ではどうぞ!
「ん……んあぁ……!ダメ……ピア、そこはぁ……!」
「なんだ?レミィの方から誘ってきたんじゃないか。
言ってることと、反応が随分と違うな」
「そうじゃなくてぇ……。ちがくてぇ……あぁ!!」
「ふふ……弱点、みぃ~つけたぁ~ww」
「いやぁ!そこぉ……弱いのぉ……」
「なるほど。それはつまり……もっと苛めてほしいということで、おk?」
「よくな……あぁん!!」
「ったく、ほんっとにレミィは可愛いなぁ……可愛すぎて……壊したいくらいに……」
「ピ……ピア……」
「レミィ……俺が好きか?好きなら好きと、はっきりと言え。でないと……俺、フランの方を好きになろっかなぁ~?」
「い、嫌っ!それだけは……フランにだけは負けたくないのぉっ!」
「なら、好きと言え。今、すぐに」
「……す……好き……。ピア……好きぃ……」
「ふふ……いい子だ。俺も大好きだぞ、可愛い可愛い……俺だけのレミリア……」
「あ、ピア……!」
「レミィ……」
「ピア……ピアあぁぁ……」
「……うさま」
「ピアぁ……ダメぇ……。そんなとこぉ……」
「お嬢様、起きてください」
「んふぅ……ん?ふえぇ……?」
紅魔館の主、レミリアは声をかけられて目を開けた。そこには天井と、すぐ隣で自分を起こす咲夜がいた。
「……夢オチって……そりゃないでしょぉ……」
「何を言ってるんですかお嬢様?寝言がたいへんいやらしいかったことは触れないでおきます。お嬢様にお客様が来ていますよ」
「客ぅ……?今はそれどころじゃないわよ……早く夢の続き……」
「二度寝しないでください。ふふ……そのお客様は、今お嬢様が一番お会いしたい方ですわ」
「私が会いたい……?」
「お客様は今、庭で美鈴とお話をなさっていますわ。ですが、随分と急いでいるようなので、早くしなければ帰られるかと……」
咲夜はそれだけを言うと、ベッドのすぐ下に新聞を置いて部屋を出ていった。
レミリアは布団から出ず、腕を伸ばして新聞を手に取った。再び布団の中にもぐって新聞を読んでいたが、とある一面を目にした直後、ものすごい勢いで飛び跳ねた。
「な……ななな、な!?ピアが……生きてる……。ピアが生きてて、紅魔館に客が来ている……。その客は……私が一番会いたい人……はっ!」
レミリアは大急ぎで着替えを済ませると、廊下から門の様子を覗いた。そこにはたしかにいた。美鈴と話をしている、あの愛しき姿を。
「待っていたわ……ずっと待っていたわ……ピア……!」
レミリアは嬉しそうに笑うと、再び駆けだした。もう一度、あの声を聴くために。もう一度、彼と触れ合うために。
レミリアが外出準備をする一方、紅魔館の門番である美鈴は、ピアとの三年ぶりの再会を祝していた。
「……そうなんですかぁ!へぇ~……やっぱり時間の流れが違うと、感覚って鈍るものなんですかね?」
「意外と鈍るぞ?“時差ボケ”ってやつでな。それだけで生活リズムを一気に狂わされる人間だっているんだ」
「うわぁ!時差ボケって怖いですねぇ……。私も気をつけないと……」
「そうだな。美鈴の場合……しょっちゅう居眠りしているから、正直心配なんだよな。寝すぎるっていうのも、意外と問題だらけだぞ?」
「あ、あはは……気をつけます……」
「ピアっ!!」
美鈴とピアが話していると、紅魔館のメンバーが全員集合していた。ピアはレミリアの声に答え、そばまで歩み寄った。
「よう、レミィ」
「……久しぶり……。パチェ以外の奴に、“レミィ”って呼ばれたの……三年ぶりね」
「いや、まったく……って、あれ?なんで俺が生きてたって……」
「これよ」
咲夜は先程レミリアに渡した新聞を、ピアにも渡した。そこには見出しに大きく“幻想の英雄、奇跡の帰還!博麗神社で再会を果たす!!”と書かれていた。
