東方魔郷談   作:Walther58

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大変遅くなりましたm(_ _)m
Ex-5どうぞ!




後日談… Ex-5 ~人と妖、二つの神~

 

「座標ポイント……誤差修正……次元力の安定を確認……。……よし、着いたぞ」 

「……ぷはぁ!ふぅ……今回の空間移動は、随分と時間がかかっちゃったね……」

 

「仕方がないさ。この世界……どうやら結界を使って隔離されていたようだが……まぁ、結界を操ることなら、俺も負けず劣らずだがな」

「むしろあなたの方が強すぎないかしら?この結界を触れただけで壊しかけたじゃない?」

 

「うぐっ……そ、それについては触れるんじゃない!!」

「だってぇ……最初に触った時に、“ミシッ!”っていった時は怖かったんだよ?壊したら怒られちゃうんでしょ?」

 

「まぁ……怒られるわな。……さて、“アイツ”がこっそり調べていた神社から進入したはいいが……ここは森の中のようだな……」

「あ!見てみて!!妖精だぁ!可愛いなぁ~……」

 

「……お前の方がよっぽど……」

「?」

 

「あぁ、いや!なんでもない……」

「……そう?……それじゃあ、気を取り直して……あ、そこの青い妖精さん!!」

 

「ん?なんだお前たちは?ここらじゃ見ない顔だな!」

「俺たちは、道を尋ねに来た。質問に答えてほしい」

 

「チルノちゃん……道を聞いてる見ただから、ちゃんと教えてあげよ?」

「わかった!大ちゃんがそう言うなら、特別にさいきょーなアタイが教えてあげる!!」

 

「わぁ!最強なんですか!!」

「どこをどうみりゃコイツが最強なんだよ……」

 

「んで!あんたたちはどこに行きたいの?」

「あぁ、そうだな……。博麗神社という場所を探しているんだが……」

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ……」

 博麗神社で掃除をしていた霊夢は、小さくため息をついた。今日は朝からピアがいないため、仕方なく霊夢が掃除をしていた。肝心のピアはというと、朝早くから天子によって、天界へ連れ去られてしまったのだ。

 

「あんた、私の親に紹介してあげてもいいわよ!!」

「嫌だぁ!!」

 

 嫌がるピアを無理矢理に要石に乗せ、天界へと飛んで行ってしまったのだ。あとで衣玖が謝りに来たが、霊夢は半日以内に返すように言って、衣玖を帰らせた。

「……よくよく考えたら、“今すぐ返せっ!”って言えば、帰ってきたのよねぇ……。私ったら、何を考えているんだろう……」

 

 ぶつぶつとつぶやきながら、呑気に掃除をしている時だった。

 チャリン。

「……お賽銭!!」

 

 お金の音に振り返ると、二人組の男女が参拝に来ていた。初めは特に見向きしなかった霊夢だったが、

「ん?」

 

 男の方に違和感を覚え、二度見した。二人は男と女というより、少年と少女に近かった。しかし、少年の方からは、明らかに変な感覚がした。

「(違う……。あの男の子は……人間じゃない!?)」

 

 しかし、霊夢は少年の正体がすぐにわかった。わかったからこそ、違和感はますます強くなった。

「(おかしい……こんなに強い力を持った奴なんて、幻想郷に紫くらい……いや、紫以上の力!?)」

 

「どうした?」

 霊夢が考え事をしていると、少年の方から話しかけてきた。しかし、その物言いは明らかに少年のものではなかった。

 

「俺の顔に……何かついているのかな?……博麗霊夢」

「…………」

 

「それとも……あまりに強い力を持った妖怪がいるんで、“おかしい”とでも思っているのか?」

「……!?」

 

 霊夢はすぐさま箒を捨て、お祓い棒を取り出した。霊夢はゆっくりと身構えると、声を低くして訊ねた。

「……何者?あんたみたいな妖怪……うちにはいなかったはずよ?」

 

「そりゃそうだ。今さっき来たばかりなんだからな」

「……!?来た……ばかり……!?」

 

 霊夢はさらに驚いた。幻想郷には、外の世界とのつながりを完全に遮断する、『博麗大結界』が存在している。そのため、普通の方法ではこの幻想郷に入ることは不可能なのだ。しかし、この少年の言動から察すると、意図的に幻想入りしたとしか思えなかった。

 

「結界を破った……?どうやって!?」

「結界?あの程度の壁を結界だと?なかなかにナイスな冗談だ。俺にはただの紙にしか見えなかったがな」

 

