皆様の余暇の間に読んでいただければ幸いです
ではどうぞ(*^_^*)
「(う……うぅ……)」
ピアが目を覚ますと、そこは紅魔館の一室だった。窓から日が差しているところを見ると、フランドールとの戦いから一夜を過ごしてしまったらしい。
「……俺は……あぁ、そうか。たしか気を失って……」
あの後、フランドールはどうなったのか、吹き飛ばしてしまった部分はどうなってしまったのか。いろいろと聞かなければならないことがあった。
「……はぁ」
ピアは何気なく首を左へ回した。ピアはそこで、信じられないものを目にした。
「…………?」
ピアの隣には、なぜかレミリアが寝ていた。ピアの腕に抱き付いて、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「まったく……おい、レミリア。起き……?」
ピアは右手でレミリアを起こそうとして、そうすることができなかった。なぜか右手が動かない。神経がダメになったのかと思い、ピアが右側を見ると、
「…………」
今度はそこに、フランドールがいた。フランドールも、レミリアと同じように腕に抱き付き、幸せそうに眠っていた。
「……待て、まだ慌てる時間じゃない……状況を整理するんだ」
ピアは状況整理を始めた。昨日はフランドールと弾幕勝負をした。戦闘後、意識を失った。今、目を覚ました。そして両隣には、スカーレット姉妹。
「…………」
状況整理を終え、ピアは顔を正面に戻した。
「……なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁ!」
結局ピアは現状が呑み込みきれず、今の気持ちを叫んでしまった。その後、悲鳴を聞いた咲夜が慌てて部屋にやってきたこと。悲鳴でスカーレット姉妹が目を覚まし、さらに状況が悪くなったのは、言うまでもない。
騒ぎの後、朝食を済ませたピアは、レミリアとフランドールの二人を呼び、今朝の状況について尋ねた。
「……で、何をどうしたらああなるのか、説明してもらいましょうかね?」
「……ふん」
「あのね、フランはお兄様と一緒に寝たかったの。お兄様にけがをさせちゃったのはフランだったし……いやだった?」
「いやではない。俺が勝手に驚いていただけだ、心配ないよ」
「やったぁ!ねぇねぇ、今日も一緒に寝ていい?」
「自重しろ」
「そうよ、フラン。ピアが優しいからって、調子に乗りすぎよ」
「えぇ~。フランがお兄様と寝るって言ったら、お姉さまもムキになって一緒に寝たくせに」
「!?!?!?!?」
「……どういうことだ、レミリア?」
「そ……それは……その……」
「なんだ?ちゃんとした理由があるんだろう……?」
「いや、だから……うー……」
「“うー”じゃない。ほら、ちゃんと説明してくれ。まさか……フランと理由が一緒なんてk」
「くぁwせdrftgyふじこl!」
わけのわからない言葉と同時に、レミリアはスペル、神槍『スピア・ザ・グングニル』をゼロ距離で放った。
「あっぶねえぇぇ!!」
ピアは驚異的な反射神経で回避した。普通なら回避できない距離だったが、ピアの力ならば不可能ではなかった。
「おい!いきなり何をするんだ!危ないだろうが!」
「う―!ピアの馬鹿ぁー!」
レミリアは捨て台詞っぽいことを言うと、走しり去ってしまった。ピアはそれを特に追いかけることはしなかった。
「……なんなんだ、アイツ?」
「えへへ!お姉さまは相変わらず、素直じゃないね~」
「そういうフランはどうなんだ?」
「ん~?フランはお兄様のこと……」
二、三歩ほど前に出ると、ピアの方へ向き直った。そして大きく手を広げると
「大っ大っ大、だ~い好きっ!」
そう言いながらピアに抱き付いた。ピアがフランドールの頭をを撫でてあげると、フランドールはにっこりと笑った。
「あのなぁ、フラン……。そういうのはもうちょっとだけ、小さい声で言ってくれないか?……言われてるこっちが恥ずかしいっての……」
「……?そうなの?」
「そうなの。……あ、そういえば……」
「どうしたの?」