「……文……。やってくれたなぁ……」
「ともかく……お帰りなさい。この私を三年も待たせるなんて……執事のくせに、生意気よ?」
「はは……その……いろいろとすまん」
「お兄様ぁっ!!」
咲夜と手をつないでいたが、とうとう我慢が出来なくなったレミリアの妹、フラン(フランドール)がピアに駆け寄った。フランが日傘を差していないので、ピアは慌てて翼を使って日陰を作った。
「おっととと……久しぶりだな、フラン……」
「お兄様だ……本当に、本物のお兄様だぁ……」
「あぁ、本当だ。ちゃんと本物だぞ?」
「このいいにおい……このキュッてした感じ……お兄様ぁ……」
フランはこれでもかというくらいにピアに甘えていた。ピアはフランとレミリアを一緒に抱きしめた。
「ピア……会いたかった……会いたかったわ……」
「お兄様……フラン……もうお兄様のお傍を離れない……」
「あぁ……俺も……お前たちに会いたかったぞ……」
ピアは二人を抱きしめながら、咲夜とパチュリーを見た。レミリアの友人であるパチュリーは、咲夜とともに三年間もの間を毎日スカーレット姉妹の世話をしていたのだ。
「咲、パチェ……二人には迷惑をかけたな。こぁも美鈴も、本当にすまなかった」
「謝らないで。ピアが帰ってこれたのよ。もう……余計なこと言わないの」
「私も、ピアさんと再会できてうれしかったです!これ以上の幸せなんて、どこにもないですよ!」
「咲、美鈴……」
「レミィも妹様も……初めは手が付けられないほど暴走してたけどね。まぁ、ピアが帰ってきたことだし、万事解決じゃないかしら?」
「そうですね!ですから、先輩!謝らないでください!」
「パチェ、こぁ……。……ん?こぁ、先輩(・・)ってなんだ?」
「あぁ、それは気にしないで。こぁも使い魔と言えど、仮にも悪魔……一応、あなたの後輩にあたると思ってね」
「あぁ、なるほどね。そういうことなら……よろしくな、後輩」
「はい!先輩っ!」
こぁはかなり嬉しそうだった。こぁに会うことでピアは、改めて自分が悪魔であることを再認識することが出来た。幻想入りして以来、たまに自分のことがわからなくなるから。レミリアとフランがピアに抱き付いているところで、咲夜が一度だけ咳ばらいをした。
「ところで……ピア、今日はどういう要件なの?」
「いや、どうというほどの要件はなくて……」
「えっ?それじゃあピアさんは、本当にただ会いに来ただけなんですか?」
「そういうことだ」
ピアの目的を知るや否や、レミリアは間髪を入れずにピアに言った。
「それならピア!今日はうちに泊まっていきなさい!」
「言わずもがな。そのつもりだ」
「え……そのつもりって……。嘘……本当に……?」
「はぁ?なんでここで嘘をつく必要がある?俺は本当のことしか言わんぞ?」
「あ……そ、それもそうよね!……フラン、続きは館に入ってからにしましょう」
「はぁ~い!」
レミリアとフランはピアと手をつなぐと、そのまま紅魔館の中へと入っていった。こぁも、レミリアとフランの日傘を二人に差しながら、三人の後に続いて館に戻っていった。その様子を見送った咲夜、パチュリー、美鈴の三人は、お互いの顔を見ながら笑った。
「いやぁ……お嬢様たち、ようやく笑顔になってくれましたね!咲夜さん!」
「本当にね……。ここまで来るのに三年か……ちょっとだけ長かったわね」
「えぇ……でも、もう大丈夫。私たちの大切な宝物は今、中身(しあわせ)を取り戻したのよ」
「はい!」
「はい……そうですね」
「さて、私たちも戻りましょうか」
パチュリーの言葉を待っていたように、三人はともに歩き出した。
ピアはその日、一日を紅魔館で過ごした。その後、魔理沙に伝言を頼み、ピアは紅魔館に一泊することとなった。