「紙……ですって!?」

「……刹那」

 

 少女はピシャリ、と少年に言い放った。少年はしばらく黙った後、

「……御意」

 と、小さく呟いて一歩下がった。少年が一歩下がると、今度は少女が一歩、前に出た。

 

「ごめんなさい……彼の言動を許してあげてください。罰なら代わりに私が受けますから……」

「いや、あの……あんたたち……誰?」

 

 霊夢はそれだけしか聞けなかった。少年から感じる妖怪の気配が、尋常ではなかったからだ。少女は霊夢の質問に、屈託のない笑顔を向けて答えた。

 

「はい。その前に……ここの神社に、ピア・デケムはいますか?」

「ピア……?なんでピアのこと……」

 

「はい。私たちと彼は……同郷の身ですから」

「え……?それじゃあ……」

 

「はい!私の名前は『アベル』。世界を創りだした……そうですね、“創造神”と言うべきでしょうか。そして、彼が『雲母刹那』。私の夫で、妖怪の神です」

「妖怪の……神ぃ!?」

「まぁな」

 

 そう言うと刹那は、一瞬で姿を変えた。それの姿は藍に似ているがしっぽの数が一本多く、また、毛並みも美しい白銀の色をしていた。また、背の高さが少女と同じ高さから、頭二つ分だけ大きくなり、霊夢の伸長をあっという間に追い越した。

「十尾の……狐……!?」

 

「ん?この世界の非常識は、外の世界の常識だと聞いたが……他にもいたのか?」

「いえ……いないけど……」

 

「まぁ、俺が雲母刹那だ。これは人間名で、本名を『オルトロス』。人間名で覚えてくれると、幸いだが……」

「あ……あぁ、うん……よろしく……」

 

 霊夢はただ圧倒されていた。戦わずして、霊夢は敗北を悟っていた。この二人には勝てない。それだけがはっきりとわかった。

「……それで……異世界の神様が、この幻想郷に何の用かしら……?」

「そう身構えるな。俺たちは……ただ……」

 

 刹那はニヒルな笑みを浮かべながら言った。

「馬鹿な悪魔を拝みに来たのさ」

「ぶぅえっくしょいぃっ!!」

 

 天子に拉致されて天界に連れてこられたピアは、天使と桃を食べている最中にくしゃみをした。

 

「うわっ!ちょ、いきなりくしゃみとか、やめてよね?」

「んなこと言ったってよぉ……。……ったく、どうせレミィとか幽々子とか輝夜あたりが、なんかぼやいているんだろうよ」

 

「ふぅん……結構人気あるのね、ピアって」

「たかが知れてるっつーの。悪だよ?俺」

 

「私らから見れば、あんたはただの善だけどね」

「……今度異変でも起こそうかなぁ……」

 

「やめときなさいって。ピアが異変を起こしたら、それだけで幻想郷が終わるわよ」

「……それもそうだよなぁ……」

 ピアは愚痴をこぼすようにそう言いながら、桃を丸かじりした。

 

「おぉ!この桃、なかなかうまいな!」

「……!でしょ?たくさんあるから、もっと食べていいのよ?」

 

「そうか?なら、今のうちに食べられるだけ食べるか……朝飯、まだだったし」

 ピアは桃を朝食にするつもりで食べ続けた。天界の桃は普通の桃と比べると、ほんの少しだけだが美味しかった。

 

「……うめぇ~!天界の桃ってのは、一味も二味も微妙に違うな!」

「微妙は余計よ!……でもまぁ、おいしかったんなら……それでいいけど?……ていうか、当然よね!だって天界の桃ですもの!美味しいのが普通なのよ!」

 

「そうかそうか……もぐもぐ……」

「……もうっ!子供みたいにかじりついちゃって……可愛いところあるじゃない……」

「……ん?なんか……言ったか……?」

 

「なっ、何でもないから!とっとと桃を食べちゃいなさいよっ!!」

「おう。言われなくてもそうするぜ」

 

 ピアはかなりお腹がすいていたので、無我夢中で桃を食べ続けた。しかし、ピアは途中で桃を食べるのをやめ、素早く立ち上がった。

 

「……?ピア、どうs」

 天子がピアの顔を覗き込んだ時、思わずその表情に恐怖すら感じた。

 

 異常なまでに殺気立った目、恐ろしいほどに憎悪が伝わってくる歯ぎしり、いつ発狂してもおかしくないほどに荒れた息、そこにいたのは人間のピアではなかった。

「この気配……この感じ……。ヤツかぁ……ヤツが来たのかぁ!!」

 

