東方魔郷談   作:Walther58

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お気に入り60突破!有難うございます
皆様のおかげですピア君も喜んでいると思います
そしてリクエストありがとうございます(^▽^)/
ではEx-9どうぞ!


後日談… Ex-9 ~幻想女子会、開宴~

 紅魔の執事就任から七日目の晩、ピアは久々に博麗神社へと帰ってきた。夜中に帰ったので出迎えてくれたものはいなかったが、頼んですらいなかったのでピアはあまり気にならなかった。それから数週間たった今も、ピアは相変わらず参拝に来るアベルと刹那を追い返そうとしている。

 

「……で、お前らはいつ元の世界に帰るんだよ?」

「とうぶんは帰らないぞ。アベルも、幻想郷が気に入ったらしいしな」

 

「この幻想郷の中にいると、ありのままの自分でいられるような……そんな気がするんです。ピアも、そう思ったことは……」

「はぁ!?ねぇよ、ボケ!賽銭を入れたらさっさと帰れ!!ついでに元の世界に帰れ!!」

「テメェ……!!」

 

 ピアと刹那が一触即発状態になると、アベルが慌てて止めに入った。

「刹那っ!ピアも……すぐに喧嘩をしないで!」

「……ふんっ」「……けっ」

 アベルの制止によって喧嘩こそは免れたものの、二人の溝はますます深くなるばかりだった。

 

「あうぅぅ……どうすれば……」

「参拝は終わったんだろ?ほら、さっさと帰れよ!!」

「……行こう、アベル」

「刹那……」

 

「ここがピアの居場所だと言うんなら……これ以上俺たちが領域を侵す必要はないだろう。ほら……行くぞ」

「う……うん」

「二度と来るな」

 

「ここが神社である以上、何度でも来させてもらうぞ」

「……あぁそうかい」

 ピアは最後までそっけない態度をとり続けた。刹那はアベルの手を引いて、階段を下りていった。

 

「……ハッ!屑がぁ……」

「ピア……どうしたの?参拝客?」

 後から霊夢が出てきた。ピアはいつもの表情に戻り、何事もなかったかのように話した。

 

「いや、ただの冷やかしだ。全力で追い払っておいたぜ」

「冷やかしって……アベルさんよね?」

「冷やかしだっつーに。あいつが来たところで、迷惑なだけだぜ」

 

「そう。ねぇ、ピア」

「うん?」

「ピアは……自分の世界には帰らないの?」

「帰らないよ。ここが俺にとって、大事な場所だからな。……心配するなよ、霊夢。俺はどこにもいかないぜ?」

「……うん!」

 霊夢は笑顔で答えた。

 

「お二人~、朝食が出来たよ~。今日は私が作ったからねぇ~」

「お、萃香が作ったのか?そりゃあ、早く食べないとな!」

「そうね。萃香、朝ごはん作ってくれて、助かるわ」

「いやなに、博麗夫妻のためならば、この伊吹萃香は全力で応援しましょう♪」

「ちょ!だから~!!」

「萃香……そんなに俺たちに夫婦になってほしいのか?」

 

 ピアは何気なく萃香に訊ねてみたが、萃香は思いのほか真剣な面持ちで答えた。

「当たり前じゃん?私は二人をいつでも応援してるよ」

「萃香……」

 

「あ~……萃香。俺ちょっと出かけてくるわ」

「おろ?朝ごはんは?」

「まぁ、ちょいと席を外す程度だ。仮に帰ってこなくても、晩までには帰ってくる。飯は置いておいてくれ」

「ちょっと、ピア!」

 

 霊夢が呼び止めるのも聞かずに、ピアは博麗神社を出ていった。飛んで行った方角的に、行先は人里のようだった。

「……もう!萃香が余計なことを言うから!」

「そう思うなら、止めればよかったじゃん?」

「うぅ……」

 

「……んで、人払いを済ませたところで……早速だけど、能力を使おっか?」

「うん……お願い」

 霊夢に言われて、萃香は能力を発動させたようだ。霊夢は腕を組んで、人が集まるのを待った。

「さてと……一体どうしてやろうかしら……」

 

 

 博麗神社を出て人里に着いたピアは、人里に来ていた。そして、人里のとある一軒の家の前に来ていた。

「……よし」

 ピアはその家の扉をノックした。しばらく反応がなかったが、やがて扉が開いた。そして、ピアと家の住人は、お互いに強く睨みあった。

 

