神と聞いて歩いて来たあの人とは知り合いではないです(^_^;)
では第二章どうぞ!
負傷した霊夢を連れて、ピアは異変の中心部へと向かった。その途中で、霊夢から幻想郷について、いろいろと教えてもらった。
「へぇ~。つまり幻想郷は、霊夢とその『八雲紫』って人の結界によって守られてるってわけか」
「そう。この幻想郷に迷い込む……一般的に『幻想入り』と呼ばれる現象は、大体が紫が連れてくるか、自然に流れ込んでくるかのどっちかね」
「ふむ……。連れてくるとは……まるで神隠しだな」
「そうね。神隠しの九割は紫のせいね」
「その八雲って人は何を考えているんだ?ただふざけているようにしか……」
「ふざけてるのよ、あのアホ妖怪は。……何を考えているのかは、わからないんだけどね。知りたくもないし」
「妖怪なのか。幻想郷にも妖怪がいるんだな」
「ピアの世界にも、妖怪がいるの?」
「いる。ただ……かな~りひねくれている。あと、すっげ~腹が立つ」
「じゃあこっちも一緒ね。その八雲紫って妖怪も、か~な~りむかつくわよ」
「はぁ……お互い、妖怪で苦労してるな」
「そうね……ん?あれかしら?」
「おや……?」
二人の目に飛び込んできたのは、ほとんどが毒霧におおわれている花畑のようだった。ヒマワリが咲いている花畑のさらに奥に、毒霧が見えた。
「なるほど……どうやら犯人は、あの毒使いね」
「毒使い?」
「そうよ。たしか……ん、もう名前は覚えてないわ。とにかくその毒使いが原因ね。……はい、これ」
「ん?」
ピアが手渡されたのは、かなり小さい陰陽玉だった。手のひらに収まるほどの陰陽玉だったが、ピアはどうすればいいのかわからなかった。
「それは通信端末用の陰陽玉。一応それで会話ができるはずだから、ちょっと見に行ってきて」
「はい?俺が?」
「あんた意外に誰がいるのよ?さっき私の代わりをするって言ったわよね?」
「それはそうだが……霊夢は行かないのか?」
「行くわけないでしょ?私は人間よ?」
「(結界を張るなりなんなりしたら大丈夫な気もするがなぁ……)」
「……何?」
「なんでもねぇです。……俺は魔族だから、毒なんて酸素も同然だ。……行ってくるぜ」
「がんばってね~」
霊夢が態勢を崩さないように、そっと離れてからピアは現場に向かった。
「……うわぁ」
現場に到着してから、ピアはまず最初にそう言った。毒霧は思った以上に濃く、視界がまともに確保できないほどだった。
「……濃霧で前が見えないのに、しかも毒とはな……。俺か、相当の奇知外じゃないと無理だな」
原因を究明するために、ピアは前へと歩を進めた。
「……それにしても、これは……鈴蘭の花か。毒素を含む花を、こんな大量に育てているとは……一体どんな奴なんだ?毒使いは……」
「……げほごほ」
「……ん?」
ピアは耳を澄ました。確かに誰かの声がしたのだ。しかし、とても元気な声とは言えなかった。
「おい!誰かいるのか?返事ができるなら声を出せ!」
「げほげほ……誰?」
毒霧でままならない視界に、一人の女の子を姿が映った。女の子は風邪をひいているのか、かなり咳き込んでいた。
「おい、君!大丈夫か?」
「げほげほ……わ、私のことより……あ、あなたは……?」
「ん?俺か?俺なら大丈夫だ。この程度の毒なら酸素と変わらんから問題ない」
「ど、毒を酸素って……あなたは一体……?げほごほ……」
「それよりも、君の方が相当ひどいじゃないか。風邪をひいたのか?」
「うぅ……ごめんなさい。私、“毒を操る程度の能力”を持ってるんだけど……げほげほ……」
「(なるほど。風邪のせいで毒がだだ漏れ状態になっているのか。体調不良で能力をうまくコントロールできないことが原因か……)」