「俺、気が付かないうちに“フラン”って呼んでたな……。悪い」
「謝らなくてもいいよ!これからもずっと、フランって呼んでほしいな」
「ん?そうか。……わかった」
「そこのアナタも、フランのことはフランでいいよ」
「おい、フラン。誰に言ってるんだ?」
「えへへ!内緒~」
そう言ってフランはピアのそばを離れ、レミリアの後を追いかけるように、走っていった。
「……ますますわからん……」
「妹様は、あなたのことを気に入ってるのよ」
ピアの後ろから、咲夜が近寄ってきた。
「おぉ、咲夜」
「おはよう、ピア。……今朝はいろいろと大変だったわね」
「……まったくだよ。レミリアには引っかかれるし、お前にはナイフを投げられるし」
「あ、あはは……。まさか、お嬢様までご一緒していたとは思わなかったのよ。ごめんなさいね」
「まぁ、それはしょうがないとして。それにしても……昨日あれだけ吹っ飛ばしたのに、もう直ったのか?」
「えぇ。パチュリー様が、あなたの魔力を能力強化に使えるように調整してくれたの。そして、私の能力を強化して、壊れた紅魔館の時間を戻したのよ」
「……やっぱり咲夜の能力は時間操作か」
「……ばれてたのね」
「まぁな。……と言っても、すぐには気づけなかったけどな」
「なるほどね……さすがだわ」
「いや、まだまだだな」
「そうかしら?私からすれば、十分だけど。……ところで」
「ん?」
「損害状況を確認した時に……妹様の部屋の扉だけ、壊れ方が弾幕によるものじゃなかったの。……何があったのかしら?」
「さぁな。どうやって壊れたんだろうな?」
「…………」
「さて……と、俺はそろそろ帰るぜ」
「そう、わかったわ。では、私はお嬢様を……」
「あぁ、待ってくれ。俺が自分で行くよ。多分だが……レミリアは自分の部屋にいると思う」
「……わかったわ。それじゃ……くれぐれも気を付けてね」
「はい?」
「お嬢様は、あなたが考えているよりもずっと純粋なの。……女心は大切にしてあげてね」
「……?まぁ、わかったよ」
咲夜の言葉の意味をまともに理解せず、ピアはレミリアの部屋を目指した。
レミリアの部屋についたピアは、部屋の扉をノックした。
「おい、レミリア。いるか?」
「……ピア?」
「……本当にいたよ……。入るぞ?」
「……いいわよ」
ピアはレミリアの部屋に入った。すぐに姿が見当たらなかったので辺りを見渡すと、ベッドがかすかに動いているのがわかった。
「……おい、レミリア。今朝はいろいろとすまなかったな……」
「……別に……」
「……怒ってるのか?」
「怒ってないわよ」
「怒ってるだろ?」
「怒ってないって」
「それは怒ってる」
「だから、怒ってないって言ってるでしょ!」
レミリアは布団から上半身だけを起こして、枕を投げつけた。枕はピアの顔面を直撃した。
「いったぁ……」
「何しに来たのよっ!わざわざ私を怒らせに来たとでもいう気?!用がないなら、とっとと帰ったらどうなのっ?!」
「お……落ち着けって!言われなくてもそのつもりだよ!」
「えっ……」
途端にレミリアは黙り込んだ。レミリアが落ち着いたようなので、ピアは会話を続けた。
「今朝のことも悪かった。とにかく俺は帰るから、それで許してくれ。じゃあな」
レミリアの機嫌を損ねないうちに、ピアが帰ろうとした時だった。
「ま……待ちなさい!」
レミリアがピアを呼び止めた。ピアはつくづくレミリアの行動が理解できなかった。
「……ったく、散々人を怒鳴り散らしておいて、いったい何の用だ?」
「あ……その……。も……もうちょっとだけ、ゆっくりしていっても……いいのよ?」
「なんでそこが疑問形なんだ?」
「そ、そんなことはどうでもいいでしょ!」
「どうでもいいのかよ……」
「……あのね、ピア」
「うん?」
レミリアは妙にもじもじしていた。頬を赤らめながら、ピアの方をたまにチラ見しながら言った。
「私……いろいろと考えたの。初めて会ったばかりのあなたに、こんなにお世話になるとは思わなかったし……。だから、私なりに考えて、決めたの」
「……何を?」
「あなたをね……紅魔館で雇うことにしたわ」