「よう……クソ狐」

「何の用だ……ボケ魔王」

「ちょっと話がある。表に出ろ」

「なんだと?」

 家の住人、雲母刹那は明らかに嫌そうな顔をした。アベルは少しだけ、家の中を覗いた。

 

「アベルは……いないだろうな?」

「ちょうど買出しに出ている。……俺に用があるのか?」

「他に誰がいるんだよ?アホか。ちったぁ考えろボケ」

「話の前に……テメェのその顔面を一発殴らせろ」

 

「そんなことはどうでもいい。……ところで」

「あぁ?」

「どこか……誰もいないようなところで話をしよう。いいところを知っているか?」

「…………」

 

 刹那は正直に答えようか迷っていた。犬猿の仲であるピアからの誘いなど、刹那からすればただの挑発である。

「……なぜ今、来た?今朝、俺たちを追い返したばかりだろうに」

「あそこの巫女に聞かれたくなかったからだ。お前たちの住所は知っていたからな」

 

「巫女か……。たしか、博麗霊夢……だったか?随分とあの女をお気に召しているみたいじゃないか」

「お気に召してねぇよ。別に特別とか、そんなんじゃないさ」

「だが、彼女と一緒にいるお前を見ていると……ふっ、フェンのことを思い出すな」

「……っ!テメェ……あいつの名前をっ!!」

 

 ピアは刹那の首元につかみかかった。しかし、刹那は動じることなく続けた。

「……あそこまで信頼されていながら、なぜ彼女の気持ちにこたえてやらないんだ?……というより、お前はこの幻想郷から必要とされているのにな……。聞いた話によると、酷く無碍にしているそうじゃないか」

「……黙れ、リア獣が……」

「字が違う気がするぞ?」

「お前の場合はこれでいいんだよ!」

 

「そうかい。……ちょうど森を歩ている時に、珍しい屋台を見つけた。そこに行こう」

「……本当だろうな?」

「嘘をついてどうする?……ほら、行くぞ」

「……おう」

 ピアは刹那とともに、森を目指して飛んで行った。日が高く昇り始めた博麗神社にて、波乱の嵐が巻き起ころうとしているとも知らず。

 

 一方、博麗神社には宴会並みの大人数が集まっていた。実際に宴会の準備をしているわけだが、それ以外のことをしている人もいた。

「……ふぅ」

 宴会の準備をあらかた終えて、霊夢は一息入れるために縁側に座った。霊夢がお茶を飲んでいると、レミリアが近寄ってきた。

 

「ごきげんよう、霊夢」

「……どうも」

「あら?随分と機嫌が悪そうね?何かあったのかしら?」

「えぇ、そりゃもう……どっかの吸血鬼が、人の従者をこき使うせいでね」

「あら~、それは失礼。なんてったって、とっても便利で優秀な執事だったものだから、つい一週間も借りちゃったわぁ~♪」

 

「嫌味たっぷりに言うなっ!私だってねぇ、好きであんたに貸したわけじゃないのよ!?」

「知ってるわよ。でもまぁ……私は自分の想いを伝えることが出来たから、満足してるけどね」

「え……。レミリア……ピアに告白したの?」

 

「したわ。……悔いの無いように、ちゃんと自分の口で言ったわ」

「嘘……」

「……ん?霊夢……まさかあなた、まだ気持ちを伝えてない、とかじゃないわよね?」

「うぅ……」

 

 霊夢は何も言い返せず、うつむいてしまった。レミリアは心底驚いた顔をした。

「ホントに……?なんで一番身近にいるあなたが告白してないわけ?どういうつもりなのよ?」

「どうって……別にどうということは……ないけど……」

「はぁ……呆れた。霊夢のことだから、てっきりもう告白したのかと思ったのに……私ったら、何を焦っていたのかしら……?」

「呆れなくてもいいじゃない……」

 

「おっ!なんだなんだ?霊夢はまだピアにコクってなかったのか?」

 霊夢とレミリアの会話に、魔理沙が割って入ってきた。霊夢はふてくされながらそっぽを向いた。

「うるさい……魔理沙には関係ないわよ……」

「い~やっ!大アリだね」

「ないわよ!」

「なにをっ!そこまで言うなら……私は今夜の宴会で、全員の前でピアにコクってやるよ!!」

「なっ……!?」

 

 魔理沙はムキになって言い返しているだけである。しかし、今の霊夢は頭ではわかっていても、無意識に言い返していた。

「なによっ!!どうせ魔理沙にはできないくせに!」

「はんっ!どうだか……ずっとそばにいるのに、“好き”の一言も言えない霊夢とは違うってところ……私が見せてやるぜっ!!」

「魔理沙……!!」

「そうはいきませんっ!!」

 

