ではEx-2どうぞ!
春の訪れにより、幻想郷は徐々に暖かくなってきていた。それでも博麗神社の朝は相変わらず早かった。いつも通りに箒を持ち、ピアは境内の掃除を始めた。いつもと変わらない日々、そして相変わらずの日常も訪れる。
「おぉーっい!!」
叫び声をあげながら、その声の主、魔理沙はいつも通りに現れた。またがった箒から軽快に飛び降りると、まっすぐピアを目指して走っていった。
「ピア!ピアなのか?本物なのか!?」
「昨日の新聞を見ていないのか?ごらんのとおり、本物だ」
「お前……馬鹿野郎!人がどんだけ心配したと思って……!!」
「悪かったって!それについてはいろいろと……」
「馬鹿野郎……ばかやろおぉ……!!」
散々文句を言っていた魔理沙も、最後には泣き出してしまった。ピアは魔理沙を慰め、いなくなっていた三年間のことを説明した。
「……と、するとあれか?私たちは三年間も待ったのに、ピアはたったの三週間で帰ってきたってことなのか?」
「まぁ、そういうことになるな」
「嘘だろぉ……?この三年間、ずっと霊夢のことでいろいろと大変だったっていうのに……」
「え?そうなのか?」
「その通りよ」
ピアの疑問に対し、別の声が答えた。
「あ、紫だ」
「よう、紫。久しぶりだな」
「簡単に“久しぶり”とか言わないでちょうだい。三年と三週間じゃ、時間の差が遠すぎるわ」
「霊夢に時間差を説明したのは紫か?」
「えぇ、そうよ。……とりあえず中に入らない?こんなところで立ち話もなんですし」
「紫……それってピアのセリフじゃ……」
「この際だから気にしないでおこうぜ、魔理沙。俺も同じことを考えていたわけだし」
「う~ん……でもまぁ、ピアに久しぶりに会えたからいっか」
魔理沙もとりあえず納得して、博麗神社の中へと入った。
「霊夢ぅー。魔理沙と紫が来たぜー」
「邪魔するぜ、霊夢」
「お邪魔するわ、霊夢」
魔理沙と紫が来たにもかかわらず、霊夢は少し不機嫌そうな顔をした。
「……なによ。何しに来たわけ?」
「おいおい……そんな露骨に嫌な顔をするなよ。この魔理沙様が来たっていうのによ」
「魔理沙はお呼びじゃないわよ」
「なにをーっ!」
「おい、やめろ二人とも」
「そうよ。今日はピアに、霊夢の三年間の武勇伝を聞かせてあげるんだから」
「!?!?!?!?」
紫がそう言うと同時に、霊夢の顔色がだんだん青ざめていった。霊夢の顔を見たピアは不思議そうに首をかしげた。
「……なんだ?武勇伝って、そんなにやばいヤツか?」
「もちろんよ。荒れに荒れまくっていたわ。まずは……」
「わぁーっ!紫やめてぇー!!」
霊夢が必死に止めに入ったが、紫は霊夢をスキマに送って説明を始めた。
ピアが月落下異変によって一度死亡した後、霊夢はひどく荒れていた。最初の一年は何もやる気が起きず、酷い時は自傷行為までするほどだった。神社には萃香がいたため、止めに入ることが出来た。しかし、ほんの少し目を離すと、自殺までしようとしていたとのことだった。
「うわぁ……」
「ね?あなたという存在が、どれだけ霊夢にとって影響が大きいか……少しは理解してくれたかしら?」
「それはわかったから、霊夢をスキマから出してやれよ……」
「嫌」
「嫌なのかよ……」
「続き……いいかしら?」
「……どうぞ」
「よぉーしっ!ここから先はこの霧雨魔理沙様がせつm」
「必要ないわ」
「おい」
魔理沙を無視して、紫は話を続けた。
次の一年、霊夢は食事がまともに喉を通らず、栄養失調で倒れることが多かった。魔理沙やアリスがたまに様子を見に来ていたが、かなりひどかったらしい。やる気の無さは変わらず、自傷行為は減っていた。それでもピアがどこかにいると思い、ふらふらと外を出歩くことも多かった。そして、ピアがいないことを自覚するたびに、萃香によく泣きついていた。
「なんていうか……本当に申し訳ないことをしちまったな……」
「まったくよ。こんな調子が、三年も続いたのよ?もちろん……責任は取るわよね?」
「取らせてもらうよ……全力でな」
「じゃあ、三年目ね」
三年目。とうとう霊夢は何もしなくなった。妖怪退治も、境内の掃除も、家事全般も何もかも。まるで夢遊病を発症したように、ふらふらとどこかへ出かけるようになった。そしてあの日、霊夢はピアと再会することが出来た。
「…………」
「……何か言うことは?」
「申し訳ありませんでした。もう二度と命を粗末にするような真似はしません。金輪際、霊夢を泣かせるようなことはしません」
「よろしい。……じゃ、霊夢を出してあげましょうか」
紫は指をパチン、と鳴らすと、スキマの中から霊夢が落ちてきた。しかし、なぜかピアの頭上からだった。
「きゃあぁっ!!」
「んぶぅっ!?」
ピアは頭上から降ってきた霊夢に押しつぶされた。しばらくした後で、自分がピアの上に乗っかっていることに気付き、慌ててその場から動いた。
「ご、ごめんピア!大丈夫!?」