「……はぁ?!」
「もちろん、私の専属執事としてね。どう?立場としては、咲夜と同格よ。悪い話ではないわ!」
「いや、ちょっと待て。それは……」
「そうよそうよ!その方がいいわ!霊夢のところにいたって、ひもじいだけでしょ?私の所へ来なさい。衣食住なら、三食昼寝付きで提供してあげるわ!」
「……レミリア」
「ん?何?」
ピアの返事に期待しているのか、レミリアは満面の笑みを浮かべていた。しかし
「ごめん、無理」
ピアの返事は辛辣だった。レミリアは心の底から信じられないといった顔をした。
「な……何でよぉ!どう考えたって、こっちの方が条件が圧倒的にいいでしょ?なんで断るのよ!私が誘ってるのよ?!」
「いや……気持ちは嬉しいんだよ。でも……今の俺は“博麗の巫女の使い”……つまり、霊夢の従者だ。それには霊夢の許可が必要だ」
「……なるほど。わかったわ」
「そうか……すまんな……」
「要するに……霊夢を叩き潰して、ピアを私のものにすればいいってことね!」
「えぇ~……」
「そうと決まれば、早速霊夢を倒してやるわ!待ってなさい、ピア。あなたは必ず、この私の専属執事にしてあげるわ!」
「……もう好きにしてくれ。俺は帰るからな」
「えぇ。またね、ピア。私の勝利に期待してなさい!」
「……へい」
ピアはレミリアの部屋をあとにし、紅魔館から出発した。そのまま博麗神社を目指して、まっすぐ飛んだ。
博麗神社では、霊夢が相変わらずダラダラしていた。ここ数日間、霊夢はピアに何でも頼んでいたので、自分で何かをすることが面倒臭くなっていた。
「あ~あ……暇。暇ったら暇。あいつ……さっさと帰ってこないかなぁ~」
「あいつって、誰のことかしら?」
「うひゃあぁ!……って、なんだ紫か……」
霊夢の後ろから、突然スキマが現れた。そのスキマの中から、紫が上半身だけを出した。
「なんだはないでしょ?霊夢ったら……いつからそんな口の利き方をするようになったの……?母さん、すごく悲しいわ……」
「変な芝居はやめなさいっ!あんたに母親になってほしいなんて、これっぽっちも思ってないわよ!」
「酷いわねぇ。私はいつでも、あなたを養子に迎える準備を欠かしていないのに……」
「あんたには藍や橙がいるでしょうが!」
「え~。いるって言ったって、藍は娘というよりはお節介な姉妹って感じだし。橙は藍の式だから、なんか孫ってイメージだし……。となると……必然的に霊夢が私の娘になるしかないわね!」
「どういう理屈なのよ!あんたの娘なんて絶対に嫌!それならまだ死んだ方がマシよ!」
「ひ……酷いわ、霊夢……。私がここまで本気で言っているのに……グスンッ」
「ちょ……泣かないでよ!これじゃあまるで私が泣かしたみたいじゃない!!」
「……とまぁ、漫才はさておき。霊夢、話があるわ」
「(コイツ……あとで夢想封印を全種類叩き込んでやる……!!)」
「聞いてるの?霊夢?後で“聞いてなかった”とかは、やめてちょうだいね」
「あんたのせいでしょうが!……で、何の話?さっさとしないと、夢想封印をノーマルから円まで、全部喰らわせるわよ?」
「あら、怖い。でもね、これからするのは大事な話……ちゃんと聞いてもらわないと困るのよ」
「……何よ?」
「単刀直入に言うわ。あなたが匿っている外来人……黙ってこちらに引き渡しなさい」
「…………!」
霊夢は紫の顔を見た。紫はこれまでになく真剣な顔をしていた。しかしその表情は、真剣というよりも冷徹に近かった。
「……何のこと……」
「とぼけないで。隠しても無駄よ。悪いことは言わないから、その男の身柄をこちらへ引き渡しなさい」
「……どういうこと?あの外来人に、何かあるっていうの?」
「先に言っておくわ。あの男には、能力がある」
「能力?」
「そう……能力を無効にする程度の能力よ」
「能力を……無効に……?」
「それは彼から直接聞いてちょうだい。霊夢……黙って私の言うことを聞きなさい」
「…………」