 一触即発になりかけた二人の前に、早苗が現れた。

「二人とも、落ち着いてください!喧嘩はいけませんよ!!」

「け、喧嘩なんか……だって、霊夢が……」

「魔理沙だって……散々言ってたじゃない……」

 

「はぁ……。ピアさんが見ていたら、呆れられていますよ?少し頭を冷やしてください。レミリアさんも!見ていないで止めたらどうなんですか!?」

「ふふっ……。私としては、見ている方が面白かったわ」

「もう……。せっかくピアさんのための宴会の準備をしているのに、そのピアさんのことで喧嘩なんかしてたら、意味がないじゃないですか」

「わ、悪かったよ……」

「……少し、頭に血が上りすぎたわ……」

 

 魔理沙と霊夢はようやく落ち着いたようで、お互いに軽く謝罪した。早苗が安心していると、そこへ天子と衣玖がやってきた。

「どうしたの?随分と派手な言い争いをしちゃってさ」

「悪い、ちょっとな……ピアのことで……」

「はぁ?……あぁ、なるほどね。好きな男のことでもめていたわけだ!」

「……そうだよ。その通りだぜ」

 

「ふぅん。まぁ、いいけどね。ピアって、すっごくモテるしさ。ライバルの多さはあらかじめ計算済みだったけどね」

「ライバル……?まさか、天子も!?」

 魔理沙が驚くと同時に、天子は胸を張ってドヤ顔をした。

 

「その通り!ピア・デケム争奪戦……この比那名居天子も参加するわ!まぁ、私もピアのことは嫌いじゃないし、一緒にいたら退屈しないもの!ねぇ、衣玖?」

「そうですね、総領娘様……」

「というより……私よりも衣玖の方が、ピアのことが気になっているっぽいんだけどね」

「ちょ、総領娘様!?」

 いきなり話を振られたので、衣玖は慌てふためいた。魔理沙もこの勢いに悪乗りした。

 

「おぉっ?衣玖もピアのことを!?」

「いえ、あの……まぁ、そうですね……。ですが、私といたしましては、総領娘様とピア様がご結婚なさってくだされば、それでよいのですが……」

「そうなったら、衣玖は間違いなく乳母決定ね!!」

「衣玖が乳母だって?なんか……違和感がないな!」

「う、乳母!?そんな、私は……」

 

 勝手に話が盛り上がってきたので、霊夢はこの隙にその場を離れた。そして、博麗神社の裏に出ると、霊夢は懐かしいものを見つけた。

「これ……あぁ、ピアのお墓……。魔理沙が勝手に作ったんだっけ。……後で片づけとかなきゃ……」

「その必要はないんじゃない?」

 霊夢がお墓を片付けようとしていると、後ろからアリスが声をかけてきた。

 

「こんばんは、霊夢。あれからどう?なにか進展はあったかしら?」

「……ない」

「あぁ……そう。それで?」

「言いたくても……すぐにピアがどこかにいっちゃう。……避けられてるのかなぁ……」

 

「それはないでしょ。だってピアよ?あなたを避けるなんてありえないわ。……幽々子や早苗を避けるなら、納得するけどね」

「うん……。どうしよう……嫌われてたりしたら……」

「心配しすぎよ。……大丈夫だって!少なくとも、ピアも霊夢のことを意識しているんじゃないかしら?」

「ホントに!?」

 

 霊夢がすごい勢いで近付いてきたので、アリスは一度霊夢に落ち着くように言った。

「わからないわよ……。でも、初めて会った時から、だいぶ変化をしているのは確かね」

「そう……?ど、どんなふうに?」

「そうね、例えば……霊夢との仲の良さの話をすると、かなり慌てるようになったわね。あれは多分……霊夢のことが気になる証拠よ!」

「そ……そうかな……?」

 

「本当に心配性ね……。いいわ。今夜の宴会で、私がピアに聞いてあげるわ。霊夢のことをどう思っているか……それではっきりするでしょ?」

「う、うん……。お願い、アリス」

「任せてちょうだい。私は、どちらかというと魔理沙よりも霊夢の方を応援してるから」

「そうなの?」

 

 霊夢が疑り深く聞くが、アリスは全く気にしていない様子で答えた。

「えぇ、もちろん。だってあなた、あの異変の時、ピアが突撃する前に彼に言われたんでしょ?……“愛してる”って」

「……うん」

 

