東方魔郷談   作:Walther58

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ピア・デケムはもともとは別次元の外の世界の住人で
神と聞いて歩いて来たあの人とは知り合いではないです(^_^;)
では第二章どうぞ!


第二章 ~毒霧異変~

 負傷した霊夢を連れて、ピアは異変の中心部へと向かった。その途中で、霊夢から幻想郷について、いろいろと教えてもらった。

 

「へぇ~。つまり幻想郷は、霊夢とその『八雲紫』って人の結界によって守られてるってわけか」

 

「そう。この幻想郷に迷い込む……一般的に『幻想入り』と呼ばれる現象は、大体が紫が連れてくるか、自然に流れ込んでくるかのどっちかね」

 

「ふむ……。連れてくるとは……まるで神隠しだな」

 

「そうね。神隠しの九割は紫のせいね」

「その八雲って人は何を考えているんだ?ただふざけているようにしか……」

 

「ふざけてるのよ、あのアホ妖怪は。……何を考えているのかは、わからないんだけどね。知りたくもないし」

「妖怪なのか。幻想郷にも妖怪がいるんだな」

 

「ピアの世界にも、妖怪がいるの?」

「いる。ただ……かな~りひねくれている。あと、すっげ~腹が立つ」

 

「じゃあこっちも一緒ね。その八雲紫って妖怪も、か~な~りむかつくわよ」

「はぁ……お互い、妖怪で苦労してるな」

 

「そうね……ん?あれかしら?」

「おや……?」

 

 二人の目に飛び込んできたのは、ほとんどが毒霧におおわれている花畑のようだった。ヒマワリが咲いている花畑のさらに奥に、毒霧が見えた。

「なるほど……どうやら犯人は、あの毒使いね」

 

「毒使い?」

「そうよ。たしか……ん、もう名前は覚えてないわ。とにかくその毒使いが原因ね。……はい、これ」

「ん?」

 

 ピアが手渡されたのは、かなり小さい陰陽玉だった。手のひらに収まるほどの陰陽玉だったが、ピアはどうすればいいのかわからなかった。

「それは通信端末用の陰陽玉。一応それで会話ができるはずだから、ちょっと見に行ってきて」

 

「はい?俺が?」

「あんた意外に誰がいるのよ?さっき私の代わりをするって言ったわよね?」

 

「それはそうだが……霊夢は行かないのか?」

「行くわけないでしょ?私は人間よ?」

 

「(結界を張るなりなんなりしたら大丈夫な気もするがなぁ……)」

「……何?」

 

「なんでもねぇです。……俺は魔族だから、毒なんて酸素も同然だ。……行ってくるぜ」

「がんばってね~」

 

 霊夢が態勢を崩さないように、そっと離れてからピアは現場に向かった。

「……うわぁ」

 

 現場に到着してから、ピアはまず最初にそう言った。毒霧は思った以上に濃く、視界がまともに確保できないほどだった。

「……濃霧で前が見えないのに、しかも毒とはな……。俺か、相当の奇知外じゃないと無理だな」

 

 原因を究明するために、ピアは前へと歩を進めた。

「……それにしても、これは……鈴蘭の花か。毒素を含む花を、こんな大量に育てているとは……一体どんな奴なんだ?毒使いは……」

 

「……げほごほ」

「……ん?」

 ピアは耳を澄ました。確かに誰かの声がしたのだ。しかし、とても元気な声とは言えなかった。

 

「おい!誰かいるのか?返事ができるなら声を出せ!」

「げほげほ……誰?」

 

 毒霧でままならない視界に、一人の女の子を姿が映った。女の子は風邪をひいているのか、かなり咳き込んでいた。

「おい、君!大丈夫か?」

 

「げほげほ……わ、私のことより……あ、あなたは……?」

「ん?俺か?俺なら大丈夫だ。この程度の毒なら酸素と変わらんから問題ない」

 

「ど、毒を酸素って……あなたは一体……?げほごほ……」

「それよりも、君の方が相当ひどいじゃないか。風邪をひいたのか?」

 

