東方魔郷談   作:Walther58

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~前回のあらすじ~

 目的を果たし、パチュリーの研究に協力したピアは、咲夜とともにレミリアの部屋へと向かった。

「私はこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ」

 レミリアに血を吸われたピアであったが、逆に血を吸ったレミリアが苦しみ始めた。甘美な死。その毒が、彼女の体を蝕み始めていた。

「お前を慕う人間のためにも、死なせない!」

 血を吸わせたのは自分の責任である。ピアはレミリアをすぐに大図書館へ移動させた。

「あなたに頼みたいことがあるの」

 一命をとりとめたレミリアからのお願い。それは、自分の妹と遊んでほしいというものだった。ピアは、レミリアからの依頼を受けることにした。

「(待ってろよ……フランドール・スカーレット)」
以上。



第六章 ~悪魔の妹VS悪魔の王~

 ピアは階段をおりていた。地下のさらに奥深くに通じる階段を、一段一段、足を踏み外さないように慎重に降りていた。

 

「ふぅ……」

 階段をおりると、今度は大きな扉が待ち構えていた。

 

「…………」

 この扉の先にはレミリアの妹、フランドールが待っている。どんな人物なのか、会ってみなければわからない。

 

「……行くか」

 ピアは大きく、重たい扉に手を当てた。そして、その扉を

 

「ふんっ!」

 ドッカアァァンッ!

 

木端微塵に吹き飛ばした。この男、もとより扉は壊すものだと信じている。

「さて、入るか」

 そして何事もなかったかのように、地下室へと入っていった。

 

「これは……」

 地下室に入ったピアは、険しい顔つきになった。部屋の中には、何十体もの人形が散らかっていた。それも、すべてがバラバラになっていた。

 

「…………」

 さらに部屋を見渡してみると、明らかに使われていないような玩具まである。そのほとんどが壊されており、それらはまるで使い物にならなくなっていた。

 

「……部屋と呼ぶには……ちょいと無理があるな……」

 ピアがさらに奥へ入ろうと前進した時だった。

 

「……ごめ、かぁごぉめぇ~……」

「…………?」

 

 声が聞こえた。どこからともなく聞こえてくるので、どこにいるかはわからなかった。

 

「かぁごのなぁかのとぉ~りぃ~はぁ~……い~つぅい~つぅでぇあ~う~……」

 聞こえてきたのは歌だった。誰かがどこかで、歌を歌っているとしか認識できなかった。かなりゆっくりとした口調で、歌は続いていた。

 

そして

「ウシロノショウメン……ダァ~アレェ~?」

「……っ!」

 

 ピアがとっさに後ろを振り返ると、そこには大きな剣を構えた少女がいた。

「……あはっ」

 

「なっ……!」

 少女はニヤリと笑うと、さらに剣を振りかぶった。

 

「禁忌……『レ―ヴァテイン』」

「…………!」

 

 少女は剣を振り下ろした。ピアは回避が間に合わず、右腕が吹き飛んだ。そして、残った刃がさらに壁へと打ち付けられた。

 ドゴォォンッ!

 

 ドォォンッ!

「……始まったわね」

 

 地下から響く轟音に、レミリアが小さく呟いた。

……はい。ですが、お嬢様……」

 

「大丈夫よ、咲夜。あの子では……フランではピアに勝てないわ」

「……!まさか、運命が……?」

 

「いいえ。こればっかりは……勘よ」

「勘……?お嬢様、能力は……?」

 

「使っている。……いえ、正確には“使っているはず”よ」

「では……なぜ……?」

 

「単純なことなんじゃないかしら?ただ単に……ピアには能力が効かない(・・・・・・・・・・・)ってことよ」

 

「それでは……私の能力も?」

「多分、見えているんじゃないかしら?」

 

「…………!」

「私の推測が正しければ……ピアにフランの能力は効かない。ピアは……フランには破壊されない」

 

 そしてレミリアは咲夜が出した紅茶を一口飲んだ。紅茶に映る自分の姿を見ながら、誰にも聞こえない声でつぶやいた。

 