「なら、なおさら大丈夫よ。私がうまくリードしてあげる。あとは霊夢ががんばることね」

「わかってるわよ……。ほら、戻るわよ!」

「墓は片づけなくていいのかしら?」

「そんなの……もう面倒くさくなっちゃったわ」

 霊夢は即答すると、さっさと歩いていってしまった。

「(はぁ……。まったく、面倒くさいのはあなたの方なんだけどね……。まぁ……頑張りなさい、霊夢)」

 霊夢の後ろ姿を眺めながら、アリスはそう思った。気が付くと日が傾き始めていたので、アリスも霊夢の後を追った。

 

 ここは人里の近くの森の中。魔法の森とは別の森で、妖怪の数もこちらの方が多いのだ。ピアと刹那はこの森の中を歩いているわけだが、妖怪は一匹たりとも近寄ってこない。夕方ごろとなれば、妖怪は迷い込んだ人間を襲うことがあるのだが、ほとんどの妖怪が遠巻きに二人を見ていた。

 

「……ここの妖怪どもは、臆病者ばかりなのか?俺たちの世界の妖怪の方が、まだ度胸があるな」

「アホ。単に勝てないと踏んでいるから、かかってこないだけだよ。むしろ幻想郷の妖怪の方が、テメェらよりもよっぽど大人だぜ」

「そうかよ。……さて、見えてきたかな」

「なんだ?」

 ピアの疑問に答えるように、刹那はまっすぐ指をさした。その先にあったのは、『八目鰻』と書かれたのれんと旗を掲げた屋台だった。

 

「屋台……?」

「あぁ。あそこの女将が気前のいい夜雀でな。こっち側の夜雀からは、とても想像できないくらいに素直でいい子だ」

「むしろ、こっち側の妖怪が不良なんだよ。だいたいさぁ……お前の部下の夜雀どもは、どいつもこいつも無口すぎるんだよ」

「寡黙と言え、寡黙と。……たしかに女将の歌はいいものだったな。ぜひ、うちの百鬼夜行で披露してもらいたいものだ」

「そんなことは絶対にさせん」

 ピアが刹那を強く睨み付ける。しかし、刹那は振り返らずにそのまま続けた。

 

「さて、もう時間が時間だ。開いているだろうか?」

「……ふん」

 二人が屋台に近づいていくにつれて、歌声が聞こえてくる。とても綺麗な歌声で、並の歌い手ではないことがうかがえた。

 

「ほう、うまいもんだな」

「だから言っただろ?……おす、女将」

 刹那がのれんをくぐり、女将に声をかけた。夜雀の女将は刹那の声に気付き、笑顔で振り返った。

 

「あっ!刹那さん、お久しぶりですね。今日はアベルさんはご一緒ではないんですか?」

「すまんな。アベルは今日は一緒じゃないんだ。代わりに……面白い奴を連れてきた」

 そう言って刹那はピアを引っ張ってきた。ピアの顔を見た女将は、驚いた顔をした。

 

「あら!あなたは……博麗の巫女の使いの、ピア・デケムさんじゃないですか!?」

「うん?女将はコイツを知っているのか?」

「はい。知ってるもなにも、この幻想郷でピアさんのことを知らない妖怪はいませんから!……ピアさん、ようこそいらっしゃいました!」

「あ、あぁ……どうも」

 

 ピアが軽くあいさつをしたところで、刹那はピアに女将を紹介した。

「彼女がここの屋台の女将で、名前は『ミスティア・ローレライ』。……女将、鰻を二つ頼む」

「はい!」

「……ん?ミスティア……?はて、どっかで……あぁ!お前!!」

「ひゃい!?」

 ピアが突然大声を出したので、ミスティアは驚いてしまった。刹那はピアを軽く殴った後で、謝罪した。

 

「すまない、女将。……おい、いきなり何をやってんだ?」

「いや、すまん。……なぁ、あんた……いや、ミスティア。ミスティアは前に一度、博麗の巫女に穴子を売ったことあるよな?」

「え?あ、はい。一応、メニューにもあるんですが……」

「何ぃ!?メニューにあるだとぉ!!だったら穴子だ!穴子を出せっ!!」

 

 ピアが迫真の表情にミスティアは少しだけ呆けていたが、やがて注文が入ったことを知ると、にっこり笑って穴子を焼き始めた。

「……ふっ。俺は当分ここに通う必要があるようだ……」

「やめろ、馬鹿野郎。仕事をサボるな。……それで、話っていうのは?」

「あぁ……実は……」

 