「うぅ……ごめんなさい。私、“毒を操る程度の能力”を持ってるんだけど……げほげほ……」

「(なるほど。風邪のせいで毒がだだ漏れ状態になっているのか。体調不良で能力をうまくコントロールできないことが原因か……)」

 

 それはピアにも理解できた。だが、問題はどうやって風邪を治すかだった。

「俺の名前はピア・デケム。博麗の巫女の使いをしている者だ。……君は?」

 

「わ、私……『メディスン・メランコリー』。……博麗の巫女って、あの紅白の人?」

「そうだ。俺は、その人のところで働いている。……ちょっとだけ待っててくれ。すぐに助けを呼ぶから」

「う……うん。……ごほごほ」

 

 メディスンは再び咳をした。顔色はますます悪くなり、症状は悪化を一途をたどっていた。

「(……思った以上に症状が重そうだ。はやいうちに手を打たなければ……)」

 

 ピアは霊夢から預かった陰陽玉を取り出し、霊夢に呼びかけた。

「おい!もしもし!こちらピア。霊夢、応答してくれ」

 

一方、ピアに様子を見に行くように言った霊夢は、回復用のお札を使い、ピアとの戦闘の傷を癒していた。

「まったく……あいつの技、デタラメすぎるわ。夢想転生を使ってたのに、当たるなんて……」

 

 ぶつくさ文句を言いながら、治癒に励んでいる時だった。

「ごきげんよう、霊夢」

 

「…………!」

 霊夢がとっさに振り返ると、そこには日傘をさした女性が浮いていた。霊夢はその女性に嫌そうな顔をした。

 

「何の用なのよ?……幽香」

 その女性、『風見幽香』は軽くほほ笑みながら答えた。

 

「いやね。そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。私はあなたがここにいるから、てっきりこの毒霧をどうにかすると思っていただけよ」

「うっさい。今さっき、代理を行かせたところよ。すぐに帰ってくると思うわ」

 

「へぇ、代理?あなたが?珍しいこともあるのね。……で、その代理って、あの白黒のことかしら?」

「全っ然違うわ。外から幻想入りした外来人。多分……幽香よりも強いわ。あんたも絶対に勝てないような奴」

 

「ふぅん。外の世界にはそんな人間もいるのね」

「人間じゃないわ。……悪魔よ。それも……魔王」

 

「魔王?でも、魔界神ではないのね。なら、それほど大したこともないかしら」

「あいにくだけど、大アリよ。幽香なんかが勝てるわけないんだから」

 

「……随分と評価してるのね。その魔王とやらを。……それよりあなた、あの中には行かないの?」

「行かないわよ。だから、代理に行かせたんじゃない。……幽香こそ行かないの?」

 

「行きたいのだけど……あそこまで霧が濃いと、ちょっと無理ね。でも、その代理さんが行ってくれているんだったら、大丈夫ね」

 

「そうね。……ん?」

 霊夢は懐から小さな陰陽玉を取り出した。陰陽玉は光り輝いていて、霊夢はそれを自分の耳元へもっていった。

 

「もしも~し?」

「“おい!もしもし!こちらピア。霊夢、応答してくれ”」

 

「聞こえてるわ。何なの?」

「“異変の黒幕っぽい女の子と出会った。名前は、メディスン・メランコリー。どうも風邪のせいで、能力が制御できないらしい”」

 

「風邪?だったら、私が薬をもらってくるから、あんたはそのままそいつを見張ってて」

「“わかった。早めに頼む。症状がかなりひどいからな”」

 

「はいはい。一旦、通信を切るわね」

「“了解。任せたぜ”」

 

 霊夢は陰陽玉をしまった。さてと、と霊夢は薬をもらいに行くために向きを変えた。

「ちょっと、霊夢。どうしたっていうの?」

 

「あんたの友達の人形が、風邪をひいてるんですって。とりあえず私は、薬をもらってくるわ。幽香はどうする?」

「私はここにいるわ。メディのことが心配だからね」

 

「あっそ。じゃあ、私は行くわ」

 そう言って霊夢は飛んでいった。幽香はそれを黙って見送った。

 