レミリアとフランは、ピアに話したいことを山ほど話した。ピアはその一つ一つをちゃんと聞き、たまに外の世界の話も混ぜてあげた。
レミリアもフランもよっぽどピアに会いたかったのか、話をしている間もピアから離れることはなかった。今回は特別に、咲夜が美鈴に休みを出したので、美鈴も会話に交じった。
その光景はどう見ても、幸せそうな家族のようだった。ピアにとってのもう一つの家族、と言っても過言ではなかった。博麗神社に紅魔館。ピアは一度に二か所も居場所を得ていた。
昼食を済ませた後も、会話が途切れることはなかった。調べ物を終えたパチュリーとこぁも合流し、話題はさらに広がった。ほんの小さな話でも、レミリア達は興味深そうに頷いてくれた。
そうしているうちに日が暮れ、やがて夜を迎えた。ピアは咲夜の洗い物の手伝いをしていた。
「わざわざごめんね。ピアに洗い物を手伝ってもらうつもりは……」
「いや、むしろ手伝わせてくれ。レミィとフランも、“それなら待つ”ってさ」
「そう……。ピアにはお二方の添い寝までお願いしてしまって……なんだか申し訳ないわね」
「大丈夫だ。この程度のことならもう慣れた。それに……今回はいきなりじゃないからな」
「あ……そういえばそうだったわね。あの時はナイフ……投げちゃってごめんなさい」
「いや、あの時のことはいいんだ……。それよりも、咲……」
ピアは咲夜に対しすこしムッとなって言った。咲夜は心当たりがないのか、ピアの表情に少し不思議そうな顔をした。
「……どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないよ……。お前、フランに俺がネコ好きだってこと、教えただろ?」
「えぇ、その通りよ」
「……なんで教えたんだよぉ~……。あれは外部には秘密だって言ったじゃんか……」
「あら。外部には秘密だけれど、妹様は内部の者(うちがわ)でしたから……ですから、教えたまでよ?」
「うぐっ……!そうか……理屈上、そういうことになるのか……」
「えぇ、言ったわよ。今回はピアの凡ミスってことね」
「チクショー!なんてこったい……こんなことなら、いっそ“誰にも言うな”の方がよかったか……」
「ふふ……もう手遅れだけどね」
「ははっ……いやはや、まったくだ」
二人はクスクスと笑い始めた。やがて洗い物を終えると、ピアは二人が待つ部屋へ向かうべく、台所を出た。
「ピア」
途中、咲夜に声をかけられ、ピアは振り返った。
「私としては……貴方がいる今のこの時間を止めたいくらいに、今がとても楽しいわ。お嬢様も、妹様も……きっと同じことを考えているに違いない……」
「……そうかもな」
「ピア……もし、もしも貴方が、流浪の身になるようなことがあったら、その時は……」
「あぁ、言わんでもわかってる。その時は……ここに世話になるつもりさ」
ピアがはっきりとそう言ったので、咲夜は安堵の息をつくと、もう一度笑顔になった。
「ありがとう、ピア。貴方とともにお嬢様にお仕えする日を……楽しみにしているわ」
「そうかい。まぁ……当分来ることはないだろうけどよ」
「……ふふっ……そうかもね。でも……いつかは、きっと……」
「ん?どうした、咲?」
「いえ、何でもないわ。お休みなさい……ピア」
「ん?あぁ、お休み」
ピアは咲夜に別れを告げ、部屋へ向かって言った。
「貴方ならきっと……お嬢様を守り続けることが出来る……。私が生きることが出来ない……その先の時代でも……」
咲夜はピアの後ろ姿を見ながらひとり呟き、自分の部屋へと戻っていった。
「ふぅ……さて」
ピアは部屋の前で一度深呼吸をし、それから部屋をノックした。
「レミィ、俺だ。手伝い終わったから、入るぞ?」
「えぇ、どうぞ」
