東方魔郷談   作:Walther58

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文才が欲しい今日この頃です
では第五章どうぞ~


第五章 ~幼き月は闇(くろ)き太陽(アクマ)に身を焦がす~

 ピアが大図書館を出て地上に戻ってくると、そこにはすでに咲夜が待っていた。

「お待ちしておりました。では、こちらです」

「…………」

 

「……?どうかなさいましたか?」

「いや、まったくもって個人的なことなんだが……俺は、敬語が大っ嫌いだ」

 

「……はい?」

「おまけに今日は、俺の方が敬語を使わされて、相当ストレスがたまってるんだ。そこで、あんたに頼みがある」

 

「何なりとお申し付けくだ……」

「それだよ。この際だからはっきりと言う。敬語をやめてくれ」

 

「え……?しかし、あなたは……」

「しかしも案山子もねぇよ。こんなの……ただのわがままだっていうのはわかってる。だから、条件を付ける」

 

「条件……ですか?」

「そうだ。面倒くさいと思うだろうが、聞いてほしい。たった一つだけだ。この館の主がそばにいないときは、敬語を使わないでほしい」

 

「それは……お嬢様の前以外では、常に無礼講であれ、ということですか?」

「そういうことだ。だから、頼む」

 

「わかりました」

「……ムッ」

 

「え、ええと……わかったわ」

「すまないな」

 

「ふふっ。初めはどういう人かと心配していたのだけれど……パチュリー様が、あれほど信頼なさっている人なら、私も遠慮はいらない……と、言うことかしら?」

 

「その通り。これからはその調子で頼むよ。……咲夜」

「こちらこそ、ね」

 

 いきなりメイドにタメ口を強要させたピアであったが、咲夜は思いのほかあっさりとピアの要求を受け入れてくれた。

 

「それにしても……」

「うん?」

 

「あなたは霊夢からどんな業務命令を受けたのかしら?初対面の人にはすぐに名を名乗るなとは……霊夢は何を考えてるのかしら?」

 

「さぁな?こればっかりは俺もわからん。何かしらの意味があるんだろう。俺は住まわせてもらっている身だから、逆らえないことこのうえないが」

「なるほど……」

 

「咲夜は違うな。心から忠誠を誓っている……そんな風に見えるよ」

「その通りよ。私はお嬢様のためなら、命を捨てる覚悟だってできてるわ」

 

「それで命を捨てたら、本末転倒だがな」

「……!……そうね。あなたからすれば……そうなのでしょうね」

 

「……咲夜?」

「いえ、何でもないわ。……さて、ここがお嬢様の部屋よ。ここからは、私はあなたに敬語を使わせてもらうわね」

 

「……まぁ、約束だからな」

「ありがとう」

 

 コンコンコンッ

 咲夜は三回ノックをした。

「お嬢様、失礼します。“博麗の巫女の使い”様をお連れしました」

 

「……入っていいわよ、咲夜」

「はい、失礼します」

 

 咲夜は扉を開け、中へと入った。ピアも咲夜に続いて部屋の中へ入った。

「お嬢様。こちらのお方が、“博麗の巫女の使い”にございます」

 

「ありがとう、咲夜。あなたはさがっていいわ」

「はっ。では、失礼します」

 

 咲夜は命令通りに姿を消した。ピアはもう慣れていた。咲夜がいなくなったのを確認すると、視線を正面へと戻した。

 

「フフフ……よく来たわね、人間。いや、博麗の巫女の使い……とでも呼べばいいかしら?」

「…………」

 

 目の前にいたのは、どこからどう見ても少女だった。しかし、背中には翼、口元からのぞかせる小さな牙は、まさに吸血鬼を思わせるそれだった。

 

しかしピアは、この少女は一般的に“ロリ”と呼ばれる部類に入るのだろう、みたいなことを考えていた。

 

「私はこの紅魔館の主、『レミリア・スカーレット』よ。それにしても……あの霊夢の言いなりになるなんて、つくづく哀れな人間ね」

 

「哀れかどうかはさておき……俺を呼びつけた理由は何だ?俺だって暇じゃない。さっさと要件を言ってくれ」

「そんなに慌てなくてもいいわ。まだまだ……夜はこれからだもの」

 