「あ、あぁ……なんとか。霊夢こそ大丈夫か?」
お互いの安否を確認し合う二人に、魔理沙は真顔で質問した。
「んで、ピア。何色だった?」
「ん?色?」
「……!!」
「ありゃ?見えてなかったのか?霊夢のパ……」
「夢想封印!夢想封印!!むそーふーいーんっ!!」
魔理沙が何かを言いかけたところで、霊夢はルール無視の夢想封印を連発した。
「ちょま」
狭い部屋で連発された夢想封印は、綺麗に魔理沙だけに命中した。
「ひ……酷いぜ……まだ何も言ってないのに……」
「言おうとしたでしょ!?今、絶対!!」
「あ、ちなみに私の色は……」
「言わなくていいわよ!!」
「……紫。二人は一体何の話を……?」
「“Need Not You Know”」
「……はい?」
「それだけよ」
紫はクスクスと笑いながら、スキマの中へと消えていった。霊夢が魔理沙を追い回す中、ピアは紫の言葉の意味を考えていた。
「……Need Not You Know……。“知る必要のないこと”……ねぇ……。俺が知る必要のない話ってことか……。一体どんな話なんだ……?」
二人の会話の内容がつかめないまま、ピアはお茶を汲むために立ち上がった。時折魔理沙の悲鳴が聞こえたが、ピアはいつものことだと気にしなかった。ピアがお茶を入れたころ、二人が戻ってきた。魔理沙は霊夢にぼこぼこにされたらしく、服がところどころ破れていた。
「うっわぁ……服がボロボロだぜ。……ピア、あんま見るなよ?」
「は?なんで?」
「だって……その……。は……恥ずかしいから……。わ、私だって女の子なんだよ!」
魔理沙は服の破れた部分を手で隠しながら、顔を赤くした。ピアは首をかしげつつも、返事を返す。
「そうか、悪かった。……そう言えば……」
「ん?なんだぜ?」
「魔理沙っていっつも外にいるのに、霊夢よりもちょいと肌が白くて綺麗だな」
「え、なっ、ちょ……。そんな……うわぁぁぁ……」
ピアの何気ない一言に、魔理沙はさらに顔を赤くした。しばらくうつむいたまま黙っていたが、大慌てで箒を手に取ってどこかへ飛び去ってしまった。
「…………?」
「ピア、デリカシーなさすぎ。あと……私の肌もちょっとは綺麗なのよ……?」
「ん?お前の何が何だって?」
「なんでもないわよ!バカっ!!」
霊夢も顔を真っ赤にし、ピアの顔に思いっきり平手打ちをした。
ビッタアアァン!!
見事な快音とともに、ピアが部屋の壁に顔面から突っ込んだ。
「べふぅっ!?」
「……え?あぁ!!ピ、ピア!ごめん!!」
「い……いや……。何の、この程度……」
「あっはっは!いやぁ、いい音だったねぇ。久々に帰ってきたかと思ったら、もう痴話喧嘩していたのかい?」
二人のやり取りをずっと見ていたのか、奥からゆっくりと萃香が現れた。酒に酔ってふらふらしていたが、手にはしっかりと買い物袋を持っていた。
「あ、萃香。買い出し、ご苦労様」
「酷いや、霊夢。私が買出しに行ってる間に、ピアと再会してるなんてさぁ。言ってくれれば、すぐに飛んで帰ってきたのに……」
「何よ。保護者を名乗るんだったら、娘の幸せなひとときに水を差すような無粋な真似はしないでよ?お母さん(・・・・)?」
「やぁれやれ……。やっぱり紫に保護者役を任せるべきだったかなぁ?一人じゃ手に負えん」
「ん?保護者?」
ピアがまたしても会話について行けていないようだったので、萃香が説明を始めた。
「いやぁ……霊夢が酷く荒れていた時にさぁ、誰が常に霊夢のそばにいるかで結構……いや、かなりもめたんだよね。魔理沙は“自分が霊夢の一番の親友だから”って言って聞かないし、紫は“霊夢は私にとって娘のようなもの”って言って引き下がらなかったんだよね」
「ほう……そこで萃香が自ら立候補したと?」
「いや、霊夢からの推薦だったんだよね……。ほら、私は霊夢とピアが幸せになってくれればそれでよかったし、何より……」
「何より?」
「霊夢がさ……“鬼は嘘をつかない”ってさ。そういうところでは、たまにふざける魔理沙や胡散臭い紫と比べて接しやすかったんだろうねぇ……」
「だって……萃香ぐらいしか頼れる人……もとい、妖怪はいなかったし……」
「なるほど……ありがとう、萃香。今度からは、俺もお前と同じ役目を引き受けよう」
「お?それってつまり……ゆくゆくは二人がけっk」
「落ち着け。なぜそうなる?」
「挙式はいつにする?」
「会話が超展開すぎる」
「萃香、待ってよ。私……まだ心の準備が……」
「霊夢もその気になるなよ……」
「でも……この私を泣かせたこと……いつか絶対に!責任は取ってもらうんだからね!!」
「へ~い」
ピアが帰ってきた。霊夢、萃香、ピアの仲睦まじい姿は、誰から見ても幸せな家族のようだろう。その三人を、カメラを持った天狗がしっかりとみていた。
前後するかもしれませんが
ほぼ一週間ごとに投稿できたらいいなと考えております
後日談ですので話が途中で終わるかもしれませんがご了承ください
ではまた