「……まぁ、あくまでも推測だけれど……ね。ピア……こんなところで終わったりなんかしたら……許さないんだから……」

 

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

 右腕を吹き飛ばされ、ピアは激しい激痛に悶えた。その様子を、少女は黙って見下ろしていた。

 

「あなたはだぁれ?フランと遊んでくれるの?」

「くっ……うぅ……。挨拶は……武器を振り下ろしてするもんじゃないだろ……!」

 

「ねぇ、教えて?あなたは誰なの?フランと一緒に遊んでくれるの?」

「フラン……?君は……フランドール・スカーレット?」

 

「あれ?どうしてあなたがフランの名前を知ってるの?」

「君のお姉さんに……頼まれたんだ……。君と……一緒に遊ぶようにと……」

 

「わぁ、嬉しいっ!じゃあ、あなたがお姉さまが用意してくれたお人形さんね?」

「に……人形?」

 

「うふふ……。あなた、簡単に壊れたりしたら……ユルサナイから」

「……っ!」

 

「じゃあ、行っくよ―!」

 少女、フランドールは無邪気に微笑みながらピアと距離を取った。そして

「全部、避けてね……禁忌、『クランベリートラップ』!」

 

「……ちぃっ!」

 ピアは辛うじて残った右肩を抑えながら空を飛んだ。フランドールの容赦のない弾幕を、網目をくぐるかのように避け続けた。

 

「すごいすごい!あなた、空を飛べるのね!でも、腕が片っぽなかったら逃げるしかないよね?」

「それは……どうかな!」

 

 ピアは弾幕をかわし切り、背中に翼を生やして反転した。

「くっ……ふんっ!」

 

 さらに、先ほど吹き飛ばされた右腕を再生させた。その一部始終を見ていたフランドールは不思議そうな目で眺めていた。

 

「すごい。空も飛べて羽も生えて、そのうえ再生までするんだ!あなたって、もしかして人間じゃないの?」

「人間じゃない。俺は悪魔だよ」

 

「悪魔……?まるでフランみたいね」

「……どうして?」

 

「だってフラン、“悪魔の妹”って呼ばれているもん」

「そいつは奇遇だな。おれは“悪魔の王”って呼ばれてんだ」

 

「へぇ~。なんだか私たち、似てるところがあるのね」

「それはない」

 

「そう……残念。……だったら……」

 フランは剣を持っていない左手をピアに向けた。

 

「壊レチャエ」

 ニヤリと笑うと、スペルカードを取り出した。

 

「禁弾、『カタディ・オブ・トリック』!」

 さらに弾幕を撃ってきた。ピアはそれをかわしつつ、フランドールとの間合いを見極めようとした。しかし、フランドールはピアにさらなる追い打ちをかけた。

 

「……禁忌、『レ―ヴァテイン』!」

 フランドールがレ―ヴァテインを振り下ろした。しかし、ピアはそのスペルをエッジで受け止めた。

 

 ガキイィィンッ!

 フランドールは受け止められたことが珍しかったのか、きょとんとした顔で首をかしげた。

「あれ……?止められた……?」

 

「……俺をこれまでの人間や人形と同じだと思ったら……痛い目を見るぞ?」

「痛い目?そんなの、フランにはわかんない」

 

「わからないなら教えるまで。理解できないなら……思い知らせるまで!」

 ピアはキャリバーを抜いた。そのまま銃へ変形させると、フランドールへ向けた。

 

「『滅閃光』!」

 キャリバーから強力なレーザーを発射した。しかし、フランドールはそれを軽々と回避した。

 

「あははっ!ちゃんと狙わないとだめでしょー?」

「……知ってるか?レーザーってのは二種類の使い方がある」

 

「……なにそれ?」

「一つは“火力用”だ。俺が使ったのはもう一つの方……」

 

 すると、滅閃光は巨大なレーザーから六本のレーザーへと分裂した。

「……!なにこれっ!」

 

「もう一つは……“包囲用”だ!」

 分裂したレーザーは、縦の棒のようにフランドールを取り囲んだ。

 

「…………!」

「最初に……俺は滅閃光と言ったな。悪いな……あれは嘘だ」

 