 ピアは突然狂いだしたように叫んだ。ピアのあまりの豹変ぶりに、天子は黙って見守ることしかできなかった。

「(え?ちょ、なになに?どういうこと?天界の桃を食べすぎた?それとも私がなんかまずいことを言った?どっちも悪いかもしれないけど、いくらなんでも変わるすぎでしょ!?こんなのピアじゃない……!!)」

 

「天子……すまない。用事が出来た」

「え?あぁ、そう?ど、どんな用事かしら……?」

 

 天子の質問に、ピアはゆっくりと振り返った。狂気とも愉悦ともとれるその表情でピアは答えた。

「復讐だ……!」

 

 天子が気付いたときには、ピアはそこにいなかった。しばらく呆然としていた天子だったが、慌てて衣玖を呼び、再び地上に降りた。

 

「へぇ~、そうなんですか?あのピアが……」

「えぇと……うん、まぁ……」

 

「……っぷ、くふふ……!」

「刹那!笑わないであげてよ~!せっかくピアが人間として生きていられているっていうのにぃ~!」

「いや……すまん……。あいつが……そんな……はははははwww」

 

 霊夢からピアが幻想入りしてからのことを聞いていた二人だったが、刹那はピアの活躍の一つ一つを聞くたびに、腹を抱えて笑っていた。

「もぅ……いくらピアが嫌いだからって……そんなに笑わなくても……」

 

「あぁ……本当に……!いやぁ、いろいろとすまなか」

 と言いかけたところで、刹那は耳をピンと立てた。一気に表情が険しくなり、神社の外へと飛び出した。

 

「……刹那!!」

 アベルも慌てて飛び出したが、霊夢はその状況について行けていないでいた。結局、霊夢も流れで一緒に外へ出た。

 

「……来る……!」

 刹那が呟くと同時に、博麗神社に何かが落下した。落下物の正体は、霊夢にもすぐにわかった。

 

「……ピア!?」

 しかし、そこにいたピアは普通じゃなかった。悪魔のような恍惚な表情と眼差しで、霊夢の前にいる二人を睨み付けていた。

 

「……テメェら……」

「ピア……久しぶり……」

「なぁにしにきやがったああぁぁぁっ!!」

 ピアはアベルの言葉を無視して、問答無用で襲い掛かった。刹那はピアの拳を受け止め、ピアと対峙した。

 

「いきなり殴りかかるとはな……お前にとって、俺たちはイレギュラーか?」

「あたりめぇだ……!この世界にだけは……テメェらに知られたくはなかった!!」

 

「あいにくだったな……。こっちの科学技術も向上しているんでね……。消した履歴を再生できるプログラムを、新しく追加しておいたのさ」

「……貴様ぁっ!!」

 

「ピア……アベルはお前のことを、ずっと心配していたんだぞ?なのに……貴様という奴はぁっ!!」

「黙れっ!殺す……ぶっ殺してやる!!」

 

「やってみろよ。この……ボケ魔王がァッ!!」

「クソ狐ぇっ!!」

 

 二人はお互いに殺意をむき出しにして殴り合った。しかし、あまりに速すぎるため、霊夢が二人を捉えることはできなかった。

「(嘘……なにこれ……?これが……ピアの世界の戦い……?冗談じゃないわよ……普通じゃ無さすぎる……!!)」

 

 ただ殴り合う音だけが響き渡り、霊夢には何も見えなかった。しかし、アベルにしっかりと二人が見えていた。

「刹那!ピア!お願い!!戦いはやめてぇっ!!」

「死ねぇっ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇっ!!」

「黙れぇっ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇっ!!」

 アベルの呼びかけすらまったく届かなかった。二人は確実に相手の命を奪うため、ひたすら攻撃を続けた。二人が殺し合いをしている中で、魔理沙が神社の裏からやってきた。

 

「おい、霊夢!」

「……!魔理沙?」

 

「なんなんだよこりゃ!?ピアが本気で殺そうとしているじゃねぇかよ!いったい何があったんだ!?」

「わ、わかんないわよ!いきなりこの二人がやってきて、それ急にピアが帰ってきたと思ったら、すぐに殺し合いを始めたのよ!私の方が聞きたいわよ!!」

 

「……あの二人は……」

 アベルが重々しく呟いた。魔理沙はアベルの言葉を聞き洩らさなかった。

 

「あのふたりは?一体何なんだよ!?」

「あの二人は……実は……」

「じ、実は……?」

 