「まだ昼……」

「とにかく……お昼ならウチで食べていきなさい。それくらい、問題はないでしょ?」

 

「……だが、霊夢に一度報告を……」

「咲夜」

 

「はい」

 レミリアが呼んで、すぐに咲夜が現れた。そのデタラメのような速さに、ピアはツッコミを考える気も失せた。

 

「霊夢に伝言よ。“博麗の巫女の使い”は、今夜まで預かる“と、伝えてちょうだい」

「かしこまりました」

 

 そして再び姿を消した。ピアはもはや嫌な予感しかしなかった。

「ちょ、もしかして……」

 

「察しがいいわね。そうよ。今夜まであなたを霊夢から借りるわ。異論は認めない」

「あのな……もうちょっとこっちの意見を……」

 

「お前ごときに意見を述べる権利があると思っているの?」

「…………」

 

 レミリアはピアを完全に見下していた。さらには、ピアをただの人間だと思い込んでいる。だからこそ、ピアにも付け入る隙があった。

「……なるほど。俺には決定権がないわけだ。だから逆らうことも、逃げることも許さない……と?」

 

「わかっているじゃない。そういうことよ」

「はぁ……吸血鬼と呼ばれるほどだから、どれほどのものかと思ったが……。結局どこの世界でも、吸血鬼は高慢ちきの塊だな」

 

「……ほう?」

「自分たちを高貴で絶対だと思い込んでいる。世界は広いが、吸血鬼は自分たちのものさしでしか世界を測れない。だから滅んだ。軟弱な人間によって」

 

「……言ってくれるじゃない。その吸血鬼を目の前にして、いい度胸ね。それだけ物を言うのだから……それ相応の覚悟はできているんだろうな?人間」

「あいにくだがな……俺は人間じゃない。俺は魔王……鬼をも従えるものだ。まして……吸血鬼なら、なおさらな」

 

「魔王……?」

「……どうやら、夜まで待つ必要もなさそうだな。俺は帰らせてもらう」

 

 ピアが帰るために踵を返した時だった。

「私が、そう簡単に逃がすと思うか?」

 

 レミリアはピアを逃がすまいと、すぐに後ろまで迫っていた。

「…………!」

 

「もらったぞ!」

 そしてピアの背後を完全に取ったレミリアが、次にとった行動は一つだけだった。

 

「はむ……!」

「がぁっ!!」

 

 それは、吸血。吸血鬼の最大の武器にして、人間の最大の脅威。レミリアはピアを逃がさないように、しっかりとつかまって血を吸った。

 

「ん……ちゅぷ……ぴちゃ……ちゅぱ……」

「う……がぁ……!おい……やめ……」

 

「んふ……“やめろ”……とでもいうの?これだけ濃厚な味を、私が手放すとでも?……んちゅ、ちゅぱ……」

「やめ……やめろ……!これ以上は……!」

 

「……うっ!げほげほ!」

「……!チャンス!」

 

 ピアはレミリアがむせて咳き込んでいる隙に、自分をつかんで離さない少女の手を離した。レミリアは反撃を喰らわないように距離を取った。

 

「(くっ……味に夢中になりすぎて……吸血が苦手だったことを忘れていたわ……。不覚だった……)」

「はぁ……はぁ……。……くっ!」

 

 ピアはレミリアに噛まれた右側のうなじに手を当てた。悪魔の体を持つピアは、傷の再生力が通常の数十倍も強い。その圧倒的な再生能力を、見られるわけにはいかなかった。ピアの表情が険しくなる中で、レミリアは余裕の表情だった。

 

「ふぅ……なかなか悪くないわね。悪魔の血も、捨てたものではないようね」

「くぅ……レミリア……!」

 

「私の名前を憶えてくれたようね。でも、残念。あなたは夜まで逃がさない……」

「……そう、かい。だがな、レミリア」

 

「…………?」

「それは……月が天高く昇るまでに、お前が生きていたら(・・・・・・)の話だ」

 

「……ふん!いきなり何を……」

 レミリアが再びピアに飛びかかろうと身構えた時だった。

 

 ドクンッ!