「…………!」

そう言いながら、ピアはチャージを開始したキャリバーを、今度はフランドールの足元へと向けた。

 

「これから使うのは……俺の技の中で、二番目に強い奴だ。死なない程度に手加減はしてやる。それでも……死ぬほど痛いぞ!」

 

 そして、チャージが完了したキャリバーのトリガーを引いた。

「喰らえっ!『裂光(れっこう)覇(は)』!」

 

 トリガーを引くと、フランドールの足元に魔方陣のようなものが展開された。そして、逃げ場を完全に失ったフランドールを、真下の魔法陣から滅閃光より遥かに巨大なレーザーが攻撃した。

 

「キャアアァァァッ!」

 フランドールを包んだ光は、そのまま天井を突き抜けて地上まで貫通した。裂光覇が消滅すると、空から月明かりが入り込んできた。

 

「…………」

 ピアは黙って前を見ていた。下に向けていたキャリバーの銃口を、再び前に戻した。

「……まだ生きてるんだろ?煙に紛れてないで、出てこい」

 

 ピアがそう言った直後だった。

「……あはっ」

 

 フランドールの声が聞こえた。しかし、その様子はどこかおかしかった。

「あはっ、あはっ、あははは……」

 

「…………」

 ピアはその様子を黙って見ていた。恐れも疑問もなく、ただ黙って見ていた。目の前にいる“敵”を。

 

「アハハ……あはは……あははは……」

 そして、立ち込めていた煙が消え、ようやく姿を現したフランドールは

 

「あははははハハハハハハハハハハはははハハハハははははははははハハハはははハハハハあハハハハアハハっハハハハハッははハハハハハはははははハハハハはははははははははハハハハハははハハハハハあっはハハハハあははははあはははあはあっハハハハハあはははっはははハハハハハあははははははは!」

 

 笑っていた。とにかく笑っていた。ただひたすら笑っていた。渇きを満たされた魂のように。狂気に犯された幼子のように。

 

「……これが、心の裏側に隠された……フランドールの姿か……」

 そこにあるのは、狂気のみ。そこにあるのは、恐怖のみ。そこにあるのは、破壊のみ。そこにあるのは、殺戮のみ。

 

「まぁ、俺に比べたら……まだマシな方だな」

 ピアは頭をかきながら、フランドールへ近寄っていった。未だに笑い続けるフランドールへ声をかけた。

 

「……気分はどうだ?フランドール」

「あははは!楽しいっ!フラン、今すっごく楽しいの!」

 

「それはよかったな」

「ねえ、もっと遊びましょ?フランね、あなたと遊ぶのがすっごく楽しいの!」

 

「……そうか」

「前にもね!霊夢や魔理沙が遊んでくれたんだけど、あの時とはもう比べ物にならないの!今はあなたと遊ぶ方がすっごく楽しいの!」

 

「わかったよ」

「あのね、あのね!フランにはね、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』があるの!」

 

「へぇ~。それはすごいな」

「だからね!あなたをこうやって……」

 

 フランドールはピアに向けて手を伸ばした。まるで何かをつかむようにしっかりと手を伸ばして

「キュッとして……ドカーンッ!」

 

 フランは何かを握りつぶすように、ギュッと手を握った。

「……?何も起きないけど?」

 

「え……あれ?あれれ?なんでなんで?なんで何も起きないの?!なんで壊れないの!!」

「それは俺にもわk」

 

「私が教えてあげましょうか?」

 後ろから声がしたので、ピアが振り返ろうとした時

 

「振り向かないで」

 扇子によって、その動きを遮られた。ピアは指示に従い、そのまま話を続けた。

 

「……あんたは?」

「初めましてね。私は『八雲紫』。この幻想郷の生みの親……とでも言えばいいかしら?」

 

「八雲……紫……」

「霊夢から話を聞いていると思うんだけど?」

 

「あぁ、“か~な~り腹が立つ”って言ってたな」

「あら、酷い言われようね」

 

「そんなことより、なぜ何も起きないのかの説明はどうした?」

「そんなのは簡単。それはあなたの能力(・・・・・・)の力よ」

 