 すっかり日が沈み、博麗神社では宴会の準備が着々と進められていた。あらかた準備が終わったところで、霊夢は全員を呼び出した。

「霊夢、呼んだかしら?」

「呼んだわよ。……みんなに聞きたいことがあるからね」

「聞きたいこと?それよりピアはいないのかしら~?」

「ゆ、幽々子様……」

「聞きたいことは一つ。みんな……ピアのことをどう思っているの?」

 霊夢の短く、単純な質問に一同は黙った。やがて、一番初めに口を開いたのはレミリアだった。

 

「そうね……答えは簡単よ。多分、他の連中も同じ考えだから、私が代表して言わせてもらうけど……“好き”よ。この場にいる全員……いや、一部を除いてだけど、全員ピアのことが好きよ。……ねぇ?」

 レミリアがほかに意見を求めた。次第に一人一人、意見を言い始めた。

 

「そうねぇ……私はピアのことは一目惚れだったし、妖夢もピアのことが好きなのよね?」

「す、好きかどうかは別ですけど……その、いつも一緒にいると楽しいですね。やっぱりお兄さんの存在感と言うのは、とても大きいです」

「むぅ……“お兄さん”って何よぉ!お兄様はフランのお兄様なんだからぁ!!」

「え……えぇ!?」

 妖夢の“お兄さん”の発言に、フランが食いついた。さらにこいしやぬえもセットでついてきた。

 

「そうだよ!あなたはどちらかっていうと、“妹キャラ”じゃなくて、“幼馴染キャラ”でしょ!」

「お、幼馴染!?」

「えと……あ、兄貴はあんたの兄貴じゃない!」

「え?え?な、何ですかこの状況はぁ―!?」

 妹組に言い寄られ、妖夢は困惑していた。幽々子はそんな妖夢を助けるはずがなく、相変わらず放置して話を進めていた。

 

「……そういえば、蓬莱人?彼はあなたたちの天敵みたいだけど、そこんところはどうなの?」

 幽々子に話を振られた蓬莱人、妹紅、永琳、輝夜の三人は少し考えてから答えた。

「そうね……。輝夜や永琳はともかく、私はぶっちゃけ何とも思ってないわね。まぁ……正直言って、魔剣の話を聞いたときはちょっとビビったけど……」

「魂を喰らう魔剣ね……。殺されて魂の身になった後で食べられたら、さすがの私たちでもどうすることも出来ないわね。でも、私個人は彼に興味があるわ。彼に不死を与えた神様も、幻想入りしたそうね?ぜひ、話を聞いてみたいわ」

「ふんっ!あいつは私が絶対にボッコボコにするんだから!私はあいつなんか大っ嫌いよ!!」

「あら?なら“ピアがいなくて退屈で死にそう”って泣いていたのは、どこのどいつだったかしら?」

「ちっ、違うわよ!そんなわけないでしょ!!」

「おやおや~?私が殺しに行っても、“あんたよりも殺したいやつがいる”って言って、ちっとも私の相手をしなかったじゃない?」

「うるさい!!妹紅!その口を黙らせてやるわ!!」

「いいわ!やってみなさいよっ!!」

「……とまぁ、ウチではこんな評価かしらね。さて、他の人の評価も聞いてみようかしら?」

 

 輝夜と妹紅が喧嘩を始めたところで、永琳がほかの人に話を振った。それに答えたのは早苗だった。

「私はピアさんのこと、大好きです!ね、神奈子様?」

「ちょ、なんで私に話を振るんだ……?」

「そりゃそうだよ。だって神奈子、最近になってようやくピアを認めたじゃん?そりゃあ、早苗も気になるもんさ」

 諏訪子と早苗に期待の目を向けられ、神奈子は答えに詰まった。

 

「え~っと……いや、ね?確かに認めたけどね……私の好き嫌いとは話が別だろう?私があいつをどう思おうと、お前たちに関係は……」

「いえ!神奈子様が敬遠してばかりだと、かえってピアさんに気を遣ってしまうじゃないですか!それではいけないと思うんです!!」

「おぉ~、そりゃいい考えだねぇ。私も賛成」

「えっ?諏訪子!?」

「ほらほら~。今夜の宴会で、神奈子も少しはピアに近づいときなよぉ~♪」

「い、嫌だ!私は神で、奴は悪魔だ!早苗との付き合いは認めたが、それだけだからな!!」

 