 霊夢がさらに追及した。アベルは顔を上げ、はっきりとした口調で答えた。

「あの二人は……“犬猿の仲”なんです!!」

「…………」「…………」

 

 二人は黙り込んだ。五秒ほど黙り込んだ後、

「はぁ!?」「はぁ!?」

 二人そろって同じことを言った。

 

「ちょっと待ちなさいよ!!犬猿の仲って……ただ仲が悪いだけぇ!?」

「は……はい……。お恥ずかしながら……」

 

「冗談じゃないぜ!仲が悪いだけで、こんな事態になるのかよ!?」

「本当にごめんなさいっ!!私が……私がちゃんとピアに話をしてあげれば、こんなことには……」

 

「……まぁ、この幻想郷にも似たような奴らがいるしなぁ……」

「そうね。あいつらは本当に迷惑だけど……今はこっちの方が迷惑よ……」

 

 霊夢と魔理沙は空を見上げた。ピアと刹那は、相変わらず霊夢たちには捉えられない速さを殴り合いをしていた。しばらくすると、今度は乾いた金属音が聞こえ始めた。剣で斬りあい始めたのである。やがて二人が地面に降り立った時、二人とも息が絶え絶えだった。

 

「このぉ……分からず屋がぁ……!貴様は……いつもいつもアベルを敵に回して……!!」

「うるせぇよ……!あいつは……アベルは俺の敵なんだよ!!」

 

「アベルの好意を毎回毎回、無下にしやがって……いい加減にしやがれ!!」

「うっせーよ、バァカ!!アベルに尻尾を振るだけのくそ犬のくせによぉ!!」

「……んだとテメェ、こらぁっ!」

 

「なんだとこの野郎ッ!!」

「……本当にただの喧嘩ね……」

「あぁ……本当にただの喧嘩だったぜ……」

 

 二人のやり取りを聞いていた霊夢と魔理沙は、もはや呆れていた。自分たちの手に負えないことと、実はどうでもよかったことの二重の意味で。

「必要ねぇんだよ……!幻想郷にとって、テメェら二人はなぁっ!!」

「悪いがな……おいそれと出ていくことはできないんでねぇっ!!」

 

 二人が再びぶつかりあおうとした、まさにその時だった。

「いい加減しなさぁーいっ!『火鳥封月』!!」

 

 アベルが指先から放った火の鳥が、二人にめがけて飛んで行った。

「あ?」「え?」

 

 二人が気が付いたときには、火の鳥は二人に命中して大爆発した。

 ズドオォォンッ!!

 という爽快な爆発音とともに、二人の悲鳴が聞こえた気がしたが、爆発音の方が圧倒的に大きかったためによく聞こえなかった。

 

「……?あ、あわわわぁ……!ふ、二人とも!すみません!!」

「……天然ドジっ子」

「おまけに……ロリで神様かよ……」

 

 霊夢と魔理沙は、もはやそれだかしか言えなかった。それでも二人は理解していた。この三人には、決して勝てないということを。

 

「……と、いうわけで!二人とも、いい加減に仲良くしてくださいっ!!」

「……ふん……」

「……けっ……」

 

 ピアと刹那は、アベルに説教されていた。霊夢と魔理沙、そしてあとから起きた萃香は、その様子をずっと眺めていた。

「そもそも!どうして二人はあってすぐに喧嘩を始めるですか!少しは……ぐすっ……仲良く……えぐっ……してくださいよぉ……」

 

 アベルは説教中にもかかわらず、いきなり泣き始めてしまった。それを見た刹那は慌ててアベルを慰めた。

「ア、アベル!落ち着け……なにも泣くことは……」

「やぁ~い、泣かしてやんのぉ~」

 

「……あぁ?なんだとテメェっ!もとはといえばキサマが……!」

「はぁ?テメェが俺の安い挑発に乗らなけりゃ、こんなことにはならなかったんだろうがよぉ!!」

 

「殺すぞ、テメェ!」

「上等だ、このクソ野郎!」

 

「いい加減にしてくださいっ!」

「……はい」「……はい」

 

 

~数時間後~

「ですから!二人はいつもいつも……」

「おい!今何回ループしたんだよ!?明らかに回数がおかしいだろ!?もう五十回は余裕で越えたぞ!!」

 

「みたいねぇ……はぁ、暇だわぁ~」

「いやいや……まったく、暇だねぇ~」

 

 魔理沙の必死のツッコミも、あまりの長さにすっかりだらけた霊夢と萃香の前では、虚しい独り言のようになってしまった。

「暇とかいうなよ!止めてやれって!」

 