「……さて、と。博麗の巫女の使い……どんな奴なのかしら?」

 毒霧におおわれた鈴蘭の花畑を見下ろしながら、幽香は静かに呟いた。

 

 一方、霊夢と連絡を取り終えたピアは、メディスンを自分の膝の上に寝かせた。

「大丈夫か?すぐに風邪薬が来るからな。もう少しの辛抱だ」

 

「げほげほ……。ピアさん、ありがとう……」

「礼なんていいよ。これも博麗の巫女の使いである、俺の仕事だ」

 

「でも……私の毒が効かないなんて……不思議な人……」

「まぁ、俺は人間じゃないし。俺は悪魔なんだ。だから毒なんて俺には効かないのさ」

 

「あ、悪魔……?それって……げほごほ……」

「あぁ、ムリをしちゃだめだ。いまちょっと巫女に薬を持ってくるように頼んだからさ。すぐに来ると思うよ」

 

「う……うん……」

「(まずいな……霊夢、まだか?)」

 

 しばらく待っていると、ピアが持っている陰陽玉が光り始めた。

「……!霊夢か!」

 ピアはすぐに陰陽玉を取り出した。

 

「霊夢か!ちょいと遅くないか?」

「“十分でしょ。こっちは誰かさんのせいで怪我をしてるんだから”」

 

「……すいません」

「“それより!薬、持ってきたわ。上がってきてもらえる?”」

「了解」

 

 ピアは陰陽玉をしまってから、メディスンに言った。

「メディスン、聞こえるか?薬を取ってくるから、ちょっとだけ待っててくれ。すぐに戻ってくる」

「う……うん。わかった……」

 

「よし。……急ぐか」

 ピアはメディスンを地面に寝かせると、翼を生やして飛び立った。

 

 毒霧を抜けて、空中に飛び出すと、霊夢のすぐ隣に見知らぬ女性がいた。

「……?知り合い……か?」

 

 ピアは霊夢がいる場所まで飛んだ。

「よう、霊夢。薬は?」

 

「あるわよ。……ほら」

 霊夢は右手に持っている薬をピアに手渡した。ピアはそれを素早く受け取った。

 

「すまん。助かった」

「どういたしまして」

 

「ふぅん、あなたが霊夢が雇った代理さんね」

「ん?あんたは?」

 

「初めまして。私は風見幽香。あなたが介抱してくれていた子、メディの保護者……とでも言えばいいかしら」

 

「この際だから誰でもいい。あの子の知り合いなんだな。……じゃあ霊夢、もう一度行ってくる」

「いってらっしゃい」

 

「……メディは無事かしら?」

「大丈夫だ。必ず助ける」

 

「待ちなさい。……これを」

「これは……水?」

 

「そうよ。毒の中でも大丈夫な水。持っていきなさい」

「ありがとう。使わせてもらう」

ピアは短く答えると、再び毒霧の中へ飛び込んだ。

 

「メディの毒に突っ込んで、平気だなんて……随分と頑丈なのね」

「まぁ、あいつにとって、毒は酸素みたいなものらしいからね。頑丈どころか、問題すらないわ」

 

「へぇ……。ねぇ、霊夢。彼は……名前はなんていうのかしら?」

「名前?名前はピア。ピア・デケムっていうのよ。そうね……強いて言えば、博麗の巫女の使いと言ったところかしら」

 

「そう。ピア・デケム、ね。覚えておくわ」

「……なんで名前を聞いたの?幽香のことだから、興味を持たないと思ったんだけど」

 

「なんとなく、霊夢の言う通りな気がしただけ。もしかしたら……私でも勝てないかも」

「幽香?本気で言ってるの?」

 

「本気よ。ただ……彼の方が本気を出したら……だけどね」

「……ふぅん」

 

 霊夢は再び毒霧に目を落とした。毒霧はますます濃くなり、被害が広がり始めていた。

「……そろそろ結界でも張ろうかな」

 そう言いながら、霊夢はスペルカードを一枚取り出した。

 

「……メディスン!」

「げほげほ……。あ……ピアさん……」

 

 薬を手に入れたピアは、再びメディスンのもとへ向かった。メディスンは先程よりも咳がひどくなっていた。

「げほげほ……。ピ、ピアさん……げほごほ……」

 

「しっかりしろ。ほら、薬だ。君の知り合いから、水ももらった」

「ゆ……ゆーかが……」?