 神奈子ははっきりとそう言うと、そっぽを向いてしまった。諏訪子はやれやれ、と首を横に振りながらため息をついた。

「まぁ、ウチは神奈子が鬼門かな。ごらんのありさまでね……とまぁ、こんな感じだよ。他はどうなっているのかな?」

 諏訪子はそう言いながら、さとりの方を見た。さとりは諏訪子の視線を感じて、そうですね、と前置きをしてから話し始めた。

 

「私もピアさんと一緒にいることは、とても幸せに感じられますね。こいしも、よくお世話になってますし」

「えへへ~♪」

「それに……人から忌み嫌われる私たちも、ピアさんを通じてようやく人々に受け入れられるようになりました。ピアさんには感謝してもしきれませんね」

「私はお兄ちゃんと一緒にいるとすっごく楽しいっ!新聞でお兄ちゃんが生きてるって聞いたときは、本当に嬉しかったもんっ!!」

 こいしは無邪気に喜んだ。さとりもその笑顔が嬉しいのか、一緒に微笑んだ。

「私たちは、ピアさんに絶大な信頼を寄せています。それを愛だと言うのならば、おそらくはそうかもしれませんね」

「えっへへ~♪……あ、そうだ。ぬえもお兄ちゃんのことが好きだもんねぇ~」

「うぇ!な、なんで私に話を振るの!?」

 こいしは相変わらず無意識に行動していた。いきなりのことで、ぬえはかなり慌てふためいていた。

 

「あ、あぅあぅ……ひ、聖ぃ~……」

「あらら……仕方ないわね。ぬえ、こちらにいらっしゃい」

 白蓮に助けを求めたぬえは、白蓮の後ろに隠れるように移動した。

「すみません。ぬえは少々人見知りなところがありまして……皆さんの前でお答えできずに、申し訳ありません」

「……こら、こいし」

「うぇ~。お姉ちゃん、もう完全に口癖になっちゃってるよ~……」

「ぬえに代わりまして、私がお答えいたします。私たちも、ピア君にはぜひ命蓮寺に来てほしいと思っています。これはある意味、私個人の意見でもありますが……私はピア君の母親になってもいいと思っています」

「えっ、聖が!?」

「姐さんが、ピアさんの……母親!?」

「聖殿!誠か!?」

 

 白蓮の言葉に水蜜や一輪、そして雲山も驚きの声をあげた。しかし、ナズーリンだけは違った。

「うーむ……。聖が母親となると……ピアは一体どんな顔をするだろうね、ご主人?」

「ピアさんは……うーん、どうでしょう……?私からは何とも言えませんね……」

「大丈夫ですよ星、ナズーリン。たとえ……すぐに理解してくれなくてもいいんです。私は彼に、自分の気持ちをきちんと伝えたいから……」

「ふふっ……その点に関しては同意しますよ、聖白蓮」

 

 白蓮たちの後ろから、神子たちも姿を現した。珍しく同意してくれたことが嬉しかったのか、白蓮は笑顔になった。

「そうですか!あなたたちも、やはり……」

「まぁ、自身の気持ちを伝えたい、という部分だけですがね。あなたの養子にするという話ばかりは、さすがに同意しかねますがね」

「えぇ、わかっています。それを押し付けるのは傲慢だということも……ちゃんとわかっていますよ」

「なら……いいのですがね……」

 

 神子はそれ以上何も言わず、また、意見を求められても何も答えなかった。神子が何も答えなかったところで、話は霊夢に戻された。

「……あっそう。……まぁ、話は以上よ。全員解散」

「……えっ!それだけかよ!!」

「なによ、魔理沙。他に何か言いたいことでもあるの?」

「いや、ないけどさ……」

「ならいいでしょ?……ほら、ピアが帰ってくる前に、宴会の準備をするんでしょ?主催者さん?」

「ちぇ、わかってるよ。なら、私たちは準備に戻るぜ」

 

 呼び出しされた魔理沙たちは、それぞれの準備のために戻っていった。全員の意見を一通り聞いた霊夢は、小さくため息をついた。空はすっかり日が沈み、月が上り始めていた。霊夢はピアが早く帰ってくることだけを願った。

 

 一方、八目鰻の屋台には笑い声が響いていた。

「……はぁ?なんだそりゃ?相談の理由が“女がわからない”だとぉ?お前が女性問題で頭を抱えるとは、いよいよこっちの方が問題だな」

「うるせぇな……ほっとけ。俺だって望んで選んだ結果じゃないだっつーに……ったく、どいつもこいつも……」

 ピアが悪態をつく中で、刹那は少しだけ安心したような表情になった。

 