「なっ……!だが、俺に能力は……」

「あるのよ、これが。あなたの能力は、すべてを無に帰す虚(ゼロ)の力。無はすべてにおいて絶対で、唯一無二の存在……」

 

「……何が言いたい?」

「つまり、あなたの前ではどんな力も無意味。最強も最弱も、有機物も無機物も、すべてが虚(ゼロ)も同然。さしずめ……『能力を無効にする程度の能力』ね」

 

「能力を無効に……?」

「そう。あの吸血鬼の能力は、物体に存在する“破壊の目”を自分の手の中に移動させて、それを壊すことで物体を破壊する能力よ。でも、あなたの能力はそれをはるかに凌駕する、無効の能力。そもそも通用するはずがない」

 

「……なるほどな」

「それだけではない。あなたは対象の相手の能力を、直接使えなくさせることもできる」

 

「攻撃用として、相手の能力を消すもよし。防御用として、自分に能力が効かなくするのもよし……か」

「まぁ、好きに使いなさい。ただし……」

 

「大丈夫だ、乱用したりはしない。約束しよう」

「……いいわ。あなたに任せましょう。それでは……健闘を祈りますわ」

 

「……りょーかい」

 そして紫は消えていった。むろん、ピアがそれを確認する術はない。ピアは自分の能力の存在と、その力をいまだに信じられなかった。

 

「それにしても……俺が能力所持者(スキルホルダー)とはな。……以外だぜ」

「えぇー!なんでぇー?なんで壊れないのよー!」

 

「説明してあげるよ、フランドール」

 ピアは先程紫から受けた説明を、そのままフランドールにしてあげた。

 

「……能力を無効にする程度の能力?それって、私の能力も効かないってこと?」

「そうなるな」

 

「お姉さまや、咲夜、パチュリーに、美鈴の能力も効かないの?」

「効かないらしいな」

 

「すっごーい!やっぱりあなたって普通じゃないわ!」

「……って、言われてもな……」

 

「能力で壊せないんだったら……弾幕で壊せばいい!」

 フランドールは再びスペルカードを取り出した。

 

「禁忌、『フォーオブアカインド』!」

 スペル宣言と同時に、フランドールは四人に分身した。しかし、ピアはそれほど驚きはしなかった。

 

「へぇ~、分身できるんだな」

「うふふ……もうあなたは絶対に逃がさない……。捕まえて、逃げないようにその羽と足を引きちぎってあげるね。あ、でも再生しちゃうから意味がないかなぁ~。だったら、まずは頭を潰してあげるね!それからず~っと、フランと一緒に遊びましょ?」

 

 四人のフランが同時に返事をした。いまいち本物の見分けがつかない。

「そんなセリフを楽しそうに言うな。生き物は五体満足じゃないと動くこともままならない」

 

「でも、そんなことしたら逃げちゃうんもん」

「……そりゃそうだろ」

 

「だから逃げられないようにするの。それでも逃げようとする人間がいたから、弾幕を撃ったら壊れちゃった」

「そりゃ壊れるさ。人間なんて、脆いもんだ」

 

「それでまた、フランは独りぼっちになるの……。すぐ代わりの人間が連れてこられるけど、またすぐに壊れちゃうの……」

「…………」

 

「フランはいつも一人ぼっち……。ずっと誰かに一緒にいてほしいけど、それは無理……。みんな私を怖がって、近寄ってこない……」

 

「……だからね、二度と逃げられないように、あなたは再生が出来なくなるまで弾幕を撃ち続けてあげる!」

 

 四人になったフランドールが、一斉に弾幕を放とうとした時だった。

「外には……出ていかなかったのか?」

 

「それはだめ。お姉さまが許してくれないの。だから私は495年間、一度も外に出たことがないの」

「そうか……わかった。……ふっ、ちょうど天井に穴が開いてるな」

 

「えっ……?」

「見せてやろうか……?外の世界を!」

 

 ピアは翼を広げ、目にもとまらぬ速さで一人のフランドールの手を握ると、そのまま急上昇を始めた。

「ちょっと!離してよっ!離してってば!」

 