霊夢は黙った。紫はピアを引き渡せと言っている。しかも、紫の声はかなり低く、圧力をかけてきていた。つまり、紫は霊夢を脅しているのだ。あの紫が恫喝してでも手に入れようとするほどの男。紫が本気を出せば、霊夢でも勝てるかどうかはわからない。それでも、霊夢は答えた。
「……断るわ」
「なんですって?」
「お断りって言ったのよ。聞こえなかったかしら……紫?」
「霊夢……本気で言っているの?」
「本気よ。今じゃアイツは、私にとって大事な収入源なの。紫に渡したら……私はこの先、どうやってお賽銭を稼げっていうのよ?」
「霊夢……あなたにとって、彼はただの労働者かもしれない。でもね……彼の能力、存在、そして……もともと住んでいた世界は、やがて幻想郷を滅ぼすわ」
「幻想郷を……滅ぼす?」
「そう。幻想郷にとって、彼の力は強すぎる。彼が本気を出せば……幻想郷は簡単に消滅する」
「そんな、大袈裟な……」
「大袈裟?なら霊夢は、彼のどれほどの力と戦っていたの?」
「どれほどって……私がそこそこ本気を出したんだから、八割は余裕でしょ?」
「二割」
紫は指を二本立てた。そして、表情を一切変えないまま霊夢に言った。
「たったの二割よ。あなたの約八割が、彼の二割……。彼の世界からすれば、数々の異変を解決したあなたでさえ……そんなものよ」
「…………!」
紫はスキマから完全に出てきた。そのまま外まで歩くと、手に持っていた傘をさした。
「普段から本気を出さないあなたも……運命を知る吸血鬼も……死を操る亡霊も……」
紫は話しながら右へ左へとゆっくり歩き始めた。霊夢は黙って紫の話を聞くことしかできなかった。
「人間と戯れる鬼も……不老不死の月の民も……死者を裁く閻魔も……奇跡を起こす現人神も……」
高く昇る太陽を雲が覆った。それにより、傘をさしている紫の表情は見えなくなった。
「大地を揺るがす天人も……核を使う八咫烏も……魔界より復活した大魔法使いも……永い眠りから覚めた尸解仙も……」
そして紫は歩くのをやめた。それと同時に、雲の切れ目から光が差し込み、紫を照らした。
「そして……スキマを操る大妖怪である私も……。みんな彼からしてみれば、赤子の手をひねるも同然。いえ……もしかしたら、その赤子以下かもね」
「…………」
「よく考えなさい、霊夢。これは……忠告よ」
紫は再びスキマの中へ消えていった。紫がいなくなったことで、一気に重苦しい空気から解放された霊夢は大きくため息をついた。
「(何なのよ、紫の奴……。ピアが幻想郷を滅ぼす……?信じられるわけないでしょ!……でも、紫は本気だった。紫のあんな顔……今まで一度も見たことなかった。まさか……本当にピアが……?)」
霊夢が考えていると、雲がなくなって太陽が再び顔を出した。急に晴れたので、眩しさに思わず目を細めた。
「(もし……本当にピアが幻想郷の脅威になったら……私は……)」
ピアが敵になる。夢想転生すら通用しないうえに、単純な力の差ではまったく勝ち目はない。もしそうなったら、幻想郷は間違いなく滅ぶだろう。
「(私は……ピアを……)」
「おーい!霊夢ぅー!」
霊夢は体を起こした。外へ出ると、ピアが戻ってくるのが見えた。霊夢はピアに向かって手を振った。
「よっ……と。ただいま。ちょいと遅くなっちまった」
「別にいいわ。レミリアから事情は聞いてたし……。多少は問題ないわ」
「そうか。んじゃ、早速お茶でも飲もうかな」
「…………」
「……?どうした、霊夢?」
「あ……何でもないわ」
初めて出会った時、その正体を疑った。外の世界の魔王。
圧倒的な力量差に、チートとも呼べる能力無効の能力。
しかし、そんな彼を最初に受け入れたのは、ほかでもない自分である。
ならば、最後まで責任をもって面倒を見よう。
霊夢は自分にそう言い聞かせ、神社の中へ入っていった。
本当に不定期に投稿してしまいましてすみませんm(_ _)m
なかなかアイデアが思い浮かばないことがあります(^_^;)
それでも読んでいただけるだけで感激です
ちなみに今更ながらこの小説のタイトルは元々考えていた
タイトルだと被ることが投稿前に判明し内容と合いにくい
題名となっています。ご迷惑おかけします ではまた