「まぁ、そう言ってやるな。となると、あれだ。彼女たち全員が、フェンみたいな状況になっているわけだな?」

「そーゆーこと。……はぁ。俺としてはこんなはずじゃなかったのにな……」

「ふむ……。俺も昔は、妖怪の身である以上は人間を傷つけてはならないと思い、人間……主にアベルを避けていたつもりだったんだがな……。まぁ、気が付いたらこの有り様だ」

「なぁにが“この有り様”だよ!ふざけんじゃねぇよ、リア獣が……」

「そういうな。なんだかんだで俺も妖怪とはいえ、結局は獣も同然だ。女性のフェロモンとか、そういうのは嫌でもわかるもんだ」

 

「……まぁ……悪魔の間でもそういうのがあったりなかったり……“魅惑の魔眼”とか言ってな。目が合ったものを魅了するらしいが、興味がない。俺にそれがあるのだとしたら、今すぐこの眼球を抉り取りたい」

「落ち着けっての。……そうだな。なんならお前も、獣のように本能のままに生きてみるのはどうだ?本能に身を委ねれば、フェロモンを感じて自然と自分に見合った女性に会えるかもしれん」

「はぁ?どうしろっていうんだ……?においを嗅げとでも?」

「あぁそうだ」

「寝言を言ってんじゃねぇよ、クソめが。そんな犬みてぇなこと……十万ドル、ポンとくれてもやらねぇよ。むしろテメェらを殺すっていうなら……タダでも喜んでやるがな」

「……はぁ。お前は相談に来たのか?愚痴を言いに来たのか?どっちだ?」

「両方だ」

「やれやれ……。あ、女将。熱燗、追加で頼む」

「わかりました!」

 刹那の注文に応じ、ミスティアはお酒の用意を始めた。刹那は今入っている分の酒を飲むと、真剣な表情へと切り替えた。

 

「あのな、ピア。お前はもう少し素直になるべきだ。いや、違うな。少しは自分を許したらどうだ?お前が過去に犯した罪を知る者など、この幻想郷には誰一人としていないだろうに……。なのに、己の存在がどうとか、周りが近寄るからなんたらとか理屈をこねて、無理にその好意を避ける必要もないだろう?」

「……っるっせぇな。いきなり説教たれてんじゃねぇよ、このクソリア獣が」

「……いいか?お前のその行動、その意思の為に、多くの者が傷つくことだってあるんだぞ。お前が自分のことを蔑むのも、自分のことを責めたてるのもいい。勝手にやれ。だがな……そんなことのために周りを巻き込むというのは、さすがにどうなんだ?お前がよかれと思ってやっていることが、その人の人生に大きく影響することだってあるんだぞ」

「んなこたぁわかってんだよ!だから誰も傷つけないように俺から離れてやれば、それで……」

「こぉんのボォケ魔王がああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 刹那はピアの襟首をつかむと、一切の手加減をせず背後の大木にたたきつけた。そのあまりの衝撃の強さに、ミスティアも思わず驚いた。

「ひゃあっ!一体どうしたんですか!?」

「……女将。これから起こることの一部始終を、ちゃんと目で見て……そして、覚えておいてほしい。……頼めるか?」

「あ……はい……」

 

 あまりのことで対応が追いつけないミスティアは、うっかり頷いてしまった。あとで気付いて後悔したが、二人がただ喧嘩を始めただけではない気がしてきたミスティアは、この一部始終を見守ることにした。やがて、ピアがゆっくり起き上がろうとする途中でも、刹那は容赦なくのしかかった。

「……んだよ……。何すんだよ!!」

「亡霊みたいな面をしてんじゃねぇよ!!お前はそうやって、誰も傷つかないように守ってきたつもりだろうとなぁ!そんなの気遣いでも何でもねぇ!ただの逃げだっ!!現実から!責任から!何より優しさからっ!!お前は何もかもから逃げているだけだぁ!!そんなんで、なにが“傷つけないように”だぁ?おこがましいわぁ!傲慢にもほどがある!!いいか!?“守る”っていうのはな……傷つけないようにすることじゃない!!その人とともにあり、傍にいてやることだ!!傷つけたくないから、かかわらないなど……それなら!最初から出会うべきではなかっただろうがっ!!」

「うるせぇよっ!わかってるよ!わかっているさ、そんなことぉっ!!こんなこと、救いにも何にもならねぇってことぐらいなぁっ!!だが……それしかない!それ以外に方法があるとでもいうのか!!ないからこうやって、傷つける覚悟で俺は……!!」