「?!?!?!?!」

 

「……来たか……」

「うっ……!がはぁっ!」

 

 レミリアは突然苦しみ始め、その場にうずくまると吐血した。何度も胸をかきむしり、もがき苦しんでいた。

「あぁぁぁ!がぁぁぁ!……こ……これはぁ……うあぁぁ!」

 

「レミリア……吸血鬼のお前なら、わかるはずだ。……『甘美な死(ラシアス・デッド)』。この言葉の意味を」

「甘美な死……。そうか……そういうことか……」

 

 レミリアはすべてを理解した。しかし、その時にはすでに手遅れであることも察したようだった。

 

「パチェの本に書いてあった……“吸血鬼殺しの悪魔の血”……。お前の血が……その悪魔の血だったとはな……うかつだった……」

 

「そもそも、“圧倒的な力で威圧すればだれでも臆して従う”……そう考えていた時点で、それはただの傲慢だよ」

「はぁ……はぁ……。そういう……ことか……。してやられた……ということか」

 

「してやった覚えはないんだがな」

「は……はは……。私と……したこと……が……」

 

 レミリアはとうとう意識を失ってしまった。力なく倒れるレミリアを、ピアはとっさに受け止めた。

 

「おい、大丈夫か!こんなことで死ぬのは勘弁してくれ!」

「…………」

 

 呼びかけてみるが、返事がない。ピアは一度深呼吸をした後、何回か発声練習をした。

「あ~、あ~……コホン。……よし」

 

 そして

「“咲夜”」

「はい。……あら?」

 

 レミリアの声をそっくりそのまま真似をして、咲夜を呼んだ。呼ばれた本人も、何が何やらと言った顔をしていた。

「えっと……お嬢様に呼ばれたと思ったのだけれど……あなただったのですね」

 

「咲夜!まずいことになった!」

「どうかしたのですか。……!お、お嬢様!」

 

「レミリアが俺の血を吸っちまった。このままでは死ぬかもしれない。すぐにパチュリーのところへ!」

「は、はい!しかし……なぜあなたの血で?」

 

「説明は後でする。先にパチュリーのところへ行って、事情を説明してくれ。あと、解毒の準備を!」

「わ、わかりましたわ」

 

 咲夜は姿を消した。ピアはレミリアを背負うと、大図書館へ向かうため、走り出した。

「絶対に死なせない……お前を慕う人間のためにも!」

 

 

「う……うぅ……」

「お嬢様っ!」

 

「さ……咲夜?」

「レミィ!大丈夫?!」

 

「えぇ、大丈夫よ……パチェ」

 レミリアはゆっくりと体を起こした。そこはレミリアにとっては普段から見慣れていた光景だった。

 

「ここは……大図書館ね。私は……一体……?」

「あなたは彼の血を吸って、意識を失ったのよ。レミィが吸血が苦手だったことが、幸いだったわね」

 

「……そうか」

 レミリアが見つめる先には、椅子に腰かけて本を読んでいるピアの姿があった。小悪魔に文字の読み方を教えてもらいながら、必死に魔道書を読んでいた。

 

「お嬢様……」

「何?」

 

「あの人……博麗の巫女の使いの血を吸って、なぜお嬢様が意識を失うようなことに……?」

「それは……いや、それが魔王の血の力だからよ」

 

「魔王の……血?」

「そう。魔王には、時には吸血鬼を配下として加える者もいる。だが、吸血鬼はそんなことをプライドが許さない。だから魔王を殺してやろうと、奴の血を吸った。すると……」

 

「すると……?」

「吸血鬼は死んでしまったのよ。魔王の血に流れる……強力な致死毒のせいでね」

 

「致死毒……ですか?」

「ここからはレミィに変わって、私が説明するわ」

 

 レミリアの言葉を引き継ぐように、パチュリーが会話に加わった。

「はい、お願いします」

 

「わかったわ。まず、魔王の血には二つの成分が含まれている。一つは……微量の媚薬成分。これは相手を自分の虜にするためでしょうね。そしてもう一つが、さっきレミィが言ってた、強力な致死毒よ」

 