 

「そうだ。……ほら、薬を……」

「うん……」

 

 ピアはメディスンが飲みやすいように、薬を与えた。薬のあとに、水を飲んだメディスンは少しだけ顔色がよくなった。

「……うん。ありがとう。少しだけ、楽になれたよ」

 

「そうか、よかったよ」

「あなた……本当に悪魔なの?こんなにも優しいのに……」

 

「……人の痛みを知る心が、ほんの少しだけ残っているだけさ。……もうすぐ、無くなるだろうけど」

「ピアさん……?」

 

「いや、何でもない。……それにしても、薬の効き目って随分といいんだな。さっきまで咳き込んでいたのが、嘘みたいだ」

「あれ?本当だ……すごい……」

 

「……って、よく見たらこれ、一回分しかないじゃないか!これでだめだったらどうするつもりなんだ?」

「う……うん……。とりあえず私、毒を何とかするね」

 

「あぁ、すまない。……じゃあ、俺はもう行くよ」

「ピアさん、本当にありがとうございました!」

 

「どういたしまして。またな、メディスン」

「はい!」

 

 たった一回分の薬で、あっという間に元気になったメディスンに別れを告げると、ピアは飛び立った。ピアが飛び立ってからしばらくしないうちに、毒霧が次第に引いていった。ピアが空に上がると、霊夢と幽香の二人が待っていた。

 

「ご苦労様。無事、解決したようね。初めてにしては上出来じゃない」

「どうも」

 

「メディを助けてくれたこと、改めてお礼を言うわ。……ありがとう」

「まぁ、当然のことだしな。助けるのは当たり前だ」

 

「…………」

「ん?どうした、霊夢?」

 

「幽香が……お礼を言ってる……」

「はぁ?」

 

「失礼ね。お礼くらい普通に言うわよ。それよりも……あなた」

「……はい?」

 

 幽香はピアの方へ向き直った。

「今日は本当にありがとう。また今度、『太陽の畑』にいらっしゃい。歓迎するわ」

 

「はぁ……まぁ、暇があったら、立ち寄らせてもらうかな」

「いつでもどうぞ。私は待ってるから……じゃあね、霊夢。そして……ピア」

 

 二人に別れを告げ、幽香は太陽の畑へと帰っていった。

「さてと……私たちも帰るわよ」

「りょーかい」

 

「……これからも、それなりに頼りにさせてもらうわ。ピア」

「あいよ」

 

 こうしてピアは、初めて異変解決を達成した。幽香から太陽の畑への招待も受けた。

「まぁ……初めてにしては上出来……か。この調子なら大丈夫かな?」

 




記念すべき第二話の初登場キャラは、小さなスイートポイズン、メディスン・メランコリーと、四季のフラワーマスター、風見幽香さんです。
あのねぇ、うちのゆうかりんはドSじゃないですよっ!!主人公に優しい理由はメディスンを助けたからです。うちのゆうかりんは主人公には優しいです。
はじめは幽香も誤解で主人公と戦わせようと思っていたのですが、そうなると後々の絡みが気まずいものになるので避けました。
幽香も勝てないかもしれないというピアの力。いったいどれくらいなんでしょうか?ハイ、私にもわかりません。
今回の名言は「毒は酸素」です。
もともと魔族のピアさんにとっては、毒なんて効くわけがないです。いや、ホントに。毒なんかで死ぬことがあれば、面目丸つぶれですよ(^_^;)。
さて、いよいよ次回はあの白黒を出します。ん?白黒と言ったら一択しかないでしょう?
ピアさんもいよいよ博麗の巫女の使いとして、ジャンジャンバリバリ働きます。その働きっぷりは?
それも含めて、また次回~ノシ。
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