「ん?ん~……私は無理。萃香、お願い」

「さすがの私もあれは無理かな~」

「……頼むから……誰かあの三人を止めてくれ……」

 魔理沙の願いも虚しく、この後ループが数時間ほど続いたそうな。

 

 それからしばらくしてループが終わり、ようやく三人が戻ってきた。

「本当にすみません……。此度の非礼はなんとお詫びしたらよいか……」

「いえ、あの……別に謝らなくてもいいけど……」

「ですが……」

 

「……まぁ、それなりに見ていて楽しかったし……な?」

「うん。三人とも、なかなか面白かったよ」

 

「……面白いとかいうんじゃねぇよ……。まったく……霊夢たちの前で、つい素に戻っちまったぜ……」

「……ふん。ざまぁ見やがれ」

 

「……なんだとこらぁ!」

「やんのかぼけぇ!」

「二人ともっ!!」

「…………」「…………」

 

 アベルに注意され、ピアと刹那は同時に黙り込んだ。

「(……どうやら、このアベルって子が一番強いみたいね……。ピアのことをよく知っているみたいだけど……いったい何なの?)」

 

 霊夢はまったくカリスマを感じさせないが、二人が言うことを聞くほどの力を持っているアベルの存在感に、つくづく驚きを隠せなかった。

「……あの、霊夢さん……」

 

 アベルは申し訳なさそうに、霊夢に頼み事を申し出た。

「いきなり現れて、目の前で大暴れしてしまっておいて、こんなことを言うのは失礼かもしれませんが……。どうか、私たちに住む場所を与えてはくれないでしょうか?」

「帰れ、屑。アホ神。ロリババア」

 

「ピア……そんなに死にたいかぁっ!!」

「やってみやがれクソ野郎ッ!!」

「ふ・た・り・と・もっ!!」

「……ちっ」「……ふん」

 

「本当に仲悪いわね……あんたたち……」

「本当にすみません……。あの、居住の件ですが……」

 

「あぁ……え~っと……。紫!」

 霊夢はとっさに紫を呼んだ。紫は霊夢の声に反応するように、スキマから現れた。

 

「はぁ~い♪霊夢、何かしら?」

「可愛らしく出てくんなっ!可愛げもないくせにっ!!」

 

「ちょ、悪口を言うために呼んだの!?酷いわ……霊夢……」

「紫。また外来人が幻想入りしたわ」

 

「……あら、この気配……。ピアと同じ世界の住人ね」

「……わかるんですか?」

「なんとなく……だけどね」

 

 紫は持っていた扇子で、人里の方角を指した。

「この方角の先に、人里があります。そこに、いくつか空き家があるので、そこに住んでくださいな」

「あぁ!ありがとうございます!!本当に助かりました!!」

「(この無垢な笑顔……なるほど。ピアが全力で嫌うだけはあるわね……。それに……この子はただ者じゃないわね……。気をつけないと……)」

 

 紫はとりあえず、アベルと刹那の二人を警戒した。アベルは、そんな紫の考えを知ってか知らずか、満面の笑みで頭を下げた。

「それでは、私たちは人里へ向かいます。ピア……あとでゆっくり話を……」

「テメェに話すことなんざ、何一つねぇよ。消えろカス。とっとと元の世界に帰れ」

「……ピア……」

 

 アベルは悲しそうにうつむくと、そのまま刹那を連れて人里へ向かった。二人がいなくなった後で、霊夢はピアに少しだけ注意した。

「ちょっと、ピア。いくら何でも言いすぎじゃない?少しは限度ってものを……」

「……霊夢には関係ねぇよ。それに……俺があいつを受け入れたらだめなんだよ」

 

 ピアは冷たくあしらうと、さっさと神社の中へと戻っていった。

「ちょ、ピア!?待ちなさいよ!」

「お、おぉい!私も置いていかないでくれぇ!!」

 

 霊夢と魔理沙は慌ててピアの後を追った。その場に残った萃香は、紫に話しかけた。

「……あれがピアの……外の世界での顔なんだろうねぇ……」

「だとしたら……幻想郷は、本当に残酷な世界ね……」

 

 すべてを受け入れる幻想郷。それは、すべてから拒絶されるべき存在であるピアをも受け入れた。そして今、ピアが拒絶する世界から新たな人間が幻想郷にやってきた。たとえピアが拒絶しようとも、幻想郷はそれらをすべて受け入れる。世界から零れ落ちた雫を受け止める、大きな器のように。

 





ついに二人が幻想入りですではまた
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