それはピアにも理解できた。だが、問題はどうやって風邪を治すかだった。
「俺の名前はピア・デケム。博麗の巫女の使いをしている者だ。……君は?」
「わ、私……『メディスン・メランコリー』。……博麗の巫女って、あの紅白の人?」
「そうだ。俺は、その人のところで働いている。……ちょっとだけ待っててくれ。すぐに助けを呼ぶから」
「う……うん。……ごほごほ」
メディスンは再び咳をした。顔色はますます悪くなり、症状は悪化を一途をたどっていた。
「(……思った以上に症状が重そうだ。はやいうちに手を打たなければ……)」
ピアは霊夢から預かった陰陽玉を取り出し、霊夢に呼びかけた。
「おい!もしもし!こちらピア。霊夢、応答してくれ」
一方、ピアに様子を見に行くように言った霊夢は、回復用のお札を使い、ピアとの戦闘の傷を癒していた。
「まったく……あいつの技、デタラメすぎるわ。夢想転生を使ってたのに、当たるなんて……」
ぶつくさ文句を言いながら、治癒に励んでいる時だった。
「ごきげんよう、霊夢」
「…………!」
霊夢がとっさに振り返ると、そこには日傘をさした女性が浮いていた。霊夢はその女性に嫌そうな顔をした。
「何の用なのよ?……幽香」
その女性、『風見幽香』は軽くほほ笑みながら答えた。
「いやね。そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。私はあなたがここにいるから、てっきりこの毒霧をどうにかすると思っていただけよ」
「うっさい。今さっき、代理を行かせたところよ。すぐに帰ってくると思うわ」
「へぇ、代理?あなたが?珍しいこともあるのね。……で、その代理って、あの白黒のことかしら?」
「全っ然違うわ。外から幻想入りした外来人。多分……幽香よりも強いわ。あんたも絶対に勝てないような奴」
「ふぅん。外の世界にはそんな人間もいるのね」
「人間じゃないわ。……悪魔よ。それも……魔王」
「魔王?でも、魔界神ではないのね。なら、それほど大したこともないかしら」
「あいにくだけど、大アリよ。幽香なんかが勝てるわけないんだから」
「……随分と評価してるのね。その魔王とやらを。……それよりあなた、あの中には行かないの?」
「行かないわよ。だから、代理に行かせたんじゃない。……幽香こそ行かないの?」
「行きたいのだけど……あそこまで霧が濃いと、ちょっと無理ね。でも、その代理さんが行ってくれているんだったら、大丈夫ね」
「そうね。……ん?」
霊夢は懐から小さな陰陽玉を取り出した。陰陽玉は光り輝いていて、霊夢はそれを自分の耳元へもっていった。
「もしも~し?」
「“おい!もしもし!こちらピア。霊夢、応答してくれ”」
「聞こえてるわ。何なの?」
「“異変の黒幕っぽい女の子と出会った。名前は、メディスン・メランコリー。どうも風邪のせいで、能力が制御できないらしい”」
「風邪?だったら、私が薬をもらってくるから、あんたはそのままそいつを見張ってて」
「“わかった。早めに頼む。症状がかなりひどいからな”」
「はいはい。一旦、通信を切るわね」
「“了解。任せたぜ”」
霊夢は陰陽玉をしまった。さてと、と霊夢は薬をもらいに行くために向きを変えた。
「ちょっと、霊夢。どうしたっていうの?」
「あんたの友達の人形が、風邪をひいてるんですって。とりあえず私は、薬をもらってくるわ。幽香はどうする?」
「私はここにいるわ。メディのことが心配だからね」
「あっそ。じゃあ、私は行くわ」
そう言って霊夢は飛んでいった。幽香はそれを黙って見送った。
「……さて、と。博麗の巫女の使い……どんな奴なのかしら?」