「いい加減にしろっ!!そうやってお前は、フェンの二の舞を何人作りだす気だ!?」

「……っ!!」

 

 刹那の一言で、ピアはハッ、となった。しかし、刹那は全く容赦しなかった。

「彼女は……フェンは最後までお前に添い遂げた!それなのにお前は彼女に何をしてきた!?確かにお前とフェンの仲睦まじい間柄を知らん俺ではない……あの時のお前の姿など、容易に想像できる……。そうだとしても、相手は人間だ!悪魔のお前とは違うんだ!!限られた時間の中で、お前は彼女を幸せにしてやれたのか!?」

「……つぅっ!」

「……俺もお前と同じだ。何千年、何万年先になるかは知らないが、俺もアベルを置いてこの世を去るときがくる。俺も万能ではない。アベルとは違って、俺には寿命がある。だからこそ、俺はどんなことがあっても、アベルを守り続けると誓ったんだ!それなのにキサマはぁっ!!」

 

 刹那はピアの首元を掴むと、一度持ち上げてから地面にたたきつけた。

「ぐうぅっ……!!」

「今だってそうだろうが!お前は博麗霊夢や霧雨魔理沙……多くの人たちに慕われ、必要とされているんだろうがっ!!後悔のないように生きることすら、貴様には侭ならぬかあぁぁぁっ!!」

 

 刹那はピアを持ち上げると、もう一度ピアを放り投げた。ピアは何本もの気を押し倒しながら、吹っ飛ばされた。ピアは死んではいないものの、ピクリとも動かなくなった。刹那はピアのすぐ足元まで来ると、感情のこもっていない目でピアを見た。

「結局この世界を救ったのも、お前の自己満足だったということか?だったら……本当の偽善者はお前の方だな、ピア。上辺だけつくろったような態度で、これから先もやっていけると思うなよ?好きな人を思う心はな、より人を強くする。好きな人といる時は、なおさらだ。だからお前は俺たち(・・・)には勝てない」

 

 刹那はそれだけ言い残すと、ミスティアの前まで瞬間移動で現れてお代を払った。きっちり二人分。その後、屋台の前で暴れたことを謝罪した。

「いえ、それはいいのですが……。ピアさん、さっきから動きませんけど、死んでるんじゃないですか?」

「生きてるよ。……あいつは頑丈だからな」

 

刹那はミスティアに頭を下げて、幻影のように消えていった。そのまま、数十分以上の時間がたった。ピアの周りには、彼の身を案じて物陰から出てきた妖怪たちが集まっていた。誰もが見つめる中、ピアはむくり、と起き上がった。

 

「…………」

 ピアは刹那の言葉を思い出していた。フェンの二の舞。その言葉がピアの胸に強く刺さり、なかなか抜けそうにもなかった。

「だったら俺は……なにをすれば……なにをしてやればいいんだよ……」

 誰に言うでもなく呟いたその言葉は、夜の森の中に虚しく響いた。そして、それに答える者は、誰もいない。そこへ、ミスティアが顔を覗き込んできた。

 

「あの……」

「…………」

「穴子……焼けましたよ?」

「……食べます」

 最後に穴子を食べて、ピアはその場をあとにした。そして、博麗神社でピアを待っていたのは、宴会会場だった。

 

「なっ……何だこりゃ……?」

「遅いぜピア!まったく……どんだけ待たせりゃ気が済むんだっての!」

「魔理沙……」

「魔理沙がね……“ピアの生還を祝って宴会だ!!”って言うから……そ、それだけなんだからねっ!」

「霊夢……」

 

 ピアは目の前に広がる宴会風景に目をやった。ピアを待っていた者、待ちきれずに既に飲んでいる者、呼ばれてもいないのに勝手に来る者など、実に多くの人妖が博麗神社に集まっていた。ピアは小さく深呼吸すると、霊夢の方へと向き直った。

「霊夢……ありがとう」

「え……あ!べ、別に普通よ!これくらい……」

「いや、本当に……すまない、ありがとう……」

「ピア……?」

「そんなことよりっ!ほら、ピアも一緒に飲もうぜっ!!」

 

 魔理沙に手を引かれて、ピアは会話の輪の中へと入っていった。ピアが歩み寄れば、自然と近づいてくる者もいた。三年ぶりの再会に、思わず涙する者もいた。この笑顔を守った自分が偽善者であると刹那に言われたことを、ピアは心の中で改めて否定した。理由は簡単、ただ守りたかっただけだったからだ。

 




重要な回でした
ではまた次回
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