い間ありがとうございました
皆さんに支えられてここまで来られました パチパチパチ o(^ー^)o☆o(^ー^)oパチパ
長いようで短かったですね(^_^;)
先ほどの時空空時さんの言葉は本当で
実際続きをおまけとして書くべきか迷っています
それではまたどこかの幻想で…