「媚薬と毒の両方を含んでいるなんて……」

「まずは、媚薬で相手を従わせる。それでもだめなら、毒を以てこれを征す……服従を強いるのね。それでもだめなら……無理矢理にでも血を吸わせて殺す」

「…………!」

 

「彼は……魔王は、すでに吸血鬼に対抗する手段を持っていた。レミィが助かったのは、致死量に至るまで血を吸わなかったのが理由よ。彼は……もとより吸わせる気はなかったみたいだけど」

 

「つまり……これは……」

「そうよ、咲夜。これは私の単純なミス。……失敗よ」

 

「それにしても……彼も本当に物好きよね」

「……?パチェ、それはどういう意味だ?」

 

「レミィ……今はもう夜よ」

「……夜……」

 

 レミリアは大図書館に差し込む月明かりを見た。今夜の月は満月だった

「咲夜から聞いたわ。彼は“帰る”って言ったそうじゃない。でも、彼は最後まであなたの看病をするって言ったのよ」

「…………」

 

「悪魔の躰(からだ)でありながら、その心は人の器……。さしずめ、“半人半魔”と言ったところかしら」

「躰は悪魔……心は人間……」

 

「なかなかに興味深いわね。悪魔と人間のハーフ……それも悪魔の方は魔王ときたわ」

「普通じゃない……いや、それだけでは済まされない」

 

「彼から聞いたのよ。父は魔王で、母は人間であると。本来なら、心と体が両立している方が不思議ね」

「私は……奴を甘く見すぎていた……」

 

「普通のハーフなら心が体に蝕まれて、完全な悪魔になるはずなのだけれど……彼は、体に抗うだけの心がある」

 

「……強いな、あの男は」

「えぇ、強いわ。……それも限りなく、果てしなく」

 

「……決めたわ」

 レミリアは決心すると、咲夜の手を借りつつピアのもとへと向かった。

 

「……あなた」

「うん?気が付いたのか。体は大丈夫か?」

 

「えぇ、おかげさまで。こんな時間まで、ここにいてくれたのね。……ありがとう」

「霊夢は夜まで帰ってこないと思ってるだろうから、帰っても大して意味はないと判断しただけだ。勘違いすんな」

 

「そうだとしても……よ。……今回は私が悪かったわ。ここは素直に謝ってあげる」

「……別に。そういうのとかは、いらねぇから。謝られる理由もないしな」

「…………」

 

「むしろ、謝るのこっちの方だな」

「えっ……?」

 

 ピアは本を閉じると、小悪魔に返した。そして椅子から立ち上がり、レミリアと正面から向かい合った。

 

「悪かったな……そっちの感情を逆撫でするようなことを言って。そのせいでレミリアを怒らせてしまったのだから、俺に責任がある」

 

「……フ、フフフ……あッははは!本当にあなたは面白いわね。気に入ったわ!あなたが紅魔館に住んでくれたら、退屈しないで済みそうね」

「それは無理だ。契約なら、俺はとっくに完了済みだ」

 

「あぁ、霊夢か……。あなたほどの男、霊夢には少しもったいないわ。私が可愛がってあげるわよ?」

「そういうのはマジで無理です。ご勘弁を」

 

「あら……残念ね」

「お詫びと言っては何だが……俺の名前を教えよう」

 

「あら?霊夢からの業務命令はいいのかしら?」

「……それ以前の問題を起こしたんだ。命令とか言ってる場合じゃねえよ」

「そう。なら……教えてちょうだい?」

 

 今日はまだ、魔理沙にしか本名を明かしていなかったので、ピアの中にはなんとなく嬉しさに似たものがあった。

「わかった。……ピア・デケム。それが俺の名前だ」

 

「ふふっ……ようやく、お名前をお伺いすることが出来ましたわ」

「悪かったな、咲夜」

 

「ピア……ね。改めて、よろしくね」

「よろしくな、パチュリー」

 

「ピア・デケム……その名、私の記憶に永遠に刻んでおこう」

「まぁ……よろしく頼む」

 

「ところで……ピア、時間に余裕はあるかしら?」

「時間もなにも……今夜はここで一泊するってことにしたのはそっちじゃないか」

 