「いやだね!」

 ピアはフランドールの手を離さなかった。そしてそのまま外へと飛び出した。

 

「ほら……見てみろ」

「え……?あ……」

 

 フランドールの目に飛び込んできたのは、大きく美しい満月だった。

「……な?悪くないだろ?」

 

「あ、うん……でも、なんで……?」

「ん?」

 

 ピアは後ろを振り返った。そこには、後から遅れてやってきた三人のフランドールがいた。

「どうして……私が本物だってわかったの……?」

 

 ピアが連れてきたフランドールは、スペルカードで分身した中のうち、本物のフランドールだった。ピアは答えに困っていた。

 

「う~ん……そりゃだってさぁ……」

「えっ?」

 

 ピアはフランドールの顔を自分の方へ向けた。そして

「昔なぁ……俺が世界で一番大っ嫌いだった奴が言ってたんだよ。本物には本物にしかない……涙があるんだとよ。」

 

 フランドールの涙を指で拭ってあげながらそう言った。フランドールはピアの顔を見上げた。その瞳には、すでに狂気は宿っていなかった。

 

「あ……あぁ……。ご……ごめんなさい……」

「謝らなくてもいい。俺なら大丈夫だからさ」

 

「でも……フランは……フランは……」

「フランがどうだろうと、関係ないさ。俺なら簡単には壊れはしない。俺が、フランのそばにいてやるよ」

 

「あ……ありがとう……お兄様……」

 そこにいるのは、狂気に満たされた悪魔の妹ではなかった。ごく普通の少女と、なんら変わらないフランドールがそこにいた。

 

「……さて、続きと行こうかね」

「え?続き……?」

 

「そうだ、フラン」

 ピアはフランドールと、ある程度の距離を取った。そして、右手に魔剣エッジ、左手に聖剣キャリバーを両方同時に抜いた。

 

「弾幕勝負の続きだ。中途半端なところでやめるのは、俺のプライドが許さないからな」

「でも……」

 

「俺のことは気にするな。フランの全力でかかって来い。俺はそのすべてを迎え撃つ」

「……うん!」

 

 フランは分身たちと再び並んだ。ピアもそれに合わせて剣を構えた。

「さぁて……、どっからでもかかって来い!片っ端から相手をしてやるよ!」

 

「うんっ!いっくよー、お兄様ぁ!」

「おう!」

 

 四人のフランドールが、同時に突撃を始めた。ピアはキャリバーを銃に変え、包帯にまかれた魔剣と、自分の右腕の力を開放した。

「おっと!一つだけ、フランに言い忘れたことがあったぜ」

 

 ピアはエッジを右肩に乗せ、キャリバーをフランドールに向けて叫んだ。

「俺の名前は、ピア・デケム!博麗の巫女の使いだぁ!」

 

 再びピアとフランドールは激突した。四人のフランドールを相手に、ピアはうまく立ち回った。一人、また一人と、確実に分身を倒していった。

 

「すごい!お兄様、すっごく強い!」

「そういうフランこそな!……だが、これで決める!」

 

 ピアはキャリバーをしまい、エッジを両手で構えた。フランドールもまた、スペルカードを取り出して勝負に出てきた。二人が同時に叫んだ。

 

「禁忌、『禁じられた遊び』!」

「『幻夢零』!」

 

一方、裂光覇によって紅魔館を半壊状態にされたレミリア達は、外で紅茶を飲んでいた。

「まったく……なんて馬鹿みたいに巨大な魔力なの?……ますます、研究したくなってきたわね」

 

「パチェにしては珍しいわね。大図書館を思いっきり吹っ飛ばされたっていうのに、怒ったりはしないの?」

「それは……図書館を壊されたのは許せないけど……彼から供給してもらった魔力と、咲夜の能力を使えば問題はないわ」

 

「……何をするの?」

「彼の魔力は、無限大の可能性を秘めているわ!彼の魔力を咲夜の能力に合わせたエネルギーに変換して、咲夜の能力に力として与えるの」

 