毒霧におおわれた鈴蘭の花畑を見下ろしながら、幽香は静かに呟いた。
一方、霊夢と連絡を取り終えたピアは、メディスンを自分の膝の上に寝かせた。
「大丈夫か?すぐに風邪薬が来るからな。もう少しの辛抱だ」
「げほげほ……。ピアさん、ありがとう……」
「礼なんていいよ。これも博麗の巫女の使いである、俺の仕事だ」
「でも……私の毒が効かないなんて……不思議な人……」
「まぁ、俺は人間じゃないし。俺は悪魔なんだ。だから毒なんて俺には効かないのさ」
「あ、悪魔……?それって……げほごほ……」
「あぁ、ムリをしちゃだめだ。いまちょっと巫女に薬を持ってくるように頼んだからさ。すぐに来ると思うよ」
「う……うん……」
「(まずいな……霊夢、まだか?)」
しばらく待っていると、ピアが持っている陰陽玉が光り始めた。
「……!霊夢か!」
ピアはすぐに陰陽玉を取り出した。
「霊夢か!ちょいと遅くないか?」
「“十分でしょ。こっちは誰かさんのせいで怪我をしてるんだから”」
「……すいません」
「“それより!薬、持ってきたわ。上がってきてもらえる?”」
「了解」
ピアは陰陽玉をしまってから、メディスンに言った。
「メディスン、聞こえるか?薬を取ってくるから、ちょっとだけ待っててくれ。すぐに戻ってくる」
「う……うん。わかった……」
「よし。……急ぐか」
ピアはメディスンを地面に寝かせると、翼を生やして飛び立った。
毒霧を抜けて、空中に飛び出すと、霊夢のすぐ隣に見知らぬ女性がいた。
「……?知り合い……か?」
ピアは霊夢がいる場所まで飛んだ。
「よう、霊夢。薬は?」
「あるわよ。……ほら」
霊夢は右手に持っている薬をピアに手渡した。ピアはそれを素早く受け取った。
「すまん。助かった」
「どういたしまして」
「ふぅん、あなたが霊夢が雇った代理さんね」
「ん?あんたは?」
「初めまして。私は風見幽香。あなたが介抱してくれていた子、メディの保護者……とでも言えばいいかしら」
「この際だから誰でもいい。あの子の知り合いなんだな。……じゃあ霊夢、もう一度行ってくる」
「いってらっしゃい」
「……メディは無事かしら?」
「大丈夫だ。必ず助ける」
「待ちなさい。……これを」
「これは……水?」
「そうよ。毒の中でも大丈夫な水。持っていきなさい」
「ありがとう。使わせてもらう」
ピアは短く答えると、再び毒霧の中へ飛び込んだ。
「メディの毒に突っ込んで、平気だなんて……随分と頑丈なのね」
「まぁ、あいつにとって、毒は酸素みたいなものらしいからね。頑丈どころか、問題すらないわ」
「へぇ……。ねぇ、霊夢。彼は……名前はなんていうのかしら?」
「名前?名前はピア。ピア・デケムっていうのよ。そうね……強いて言えば、博麗の巫女の使いと言ったところかしら」
「そう。ピア・デケム、ね。覚えておくわ」
「……なんで名前を聞いたの?幽香のことだから、興味を持たないと思ったんだけど」
「なんとなく、霊夢の言う通りな気がしただけ。もしかしたら……私でも勝てないかも」
「幽香?本気で言ってるの?」
「本気よ。ただ……彼の方が本気を出したら……だけどね」
「……ふぅん」
霊夢は再び毒霧に目を落とした。毒霧はますます濃くなり、被害が広がり始めていた。
「……そろそろ結界でも張ろうかな」
そう言いながら、霊夢はスペルカードを一枚取り出した。
「……メディスン!」
「げほげほ……。あ……ピアさん……」
薬を手に入れたピアは、再びメディスンのもとへ向かった。メディスンは先程よりも咳がひどくなっていた。
「げほげほ……。ピ、ピアさん……げほごほ……」
「しっかりしろ。ほら、薬だ。君の知り合いから、水ももらった」
「ゆ……ゆーかが……」?