「……それもそうだったわね。それよりも、いいかしら?」

「大丈夫だ。俺は今夜はここに泊めてもらう身だ。だから、そちらの要求をある程度のむくらいなら、多少は問題ない」

 

「要求ではないわ。その……お願いがあるのよ」

「お願い?なんでまた、急に改まって?」

 

「……!まさか、レミィ?!」

「そのまさかよ、パチェ」

 

 突然パチュリーが慌て始めた。レミリアの行動を阻止しようと、必死に説得をした。

「だめよ、レミィ!彼を“あのお方”に会わせてはだめ!間違いなく、殺されるわ!」

 

「大丈夫。ピアが私の見込み通りの男なら……“あの子”が相手でも死にはしないわ」

「たしかにピアは強いわ。私たちでも、そこが知れないほどに……。でも、“あの方”を相手に、力なんて意味はないわ!」

 

「パチェ」

「…………!」

 

「私を……信じなさい」

「レ……レミィ……」

 

 説得するパチュリーを言いくるめると、もう一度、視線をピアに戻した。

「ピア・デケム……博麗の巫女の使いであるあなたに、頼みたいことがあるの。あの霊夢が仕えることを許したあなたになら……きっとできると思うから」

 

「わかったわかった。頼みでも何でも引き受けるから、何でも言ってくれ」

「頼みというのはほかでもないわ。私の妹……“フラン”の遊び相手をしてほしいのよ」

 

「妹?レミリアって、妹なんていたのか?」

 ピアの問いに、レミリアは黙って指をさした。その先には、扉が一つ存在していた。

 

「あの扉の向こう……この大図書館のさらに地下に、あの子はいるわ。名前は『フランドール・スカーレット』。私の妹よ」

「なんで地下のさらに地下にいるんだ?そうする必要でもあるのか?」

 

「あの子は……ちょっと、気が触れているのよ。だから、暴れだしたりしないように、あそこで保護しているのよ」

「保護……だと……?」

 

「そう。保護よ。フランには、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』があるのよ。だから館の外と、あの子を同時に守るために、フランにはやむを得ず肩身が狭い思いをしてもらってるわ」

 

「……それは……“守る”とは言わない……」

「…………?」

 

「見ていろ、レミリア。その頼み……引き受けてやる」

「フフフ……ありがとう。あなたなら、そう言うと思って……」

 

「ただし……俺なりのやり方で、相手をする。……それでもいいな?」

「……えぇ、構わないわ」

 

 レミリアの許可を受け、ピアは大図書館の一番奥の扉、地下室への扉を目指して歩き始めた。

 

「ピア……気を付けて……」

「ご武運を……お祈りいたしますわ」

「咲夜……パチュリー……行ってくる」

 

 咲夜とパチュリーは、ピアの身を案じていた。ピアもそれは十分理解をしていたが、ピアはそれ以上にレミリアのやり方に憤りを感じていた。

 

「(保護と束縛は違う……。それを教えてやるぜ……レミリア!)」

 

 ピアは扉を開けた。そこには、まるで地獄につながっているかのように暗く、長い階段が続いていた。ピアは、地獄への第一歩を踏み出した。

「(待っていろ……フランドール・スカーレット)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下のさらに地下に存在するその部屋の中で、テディベアが無残な姿であちらこちらに散乱していた。

 

 今まさに、一体のテディベアが八つ裂きにされかけている時だった。その小さな手に握られたナイフは、小さな音を立てて地に堕ちた。

 

「……うふふ……」

 

 少女は笑った。止まったままの時計の針が、再び動き出すように。これから訪れるであろう楽しみに、これまでにないほどに目を輝かせながら。

 

「また……誰かが遊びに来たのね……。……うふふ……」

 

 少女はナイフを落とした手で、テディベアの頭を引きちぎった。分裂した頭と胴体を持ったまま、ゆらりと扉の方を見た。

 

 そして少女は、歪に輝く七色の翼を揺らしながら、扉に向かって問いかけた。。

 

 

「さぁ……ワタシトイッショニ、アソビマショウ?」

                                               NEXT……VS Flandre Scarlet




次はフランとのバトル!次回ものんびりとお待ちくださいm(_ _)m
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