「すると……どうなるの?」

「咲夜はエネルギーの供給を受けている時だけ、時間を止めるだけではなく、時間を戻したりすすめたりできるのよ!これはすごい発見よ!」

 

「ふぅん……意外にすごかったのね。ピアの力って」

「はい。ですから、ピア様と妹様の戦いが終わり次第、私とパチュリー様で館の修復をします」

 

「お願いね、咲夜」

 レミリアがもう一口紅茶を飲んだ時だった。

 

「お嬢様ぁ~!」

 美鈴がものすごい勢いで走ってきた。非常に慌てふためいており、途中でこけたりしていた。

 

「落ち着きなさい、美鈴。どうしたの?」

「あ!さ、咲夜さん!あ、あれあれ!あれを!」

 

「……?あれ?」

 咲夜は美鈴が必死に指をさす方向へ目を向けた。

 

「……!ピア様!妹様!」

「なんですって!」

 

 そこには血まみれではあるが、フランドールを背負って歩いてくるピアの姿があった。レミリア達は、すぐにその場に駆け付けた。

 

「ピア!あなた……」

「あ……はは……。館を吹っ飛ばしたのは……その……申し訳ない。ただ、ほら……」

 

 ピアはレミリアに、フランドールがよく見えるように動いた。フランドールは疲れ果てたのか、寝息を立ててスヤスヤと寝ていた。

「フラン……?」

 

「ごらんのとおり、はしゃぎすぎて疲れちまったらしい。……美鈴、フランを頼む」

「あ、はい!」

 

 ピアは美鈴にフランを預けた。その後、自身にもかなりの疲労があったのか、大きなため息をついた。

「ピア」

 

 レミリアはピアに声をかけた。これまでとは違い、だいぶ穏やかな口調だった。

「ありがとう……フランの相手をしてくれて……。あなたには本当に感謝してるわ」

 

「いいってことよ。その代わり……これからもフランを大切にしてやれ。大事な家族だろう?」

「……そうね。そうするわ」

 

「……フランはな……昔の俺によく似てた」

「昔の……ピアに?」

「あぁ……」

 

 ピアは静かに語り始めた。

 ピアは昔はただの人間だった。しかし国の昔からの言い伝えにより、年に一度、一番生まれが早い十歳の子供を一人、生贄として殺さなかければならない儀式が行われた。

そして、その年の一番生まれが早かったのは、ピアだった。ピアは国中から命を狙われた。そしてピアは、父のバイクを盗んで逃走した。その間、ピアの中に芽生えていたのは国に、世界に対する恨み、憎しみ、苦しみ、悲しみ、そして狂気。そして、ピアの五年間の憎悪に反応して、一人の悪魔がピアにとりついた。ピアは、その悪魔の力を使い、母国を滅ぼした。

 

「……そう……なの」

「ピア様……あなたは……」

 

「俺に比べたら、フランはまだマシな方さ。俺は家族に、国に、世界に裏切られ、自ら居場所を捨てた。たった一つしかなかった居場所を、自分の意思でね」

「ピア……」

 

「フランにはまだ……居場所がある。過ちを犯しても、止めてくれる家族がいるからな……。失ってからでは、もう手遅れなんだよ」

「…………」

 

「だから、レミリア。フランを……たった一人の家族を……決して突き放すような真似はしないでくれ。……頼む」

 

「わかったわ。私が……フランを守るわ。……お姉さんだものね」

「助かる……。それと、もう一つ……」

 

「なにかしら?」

「俺……そろそろ限界……」

 

「……えっ?」

「すまん……もう……意識……が……」

 ドサァッ!

 

 ピアは意識が遠くなり、その場に倒れてしまった。レミリアは咲夜とパチュリーに紅魔館の早期修復を、美鈴と小悪魔にピアとフランドールを修復次第、部屋に運ぶように指示を出した。

 

「私は……私たち姉妹は、あなたに救われた。だから……今度は私たちが、あなたを助けるわ……ピア」

 

 レミリアは空を見上げた。月はいまだ空高く、夜はまだまだ長そうだった。

 




フランとの遊びはこんな感じだったらいいなと書きました
後悔はしてません(^_^;)
ではまた次回です
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