「そうだ。……ほら、薬を……」
「うん……」
ピアはメディスンが飲みやすいように、薬を与えた。薬のあとに、水を飲んだメディスンは少しだけ顔色がよくなった。
「……うん。ありがとう。少しだけ、楽になれたよ」
「そうか、よかったよ」
「あなた……本当に悪魔なの?こんなにも優しいのに……」
「……人の痛みを知る心が、ほんの少しだけ残っているだけさ。……もうすぐ、無くなるだろうけど」
「ピアさん……?」
「いや、何でもない。……それにしても、薬の効き目って随分といいんだな。さっきまで咳き込んでいたのが、嘘みたいだ」
「あれ?本当だ……すごい……」
「……って、よく見たらこれ、一回分しかないじゃないか!これでだめだったらどうするつもりなんだ?」
「う……うん……。とりあえず私、毒を何とかするね」
「あぁ、すまない。……じゃあ、俺はもう行くよ」
「ピアさん、本当にありがとうございました!」
「どういたしまして。またな、メディスン」
「はい!」
たった一回分の薬で、あっという間に元気になったメディスンに別れを告げると、ピアは飛び立った。ピアが飛び立ってからしばらくしないうちに、毒霧が次第に引いていった。ピアが空に上がると、霊夢と幽香の二人が待っていた。
「ご苦労様。無事、解決したようね。初めてにしては上出来じゃない」
「どうも」
「メディを助けてくれたこと、改めてお礼を言うわ。……ありがとう」
「まぁ、当然のことだしな。助けるのは当たり前だ」
「…………」
「ん?どうした、霊夢?」
「幽香が……お礼を言ってる……」
「はぁ?」
「失礼ね。お礼くらい普通に言うわよ。それよりも……あなた」
「……はい?」
幽香はピアの方へ向き直った。
「今日は本当にありがとう。また今度、『太陽の畑』にいらっしゃい。歓迎するわ」
「はぁ……まぁ、暇があったら、立ち寄らせてもらうかな」
「いつでもどうぞ。私は待ってるから……じゃあね、霊夢。そして……ピア」
二人に別れを告げ、幽香は太陽の畑へと帰っていった。
「さてと……私たちも帰るわよ」
「りょーかい」
「……これからも、それなりに頼りにさせてもらうわ。ピア」
「あいよ」
こうしてピアは、初めて異変解決を達成した。幽香から太陽の畑への招待も受けた。
「まぁ……初めてにしては上出来……か。この調子なら大丈夫かな?」
記念すべき第二話の初登場キャラは、小さなスイートポイズン、メディスン・メランコリーと、四季のフラワーマスター、風見幽香さんです。
あのねぇ、うちのゆうかりんはドSじゃないですよっ!!主人公に優しい理由はメディスンを助けたからです。うちのゆうかりんは主人公には優しいです。
はじめは幽香も誤解で主人公と戦わせようと思っていたのですが、そうなると後々の絡みが気まずいものになるので避けました。
幽香も勝てないかもしれないというピアの力。いったいどれくらいなんでしょうか?ハイ、私にもわかりません。
今回の名言は「毒は酸素」です。
もともと魔族のピアさんにとっては、毒なんて効くわけがないです。いや、ホントに。毒なんかで死ぬことがあれば、面目丸つぶれですよ(^_^;)。
さて、いよいよ次回はあの白黒を出します。ん?白黒と言ったら一択しかないでしょう?
ピアさんもいよいよ博麗の巫女の使いとして、ジャンジャンバリバリ働きます。その働きっぷりは?
それも含めて、また次回~ノシ。