レミリアから許可が下り、ピアは部屋へと入った。そこには、すでに寝巻き姿のレミリアとフランがピアを待っていた。
「待ってたわ。さぁ、早く寝ましょう」
「お兄様!はやくはやくぅ~!」
「わかったわかった。ちょっと待てって」
二人に急かされ、ピアはベッドの真ん中に寝転がった。そしてフランがピアの右側、レミリアが左側にそれぞれ寝転がった。
「えへへ~!前にもこうやって、三人で寝てたね~!」
「いや、あれはどちらかっていうと、お前たちが勝手に入ってきてたんじゃないか」
「あら?意外と覚えていたのね」
「……いやでも忘れられん光景だったからな……」
「あの時はね!お兄様にギュってしたら、すっごく温かくて……すっごく幸せな気持ちになれたんだぁ……。フラン、すっごく気持ちよかったよ」
「あ、あぁ……そうか……」
「ピアの人としての温もり……悪魔がどうとかなんて、もう関係ないくらいに優しかったわ。それは……今でも私の、この胸の中に残ってる……」
「レミィ……」
「ピア……貴方は人間よ。私が言うんだもの。間違いはないわ……」
「ふわぁ……お兄様ぁ~」
フランはピアの右手からどんどんのぼり、最終的にはピアの顔を抱きしめた。
「お、ちょ、フラン?」
「お兄様の髪……すっごいサラサラぁ~……。おまけに、いいにおい……私、このにおい……好きぃ……」
「そ……そうか……」
「お兄様ぁ……。私……お兄様のこと……もっと知りたいなぁ……。ねぇ、お兄様……?お兄様のこと……もっとフランに……おしぇて……?」
「わ、わかった。わかったから頭からはなr」
「あら、フランばかりに抜け駆けはさせないわよ?」
フランが頭に抱き付いていると、今度はレミリアも頭に抱き付いてきた。
「こ、こら!二人してやめろっ!俺が身動きを取れんだろう!」
「別にいいじゃない。寝るときは身動きを取らないのよ?せいぜい寝返りを打つくらいかしらね」
「そういう意味じゃない」
「あ……そうだ、お兄様」
フランが何かを思い出したように言った。過去にそれでいろいろと苦心したことがあるので、ピアは少し警戒した。
「うぇ?な、なんだ?」
「や……優しくしてね?」
「……どこで習った?」
「咲夜が……」
「あのメイドぉ……」
「あら?それなら三人でするということかしら?」
「ならねぇよ……!なんでそうなるんだよ……!」
「そうね……フラン、既成事実を作るわよ」
「はぁーい!」
「はいじゃない!普通に寝ろよ!」
「ふふっ……冗談よ。幽々子だったら本気だろうけど、私にとってピアはあくまで執事……さすがに肉体関係は……」
「え?お姉様、冗談だったの?」
「…………」
フランはどうやら本気だったらしい。気が付いたら配置が横から上に変わっていた。
「……レミィ、フランの前で冗談とか嘘とかはやめとけ」
「えぇ……気を付けるわ」
「ふ~ん……冗談だったんだ……。あ、でも!フランは冗談でも、お兄様と“そーゆーこと”はしてみたいなぁ……。でも……フランはそういうことわかんないし……。ねぇ、お兄様?フランにいっぱい……大人のこと……おしぇてほしいな……」
「あと三千年後にな」
「フフフ……ピア、楽しいわね」
「お前……本気で言ってんのか?」
「私は楽しいわ。ピアは……楽しいかしら?」
「……そう、だな……。うん、楽しい。すっげぇ楽しいな」
「そう……それはよかったわ」
レミリアはにっこりと笑った。フランは気づかないうちに寝息を立てていた。そのうちレミリアも眠りについたが、二人はピアの顔を離さないまま眠っていた。
ピアは何度も声をかけたが、そのうち諦めた。二人の幸せそうな寝顔を見せられては、さすがのピアも何も言わずに眠りについた。
後悔はしていません^^;平常運転です(^_^;)
ではまた次回